めまぐるしいIT技術の進歩に伴い、DXは今やすべての業界で避けて通れないものとなりました。
DX推進の鍵はIT人材の確保と社員個々のスキルアップにあります。今回はDX研修で学ぶべき内容やおすすめのテーマ、さらに研修成功のためのポイントを解説します。
いま企業にDX推進が必要な理由
研修を企画する前に、なぜ今DXを推し進める必要があるのかを理解しておきましょう。ここではDXの概念と、DXをとり巻く現状を解説します。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何か
DXとはデジタル・トランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を活用してビジネスや社会に変革を起こすことを指します。ポイントは、ただデジタル技術を取り入れるだけでなく、業務のフローや組織体制そのものを見直し、改善することです。
現在ではAIやIoT、クラウドコンピューティングなどの新しい技術が次々と生まれています。それに対応できる企業組織では、新しい価値観やビジネスモデルを創出できるでしょう。
いまなぜ企業にDX推進が必要か
近年、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。技術の進歩に伴う競争の激化、国際情勢、さらには働き方の多様化や消費者行動の変化もめまぐるしい動きを見せています。
このような状況に対応するには、各企業も従来のやり方を見直さなくてはなりません。これまでは管理職やベテラン社員の経験や直感に頼って方針を決定していたとしても、現在はデータの分析に基づく、より合理的な判断が求められます。あるいは各部署で個別に管理していた顧客情報などを情報管理ツールによって統括し、全社で有効活用するといった工夫も必要でしょう。
国内の各企業はDXによってイノベーションを起こし、スピード感を持って成長戦略を展開する必要があるのです。
経済産業省が報告した「2025年の崖」問題
経済産業省は2018年の「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」の中で、「2025年の崖」という表現を用いて、日本の産業界が2025年までに直面する危機的状況について報告しました。
国内の企業の過半数が古い情報システムに依存しており、そのためにデジタル技術を活用した世界的な変革に遅れをとるというリスクを指摘しています。この問題を乗り越えるためには、各企業がDXを推進し、新しいデジタル技術に基づくシステムに移行する必要があるのです。
企業のDX化がなかなか進まない3つの要因
しかし、現状国内の企業のDX化は思うように進んではいません。その要因として以下の3つが考えられます。
経営陣に戦略的ビジョンが不足しているから
組織全体のDX化には、まずトップである経営陣が目的や方向性を示さなくてはなりません。しかし実際には、多くの企業で経営陣に戦略的ビジョンが不足しています。
そもそも経営陣がDXの意義や必要性を理解していないケースも多く、そのような組織ではDX化の取組みも形骸化しています。
投資資金が不足しているから
DX化を推進するためには、デジタル技術やサービスの導入、人材の育成に多額のコストがかかりますが、それに見合う投資が後回しになっていることも問題です。
DX化には長期的な視野が必要なため、目先の課題解決のための投資よりも優先順位が下がる傾向にあります。しかし十分な資金がなくては必要なサービスやシステムを導入することはできません。
人材やスキルが不足しているから
DXの推進には、社内に高いレベルのITスキルを持った人材が必要です。しかし現在IT人材は企業間で獲得競争が激化しており、採用は容易ではありません。
また社内の人材を育成してスキルを身に付けさせるにも成果はすぐには上がらないため、DX化が進まない一因となっています。
DX研修の必要性とメリット
企業のDX化を進めるためには、やはり経営者や管理職、社員がDXについて学び、社内にDX導入の機運を熟成する必要があります。そのためには、DX研修が手っ取り早く、また社外の専門家を呼ぶことで、最新のDX事情と自社での活用のヒントが得られます。
DX研修を導入することで、以下のようなメリットがあります。
①DX人材の確保
前述したように今、日本ではDX人材の不足が問題視されています。DXを急激に推進している企業もあれば、旧態依然のやり方で時代の波に取り残されている企業もあります。市場ではDX人材が不足しているため、社内でDX人材を育成することが最善策と考えられます。そのために、最も有効な方法がDX研修です。
DX研修は1回開催して終わりというものではなく、長期スパンで何回かに分けて開催します。DX研修で、社員が体系的にDXの知識やスキルを学び、最終的に自社でどのようにDXを活用すべきか考えられる人材になります。
➁DX導入による生産性の向上やイノベーションの推進
DX研修により、社員がDXを活用できるようになれば、事務処理や顧客管理、資料作成、作業計画等、これまで手を煩わせた社内業務がデジタル化・最適化され、社内の生産性向上が期待できます。
また、DX研修では新しい技術や最新の活用事例を学びますが、そこから新たなビジネスの発想やアイデアが生まれることもあります。既存の枠にとらわれない新しい発想力がつき、社内にイノベーションの機運をもたらしてくれるでしょう。
③BCP(事業継続計画)の改善によるリスク回避
DX研修では、DXを活用したBCP(事業継続計画)の立て方も学びます。BCPとは、自然災害やシステム障害等、万が一の事態が発生した際に、リスクを回避させ、事業の早期復興させるための計画のことです。DXにより、社内データをクラウド上に残し、社員が遠隔地からも仕事できる体制や業務の自動化を推進することで、リスクを分散させ、もしもの際にも早急な復旧が見込めます。また、DXで業務をデジタル化することにより、ヒューマンエラーも格段に減らすことができます。
④事業の効率化によるコスト削減
DX導入で社内業務がオートメーション化されることで、そこにかけていた人件費やコストを浮かすことができます。また、これまでの社内業務を可視化できるようになるので、無駄な業務を省略にもなり、結果コスト削減につながります。
⑤働き改革にも貢献
DXによる業務の効率化により、社員の残業時間を大幅に減らすことができます。また、DX研修では、リモートワークで必要となるスキルも学びます。リモートワークの実現は、育児や介護等でこれまで辞めざるを得ない社員に対しても働き続けるという選択肢を与えることになり、さまざまな働き方を推進するきっかけにもなります。
DX研修のおすすめテーマ、学べるスキルの一例
それではDX研修ではどんなスキルが身に付くのかテーマの一例を具体的に見ていきましょう。
1.基礎知識とITリテラシー
社内のDXに着手するには、まず業務関係者全員が基礎知識とITリテラシーを身に付ける必要があります。
DXの基本的な概念や用語の理解、さらにデジタル技術を正しく使う重要性知らなくてはなりません。また知識不足のままデジタル技術を用いたサービスを導入すると情報流出など思いがけないトラブルを招く可能性もあります。そうした事例を伝えたうえで、個人のリテラシーを向上させて組織全体の生産性を上げるという目的を周知することも大切です。
2.AIやIoT、クラウドなど先進技術についての知見
基礎的な内容を理解したうえで、実際にDXで活用する先進技術についても学びます。これからのDX研修では、AIやIoT、クラウドについての知識の習得は必須といえるでしょう。
AIは自ら学習し、その経験を次回のアクションに反映することができる人工知能のことです。IoTの技術は身の周りのあらゆるモノをインタネートに接続し、デジタル社会を実現するのに役立ちます。また現在ではクラウドによって、インターネットに接続するだけで様々なサービスを手軽に利用できるようになりました。これらの先進技術は、すでに自動車の自動運転やロボット家電、オンラインショッピングなどで一般消費者の生活にも浸透しつつあります。
こうした最新の技術をキャッチアップし、社内のDX化を進められる人材を育成することも、DX研修の狙いです。
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3.プロジェクトマネジメントスキル
DXに関するプロジェクトには必ずプロジェクトマネージャー(PM)の存在が必要となり、DXでは社内にPMとしての能力を備えた人材を確保しておくことが重要です。
PMには、与えられた予算や人員などのリソースをうまく管理し、スケジュールどおりに目標を達成する能力が求められます。プロジェクト管理には専用ツールを使用することもできますが、PMにはそれ以外にも関係者との交渉・調整を行うコミュニケーション能力が必須です。
DX研修では参加者がこれらのスキルを身に付けられるようにし、PMとして活躍できる人材も育成します。
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4.データサイエンスの知識
DXではデータサイエンスの知識も求められます。データサイエンスとは、収集されたデータを分析・解析し、そこから有益な洞察や新しいアイデアを生み出すアプローチのことです。
現在はインターネットの普及によって、瞬時に膨大な量の情報が集められるようになりました。それらのビッグデータを活用して、新たなビジネスモデルの構築を行ったり、業務の効率化の手段を考えたりすることは、企業のDX化にとっても有効です。DX研修ではデータ分析のスキルの習得も期待できます。
DX研修を成功させるポイント
ただ研修を実施するだけでは、社内にDXを根付かせることはできません。優秀なDX人材を育成するためのポイントを解説します。
研修の効果を高めるためには準備が必要
研修の効果を最大限にするためには、事前の準備が必要です。まずは各部署・各従業員のIT技術に関する理解度を把握しなくてはなりません。そのために全社でアンケートやテストを実施する場合もあります。研修内容はその結果に基づいて、それぞれのレベルに合わせたものを企画しましょう。
また実施の前に、参加メンバーには研修の目的や目標を共有することも大切です。研修の意図が理解できれば、それぞれがより意欲的に学ぶことが期待できます。
フォローと組織づくりも重要
研修の効果を持続させるために、その後のフォローや組織作りも重要です。まずは参加者に学習効果や満足を感じてもらうために、研修後の評価やフィードバックを行いましょう。
そして研修参加の熱意が冷めないうちに、身に付けた知識やスキルを実践する機会を設けなくてはなりません。研修実施から間を置かず、現場にAIなどの最新技術のサービスを導入したり、今度は研修参加者が中心となってその使い方を教える講習会を開いたりするなど、アウトプットの場を設けましょう。
こうしたフォローを一時的なものにしないために、組織づくりに取り組むことも大切です。DX推進プロジェクトを立ち上げ、世代を問わず専門知識に長けた人材を責任者として任命すれば、社内のDXの意識も次第に高まるでしょう。
企業ニーズや達成したい難易度に合う研修を選ぶ
研修は人気のプランであればどれでもよいわけではありません。自社の課題やレベルに適したものを選ぶ必要があります。
例えばすでにIT技術に関する実践的な知識を備えた人材に対して、初心者向けの基礎的な内容の研修を実施しても効果は得られないでしょう。反対に難易度が高すぎる研修は、受講者のモチベーションを低下させるおそれもあります。社内の現状を把握し、目標を設定したうえで、それを達成するのに最適な研修を選びましょう。
公的な補助金・助成金を活用する
DX化やDX研修を実施する予算がないという企業には、公的な補助金あるいは助成金を利用するという選択肢もあります。
中小企業・小規模事業者を対象とした「IT補助金」がよく知られています。また「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という制度にもデジタル枠があり、DX化に必要な設備やシステムへの投資を対象にしています。
また自治体単位で独自に支援制度を設けている場合もあります。一例として東京都には「DXリスキリング助成金」の制度があります。
これらの制度を上手に活用し、コストを抑えつつDXを実現しましょう。
研修を社内DX人材育成につなげよう
研修は社内のDX化のスタートラインに過ぎません。DX化には育成したIT人材が活躍できる組織風土づくりや経営陣の意識改革も必要です。
まずは研修を成功させるため、入念な準備と企画を行いましょう。どのような研修を実施するかは、各社の目標やレベルに合っているかという観点が大切です。また研修成果を根付かせるための組織体制づくりを並行して進めておくことで、より大きな効果が見込めます。
弊社ではDXに対応できるさまざまな分野の講師をご紹介しています。DX研修にご興味を持たれた方はお気軽にお問い合わせください。
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