生活に欠かせないアイテムとなったスマートフォン(スマホ)。このスマホを使い、子どもたちがSNSやオンラインゲーム、動画投稿サイトなどに簡単にアクセスできるようになりました。それに伴い、子どもがスマホを通じたトラブルに巻き込まれるリスクも増大しています。

子どもをスマホトラブルから守るために、保護者や学校、地域の大人は何をどうすべきなのでしょうか。長年子どものネット・スマホ問題を取材し、多くの著作を持つジャーナリスト・石川結貴氏が、スマホトラブルが起こる理由や、トラブルを起こさないためのルール作りについて解説します。

Your Image【監修・取材先】
石川結貴氏

ジャーナリスト

ステイホームで子どものスマホ・ネット利用時間が急増

▲講演資料より(出典:内閣府「令和2年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」)

長引くコロナ禍でステイホームの時間が増えたことにより、子どものスマホ・ネット利用時間は急激に増加しました。内閣府の「令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば、平日のインターネット利用時間の平均は、1日あたり小学生で約2時間、中学生で約3時間、高校生で約4時間となっています。さらに、中学生の約6人に1人、高校生の約3人に1人は5時間以上も利用していることがわかっています。

スマホやネットの使用目的に関しては、小学生から高校生まで「ゲーム」が70%程度と一貫しています。一方で、SNS等のコミュニケーション目的での割合は、小学生の43%に対して中学生は80.5%、高校生は90.5%となり、年齢が上がるにつれ高くなっていることがわかります。

子どもに忍び寄るSNSのリスク

スマホやタブレット、パソコンは、上手に使えば便利で有益ですが、上記のようにSNSをはじめとするネットコミュニケーション、動画視聴、ゲームなどにのめり込んでしまうリスクも懸念されます。スマホ利用時間が増えることによって、具体的に以下のようなリスクが考えられます。

  • ソーシャルゲーム依存
  • SNSによる「つながり」のトラブル
  • ネットいじめ
  • SNSからの「個人情報流出」のリスク など

ここでは、さまざまなリスクの中でも特に現実世界でのトラブルや犯罪に巻き込まれやすい、SNSによる「つながり」のトラブルについて解説します。

SNSによる「つながり」のトラブル

LINEやTwitterなどのSNSを通じて知らない人と「友だち」になり、トラブルに巻き込まれてしまう子どもたちは後を絶ちません。大人からすると、なぜ知らない人と「つながる」ことの危険性がわからないのか、疑問を感じることも多いかもしれませんが、子どもである当人は、ネットのつながりが危険なことだという感覚に乏しいのです。

これは、同級生や同じ部活動の先輩後輩など、リアルの友人から「私がSNSで仲良くしてる人だ」などと紹介されるケースが多いためです。現実で仲の良い友人から紹介されたら、疑うことができなくても仕方ありません。

実際に、46歳の男がLINEで1,600人もの少女と「友だち」になり、そのうち130人から裸の写真を送らせる、という事件がありました。この男は「自分は19歳の大学生で、モデルをしている」と偽り、他人の写真を無断借用して別人になりすまし、一人の女子中学生から最終的に1,600人もの少女と「友だち」になることに成功したのです。
一般的に、こうした事件の加害者は「友だち」になってからの手口も実に巧妙で、「夏休みになったら一緒に海に行こう」という誘い文句から、「こんな海水パンツ買ったよ」と別人男性の水着画像を送り、次に「君の水着姿を見たい」とやんわり迫ります。お尻が少し見えるように水着を少しずらした写真画像を送り、同じような画像をせがみ、相手が拒絶すると、「恋人同士ならふつうのことなのに、冷たいなぁ」「俺のこと、好きじゃなくなった?」とプレッシャーをかけて裸の画像を送らせます。
逆に「裸の写真を送らないと今までのやりとりをばらす」と、最初から脅すパターンもあります。そのような大人の話術に誘導され、大量の少女が被害者となりました。

さらに、子どもたちが利用するSNSはLINEやTwitterなどの大手SNSだけではありません。「斉藤さん」や「Koe Tomo(こえとも)」などのボイスSNS、トークアプリなどと呼ばれるアプリも中高生に人気で、これらのアプリでは「声」つまり相手との「会話」を通じてつながります。また、音声会話だけでなくビデオ通話ができるものもあります。

問題なのは、マッチングがランダムに行われるため、相手がどんな人かわからないまま会話が始まってしまう点です。しかし一方で、その気軽さから「その場だけ」「イヤになったらすぐ(会話を)切ればいい」と、暇つぶしやちょっとした好奇心、いたずら感覚で利用してしまう子どもも少なくありません。

また、LINEライブやインスタライブなど、自分の音声や動画を公開するアプリもあります。これらには、例えば、ダンスをしている様子を動画で公開し、それを見た人たちから有料ギフトやポイントなどをもらって収益化できるというシステムがあります。いわゆる「投げ銭」と呼ばれるもので、獲得した投げ銭はAmazonのギフトカードなどと交換できます。「投げ銭」目的で安易に動画を投稿してしまう子どももいます。

子どものスマホ・SNSトラブルはなぜ起こるのか

では、子どものスマホ・SNSトラブルはなぜ起こるのでしょうか。主に以下のような要因が考えられます。

  • 家族や友達関係の希薄化、ステイホームで一人になったことによる孤独感
  • スマホが子どもの主要なコミュニケーションツールとなったことで、常につながっていなければならないという焦りや不安
  • 何でも発言できる(匿名性)という間違った概念

特に、「既読」になればすぐに返信しなければならないという重圧感は、「既読スルー」の言葉が問題視されたことで、知っている人も多いのではないでしょうか。SNSなら匿名だから何を言ってもいいと考えて過激な発言をして、トラブルに発展してしまう子どもも多いのです。

子どもたちがスマホトラブルに巻き込まれないために大人は何をすべきか

スマホトラブルやネット犯罪から子どもたちを守るには、保護者、学校、地域の大人が常にネットトラブルの現状を把握し、新しい情報を知り、それに対応するために子どもたちと話し合う機会を設けることが必要です。具体的な対策としては、以下のようなことが考えられます。

  • 大人がスマホトラブルの現状と知識を得て、それを子どもと一緒に考える
  • いじめや犯罪被害の実例や対策(相談窓口など)を調べておく
  • スマホのフィルタリング機能、利用制限アプリなどを活用する
  • 携帯電話会社が提供するIT教育資料を活用する
  • 家庭でスマホの利用ルールを設ける など

すぐにでもできるのは、スマホの利用方法について家庭でルール作りをすることではないでしょうか。次の章では、ルール作りの具体的な方法について解説します。

スマホ利用のルール作りのポイント

家庭でスマホ利用のルール作りをするときは、何よりも個々の子どもの状況を大人が知り、子どもの状況に合わせたルールを作ることが重要です。子どもの状況を知るためには、次のようなポイントに注目するとよいでしょう。

  • なぜスマホが欲しいのか
  • スマホで何をどれくらいしているのか
  • どんなことに楽しさを感じているのか

スマホを使うことに対する子どもの気持ちを聞くことから始まるルール作りは、親子コミュニケーションの良いきっかけにもなります。子どもとしっかりコミュニケーションをとり、どんなルールなら守れそうなのか、具体的に話し合いましょう。大切なのは、大人からの一方的な押し付けにするのではなく、子どもの事情や意見を取り入れながら、お互いに調整していくことです。

まずは子どもたちとSNSトラブルについて話し合うことから始める

スマホを中心としたデジタル技術の発展に伴い、スマホ・ネットトラブルも多岐にわたり、今後、さらに複雑化していくでしょう。そのため、常に周囲の大人たちは子どもたちの心の声に耳を傾け、SNSのリスクについて話し合う機会を持つことが、スマホトラブルを防ぐ第一歩です。

SNSについて大人が情報収集してもわからないことは、子どもに聞くなどして、それを会話の糸口にして子どもと話をしましょう。大人が「わからないから」「面倒だから」と子ども任せにするのではなく、子どもの世界に興味を持ち、共感・傾聴することで、子どものほうを現実世界に連れていくことが大切なのではないでしょうか。

石川氏の講演では、さらに複雑化するスマホトラブル・ネット犯罪の現状について、ほかにもさまざまな事例を挙げながら詳しく解説し、そのトラブルの裏側にある子どもたちの心の問題、そして大人ができる対応策を考えていきます。市民講座やPTA講演会、家庭勉強会等におすすめのテーマとなっておりますので、ぜひ次回の講演会にご検討ください。

石川結貴  いしかわゆうき

ジャーナリスト


作家評論家・ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各地での講演会など幅広く活動中。日本文藝家協会会員。

プランタイトル

SNS トラブル・ゲーム依存・ネットいじめ
~子どものスマホ危機を克服するためにできること~

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