オンライン講演を成功させるのに一番大切なものは何でしょうか?
著名な講師を呼ぶこと?
それとも整った環境で配信すること?
もちろん、それらも成功のポイントにはなりますが、一番重要なのは事前のリハーサルなのです。
リハーサルは、接続テストや顔合わせ以外にも、段取りの確認という作業が生じます。
この確認作業が当日のかじ取りを決めるのにとても重要です。
今回は、2月に開催したオンライン講演の事例をもとに、リハーサルの重要性と進め方のポイント、そして大変学びのあった川島隆太先生の講演内容もご紹介します。
自治体・医療福祉・公的団体・学校・PTA・教育委員会チーム
■目次
講師 : 川島隆太 氏
主催者 : S市教育委員会 様
開催日時 : 2022年2月中旬
講演時間 : 1時間30分
聴講者人数: 300人
講演タイプ: D.録画配信タイプ
配信ツール: Zoomミーティング+Vimeo
本案件の内容
本講演は、S市教育委員会様より市内のPTAや教員の方々を対象にした教育講演会を行いたいと、昨年(2021年)10月末にお問合せをいただいた案件です。昨年の10月頃は少しコロナの状況も落ち着いていたので、リアルでの開催を希望されていました。
講師は、「大人のドリル」「脳トレ」で有名な医学博士の川島隆太先生。SNSによるいじめやオンラインゲームの過剰な課金など、子どもたちとインターネットを巡る問題が顕著になる中、子どもたちのスマートフォンやインターネットの正しい利用の仕方について、脳科学の観点から新しい研究データをもとに講演してほしい、とのことで直接ご指名いただきました。
PTA対象者の講演に録画配信型をおすすめする理由
講師のスケジュールも確保でき、リアル開催で計画を進めていました。ところが、今年1月にオミクロン株の感染者数が急増し、まん延防止等重点措置が発令されました。そのため、急遽、1月末にオンラインへの切り替えを提案させていただきました。
オンライン講演には、ご周知の通り、大きく分けて以下の3つのやり方があります。
- ライブ配信…テレビの生中継のように、リアルタイムで配信する
- オンデマンド(録画)配信…収録したものを後にオンライン上で公開
- ハイブリッド配信… オンデマンド+リアル配信の併合型
私もこの2年ほどの間、何度も学校・PTAでのオンライン講演のサポートに入らせていただきました。その経験の中で、特にPTAの方々はさまざまな仕事をしている関係上、時間を合わせるのが難しいため、オンライン講演であれば各自好きな時間帯に視聴できる「オンデマンド(録画)配信」の方がより反応がよいこともわかっていました。そういった理由もあり、今回はオンライン講演の中でもオンデマンド配信をおすすめしました。
オンデマンド配信といっても、収録時には各学校約40箇所を中継でつないで、ライブ配信で収録し、後日、その収録動画を編集して公開、といった段取りだったので、ライブとオンデマンドのハイブリッド型といった方が正しいかもしれません。
オンライン講演への切り替えをご提案してから、主催者様の方でも調整され、数日で了解いただきました。主催者様も普段の業務でもZoomを使用していらっしゃり、オンラインへの抵抗は少ないようでした。とはいえ、主催者様はオンライン講演が初めてということもあり、収録から動画編集、後日配信まで弊社がサポートすることになりました。
また、講演動画は講師の著作権や肖像権に関わってくることから、オンデマンド配信の際は、特に講演動画の取り扱いには注意せねばなりません。そのような背景もあり、私がオンデマンド型のオンライン講演を担当する場合はできるだけ運営サポートに入るようにしています。
オンライン講演、リハーサルの重要性
弊社がオンライン講演のサポートをする際は、先方のオンライン経験の有無に関わらず、必ずリハーサルを行っています。今回は、開催日の10日程前にリハーサルを開催しました。リハーサルはタイミングも重要です。早いうちにやってしまうと内容を忘れてしまうし、近すぎても収録機器に問題がある場合に対応できません。ですので、10日~2週間前が最適なタイミングだと考えています。
リハーサルでは、接続テストや講師と主催者の顔合わせに加え、当日の段取りも確認します。今回のリハーサルは講師は参加されない形でしたので、特に当日の段取りを重点的に確認しました。
段取りの確認作業は、当日のイメージを持ちやすくするためにも大切な作業であり、仮に組み立てたタイムスケジュールを見ながら行います。スケジュールには、以下の項目が書かれています。
【タイムスケジュール】
- 主催役員の入室時間
- 講師の入室時間
- 聴講者の入室時間
- 開会式
- 講演開始時間
- 講演終了時間
- 質疑応答時間
- 閉会の時間
- アンケートの案内
【備考】
- ZoomのURL ID、パスワード
- オンデマンド配信のURL、期間、視聴用パスワード
仮スケジュールをもとに、ここではだれがどの時間でZoomに入室しするのか、オンライン画面上ではどのような感じで映し出されているのか、質疑応答ではどんな風に質問を受け付けるのか、Zoomでどんな操作をするのかなどを事細かくすり合わせていきます。話し合った内容や共有された情報はメモに残し、最終スケジュールを完成させます。
完成した最終スケジュールはあらためて主催者様に送ると共に、講師側にもお届けしてご説明します。
このリハーサルの段取りは、当日の流れをすり合わせ、接続トラブルや操作ミスなどを防ぐ上でも重要な前準備です。また、オンラインに苦手意識のある主催者様にとっては当日の流れをイメージしやすくなるため、不安も払拭できます。
ほんの30分程度ですが、やるのとやらないのとでは、当日の円滑な運営にも大きな影響してきます。そのため、弊社では特に運営前のリハーサルも重要視しており、今回の主催者様からも「事前にイメージできてよかった」との感想をいただきました。
当日の段取り
当日は、主催役員様と講師の川島先生の参加者管理を行うため、講演開始1時間前にZoom枠を開きました。講演開始時刻の30分前に主催役員様が、その10分後に川島先生が入室され、10分程度、顔合わせと当日の流れを軽く打ち合わせしました。
開始前10分前から一般の受講者の参加が始まったので、主催者様を共同ホストに設定して、受講者の参加者管理を行っていただきました。
私たち運営サポートスタッフはあくまで黒子役ですので、舞台に出ることはありません。私自身も以前に舞台監督をしていた経験がありますが、オンライン運営サポートも舞台運営と同じです。舞台監督をしていた頃は、仕込みして、劇団が入ってからリハーサルして、お客様を場内に入れて開演し、進めていく。そこから、公演が終わってカーテンコールがあって、最後にお客さんを出して、機材撤収してという一連の流れを仕切っていました。オンライン講演もこの流れに似ているので、この場面にはどんなことが必要なのかが感覚的にわかります。それを主催者様がお尋ねする前に受け答えするようにしていました。そのやりとりの中で、双方の信頼関係も生まれます。そのおかげで、主催様と上手く連携がとれ、当日は大きなトラブルもなくスムーズに進行することができました。
センセーショナルな講演内容
川島先生は現在、東北大学加齢医学研究所の所長を務めておられ、子どもたちの生活習慣が体と脳の発達にどのような影響を与えているかを長年研究されています。その研究成果を踏まえて、スマホやインターネットが子どもの脳に与える悪影響について講演されました。あまりにもセンセーショナルな内容だったので、一部をご紹介します。
インターネットコンテンツが脳の活動を低下させている
子どもたちの好きなコンテンツといえば、「YouTube」。子どもたちがYouTubeを見ながら大いに笑ったり、興奮している姿を見ていると、一見とても脳が活動しているかと思いがちです。
しかし、川島先生が様々な装置を使って、思考を司る前頭前野の活動を指標化したところ、YouTubeなどの動画視聴中は脳の活動が低下していることがわかりました。川島先生は上の画像を見せながら、解説されましたが、脳の活動がない場合は白色、活動している場合は赤色、「低下」している場合には青色で表示されるそうです。
YouTubeなどの動画を見ているときには、右も左も青色に表示され、脳の活動をしていない状態よりもさらに深い休眠状態になっていることがわかります。
それでは、メールなど言語活動をしているときはどうかといえば、こちらもまたほぼ白色を示しており、ほとんど活動していないことがわかります。
このことから、スマートフォンは脳の活動を低下させ、脳の発達を阻害していることがわかります。
次に、仙台市の教育委員会の協力で行った調査結果をもとに、スマホの使用時間と成績の相関関係を示した図表を映しました。こちらは、仙台市に住む小学校5年生から中学校3年生までの生徒・児童36,603人を対象とし、1日のスマホ使用時間が1時間未満の子どもと、1時間以上の子どもに分け、1日の平均勉強時間ごとに偏差値レベルを割り出したものです。
上の画像を見ていただけるとわかるように、スマホ使用時間が1時間未満で家で勉強を全くしない子どもの偏差値レベルは平均値(50)に達しているのに対し、スマホ使用時間が1時間以上の子どもは家で1~2時間勉強しないと平均の偏差値レベルに達しないことがわかっています。
3時間以上勉強する子どもたちの偏差値平均を見ると、スマホ使用時間1時間未満の子どもの偏差値レベルは57、1時間以上の子どもの偏差値レベルは52と、5ポイントも差があることがわかっています。
ご自身が研究調査したデータだけでなく、これまで他の研究者が行ったさまざまな研究も例に挙げて、スマホが子どもの脳に与える悪影響について説明されました。代表的な悪影響として以下のようなものがあります。
- 学業成績が下がる
- 言語性発達を遅延させる
- 睡眠不足になり、感情・認知機能・身体機能全般にわたり、悪影響を与える
これらの問題を提起した上で、今度は読書や辞書で調べるといったアナログな行為が、どれだけ脳活動を刺激し、子どもの脳の発達を促しているかについても、研究データをもとにお話しされました。
また、寝不足や朝食抜きにおける脳発達への阻害についても、脳の状態や調査結果をもとに解説していただきました。
どれも小中学生を持つ親御さんたちにとって興味ある内容ばかりで、皆さん真剣に聴講されていらっしゃいました。
さまざまな質問が飛び出た質疑応答
60分の講演時間の後に、20分の質疑応答がありました。質疑応答では、チャットや挙手などさまざまな機能が使えますが、今回はシンプルにビデオをオンにして手を挙げてもらうという形にしました。
「どんな本を読ませたらよいか」「eスポーツは脳の発達に悪影響を及ぼすのか」などさまざまな質問が出て、好評のうちに終わりました。
当日の臨場感が伝わるように動画を編集
講演の収録も滞りなく終わり、収録した動画を編集することになりました。編集作業では、無駄な部分をカットするだけではなく、当日の臨場感が伝わるように、質疑応答などではビューを変えて編集しています。例えば、質問者が川島先生に質問する時は質問者と川島先生2人の動画を並べて表示させたり、川島先生が答えるときには川島先生だけを表示させたり、というような具合です。
Zoomのクラウド録画では、話し手のみ、資料のみ、参加者全員、資料と講演者の4パターンのビューで録画された動画データがあり、それらを効果的に切り貼りしながら編集をしています。
また、編集作業は、収録直後に行うようにしています。どのビューを使うか考えながら収録に参加していますが、その記録が新しいうちにカット割りを行い、会場の臨場感に近いものにしたいと考えているからです。
お陰様で、後日、主催者様より「動画も見やすく編集していただき、ありがとうございました。オンデマンドの視聴者からも見やすいと好評でした。当日までの段取りをリードしていただいてとても助かりました。」と、お菓子とともにお礼状をいただきました。
普段はメールなどでお礼をいただくことはあっても、お礼状という形でいただくのは久しぶりでしたので、大変嬉しく思いました。
成功には三位一体の連携が必要
今回の講演は、主催者様と聴講者の方々の満足度がとても高く成功した案件の1つだと思います。
この成功は、弊社だけの力ではありません。主催者様と講師の川島先生のお力あってのものだと思っています。
当日の主催者様の進行はてきぱきとして素晴らしく、また川島先生の精密なデータに基づいた講演内容もとてもわかりやすく説得力のあるものでした。どれか一つでも欠けていたら、聴講者の皆さんが満足いく結果にならなかったと思います。この場を借りて、主催者様と川島先生にお礼申し上げます。
主催者様と講師、弊社の三位一体の連携こそが、今回の成功の鍵になったと考えています。今後とも、私たちチームは、主催者様と講師がスムーズに連携できるようにサポートし、心に残る講演を実現していきたいと思います。
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