コロナ禍が終息して3年が経ち、オンライン講演・ウェビナー形式は多くの業界ですっかり定着しました。その中でも、特に人気が高いのがアーカイブ型の講演です。時間や場所に縛られることなく、視聴者が自分のペースで学べるのが大きな魅力です。
今回の講演は、エネルギー関連企業様が主催し、販売代理店向けに3年間継続して開催しているアーカイブ型オンライン講演の一環として実施されました。
講師は、人材育成の分野で人気の高い大久保雅士氏。「心を動かすリーダーの秘訣」をテーマに、部下やスタッフが自発的に動くためのリーダーシップスキルを解説しました。アーカイブ配信と、大久保雅士氏の講演の魅力に迫ります。
建設業・製造業・情報通信業 担当 仲栄真 玲
~悩めるリーダー必⾒!部下やスタッフが活き活き動く!~
講師 : 大久保雅士 氏
主催者 : Mエネルギー関連会社 様
開催日時 : 2024年11月中旬
講演時間 : 110分
聴講者人数: 約200名
講演タイプ: アーカイブ(オンデマンド)配信
3年間続くアーカイブ型講演の取り組み
今回の主催者様は、エネルギー関連企業。毎年、LPガスの販売代理店様を対象にアーカイブ型オンライン形式でオンライン講演をご提供させて頂いております。
アーカイブ配信の最大のメリットは、参加者の方が時間や場所に縛られることなく、いつでもどこでも視聴できること。繰り返し視聴できるので、反復学習に大変効果の高い方式です。また、主催者様にとっても、参加者のスケジュールに左右されないため、安定した形式で講演を提供できるというメリットがあります。
アーカイブ配信は、忙しい販売代理店様にとっても、学びやすい手段であるため、同社では、2021年からこの形式を導入されており、弊社の運営サポートをご利用いただいております。
今回も2024年8月頃にオンライン講演のご相談が来ました。
当初、主催者からは「脱炭素」「経営」「人材育成」の3つのテーマ案が提示されましたが、最終的に「人材育成」が選ばれました。この選定の背景には、業界全体で人材不足が深刻化している現状があり、より具体的で実践的な内容が求められたことが挙げられます。
講師には、大久保雅士氏を起用。第一生命での営業管理職としての経験を持つだけでなく、メンタリスト日本チャンピオンという異色の経歴が主催者様の目に留まったようでした。テーマも「心を動かすリーダーの秘訣」に決まり、部下育成やリーダーシップに特化した講演内容となりました。
講演は10月下旬に撮影し、翌月中旬から10日間、動画配信ツール「Vimeo」で会員様向けに限定公開されました。
成功の鍵は緻密な計画と連携
今回の講演を成功させるためには、主催者様、講師、弊社スタッフが一丸となって計画を進め、アーカイブ配信ならではの課題を解決することが重要でした。一度収録が完了すると修正が利かないアーカイブ形式では、事前準備の徹底が求められます。
2021年に初めてこの形式をサポートさせて頂いた際には多くの試行錯誤を経て、ひな形を作り上げました。初年度は収録や編集の手順を確立するまでに時間がかかりましたが、その経験が現在のスムーズな運営に生かされています。
以下は、今回の準備から収録、編集までの詳細な取り組み内容です。
1. 収録スタジオの手配とスケジュール調整
今回の収録では、新たに選定したスタジオを使用しました。特に、講演スライドと講師を合成させるクロマキー技術を用いることが予定されていたため、背景画像や講演スライドとの調和を確認するための事前テストを実施しました
また、55分ずつ2本に分けて収録を行う形式だったため、休憩時間や機材の準備時間を含めた詳細なスケジュールを設定しました。収録当日、スタジオの機材トラブルにより録画が中断する場面がありましたが、事前の計画が功を奏し、予定より時間はかかってしまいましたが、無事収録を完了させました。
2. 資料作成とコンテンツ設計
講師の大久保氏は、視聴者の方に内容がわかりやすく伝わるよう、スライドはシンプルかつ視覚的に効果的な構成を心がけ、特に視聴者が重要なポイントを一目で理解できるように工夫されたようでした。
また、司会進行用の台本や映像内に挿入するスライド(開始・終了時のタイトル画面など)の作成は弊社で担当しました。アーカイブ形式では、講演内容全体の流れや構成の統一感が特に重要です。そのため、講師や主催者様と内容や構成のイメージを事前に綿密にすり合わせました。
3. 収録時の現場対応とスムーズな進行管理
収録当日は、スタジオスタッフとの密な連携を図りながら進行しました。講師が話しやすい環境を整えるため、音響や照明の調整を確認。私の方で、進行を管理するタイムキーパーの役割も担い、各セクションの時間配分を徹底しました。収録中に機材トラブルが発生するハプニングがありましたが、現場の連携で迅速に対処し、映像の品質を確保しました。
さらに、収録中は、講師が自然に話を続けられるよう、聴講者役として適度なリアクションを挟むことでスムーズな進行をサポートしました。録画中のコミュニケーションは控えめにしつつも、要所要所で適切なフォローを行い、現場の負担を軽減しました。
4. 編集と配信準備:視聴者に届ける最後の仕上げ
収録が完了した後は、編集作業に移行しました。映像の冒頭と終了部分には、講演タイトルや会合名、講師名を記載したスライドを挿入し、統一感と視認性を向上。また、私の方で講師紹介のナレーションを追加し、視聴者様が講演の趣旨をスムーズに理解できる構成に仕上げました。
配信にはVimeoを使用し、参加者の方が簡単にアクセスできる環境を構築。視聴用リンクの管理や配信期間の設定を行いました。また、参加者への告知用チラシも作成させて頂き、講演内容の概要や視聴方法を明確に伝えることで、参加率の向上を図りました。
講演内容:リーダーシップの「理論」と「実践」
今回の講演は、理論編と実践編の2部構成で行われました。理論編では心理学の観点からリーダーシップの基盤を学び、実践編では日々の業務に役立つ具体的なアプローチが解説されました。
理論編:心理的リアクタンスとメタ認知
理論編の中で特に印象的だったのは、「心理的リアクタンス」の解説です。強制的な指示や正論を押し付けるような言い方は、相手の反発心を引き起こし、結果的に指示が伝わりにくくなるという心理的メカニズムが紹介されました。たとえば、「早く宿題をしなさい」と親が子どもに言うと、子どもは「やる気がなくなる」という反応を示すことがあります。これは、自分の自由を奪われたくないという感情が働くためです。このような状況を防ぐには、言葉の使い方を工夫し、相手が自然と行動したくなるように促すことが大切だと説明されました。
さらに、「思い込み(バイアス)」が人の判断や行動に与える影響についても解説されました。具体例として、2人の野球選手のシルエットを見せ、「どちらがキャッチャーだと思うか?」と問いかける場面がありました。多くの人は体格が大きい方をキャッチャーだと考えますが、これは直感的な判断、すなわち「思い込み」に基づいた選択です。この例は、私たちが日常的に抱いているバイアスが、他者の印象や役割をどのように決定づけているかを示すものでした。
バイアスがリーダーシップに与える影響も重要なポイントとして挙げられました。リーダーが部下に対して無意識のうちに偏った見方をすることで、相手の成長を阻害する可能性があるため、自らのバイアスに気づき、それを俯瞰的に見直す力(メタ認知)が求められると解説されました。
実践編:対話を通じて認知のズレを埋める
実践編では、部下との「認知のズレ」を解消する具体的な方法が取り上げられました。たとえば、部下の成果が振るわなかった場合、「どうしてできなかったのか」と問い詰めるのではなく、「どのような背景があったのか」を対話を通じて共有することで、建設的な改善策を一緒に考えることができると説明されました。
また、相手が苦手意識を抱いていることについて深掘りし、言語化するプロセスの重要性も指摘されました。具体的には、相手の考えを整理し、明確な方向性を示すことで、コミュニケーションの質が向上し、部下が自己効力感を持てるようになります。さらに、日常的な対話を通じて認知のズレを埋めることで、リーダーと部下の関係がより良いものになると語られました。
今回の講演では、心理学の理論を踏まえつつ、具体的なエピソードや事例を交えた解説が行われ、リーダーとしての自覚を深め、日々の業務に取り入れやすい実践的なスキルを学べる充実した内容でした。
アーカイブ型講演が提供する価値と今後の展望
今回の講演では、アーカイブ型講演ならではの利便性と、リーダーシップに必要な実践的な知識を融合した内容を提供させて頂きました。参加者の皆様は、自分のペースで視聴できるアーカイブ形式を活用し、多忙な業務の合間でも学ぶ機会を得ることができたことと思います。
今回のプロセスで重要だったのは、収録前にすべての関係者が完成形のイメージを共有したことです。講師、スタジオスタッフ、弊社チームが共通のイメージを持つことで、運営がスムーズに行き、視聴者様にとって快適な講演を提供できるよう努めました。細部へのこだわりが、オンラインセミナーの質を高めるポイントとなりました。
アーカイブ型講演は、参加者の方々のニーズに柔軟に対応できる形式として、今後さらに需要が高まることが期待されます。弊社では、こうしたオンライン講演の運営経験を生かし、主催者様と参加者様の双方にとって満足度の高いコンテンツを提供する取り組みを今後も続けてまいります。
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