放送作家という肩書を持ちながら、2010年より講演活動も行っている村瀬健さん。2000組を超すお笑い芸人を指導してきた実績に基づき、「社交術」と「会話術」、そして心理学的アプローチを駆使したコミュニケーション講演で、弊社でも人気の講師です。
2020年からはオンライン講演も積極的に行い、2021年6月現在実施した回数はすでに40回以上。オンライン講演のプロともいえる村瀬さんに、オンライン講演の魅力、そして課題についてお聞きしました。

■目次

講演内容がダイレクトに伝わりやすいオンライン講演の魅力

――弊社でもすでにいくつかオンライン講演をされている村瀬さんですが、まずは放送作家から講師になった経緯を教えてください。

村瀬さん: もともと大阪の専門学校でお笑いを教えていました。そこで、人に教える面白さを感じるようになり、ある時、講演を斡旋している代理店の方と知り合いになりました。その方に高校での講演を依頼されたのが始まりです。高校の講演をしながら、一般向けの講演をやるようになって、かれこれ9年くらいたちましたかね。
最近は、人材育成から、芸人の話術に基づいたコミュニケーションスキル、そしてプレゼンテーションスキルを中心に教えています。

――そうなんですね。弊社では特に人材育成の講演に定評がありますよね。ここ最近は、オンライン講演も増えたかと思いますが、オンラインの魅力を教えてください。

村瀬さん: そうですね。例えば、個別視聴型の場合でいうと、聴講者の目の前にPCやスマートフォンがあり、その画面に資料と講師が大きく表示されるので、講演内容がダイレクトに伝わりやすいのではないかと思っています。リアル講演だと、壇上から離れたところに座っている聴講者の方は、講師の顔やスライドが小さくてわかりづらいと思いますが、それがオンラインだと目の前の画面に映し出されるから、講師との距離感もものすごく近く感じると思うんです。それが(オンライン講演の)利点の一つかなと思います。

それから、オンラインの場合、聴講者の集中力が持続しづらいと言われていますが、自分はそうは思いません。これまでの聴講者の方々の表情を見ていると、意外に集中して聴いていらっしゃる方が多いのにびっくりしました。話し手の話術にもよりますが、資料を見せながらテンポよく進めていくと、聴講者がだらけることなく集中して聴いていられるような気がします。もちろん、リアル開催のように90分ではなくて、50分とか短い時間で…。その間にも、参加者が参加できるような仕掛けを入れてあげると、聴講者はより集中して受講しているようです。

オンライン講演後に開く反省会

――逆に、オンラインの難しさはありますでしょうか?

村瀬さん: そうですね。私は「聴いている人をいかに寝かせないか」を売りにしているので、リアル講演では積極的に笑いをとるようにしています。しかし、オンラインだと、聴講者の顔が見えない時もあるので、笑いをとりづらいといった難しさも、正直感じています。そんな時は、配信ツールのチャットやQ&A機能を使って聴講者の皆さんに問いかけたり、投影資料を使ってテンポよく進めるようにしています。

――聴講者の顔が見えなくて、講演がやりづらいという話は講師の方々からよく聞きます。そのあたりはオンライン講演の難しさかもしれませんね。

村瀬さん: そうですね、リアルの場合とはアプローチの仕方が変わるので、いろいろと試行錯誤しながら進めています。毎回、講演後は必ず反省会を開いて、改善点をメモるようにしています。

これまで40回以上オンライン講演を行ってきましたが、トラブルがなかったことはないんですよ。この間のシステムブレーン(=SB)さんの講演ではマスクしたままカメラの前に立ってしまって…。そんな時は「講演前はマスクを外して出る」とメモに書きます。
また、チャットで聴講者の皆さんからの意見を募ったときに、私のPCにチャット画面が出ないことがありました。その時は、(SBの)スタッフさんがすぐに別のモニターを用意してくれたんで、何とか講演を続けることができたのですが、そんなことばかりです。だから、忘れないうちに、講演直後に反省会を開くようにしています。

反省会では、横にだれかがいた場合はその人から意見をもらったり、だれもいない場合は自分で考えてダメだった点を箇条書きで書いてメモに記録するようにしています。講演前にそのメモを読み返して本番に臨むようにしていますが、それでもやはり何かしらのトラブルは起こりますね。

――村瀬さんほどの回数をこなしていても、毎回反省点が出てくるのですね。

村瀬さん: そうですね。常に勉強です。この間の講演では、同じ内容のものを同日に2回行ったのですが、1回目は聴講者のほとんどの方が顔出しをしてくださったのですが、2回目は顔出ししている聴講者はゼロ。常に、聴講者が顔出ししてくれるとは限らない。だから、顔出しがないときも想定して、出方のパターンをいくつか用意しています。顔出しがなかった場合は、相手のリアクションがわからないので、(聴講者を)いじったりすることができないですよね。そんな場合は、相手を想像しながら、自己完結で話を進めてます。時には名前すら表示されず「iPhone」なんて人もいる場合もあるので…(笑)。私の場合、何度かそんな経験をするうちに、さまざまな対処法を身に付けましたね。

聴講者の反応を肌で感じることのできないオンライン講演の難しさ

――ほかに、オンライン講演での難しさはありますか?

村瀬さん: そうですね。しゃべりながら自分を客観的に見るのが難しいところです。というのも、講演中には、しゃべりながらも次に話す話題を考える脳みそと、自分が今どういう体の角度でどれくらいの音量で話しているかを客観的に見る脳みそがいるんです。それで、もし聴講者の反応が重たかったら、アドリブで笑いをとることも考えなきゃいけないので、脳の処理が追いつかないんですよ。リアルだと、それは肌で感じれるから、切り替えもやりやすいんですが…。

また、聴講者の感想が毎回わからないところも、オンライン講演の難しさですね。オンラインでは、講演が良かったのかどうかの手ごたえがわかりづらい。リアル講演では、相手の反応が直に見れるので、本当に面白くて笑っているのか、そうでないのかがわかる。オンラインだとそれがないから、講演が良かったのかどうかが把握しづらいですね。
オンライン講演には、聴講者の反応を肌で感じることができないという難しさがあります

――確かに、それはありますね。しかし、講演後に聴講者からのアンケートをいただくことはないんでしょうか?

村瀬さん: でも、それって、講師に見せることがわかっていて、(聴講者が)本音で書いているかどうかがわからないじゃないですか。例えば、お笑いの世界だと、新ネタをためすときは、(客の)反応が悪いと、そこを切っていって、クオリティーを上げるようにしていきますが、オンライン講演ではそれを肌でつかめないから、本当にいいのか悪いのかパーツごとのクオリティーの判断が難しい。これは、他の講師の方も感じていらっしゃることだと思いますが、そこが一番難しいところだと思います。

――臨場感やリアクションはやはりオンラインでは伝わりづらいものですよね。

村瀬さん: リアルの場合に肌で感じられるものが、オンラインでは感じられない。だから、このままオンラインが続くのは、辛いかなと思います。私の場合は、特にウケるか、ウケないかを基準にしているので…。
時には、リアルで聴講者の反応を肌で感じながら、ネタを精査して、それをオンラインで披露するというパターンが理想です。

――しかし、オンラインは今後も続いていくかと思いますが、そうした場合、このような問題はどのように克服していくのでしょうか?

村瀬さん: そうですね…。それも、何度かやってみて、ダメだったら、そこに方法論を当てて、改善して、また別のパターンを試す。それで反応が良かったら、そのネタを使うとか。結局は試行錯誤していくしかないですね。
今までリアルでは笑いをとることばかりを考えていたのですが、オンラインでは(聴講者に)ツッコミができない以上、芸能界の裏話とか他のネタで聴講者の興味を引くようにしています。今後は、それだけではなく、トーク力をさらに磨いて、トークでも(聴講者を)ひきつけられるようにしたいですね。

――オンライン講演の課題は山積みだと思いますが、それを村瀬さんは一つ一つ丁寧に検討して改善されていることがわかりました。だから、聴講者の満足度も高いのだと思います。

村瀬さん: 何でも手探り状態ですわ。完璧なものはひとつとしてない。だから面白いのかもしれません。

――確かに、ひとつとして同じものがないから、面白いのかもしれませんね。本日はどうもありがとうございました。

村瀬 健 むらせたけし

放送作家 漫才作家


タレント・芸能関係者作家

放送作家が伝える、笑いのスキルを駆使した人材育成コミュニケーション術。2000組を超すお笑い芸人を指導してきた笑いのプロが、芸人の「社交術」と「会話術」をビジネスシーンで使えるように標準化。心理学的アプローチを加味した、斬新な切り口でのコミュニケーション術は、すぐに使えると大好評。

プランタイトル

お笑い芸人に学ぶ!
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