社員のコミュニケーションスキルの高さに課題を感じる企業も多いのではないでしょうか。この記事では、組織力の強化のために本当に必要なコミュニケーションスキルとは何か、その種類や高め方を解説します。

目次

コミュニケーションスキルの基本

そもそも、コミュニケーションスキルとは何なのでしょうか。「情報伝達能力」との違いにも触れながら解説します。

ビジネスで本当に重要なコミュニケーションスキルとは

コミュニケーションスキルとは、単に「話す技術」だけを指すのではなく、「相手に情報や感情を効果的に伝え、相手と理解し合うための技術や能力」のことを表します。

主なコミュニケーションスキルには以下の3つがあります。

1つ目は「伝える能力」。自分の言いたいことを正確に相手に伝える技術です。

2つ目の「受け取る能力」は、相手が伝えようとしていることを、質問なども行いながら理解するスキルです。

3つ目は「非言語コミュニケーション能力」で、いわゆる「空気を読む」といった、相手の声のトーンや、表情など言葉からは得られない情報から読み取る能力です。

コミュニケーション能力と情報伝達能力との違い

では、コミュニケーション能力と情報伝達能力との違いはどこにあるのでしょうか。この2つの言葉はしばしば混同されがちですが、厳密には異なります。

情報伝達は単に「事実」を伝えるものです。一方コミュニケーションでは、その事柄の「背景や理由」に加え、それを受け止めた際の「感情」を含みます

他者とコミュニケーションを円滑に進めるには、相手の感情や立場に配慮することが大切です。

コミュニケーション能力は誰でも習得可能

コミュニケーション能力の高い人・低い人が存在するのは事実です。

しかし、「コミュニケーション能力」は、持って生まれた才能やセンスで決まるのではありません。誰でも後天的に習得可能なスキルといえます。

組織が高い職場にはコミュニケーションスキルの高い人材が多い

ではなぜ、「コミュニケーションスキルの高い人材が多い職場は、組織力も高い」と言われるのでしょうか。能力の高い人・低い人の特徴の違いから、ひもといていきましょう。

コミュニケーションスキルが高い人の特徴

コミュニケーションスキルの高い人は、相手の話をしっかり聞き、共感を示すことが得意です。

1対1の会話では、自分が話すのは4~6割程度で、あとは相手に話してもらうようにするので、相手にも不満が残りにくいでしょう。これは「ピンポンルール」と呼ばれる会話術の1つです。

そして自分の意見を分かりやすく伝えながら、相手の立場や感情を考慮し、柔軟に対応します。質問を通じて会話を深め、誤解が生じないように意思疎通ができます。

さらに相手の非言語的なサイン(表情や態度)にも敏感で、心情を察知して対応ができるため、短い時間のやりとりでも相手は信頼感を抱きやすいでしょう。

コミュニケーションスキルが低い人の特徴

一方で、コミュニケーションスキルの低い人にはどんな特徴があるのでしょうか。

コミュニケーションスキルが低い人は、相手の話を十分に聞かず、一方的に自分の意見を押し付けがちです。共感や理解を示すことが少なく、相手の感情や立場を考慮しないため、誤解や摩擦を生みやすいでしょう。

また表情や態度など、非言語的なサインに気が付きません。相手の細かな反応を無視してしまうことが多いので、むしろ「この人に話して本当に大丈夫だろうか」という不安を抱かせます。

コミュニケーションスキルに優れた人材が多い職場は組織力が高い

コミュニケーションスキルに優れた人材が多い職場は、組織力が高くなります。情報共有や社員同士の連携がスムーズに進むので、問題も迅速に解決できるでしょう。

自分の役割や目標を明確に認識できるので、一人ひとりのモチベーションが高くなります。さらに、日々のやりとりを通じて信頼関係が深まれば、「チームに貢献したい」という意識が高まり、チーム内の協力体制も強化されます。
その結果社員個人の生産性がアップするだけでなく、離職率の低下など、組織全体のパフォーマンスも改善されます。

コミュニケーションスキルの種類

続いては、社員に身につけさせたい3つのコミュニケーションスキルについてそれぞれ解説します。

1.バーバル(言語的)コミュニケーション能力

「バーバル(言語的)コミュニケーション能力」は、会話やメールなど、言語を使って情報を伝えるスキルのことです。

対面や電話であれば音声言語、印刷物やチャットであれば文字言語です。

文字として残る議事録などの資料作成にも、この能力が不可欠です。

2.ノンバーバル(非言語的)コミュニケーション能力

「ノンバーバル(非言語的)コミュニケーション能力」とは、表情や身ぶり、姿勢など言葉以外の手段で感情や意図を伝える力のことです。

面接や商談、会議といったシーンでは言語情報以上に印象を左右することがあるため、ビジネスにおいても軽視できません。

3.人の話を聞く力・傾聴力(アクティブリスニング)

傾聴力(アクティブリスニング)は、相手の話に集中し、表情や声のトーンにまで気を配り、共感しながら理解しようと努める力のことを指します。

顧客への提案やクレーム対応などの場面でも、大きな役割を果たします。

社内のコミュニケーションスキルを底上げするメリット

続いて社内のコミュニケーションスキルを底上げするメリットについて、5つの観点から紹介しましょう。

①生産性アップ・業務効率化

コミュニケーションスキルの水準が上がると、組織全体の生産性がアップします。

情報交換や意思疎通において特に問題が起こらなければ、業務の進行がスムーズになり、再確認や軌道修正のための時間が不要になります。結果として会社全体の生産性が改善され、業務の効率化に寄与するでしょう。

一方でコミュニケーション能力が低い職場では、社員同士の連携が取りにくく、1つ1つの作業にかかるコストも多くなります。またミスが起こりやすくなったり、フォローのための残業が発生したりします。

②離職率の低下

離職率が下がるのも大きなメリットの1つです。

例えば上司のコミュニケーションスキルが上がると、部下へのフィードバックの効果が上がります。定期的なフィードバックを通じて部下の自己肯定感を高めれば、部下はそこで働きつづける意欲を失いません。

また、オープンなコミュニケーション環境で社員が要望や不満を表明しやすくなります。上司がそれを把握しやすい風土になれば、社内全体のストレス軽減につながります。

良好な人間関係は成長意欲や会社への帰属意識を高めます。したがってコミュニケーション能力は、離職率の低下にも一役買うでしょう。

③顧客満足度向上

顧客コミュニケーションにおいても質が高まるので、顧客満足度が向上するでしょう。

一方的な押し付けではなく、顧客や取引先の事情や内心にも配慮した、率直な意見交換が可能になります。相手の要求に合った提案がしやすくなるほか、潜在ニーズもくみ取れるようになるでしょう。

さらにブランドイメージ強化にもつながります。例えば企業の明快でブレないコミュニケーションについて、広告や企業の公式SNSなどから、消費者が好感を持つことも珍しくありません。

④イノベーションやアイディアの創発

イノベーションが生まれる組織は、コミュニケーションに優れた社員を多数擁している可能性が高いです。

社内のコミュニケーションスキルを鍛えることで、社員が自由に意見を交換しやすくなり、さまざまな意見や革新的なアイディアの流通が促進されます。

また、出された多様な意見を受け入れることで新しい視点が生まれ、組織全体の創造性が高まります。

⑤リスク回避、労働災害の抑止

加えて、工場や建設現場などでは、リスク回避、労働災害の抑止にも有効です。

労災事故には、事前のコミュニケーションを取っていれば防げた事例も多くあります。

現場でのコミュニケーションの質が上がると、チーム内での適切な声掛けや、問題点の共有がされやすくなります。危険を未然に防ぐことにもつながるでしょう。

コミュニケーションスキル向上で実現する現場の変化

これまでは組織のメリットに焦点を当ててきました。では、コミュニケーションスキルを向上させることで、現場にはどのような変化が生まれるのでしょうか。3つ紹介します。

社内の報連相・情報共有の円滑化

仕事においては、こまめな「報連相」や情報の共有が重要なのは、いうまでもありません。

コミュニケーションスキルが底上げされることで、現場では報連相から変わります。社員間の会話が増えれば、チーム全体で把握できる情報の量も増えるでしょう。持っている情報が増えると、困りごとに対して打てる手も増えるのです。

プロジェクトの進捗を報告する際も、担当者が簡潔かつ的確に現状の問題点を伝えられると、上司や同僚によるフォローのスピードが上がります。

プレゼンテーションの品質向上

プレゼンテーションにおいても、成果が出やすくなるでしょう。

例えば提案書を作成する際には、相手のニーズや背景を十分に加味したうえで、それを満たす自社のサービスのバリエーションを、分かりやすく伝えられます。

また当日は身なりにも気を配り、現場で質問に手際よく応答することで、相手には「この人に任せてもよさそうだ」という安心感が芽生えます。その結果、商談の成約にもつながるでしょう。

顧客への折衝・交渉力アップ

顧客との折衝や交渉は、特に高度なコミュニケーション能力が試される場面です。

両者の要求が折り合わなかったときは一般的に、「相手が絶対に守りたいライン」を見極めて妥協案を提示します。相手が上司などからプレッシャーをかけられている場合もあるでしょう。

言葉や表情から相手の要望や状況を正確に把握するのも、コミュニケーションスキルの一部です。

社員のコミュニケーションスキルを鍛える3つの方法

最後に、社員のコミュニケーションスキルを鍛える3つの方法について説明します。

方法1.研修やセミナーなどの機会を提供する

研修やセミナーは、社員が自らのコミュニケーションの課題に気づくのによい機会となります。

研修には自社に講師を招く形で実施したり、外部で開催されているセミナーを受講してもらったりする方法があります。

声のトーンや話すときのスピードなどのほか、身ぶり手振りを交えた伝え方や、表情に至るまで、コミュニケーションの専門家からスキルを学ぶと高い効果が期待できま

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方法2.アクティブリスニングを日常的に実践させる

アクティブリスニングを日常的に実践することも有効です。日々の業務の中で、相手の話に耳を傾け、意図や感情まで把握するのを意識しましょう。

相手の話に対してうなずきや質問を交え、共感を示すことが重要です。この方法により、コミュニケーションスキルが向上し、職場での円滑な意思疎通が促進されます。

方法3.チームでのロールプレイによるトレーニングを実施

練習としてチームでロールプレイに取り組むのも、一定の効果が見込める方法です。

ロールプレイとは、ある役割を自分が演じて、その人になりきって会話などの練習をすることを指します。

チーム全体で取り組むことで、異なる視点からの意見を知る機会となり、相手の立場に立って考える力が養われます。また自分が評価者となり他者のコミュニケーションを見る経験は、自分の考え方ややり方の振り返りにつながります。

チーム全体で、社内連携や営業活動のあり方を見直すよいきっかけにもなるでしょう。

組織力を底上げするには、コミュニケーションスキルの向上が必要不可欠です。

コミュニケーションスキルを磨く方法はさまざまですが、実践的なスキルの習得にはやはりプロの講師による指導が効果的です。
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