近年、エンタメ分野のみならず広告、教育、スポーツ、観光などさまざまな分野で活用されているVR。特に、建設業や製造業などの現場では、VRを用いた安全教育が注目を集めています。1年に1度開催される安全衛生大会でも導入する企業が増えています。
本記事では、VRを使った安全教育の必要性やメリット、具体的な事例、注意点を解説します。

VRとは

VRとは「Virtual Reality」の略で、日本語では「仮想現実」と訳されます。VRゴーグルなどのデバイスを装着することで、デジタル上に360度広がる仮想空間に没入でき、その中でさまざまな体験ができます。

例えば、仮想空間に観光地の映像を作ってその場にいながら旅行をする、VRの世界でスポーツをするなどが可能です。特に建設業や製造業では、VRを使って実際に危険な状況を再現することできるため、近年安全教育にも積極的に導入されています。

VR安全教育とは

VR安全教育とは、前述のように仮想空間の中で労働災害やそれにつながりやすい状況を体験し、安全に関する意識を高めるための教育を指します。

例えば、高所からの落下や旋盤巻き込まれなどは、座学や2D動画ではなかなかその危険性を理解しにくいものです。しかし、VRなら仮想空間に没入し、現実では安全な部屋の中で危険な状況を疑似体験できるため、従業員の安全性を保ちながら、より危険に対する意識を高められます。体験として学んだことは、とっさのときに思い出しやすいでしょう。

VR安全教育のメリット

VR安全教育には、以下の4つのメリットが考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

擬似体験ができる

VR安全教育の最大のメリットとして、重大事故の擬似体験ができることです。高所作業中の落下、機械への巻き込まれ、火災や地震などの危険を伴う事故の場合、研修で実際に経験するというわけにいきません。これまでは座学や動画で学習していたのですが、これらはどうしても受動的なため、無意識的な部分にまで直接訴えかけることができませんでした。

しかし、VR安全教育なら、仮想空間に没入することで現実の安全を保ちながら、実際に近い擬似体験ができます。そのため、知識として理解するのではなく、自分の体感として事故を学ぶことができ、座学や動画より学習効果が高いという大きなメリットがあります。

時間や場所を選ばない

VR安全教育は、実地での研修とは異なり、時間や場所を選びません。ゴーグルをつけるだけで擬似体験ができるため、何人ものスケジュールを合わせたり会場をおさえたりする必要がなく、コスト削減につながります。日中や夜間など時間が限られた研修も、仮想空間ならいつでも実施が可能です。

また、このように個別に研修を行えれば、業務をストップして一斉に行う必要がなく、日常業務を進めながら安全教育を行えます。そのため、24時間365日いつでも使える効率の良い研修ツールとして活用できるでしょう。

能動的な体験ができる

座学や動画による安全教育の大きなデメリットは、受講者が受動的になりやすいということです。受講者が受け身であるために学んだ知識をすぐに忘れてしまったり、スキルが定着しづらかったりするため、実際の現場のとっさのときに活用できなかったということもよく聞かれます。

しかし、VR安全教育なら、座学や動画と比べて、360度の立体的な映像で受講者自らが見たい箇所を選択し、能動的に学ぶことができます。危険を感じたときの反応、見え方をリアルに体験できるため、危機意識が高まり、「こういうときにはどうすればいいか」を実践的に学べます。

安全大会で取り入れることでより安全意識向上が図れる

VR安全教育は、建設業や製造業界の安全大会で使うのも効果的です。
実際に、安全大会で導入できるサービスを提供する企業も出てきました。

安全大会とは、建設業や工事現場で働く労働者に対して安全衛生に関する意識を高め、労働災害を防ごうという働きかけの集会です。安全大会でVR安全教育を取り入れることで、より多くの労働者が実践的な安全教育を受けられるため、安全衛生に関する意識を全体的に底上げできるでしょう。

VR安全教育のコンテンツサービス4選

ここでは、VR安全教育のコンテンツを提供するサービスを4つご紹介します。

①明電舎

明電舎では、安全体感教育サービスの一環として「VR安全体感教育」を提供しています。数多くの場面を想定した安全体感コンテンツを用意し、コンテンツの販売はもちろん、貸し出しにも対応しています。特に、目で見て感じるだけでなく実際に装置自身が動くため、よりリアルに事故や災害を体感できるのが大きな特徴です。

また、明電舎では、中央労働災害防止協会(中災防)と共同開発し、コンテンツ内容のラインナップを強化しています。中災防がさまざまな業種における労働災害発生のシナリオ作成を担当し、明電舎がVRコンテンツを製作。第一弾として「ロール機への巻き込まれ」を皮切りに、今後は「クレーンによる挟まれ」「フォークリフトによる激突」など、起こりやすい労働災害に沿ったコンテンツをリリース予定です。

料金:要問合せ

②凸版印刷株式会社

凸版印刷株式会社では、実際に現場で起こりうる7つの労働災害を再現した「安全道場VR」を提供しています。含まれるのは「カッター作業」「機械回転部作業」「高所作業」「エアーブロー清掃」「可燃性溶剤火災」「機械点検」「稼働機械清掃」のコンテンツで、いずれも製造業の現場で日常的に起こりやすい労働災害を切り取っています。3Dポリゴンの映像ではなく、実際の映像を使っているため、より臨場感に満ちた疑似体験ができるでしょう。

料金:要問合せ

③株式会社 積木制作

株式会社 積木制作では、160社以上の導入実績を持つ「安全体感VRトレーニング」を提供しています。パッケージ内に同梱されているコンテンツには「車両基地内における危険体験」「建設現場における重機災害体験」「脚立作業の危険性」などがあり、主に建設業で起こりやすい労働災害を取り扱っています。

コンテンツは英語や中国語にも対応しているため、グローバル人材の教育にも対応。定額(サブスクリプション)、買い取り、レンタルと3つの販売形態があり、ニーズに合わせたコンテンツの導入ができます。

料金:定額制 6カ月・1ライセンス616,000円、1年・1ライセンス1,012,000円
レンタル1台38,500円〜 ※全て税込み

④ミドリ安全

ミドリ安全では、VRを活用した安全教育システム「RiMM」を提供しています。RiMMはVRゴーグルに加えて触覚を再現するグローブ、振動や風圧を再現する装置を備え、労働災害の状況をより高い再現性で擬似体験できます。

パッケージ内容に含まれるコンテンツには「墜落・転落」「感電事故」「ベルトコンベア挟まれ」「フォークリフト事故」「交通事故」などがあり、いずれも生命に関わる事故です。VR機器を使うことで、事故の危険性を安全な状態で体験できます。

料金:要問合せ

VR安全教育導入の注意点

最後に、VR安全教育を導入する際の注意点を2つご紹介します。

体験に時間がかかる

VR安全教育の大きなメリットとして、360度の広い視野と圧倒的な情報量を活かし、能動的に学べるというものがあります。しかし、能動学習を行うということは、情報量が限られている座学や動画と比べると、どうしても時間がかかってしまいます。VR安全教育を行う際には、ある程度の時間がかかることを念頭に置き、座学や動画で学ぶ場合よりも長い時間をとって、受講者が十分に学びを得られるようにするとよいでしょう。

VR酔いが起こる可能性がある

VRというシステムの性質上、映像を立体的に見せる「視差」の影響によって、人によってはVR酔いを起こす可能性があります。乗り物酔いのような症状が出るのが特徴で、仮想空間に没入している間や没入後、不快に感じることも考えられます。長時間の体験になりすぎないよう考慮したり、途中で休憩を挟んだりするなどして、無理なく学習できるようにしましょう。どうしても辛い場合は、VRゴーグルではなくパソコンやスマートフォンの画面で学習する方法もあります。

システムブレーンでは安全教育をサポートしています!

安全講習や安全大会の講師派遣サービスを行うシステムブレーンは、安全教育を全面でサポートしています。
VR安全教育で得た知識をさらに定着化させるために、安全教育のプロによる安全講習や研修もサポートしています。業界や安全の観点に沿った講師をご紹介できますので、お気軽に弊社までお問合せください。

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