コロナ禍が続く中、会社ではテレワーク中心の業務に切り替わりつつあります。
しかし、オンラインでは思った以上にコミュニケーションがとりにくく、ストレスを抱える新入社員も多くいるようです。そのため、最近では新人研修のカリキュラムに、テレワークにおけるコミュニケーションを採り入れる企業も増えてきました。
そこで今回は、組織活性化コンサルタントの前川由希子氏が、実際の新人研修でお伝えしているテレワークでのコミュニケーション術をご紹介します。
【監修・取材先】
前川由希子氏
組織活性化コンサルタント and my…(アンドマイ) 代表
一般社団法人建設職人甲子園 九州地区相談役
テレワークだからこそ重要となるコミュニケーションスキル
テレワーク業務が当たり前となりつつある昨今、離れた場所、直に対面できない環境で最も重要となってくるのがコミュニケーションスキルです。
また、新型コロナウイルス感染拡大によりマスク姿が当たり前となった現在、直接会える場合でも、相手の顔も自分の顔も鼻から上しか見えない状態でコミュニケーションを取らざるを得ません。これでは、相手の表情から感情や熱量やニュアンスといったものを読み取ることが難しく、相手が本当に納得しているのか、どれくらい理解しているかなどが推測しにくくなります。
また、人は相手と対面した時に、表情だけではなく、口調や声色、態度、動作、心の距離感やその場の空気感などからも、相手の心の動きを読み取ることができます。しかし、これがオンラインだと、表情と声のみで汲み取らなくてはなりません。特に、空気感や距離感など実際に会わないと分からない情報が制限されることで、雰囲気で判断するような微妙な感情の揺れが感じにくくなります。
実際、中堅社員であっても、テレワーク時は「そんな結果になるはずではなかった」「伝えたつもりなのに、うまく伝わっていなかった」など、相手との認識のズレを感じる場面は多いようです。それが、勤務経験の浅い新入社員や若手社員であればなおさらのこと。テレワークが開始されると、新人や若手の社員から、上司や先輩社員に対して「どう伝えてよいか分からない」「どんな聞き方をしたらよいか分からない」といった悩みも多く聞かれるようになります。だからこそ、テレワーク時にはこれまで以上にコミュニケーションに注目する必要があります。
これまでは、同僚や先輩社員、上司と一緒の空間で同じことを体験し、たわいもないおしゃべりをして仲を深められる環境が「当たり前」でした。それが今では「当たり前」でなくなっています。「当たり前」が「当たり前」ではなくなった今だからこそ、コミュニケーションを見直さなければならないと考えています。
テレワークのコミュニケーションで最も重要なのは「共有」
前述の通り、テレワークでは、共に過ごす時間だけでなく、対面であれば察知できていた情報も制限され、それゆえにコミュニケーション不足が起きるわけです。情報が制限された状態を回避するためには、普段から「共有」を心がけたいところです。
「共有」とは、オンラインであっても相手の話をよく聞き、言うべきことをきちんと伝え、お互いに理解しようとすること。そうすることで、相手の長所・短所、得意・不得意、そして目指す方向性や価値観も見えるようになります。共有ができれば、画面に映る相手の表情と声だけでも相手の心の動きが読めるようになるため、自然と円滑なコミュニケーションが取れるようになります。
テレワーク・コミュニケーション研修において、「どこまでコミュニケーションを取ればいいのか」「何を目指してコミュニケーションを取るのか」といった質問がよくあります。そんな時、私は決まって「共有できるまで」と返答しています。「共有」ができれば、相手への信頼感が生まれ、より良い人間関係が築けます。良い人間関係がベースにあれば、テレワークでもコミュニケーション不足に陥ることは少なくなることでしょう。
オンラインでの伝え方のコツ
コミュニケーションにおいて大切なのは「共有」だということを踏まえ、次に、実際にテレワーク業務におけるオンラインでの伝え方のコツを紹介します。
コツ1: 相手は聞こえにくいという前提で、はっきりゆっくりと話す
オンラインの場合、直に対面して話すときよりお互いの声が聞こえにくい環境であることを念頭に置いておきましょう。
いくらハイスペックのPCを使っていても、通信の環境が良い状態であっても、音のがクリアでなかったり、細かい表情やちょっとしたニュアンスが伝わりにくかったりすることは大いにあります。オンラインでうまくコミュニケーションするには、以下のことを意識するとよいでしょう。
- ゆっくり話す
- 口を大きく開けて話す
- 身振り手振りを交えて話す
これらを意識することで、スムーズにコミュニケーションできるようになります。
コツ2: ロジカルスピーチを心がける
オフィス内と違い、オンラインでのコミュニケーションでは集中力が途切れがちです。
人間は分からないことに対しての耐性が弱く、オンラインで「分からないこと」が発生すると、多くの場合、コミュニケーションから離脱してしまう傾向にあります。
まずは、集中力が途切れないよう、ロジカルスピーチを心がけましょう。ロジカルスピーチの基本は、【結論→理由→詳細→結論】です。何の話で何が伝えたいのかを、相手にはっきりと分かるように伝えることで、コミュニケーション不足による業務上の齟齬が回避できます。
全員に発言の機会を設ける
皆が同じ場にいると一体感が生まれやすく、発言の機会がない人も、ちょっとした反応や表情でその場に馴染めることが多いものです。しかし、オンラインではそれが難しくなります。共感が得られにくかったり、オンラインでの会話に慣れていないと参加しにくかったり、ということもあるかもしれません。
そうしたことを防ぐためには、できるだけ一人ひとりに発言の機会を設けることです。特に、新入社員はなかなか自分から意見を言えず、発言のタイミングもつかみにくいなどで傍観者になってしまいがちですから、自己紹介やひと言感想の時間を作りましょう。
テレワークには管理職や上司のサポートも重要
「報告」「連絡」「相談」の頭文字を使った「報連相」は、ビジネスにおいて基本中の基本です。新入社員には、常日頃から「報連相」の習慣を身に付けるように促しましょう。まだ業務全体が見通すことができない未熟な新入社員に対しては、報連相のする・しないを自己判断するのではなく、最初のうちは全て「する」必要があることを伝えます。
そして、上司や先輩社員は、いつでもそれをサポートできる状態であることを心がける必要があります。新入社員にとって、上司や先輩社員が「報連相」しやすい存在であることは、「些細なことも伝えやすい、声かけしやすい」ことを意味します。
テレワークの環境では、会社で当たり前のようにしていた雑談や何気ない声かけが難しいため、チャットやメール、朝礼やミーティングなどでこまめにコミュニケーションできるように、雰囲気づくりはもちろん、これらを日常化できるように会社全体で心がけることが肝要です。こうすることで、テレワークのコミュニケーション不足や、人間関係が希薄になることで起こる新入社員の孤独感やストレス、モチベーションの低下などの問題にいち早く気付き、解決することができます。
用件がなくてもメッセージをやりとりできる関係を目指しましょう。
テレワークをきっかけにコミュニケーションを見直そう
テレワークは、一人で黙々と作業することが多くなるため、コミュニケーション不足やモチベーション低下が問題となっています。だからこそ、これを機会にコミュニケーションのやり方を見直してみてはいかがでしょうか。
テレワーク・コミュニケーション研修では、今回お伝えしたこと以外にも、これまでの思い込みによる間違ったコミュニケーションの取り方に気づけ、深い人間関係を築くためのコミュニケーション術をワークでの実体験により習得できます。新入社員研修や若手組合員向けの研修としてもご好評いただいております。興味がありましたら、システムブレーンまでお問合せください。
前川由希子 まえかわゆきこ
組織活性化コンサルタント and my…(アンドマイ) 代表 一般社団法人建設職人甲子園 九州地区相談役
コンサルタント
人見知り、引っ込み思案、躊躇等、誰もが持つ感情の源泉にワクワク感を注ぎ、「やってみたい!」の行動へ繋げる達人。「全ての現場スタッフに生きがいを与える」ことを信念とし、心理学・行動科学・哲学をベースにした講演やコンサルティングは95.3%以上のリピート率を誇る。/p>
プランタイトル
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