新人研修の準備をしていると、どんな研修計画を立てれば良いか悩んでしまうことがあります。せっかく研修を行うなら、参加者が目的意識をもって理解し、実践できるような内容のカリキュラムにしたいものです。
そこで、本記事では、新人研修で取り上げるべき内容やカリキュラム立て方など、新人研修のカリキュラムを立てる際に知っておくべき情報をまとめて紹介します。
カリキュラムの必要性と基本的な考え方
研修のカリキュラムは家の設計図のようなものです。設計図がなければ、でたらめな構造になり、家自体も成り立ちません。どのような目的があり、どのような内容で構築していくのか、研修の全体像を具現化するためにもカリキュラム=設計図は必要です。
カリキュラムの基本的な考え方は、まず「誰が・いつ・どこで・なぜ・何を・どうやって学んでいくか」というように、5W1H型に落とし込むことです。
例えば、
誰が(Who):○○年度入社の新卒社員
いつ(When):〇月△日、10:00~12:00
どこで(Where):本社のセミナールーム
なぜ(Why):商品販売スキルを身につけるため
何を(What):セールストークのスキルを学ぶ
どうやって(How):ロールプレイングを通して実践練習を行いながら定着を図る
というように、5W1H型に落としこむことで、より研修の内容が明確になり、参加者にしっかりと成果物を持ち帰ってもらえるようになります。
カリキュラムの立て方
では実際にカリキュラムを立てるには、どのように行えばよいのか、手順を解説します。
1.習得させたいスキルをヒアリングする
まずは新人に最低限習得しておいてほしい知識やスキルとそのレベルを、現場の社員にヒアリングしていきます。
これに従って研修計画を立てることで、配属先の部署のニーズとのミスマッチを防ぎ、新人は現場で求められる業務にすぐに取りかかかれるようになります。
この段階で、できるだけ多くの項目を、漏れのないように洗い出しておくのがポイントです。
2.研修目標を設定する
洗い出したスキルのニーズを元に、研修を通じて到達したい目標を決めます。
例えば、ビジネスマナー習得を目指すなら、「敬語」「名刺交換」「身だしなみ」といったように具体的な項目を出していきます。その後、現場の業務に落とし込みながら、それぞれの項目を習得させるゴールを決めます。「配属翌日から、先輩社員とともに、取引先に失礼のないような挨拶回りができる」というような水準が目標の一例です。
必要な研修内容を精査することで、より現場に即した内容にすることができます。
3.研修内容を決める
研修内容は、電話対応や接客など社会人として必要な基本的スキルから、ITスキルやマーケティング能力などの応用的スキルまで幅広くあります。業種や配属部署、会社が抱える課題などを考えて、内容を選ぶ必要があります。ここでは基本的な3つのスキルを紹介します。
①一般的なビジネススキル
仕事を進める中で必要なスキルはいくつかありますが、その多くは新入社員にとっては初めて出会うものばかりです。ビジネスマナーや接客など社会人としてこれだけは身に付けたいスキルが、この一般的なビジネススキルです。具体的にはどのような内容があるのかを見ていきます。
ビジネスマナー
お辞儀の仕方や席次、名刺交換の方法、敬語、来客への対応、身だしなみ、といったものはどれも社会人として基本的な知識やスキルです。研修を成功させるためには、座学でただレクチャーするだけでなく、研修内容によって手法を変えることです。名刺交換なら新入社員同士でロールプレイングを行ったり、お辞儀の仕方などはカメラで撮影しあって自分で確認させてみてもよいでしょう。
電話対応
多くの企業が新入社員の仕事として、電話対応を行っています。社外の人ともやり取りの多いものであり、企業の印象や顧客満足度に直結するとても大切なスキルです。
「電話対応」では基本の電話対応の流れや気を付けるべき言葉遣い、メモの取り方といったものを指導していきます。覚えてほしいスキルについては電話時に確認できるチェックリストを配布し、ロールプレイングする方法もおすすめです。
文書スキル
どんな業種においてもメールや書類を作成するといった業務は発生します。ここでは、基本の挨拶文や本文の書き方、言葉遣い、避けるべき表現などを学びます。実際に使用できるフォーマットを提示するだけでなく、文書やメール作成の課題を用意して、添削をすることで、より実践的知識を身につけられます。
②社会人としての知識・スキル
新入社員のほとんどは、ほんの数週間前まで学生だった人たちです。学生気分から社会人としての自覚をつけるために、社会人としての最低限必要な知識、また自社の理念やピジョンを理解してもらう必要があります。具体的には以下のようなものがあります。
企業の理念及びビジョン
自社の企業理念や目標、事業計画といった社会に貢献する企業としての立場や考え方を理解させるとともに、経営や経済の構造についての知識を教示します。座学での方法が一般的ですが、経営者と膝を並べて座談会形式で企業のビジョンについてざっくばらんに話し合う機会を設けてみてもよいでしょう。
ロジカルシンキング
社会人になると、論理的に考え、伝達する能力が求められます。①情報を整理して、➁結論を出して、③明確に相手に伝えること、それがロジカルシンキングです。ロジカルシンキング研修では、3ステップに分けて、それぞれのプロセスを学びます。原理を学んだ後に、実際にメモの取り方や報告時のロールプレイングなどの課題を出して、スキルの習得を図ります。
コンプライアンス
コンプライアンスは今やリスクマネジメントやCSRの観点からとても重要視されるものです。企業倫理や事業に関連する法令について指導するとともに、学ぶ必要性を理解させるためにも、違反するとどうなるのかという具体例も提示したり、事例研究をしたりするのが効果的です。
③部署ごとの専門的スキル
新入社員の配属先が決まったら、できるだけ早く部署内で必要となる専門的知識を身につける必要があります。知識がないと仕事も思うように進められません。そこで、以下のような研修が効果的です。
マーケティング
ABC分析やSWOT分析など、マーケティングの考え方を学ぶだけでなく、市場調査のやり方やインターネット・テレビ・新聞の広告方法、メディアミックスの方法など実践的な手法を学びます。
ITスキル
テレワークが進み、オンライン会議や営業が主流となる中、webツールの使い方やワード・エクセルの使い方など基本的なPCの操作スキルに加え、必要な情報を見分け、安全に活用するITリテラシーの能力も重要となってきます。ITスキルでは基本的な操作からインターネット構造、セキュリティ対策、インターネットの有効活用について学びます。
4.研修手段を決める
次に、それらの内容をどのように習得してもらうか、研修の具体的手段を決めます。主な手段を5つ紹介しましょう。
①集合研修
集合研修は、同じ場所に集まり、講師と受講者とが対面して行う形式の研修です。
対面なので文字通り顔合わせという意味で、新人研修にこの方式を選ぶ企業は多いでしょう。
会場や講師を社内で設定して行う場合(社内研修)と、講師や会場を別に手配して会社以外の場所で行う場合(社外研修)とがあります。
②OJT
OJTは「On the Job Training」の略です。上司や先輩社員が、現場で新入社員に対して仕事を実際に「やって見せる」訓練がOJTです。新人に社会人としての基礎的な力が身についたら、配属後に部署ごとのOJTに入る、という企業も多いでしょう。
③オンライン研修・オンライン講座
オンライン研修は、Zoomなどのweb会議システムを用いて、非対面で行う形式の研修です。
講師・受講者の一人ひとりが異なる場所から画面越しに集う研修のほか、講師だけが遠方から映像で参加し、集合している新人に対して行う研修もあります。
研修全編ではなく、内容によって一部をオンライン化し、集合研修と組み合わせて実施する企業は年々増加傾向にあります。また支社や拠点を持つ企業では「本社エリアのみ集合研修を行い、別の拠点にはその映像を同時配信する」というケースも少なくありません。
④eラーニング
eラーニングはあらかじめ準備された教材を基軸に、受講者がPCやスマートフォンなどから視聴したり、回答したりする研修方法です。受講者は、好きな場所で、好きな時間に学習できます。また繰り返し再生などで、理解するまでじっくり復習できるのもeラーニングのメリットです。知識をインプットする内容の研修に向いています。
⑤ケーススタディ
ケーススタディは、実際にあった事例を元に学ぶ方法です。企業や同業他社など、身近に感じられる環境下で生じた事例を用いると、社会人経験のまだない新人も、当事者意識を持って課題に取り組めるようになります。
⑥グループワーク
グループワークは、受講者が数人のグループ単位で課題に取り組む研修方法です。
会話を通じてメンバー同士の考えや人柄に触れる貴重な機会となるため、新人研修でもよく取り入れられています。
また、学んだことを実践する経験は、インプットした知識を頭に定着させる効果もあります。
⑦ロールプレイング
ロールプレイングは、割り当てられた役割を演じることで、受講者が身をもって学ぶ手法です。
特に顧客対応や営業活動など、コミュニケーションスキルを強化するのに有効です。「講義を受けただけでは理解しづらかったことが、ロールプレイしてみたら実感できた」というパターンも多いでしょう。
新人研修の成功のコツの1つは、習得してほしい内容によって、これらのうち最適な手法を組み合わせることです。
5.実施期間を決める
一般的に新入社員研修というのは、新入社員が入社した直後に行われます。
2週間や数カ月など、取り組む期間は企業によってさまざまです。OJT研修の場合には入社半年後から1年ほど時間をかけて行うものもあります。このような期間の違いは研修の内容や方法の違いに由来します。
一般的な研修実施期間を参考にしながら、自社の研修内容や社員の状況に合わせて必要な研修期間を決めていくようにしましょう。
6.研修計画表を作成する
研修を実施する際には研修計画表を作成して、漏れが無いようにします。表はExcelで作成し、時間・期間、教育対象者、教育目的・目標、教育内容、講師などいった項目を入力します。会社既定のフォーマットがある場合もありますが、オリジナルで作成が必要な場合には、自作するだけでなくテンプレートをダウンロードして必要事項を付け加えるのも良いでしょう。
おすすめのテンプレート・ダウンロード先 (参照サイト)を紹介しておきます。
研修計画書テンプレート
研修企画書テンプレート
カリキュラムを立てる際の注意点
カリキュラムを立てる際に気を付けておくべきポイントをまとめました。
- 早めから準備やスケジュールの調整をしておく
- 研修内容が適切か判断するために、前年の参加者へのヒアリングをしておく
- 講義だけでなく、テストやロープレなど実践の場も入れる
- 内容を詰め込みすぎない
- 内部か外部委託にするかは予算や状況に応じて判断する
このように、カリキュラムはポイントと内容さえ押さえていれば、難なく作成することができます。弊社では、研修の目的や目標、予算に合わせて、オーダーメイドでカリキュラムを組み、必要な講師を派遣することができます。オンラインでの対応も可能ですので、お気軽に問合せフォームよりご連絡ください。
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