社会や時代変動が激しい時代、「自分らしく心豊かに人生を歩みたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。

今回は百貨店やラグジュアリーブランドで販売員や店長を経験後、心に余裕のある顧客との出会いを機に、現在は講演や研修を通して「軽やかで心豊かに生きるメソッド」を伝えている横田真由子さんに、真の豊かさや、自分らしい生き方などについて伺いました。

ポイントは「余白」を作ること。ミニマムリッチⓇコンサルタントであり国家資格キャリアコンサルタントでもある横田さんのお話には、あなたに合った「余白」の作り方や自分らしい人生の歩み方のヒントがたくさん詰まっています。

転機となった「余白」のある人との出会い

ーー横田さんが現在の活動を始められた経緯を教えてください。

横田 小さい頃は引っ込み思案で自信がなく、授業中に1人だけ挙手できないような子どもでした。そんな時、洋裁が好きだった母が手作りの洋服を作ってくれたんです。

その洋服を着ていると、みんなが私のところに集まって褒めてくれました。「洋服が変わるだけでこんなに人から注目されるのか、褒めてもらうとこんなに自信が持てるんだ」と感じたことを今でも覚えています。この出来事がきっかけで、洋服に関わる仕事がしたいと考えました。

ハイブランドの販売員としての接客は非常に楽しく、着実にキャリアを積んできました。しかし店長になった途端、後輩への指導が上手くできず、人の成長をどのようにサポートすれば良いのか非常に悩みました。

その時に出会ったのが、コーチングやメンタリングという人材育成の方法で、キャリアコンサルタントの資格も取得し、今に至っています。

ーー横田さんにとって、転機となる出会いがあったのでしょうか。

横田 そうですね、大きな転機だったのは、お客様との出会いでした。

当時の私は、大きなバッグに多くの物を詰め込んだように、身動きができなくなっていました。自分に何かが足りないと考え、人を羨ましく思ったり、何か物を手に入れたいと思ったりしていました。

なのでバッグの中には物を詰め込み、家の中は物で溢れ返り、そしてスケジュールも全く余裕がない状況でした。自分に自信がないので、色んなことを目一杯にして、自分を満足させることに意識がいっていたような気がします。

そんな時に「なんて余裕があるのだろう」と感じさせられるお客様たちに出会いました。最初は「金銭的に余裕があるからだろう」と思っていましたが、そうではなく、心に「余白」があるということに気づかされました。

余裕のあるお客様は、いつもご機嫌で思いやりに溢れ、人との繋がりをとても大切にされて、運やお金に恵まれていらっしゃいました。

来店されるお客様が多い時にはお待たせしてしまい、クレームに繋がることもあるのですが、そのお客様たちは、「あの方を先に対応して差し上げてね」と人に譲ってくださり、商品や人の良いところを見つけてくださいました。そして常に感謝の言葉を口にされていました。そういうことは、自分に余裕がないとできないことだと思うんです。

人生を心豊かに生きている人たちと出会ったことが、現在提唱している「上質なものを少しだけ持つ人生」=「ミニマムリッチ®ライフ」という考えの大きな軸になりました。

ミニマムリッチ®で変わる人生と可能性

▲イメージ画像

ーー横田さんが提唱されている「ミニマムリッチ®ライフ」という考え方を教えていただけますか。

横田 ミニマムリッチ®ライフは「本当に必要なものだけを持って、心豊かに、自分らしく生きる人生。人と比べることなく自分の正解や幸せを見つけていく人生」だとお伝えしています。量から質に変換し、「良質なものを少しだけ持つ人生」というイメージです。

質を高めるには、自分にしかできない仕事や自分らしい暮らし方、選び抜いた大切にしたいものと長く付き合うことで、こうしたものが、人生の中で見つけられたら幸せだと思うのです。

ミニマムリッチ®ライフを実践するために、まず重要なのは「トライ&エラー」です。私自身も物を捨てすぎて後悔したこともありました。でも本当に欲しいと思うものは、また買い直したくなりますし、それは自分にとって必要なものなんだと気づくことができます。

まずは捨てる勇気を持って一度手放してみること、そして、買い直す勇気、間違えたらまた戻る勇気、これらを持つことでミニマムリッチⓇライフの第一歩を踏み出すことができると思います。

ーー何かを手放すことによって生まれる「余白」を作ることのメリットはどんなものですか?

横田 余白を作ればそこに新しいもの、自分にとって必要なものが入ってきます。物だけでなく時間にも「余白」を作ることで、作戦を練ったり、新しいアイデアを出したり、そして、準備する時間としても活用できますよね。仕事も同様で、自分にとって必要ないと思うことを手放していけば、その分、質も上がります。

現在は、タイパ(=タイムパフォーマンス)を重視して、何事も詰め込みがちですが、1日や1週間で約2割は、ボーっとして何もしない時間を作ると、心が満たされ、心が豊かなります。1人の時間を作ることで、本当の自分の声を聞く時間が生まれ、自分が大切にしている考えや価値観である「自分軸」を認識できるようになります。

現代は情報社会で、情報が多くなりすぎて「自分の進むべき道が分からない、自分らしさってなんだろう」と自分軸が持てず迷い込んでしまっている人が多いような気がします。選ぶ力を身につけ、優先順位を決められるようになると、迷いなく自分の幸せや正解を見つけられるようになっていくのです。

そして、自分軸は変化していくものです。その時その時に「自分がワクワクするもの」を選び、服のように「今の自分サイズに仕立て直していく」ことが大切です。

私は、1年に1回、いらないものを段ボールに入れますが、それをすぐに捨てるのではなく、1年寝かせています。そうすると、やっぱり必要だなと思って出してくるものもでてきます。一方で全く使わなかったものは次の年に捨てています。

「これはあまりワクワクしないな、これはちょっと違うな」と感じるものから手放してみてください。手放すとスペースが生まれて、新しい何かと出会うきっかけに繋がります。

ーー「余白」を作ることは、人間関係においても効果があるんでしょうか?

横田 「余白」がある人はいつもご機嫌です。いつも温度感が一定で誰に対しても同じ態度なんですよね。そんな人の周りには人が集まり、人との繋がりが広がっています。

私は、ご機嫌であることもビジネスマナーだと考えています。

例えば「不機嫌のイスは一つしかない」とよく言われます。会社で誰かが不機嫌のイスに座ってしまったら、周りの人は、その人のご機嫌を取らなければならなくなるといったことが起こりがちです。なので、不機嫌のイスは空であることで、みなさんが心地よく働ける職場環境を作ることができると考えています。これは家庭も同じですね。

人間関係では、誰とどのように繋がるかが大切です。家庭や職場以外に第三の居場所を作ることも良いですね。無理なく、自分にとって本当に心地いいと思える場所や人を見極めていくことが重要です。もし選んだ場所や人が違ったらまたやり直せばいいという気持ちで、一度、様々な場所に飛び込んでみていただければと思います。

キャリア構築でも有効なミニマムリッチ®

▲イメージ画像

ーー自己理解がベースのキャリア形成もミニマムリッチ®の考え方と親和性がありそうですね

横田 そうですね、自己理解ができてないと優先順位が明確にできないと思います。自己理解を深めるためには、「自分自身がどんな人生を歩いていきたいか」ということを、しっかり見つめる必要があるんです。

Facebook(現Meta)の元COO・シェリル・サンドバーグ氏は、「キャリアはハシゴではなくジャングルジムのようなもの」だと女性のキャリアについて提唱しました。つまり、一直線のハシゴを登るものではなく、多方向に自由に進むジャングルジムのようなものだということです。

余白があるからこそ、ジャングルジムを移動するかのように動くことができ、場所ごとに見える景色や、それぞれのステージを楽しめることができるのです。そういう意味では、「余白」を作ることで、心豊かなキャリア形成が実現できると考えています。

私は2年に1回、キャリアについて計画を見直す時間を作っています。ただ、キャリアは計画通りに進むものばかりではなく、様々な出会いによって変化していきます。流れに身を任せて、自分の感覚を信じて進むのも大切なことです。

ーー「余白」を作るためにできる最初の一歩は何でしょうか?

横田 「余白を作らなければならないのは分かっているけれど、どうしても捨てられない」という方が多くいらっしゃいます。

私がオススメしているのは、家の中で自分の好きなものだけを置くコーナーを作るということです。例えばキッチンの小さな一角や、リビングに置いた小さな棚でも良いです。

自分の好きなものだけを並べて小さな自分の世界を作ると、ここだけは「いつもキレイにアップデートしたい」と思えますし、さらにその範囲を広げたくなります。

捨てることではなく、選ぶことが最も大事なのです。選ぶことができれば、自分のことが好きになれます。自己肯定感が上がるのです。なので、まずはマイフェイバリッドスペースを作るところから始めてみてはいかがでしょうか。

ーーどんなことを意識すると、自分にとって必要なものを選びやすくなりますか?

横田 視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の5つの感覚「五感」を意識していただくと良いと思います。人それぞれ重視しているものが異なります。

例えば、ふわふわしたものに囲まれると安らぐという人は「触感」ですね。そんな人は、タオルを全て取り替えて、ホテルのように棚にキレイに並べてみます。

また、花が好きな人であれば、1輪でいいので花を玄関に飾ってみます。私もそうでしたが、玄関に花を飾ると、その周りは片付けたくなり自然と玄関を掃除していました。

美味しいものを食べることが好きな人は、調味料を少し上質なものに変えてみるのも良いと思います。このように、自分がどの感覚を一番大事にしたいか、どの感覚が最も心を満たしてくれるかを考えていただくと、本当に必要なものを選びやすくなります。

大きな翼で多くの人の心に暖かな光を

▲全国各地で活動している横田さん(横田さん提供)

ーー講演会では、どのようなメッセージを伝えたいですか。

横田 これまで講演会に参加していただいた方たちから「元気になりました」「モチベーションが上がりました」「挑戦する勇気が出ました」と言っていただくことが多く、たくさんの方に元気を届けられることに幸せを感じています。

講演会では、自分軸や心に余裕を持つことで、心豊かに・軽やかに、しなやかに生きることができることをお伝えしています。

年齢によって、遅いということは決してないので、ぜひ失敗を恐れず、スタートしていただければと思います。失敗しても、やり直せる時間がありますし、またスタートに戻る勇気を持ち、どんどん挑戦していっていただければと思います。

ーーでは最後に横田さんの「夢」と題して、今後の展望を聞かせてください。

横田 2016年のお正月に、自分の夢を一枚の絵にするというセッションに参加したことがありました。自分の中の頭にある夢を絵で表現していくというものでした。

当時の私は、自分の手が大きな翼になっていて、その翼で空に舞い上がる絵を描きました。大きく広げた翼は、柔らかで暖かな光を放ち、世の中を照らしていて、多くの人が元気になり、企業も活性化してハッピーになっていく、そんなイメージの絵を描いたのを、今でもはっきりと思い出すことができます。

そして2025年のお正月、その絵を引っ張り出して眺めました。今後は、もっともっと大きな翼で、暖かいステキな光で、たくさんの企業や人の心に光を当てていけたらと思っています。これからも精進して、たくさんの方にこの光を受け取ってもらえるような仕事をしていければと思います。

皆さまにお会いできることを楽しみにしております。

ーー本日はありがとうございました。

横田真由子 よこたまゆこ

ミニマムリッチⓇコンサルタント ライフスタイルアドバイザー キャリアコンサルタント

ケリングジャパン(旧GUCCI JAPAN)VIP客担当、顧客獲得数No.1に。“大人エレガンス”を学び、独立後は、上質なものを少しだけ【ミニマムリッチ®ライフ】を提唱。一流のマナー・話し方、女性のキャリア・ライフスタイル、心豊かに生きるシンプルライフメソッド等の研修に定評がある。著書多数、累計10万部を誇る。

講師ジャンル
ビジネス教養 ライフプラン
ソフトスキル コミュニケーション

プランタイトル

安物を買うほど私たちは金持ちではない!
一流の人だけが知っている賢いものの選び方

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