どんなに技術が発展しても、ヒューマンエラーによって予期しない事故が起こってしまうことがあります。企業としては「信用問題に関わる」「社員の危険につながる」リスクがあるため、なんとしても防ぎたい大きな課題です。
この記事では、よくあるヒューマンエラーの原因と講じるべき対策について解説しています。
社員の皆様の安全を守るため、今日から活用いただける知識です。
ヒューマンエラーとは?簡単に紹介
はじめに、ヒューマンエラーの定義について、覚えておきましょう。
ヒューマンエラーの定義
ヒューマンエラーとは、人間の行動が起因となる失敗やミスのことです。
「人災」や「人為的ミス」とも、言い換えられることがあります。
人災は、災害の時に人為的ミスが重なることで、被害が拡大してしまった場面などで使われる言葉です。
逆を言えば、人為的ミスが時に大きな被害をもたらしてしまうことも、言葉の定義からわかります。
ヒューマンエラーの種類
ヒューマンエラーには2つのタイプがあるといわれます。
ひとつは「意図しない行動の結果で起こるエラー」、もうひとつは「意図した行動の結果で起こるエラー」です。
「意図しない行動の結果で起こるエラー」とは、うっかりから偶発的に起こってしまうエラーです。
疲労やストレスなどで注意力が散漫になることでも起こりやすくなります。
「意図した行動の結果で起こるエラー」とは、危ないとわかっている行動から起こるエラーです。
同じ作業を何度も経験したことがあるベテランのスタッフが、気の緩みから手を抜いてしまい起こるようなミスがあてはまります。
「マニュアルにはあるけど、普段は大丈夫だし面倒だから」という気持ちは、大きな事故につながりかねません。
どちらのタイプのエラーも、適切な対策で防ぐことができます。
ヒューマンエラーが発生する5つの原因と事例
ヒューマンエラーが発生する原因は、大きく分けて5つ考えられます。
5つの原因を把握し、対策すべき場面を考えましょう。
先入観や思い込み
先入観や思い込みによって、間違った方を正しいと認知してしまうミスが起こります。
経験の浅い新入社員に起こりやすいヒューマンエラーです。
無意識に決めつけで覚えてしまっているため、後から原因を考えるのが難しいことが特徴です。
例えば、
- クライアントによって納期が変わると知らなかった
- 前も問題なかったら今回問題ないと思い込み、点検・確認を省略した。
などのエラーです。
見落とし
見落としやチェック漏れから、正しい作業が実行されないエラーが起こります。
疲れている時や焦っている時などは、注意力が低下し、見落としによるミスが発生しやすくなります。
例えば、
- 記載されていた必要書類を見落とした
- 安全帯の留め具を付け忘れた
などが起こり得ます。
従業員の長時間労働や睡眠不足など身体状況に配慮し、チームの注意力を維持することも、ミスを防ぐための対策です。
知識不足
知識や経験の不足でも、ヒューマンエラーが起こります。
どんな事故につながるかも理解できていない場合は、特に大きなリスクがあります。
例えば、
- この動作・操作をすればどんな危険が起こるのか知らなかった
- 安全具の利用法を知らなかった
などのエラーです。
不慣れなうちは、ミスが起こっても差し支えない状況で、トレーニングを繰り返すことが大切です。
手抜き
一方、知識や経験があることに気を緩めてしまうことも、ヒューマンエラーの原因になります。
作業に慣れてきたからラクをしよう、という不純な気持ちから、ミスにつながります。
ベテランのスタッフだけでなく、仕事に慣れ初めてきた新人スタッフでも怒りやすいミスです。
例えば、
- マニュアルの指示を省略した
- ダブルチェックすべきところを一人でチェックして済ませた
などのエラーです。
伝達ミス
伝達ミスは、スタッフ間のコミュニケーション不足に起因して、エラーが起こる例です。
複数の人員や、異なる部署の担当者が関わるような場面で起こりやすくなります。
例えば、
- 完了報告が伝えられておらず、二度手間になった
- 前の担当者から注意点が伝達されていなかったために、事故が起こった。
などのエラーです。
伝達ミスを防ぐには、伝達の適切なタイミングと方法を、ルール化する必要があります。
社内SNSとメールとノート記入、など、伝達ツールが複雑なケースは要注意です。
ヒューマンエラーが多い人
前述の5つの原因から、ヒューマンエラーを起こしやすい人には、3つの傾向があるとわかります。
- 経験が浅い人
- 経験が多いために、慣れてしまっている人
- 疲労やストレスを抱えている人
これらを解決するためには、個々人の「メタ認知能力」を向上させることがおすすめです。
「メタ認知能力」とは、自分自身を客観的に認知する能力のことです。
メタ認知能力が高い人は、
- モニタリング(自分自身を観察する)機能
- コントロール(モニタリング結果から行動を制御する)機能
の2つに長けています。
例えば、「今日は疲れているから、普段以上に入念にチェックをしよう」など、自分自身の状況によって行動を切り替えられるのです。
メタ認知能力の向上は、モニタリング機能とコントロール機能について理解して意識するだけでも可能です。
経験が浅い、慣れてしまっている、疲労やストレスを抱えている、いずれのケースも、自分の状況を客観的に自覚し、行動をコントロールしようとする考え方を持つことで、ヒューマンエラー防止につながります。
ヒューマンエラーの対策おすすめ5選
ヒューマンエラーを防ぐには、どのような具体策を実行すればよいのでしょうか。
事故を未然に防ぐための対策を、5つ紹介しましょう。
過去のヒューマンエラーをリスト化
1つ目の対策として、職場によって起こりやすいミスに傾向があるため、過去に社内で発生したヒューマンエラーをすべてリストアップしましょう。
ポイントは、大きなエラーだけでなく、小さなエラーや、事故にならなかったものの危なかったことなども含めてリスト化することです。
そのひとつひとつに対し
- 考えられる原因
- 講じている対応策
- 対応策の効果
をまとめられていることが理想です。
一度起きた失敗は、同じ状況が起こる可能性があります。
ひとつひとつのエラーに対して着実にPDCAサイクルを回し、「失敗は成功のもと」にしましょう。
マニュアルを作る
2つ目の対策は、分かりやすいマニュアルを作成することです。
手順が口頭だけで伝えられていると、ヒューマンエラーが起こりやすくなります。
分かりやすいマニュアルの例をご紹介します。
・図や写真を用いた資料を作成する
初めて見た人にも伝えやすく、印象に残りやすいことがメリットです。
・動画でまとめる
視覚と聴覚から同時に情報を受け取ることができるため、記憶に残りやすいことに加え、繰り返しの学習もしやすいことがメリットです。
一度しっかりマニュアルを作成すれば、均一な指導のための資産になります。さらに、既に作業をこなしているスタッフにとっては、手順のばらつきやエラーの可能性に気付く機会にできます。
業務環境を根本的に見直す
3つ目の対策は、働く環境の見直しです。
そもそもの業務を見直しし、省略できる作業がないかを検証してみてください。
なぜなら、エラーを減らすためには、その手順自体がなくなることが最も効果的な手段であるためです。
慣例的に行っている業務を減らし、最も効率の良い方法を考えることで、根本的な業務改善を行いましょう。
スタッフの労働時間削減も同時に叶えられることで、ヒューマンエラー防止にもつながります。
安全教育を強化する
4つ目の対策は、安全教育の機会を設けることです。
スタッフ全員で、どんなことにどんな危険が起こりえるのかを定期的にアナウンスし、リスクリテラシーを向上させましょう。
例えば、安全大会を開催し、
- 起こりえる危険
- 危険要因に気付く方法
- 危険を回避する方法
について、解説することがおすすめです。
これらは、「危険予知トレーニング」として、さまざまな業種でワークショップに取り入れられています。
スタッフ同士のディスカッションで解決案を出し合うなども、リスクリテラシー向上に役立ちます。
ヒューマンエラーセミナーで現場の安全意識を向上する
5つ目の対策は、ヒューマンエラーセミナーの導入です。
安全管理のプロによるセミナーに参加し、新しい気付きに出会いませんか。
ここではヒューマンエラーを防止するための講演プランをご紹介します。
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