現場で直接、上司や先輩社員から指導を受けるOJT研修。メリットの多い研修ですが、一部にデメリットもあります。
本記事では、OJT研修の概要やメリットデメリット、進め方と目的、成功させるためのコツについてわかりやすく解説していきます。

■目次

OJT研修とは

OJT研修とは、OJT(On-the-Job Training)の略で、上司や先輩社員に指導を受けながら実務を行う中で、業務知識を身につけていく研修方法のことを指します。既に実務をこなしている経験豊富な先輩や上司から直接手ほどきを受けることで、マニュアルだけでは伝わりにくい現場のいろはを身につけられます。

終身雇用が当たり前だった時代には、長期的・段階的に新入社員を研修などで教育していく仕組みが当たり前でした。しかし、近年では終身雇用が当たり前ではなく、即戦力が求められるようになり、指導する側にも人材育成だけにかけている時間がないことから、実務を行いながら同時に指導もできる、OJTを使った研修手法が主流となっています。

OJT研修とOff-JT研修の違い

OJT研修の対に言葉として、「Off-JT」研修があります。「Off-JT」は「Off-The-Job Training」の略で、OJTとの大きな違いは、職場内か、職場外かということです。OJTは職場内、Off-JTは職場外となります。Off-JTでは、職場以外の場所で外部の講師や専門家を招いて行う研修・セミナーのことです最新の知識や専門的な知見が得られ、集中して実施することで高い学習効果が得られるというメリットがあります。

その反面、OJT研修のような実務経験に基づく知識やスキルを得ることはできません。OJT研修ではより実践的な知識やスキルを、Off-JT研修では一般的・体系的な知識を学習する、というように使い分けると良いでしょう。

OJT研修のメリット・デメリット

OJT研修にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。順番に見ていきましょう。

OJT研修のメリット

OJT研修には、以下のようなメリットがあります。

会社 ・教育にかけるコストを抑えられる
・効率的、かつ効果的な教育ができる
新入社員 ・わからないことをその場ですぐ聞ける
講師 ・成長につながる
・職場内コミュニケーションの活性化になる

OJT研修では社内で教育を行うため、教育にかけるコストは社内のリソースだけであり、外部に発注したり出張費を出したりするコストがかかりません。また、実践の中で学ぶことにより、マニュアル的な研修と比べて効率的・効果的な教育が行えます。教わる方も、実務の中で学ぶ方がイメージしやすいでしょう。

教える側のスキルアップや、職場内コミュニケーションの活性化につながりやすいのも、OJT研修の優れている点です。わからないことをその場ですぐ聞けるため、新入社員が戦力として育ちやすいのも、大きなメリットと言えます。

OJT研修のデメリット

一方で、OJT研修には以下のようなデメリットもあります。

会社 実務が滞る、生産性が一時的に下がるなどのリスクがある
新入社員 ・体系的に学びにくい
講師 ・教える側のスキルによって、効果に幅が生まれやすい
・負担が大きい

OJT研修は実務の中で学ぶため、マニュアル的に学ばないことがメリットでもありますが、反面、体系的にまとめて学ぶわけではないため、さまざまなことを「つまみ食い」のように学んでいかなくてはなりません。そのため、業務全体の理解、企業や業界全体の理解には時間がかかることもあります。

また、どうしても教える側のスキルによってOJT研修の効果に差が出てしまうこと、教える側のリソースが割かれるため負担が大きいこと、一時的に実務が滞りがちになることなどもデメリットとして挙げられます。特に、優秀なビジネスマンが優秀な講師とは限らないことに注意が必要です。

OJT研修の目的、重要性

ここでは、OJT研修の目的や重要性について、4つのポイントに分けてご紹介します。

①人材育成

OJT研修の最も大きな目的は、当然ながら人材育成です。新入社員には、今後、自社で働いてもらう人材となってもらわなくてはなりません。単に専門的な知識やスキルを持った人材になるというだけではなく、現場で使っているツールに慣れる、同僚や先輩、上司とのコミュニケーションに慣れるなども人材育成の一つです。

また、新入社員だけでなく、教える側のスキルアップもOJT研修の目的の一つに挙げられます。指導担当者だけでなく、別の部署の先輩社員や人事など、さまざまな人間が関わることで、企業全体としての人材育成につながるでしょう。

②新入社員の即戦力化

メリットでも触れましたが、実務の現場で直接業務内容について教えられることで、新入社員の即戦力化をはかれます。OJT研修では、集合研修とは異なり、個々のスキルに合ったスピードで学んでいけるほか、計画の変更や順番の入れ替えなども柔軟に対応でき、効率的かつ効果的な戦力化ができるでしょう。

そもそも、新入社員だけでなく社員のモチベーションをアップさせ、業務効率を上げるためには、信頼関係を築けている指導担当者からの具体的なフィードバックが非常に有効だと考えられています。OJT研修では、原則として1人の新入社員に1人の先輩担当社員がつき、適宜フィードバックを得ながら進んでいきます。そのため、すぐに成果を出せる社員へと成長しやすいのです。

③離職率の低下

OJT教育で1対1の指導やフィードバックを受けることで、新入社員が「親身になってもらえている」「自分のことを大切にされている」というイメージを持ちやすくなるのです。働く企業に対してこうしたポジティブなイメージを持てれば、帰属意識や貢献意識につながり、離職率の低下が期待されます。

④ノウハウを蓄積できる

OJT研修により、社内に新入社員指導のノウハウを蓄積できます。開始当初は担当の先輩社員自身も教えるのに慣れていないかもしれませんが、ある程度OJT研修が続いてくると、どんな研修に効果があり、どんなT研修が効果的でなかったかがわかってきます。それらのノウハウを蓄積し、「仕組み化」することで、より効果的な指導者のノウハウを他の指導者も流用できるようになり、将来的に会社の資産として活用できます。

効果的なOJT研修を行うための4つのステップ

OJT研修の効果をより高めるために、手順を4つのステップに分けてご紹介します。どこから始めれば良いか迷ったら、ぜひ参考にしてください。

ステップ①:Show(やってみせる)

Showとは、文字通りまず先輩社員が実際に業務をやってみせることです。実際の業務をまず見学することで、業務の流れを把握したり、どのように取り組めばいいかの手本を得たりできます。言葉で説明するだけでなく、実際の手順を見せることで、やり方のイメージもつかみやすくなるでしょう。指導する側もただ業務を行うのではなく、見られていることを意識しながら行うことで、業務のブラッシュアップにもつながります。

ステップ②:Tell(説明する)

やってみせた後は、細かい部分の説明をします。見ているだけでは何をしているのかわからなかった部分や、なぜこの業務をこのような手順で行っているのかなど、深い部分の背景まで教えることが重要です。また、教える側が一方的に解説するだけでなく、話した後には「これはどういう意味でしたか?」「ここではどうしましたか?」などちゃんと理解できたかを確認したり、「これを聞いてどう思いましたか?」「わからないことはありませんか?」など意思疎通をはかったりする質問をすると、より効果的でしょう。

ステップ③:Do(やらせてみる)

手順を見せ、その意味を解説したら、実際にやらせてみます。これが「Do」のステップで、先輩社員からすると1人でたどたどしく業務を行う様子はもどかしいかもしれませんが、これを乗り越えなくてはそもそも戦力になることができません。しっかり横について、どうしても必要なときは助言したり、手助けしたりしましょう。先輩社員は「失敗しても大丈夫」という姿勢を見せ、新入社員が安心して業務に取り組めるよう配慮することが大切です。

ステップ④:Check(評価・指導をする)

最後は「Check」の項目です。ここでは評価・指導を行いますが、フィードバックでネガティブな点だけを指摘するのではなく、できていたところとできていなかったところを両方伝えるようにしましょう。
最初に、できていたところはしっかり褒めると良いでしょう。新入社員は褒められることでポジティブな気持ちを持ち、次回以降も同じように頑張っていこうと思い、ネガティブな評価を受けた部分についても改善しようと前向きに取り組める姿勢が生まれやすくなります。

OJT研修を成功させる3つのポイント

OJT研修を成功させるためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。漠然と行うのではなく、ポイントをおさえることで、より効果的な研修が行えます。

明確な目標と計画を立てる

OJT研修を行うときは、明確な目標と計画を立てましょう、業務に必要なことを断片的に教えるのではなく、真っ先にできてもらえるようになってほしいこと、次にできるようになってほしいこと、最終的にどこまでできるようになってほしいか、といった段階に分け、目標や計画を立てることが重要です。また、立てた目標やトレーニングは指導担当者と新入社員だけが共有するのではなく、チームや人事など多くのメンバーで共有すると良いでしょう。

実施した後は、効果測定や反復を行う

OJT研修を実施した後は、どのくらいできるようになったのか効果を測定したり、反復的にトレーニングしたりする必要があります。効果測定を数値で行うのは難しいかもしれませんが、担当の先輩社員とロールプレイングを行ってみたり、手を貸さずに1人でどこまでできるようになったか見ていたりすると良いでしょう。反復的なトレーニングに関しては言うまでもありませんが、一度できたからとすぐに独り立ちさせるのではなく、何度か確認しながら徐々にトレーニングを終えていくようにしましょう。

指導担当者だけに任せず、組織全体で行う

目標の項目でも触れましたが、OJT研修を行うときは、指導担当者と新入社員だけに任せきりにするのではなく、組織全体で行うことが重要です。例えば、指導担当者以外にもヘルプ役を設けたり、チーム全体で話し合いの機会を設けるなどして、「指導担当者を1人きりにさせない」環境を作る必要があります。
指導担当者を上司が指名する場合でも、任せるというのではなく、指導担当者も含めてチームや組織全体としてサポートしていく姿勢を持ちましょう。

OJT研修の目的を理解して、効率よく実施

OJT研修は、Off-JT研修とは異なり、実際の業務を実地で学んでいけるため、コストを抑えながら効率的・効果的な業務理解ができます。一方、体系的な学びがしにくいことや教える側の負担が大きいことなどのデメリットもありますので、段階的な学びの計画を立てたり、指導担当者だけに任せきりにせずチームや組織全体でサポートする体制を整えたりするなど、デメリットを解消しながらうまくメリットを享受できるようなOJT研修を行いましょう。


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