Z世代とのコミュニケーションや人材育成、採用において課題を抱えている企業や組織は少なくないのではないでしょうか。価値観や考え方が多様化していて、新しい感覚を持った人たちが多い世代です。

今回は16歳で起業しZ世代当事者でもある起業家・竹下洋平さんに、Z世代の特徴や、その可能性について伺いました。もともと人と接することが苦手だった竹下さんは、どのように約20人のメンバーを束ねる代表として活躍しているのか、バックグラウンドに迫ります。

そして、Z世代とこれまで社会を作り上げてきた上の世代の人たちが掛け合わされることで、これまでになかった新しいものを創り出すことができるという心強いメッセージもありました。若い世代の人材育成や定着率向上のヒントが満載です。最後までぜひご一読ください。

16歳での起業に至るまでの転機となった2つの出会い

▲16歳で起業した竹下さん(竹下さん提供)

ーーまずは、竹下さんの幼少期はどんなお子さんでしたか。

竹下 幼稚園の頃は、友達からの遊びの誘いに見向きもせず、一人でひたすら砂場で地下帝国を作っていたような子どもでした。そんな様子を見かねた両親が病院に連れていってくれて、広汎性発達障害と診断されました。
小学校では特別支援学級に通いました。4年生でゲーム開発をしている子や、地域の歴史に精通している子、感情のコントロールが難しい子など、様々な特性のある子どもたちがいました。

そんな環境の中で過ごした6年間が、振り返ると自身の人生にものすごい影響があったと思います。特別支援学級だったからこそ、発想の幅が広がり、柔軟性を身につけ、人に対する「解像度」が上がりました。自分の転機だったと感じています。

その後、公立中学校の通常学級に進級しました。そこは同質性が高い空間で、共感を大事に生活している環境で、小学校の時とは大きく異なっていました。

なかなか友達ができずにいた頃、親からの勧めもあり始めたのが「ボーイスカウト」でした。このボーイスカウトとの出会いがもう一つの転機でした。

ボーイスカウトは、幅広い経験が得られるコミュニティーで、バラエティー豊かな体験を積むことができました。山奥や悪天候の中でも仲間と一緒にキャンプをするなど、そんな泥臭い環境こそが自分が成長する機会になりました。自分の弱みにぶつかりながらも人間力が磨かれる場だったと思います。

ボーイスカウトではチームをまとめるリーダーを務めました。『世界最高のチーム』や『天才を殺す凡人』などの書籍を参考に、みんなで一つの目標に向かって進んでいくリーダーシップの経験を積むことができました
ボーイスカウトのリーダー体験によって「人と接すること」が得意になれたのは、現在に繋がる大きな成功体験だったと思います。

ーーそこから16歳で起業するまでの経緯を教えてください。

竹下 孫正義さんの『志高く』という本に出会い、「こんな人生を送りたい」と感銘を受けました。自分で道を切り拓きたいという思いが芽生えたんです

そこで中学の時に、アプリ開発を最初に手掛けました。一日の気分のアップダウンやメンタルを色彩効果によってコントロールし、メンタルを安定させ、創造性の向上を目指したアプリでした。開発からコーディング、設計、デザインと全て一人で行っていましたが、一人の力では実現に至らず、2年くらい経った頃に挫折しました。

その後もショールーミングストアを立ち上げて邁進しました。資金が必要で、投資家の方にプレゼンテーションしましたが、ことごとく上手くいかず、なかなか芽が出ないことが続いていました。

その頃に長期インターンに参加し、そこで、UI(ユーザーインターフェイス)UX(ユーザーエクスペリエンス)のデザインの設計などを行いました。デザインの魅力や一つの形にしていくことの楽しさ、それが世の中にダイレクトに伝わっていくことの面白さを実感した経験となりました。

そこからグラフィックデザインの仕事をフリーランスで行うようになり、多くのバックグラウンドを持つ同世代のクリエイターと出会いました。彼らとの出会いから、若手クリエイターならではの持ち味を活かして、この世代にしかできないものを作っていくことで、世の中に何か面白いものや価値を提供することができるのではないかと考えるようになりました。

そして16歳のときに、Z世代社員で作るクリエイティブカンパニー「Fiom」を立ち上げました。現在は、業務委託やインターンのメンバーも含めて、Z世代の16歳から 27歳の21人の仲間と働いています。

Z世代に特化したマーケティングやブランディングを展開していて、自治体や大学、 消費財メーカー、食品メーカー、ブランドなどに対して、いわゆる戦略設計、企画立案、コンテンツ制作、ブランディング、プロモーションといった一連の業務を一気通貫で支援しています。

Z世代ならではの特徴や可能性とは?

▲会社の仲間と(画像:竹下さん提供)

ーーZ世代の特徴を教えてください。

竹下 Z世代は15歳から27歳の年代です(※)Z世代は生まれた時からインターネットやSNSが当たり前のデジタルネイティブ世代です。常に友達と繋がり、他人との関係値や距離感が飛躍的に広くなった世代で、人とのコミュニケーションの自由度が高まり、コミュニケーションのパターンも増えました。

多くの情報や人と触れ合うことで、Z世代は上の世代にはない新しい価値観をどんどん生み出しています。これまでに無い新しい価値観や、新しい才能を持った人たちが多いのがZ世代の特徴だと考えています。
※Z世代の定義は様々あります。

ーーこうした特長を持つZ世代の可能性を竹下さんはどのように捉えていますか?

竹下 上の世代にはない新しい価値観や感覚を持っていること自体が大きな可能性を秘めていると思います。ここ数年、Z世代が脚光を浴びている理由は、上の世代との価値観の差が大きいからだと思っています。

自己肯定感が低い側面もあれば、SNS上でのやりとりだけで、一度も会ったことのない人と仲良くなるような様々な側面を持ち合わせている世代でもあり、これが上の世代と大きく異なる価値観が生まれてくる理由だと考えています。

そして、Z世代は合理的な人が多く、心に刺さるものに揺さぶられるという要素を持っています。タイパ(タイムパフォーマンス)やコスパ(コストパフォーマンス)という言葉がよく使われていますが、これはまさにZ世代の合理性の高さから生まれてくるものです。

時代の先頭を進んでいるのがZ世代の考えを取り入れていくという姿勢は、企業や組織にとっても必要なのではないでしょうか。

▲イメージ画像

ーー昨今、大きな課題となっている「採用」において重視するポイントはありますか?

竹下 「採用」において大切なことは、「この会社で働くと3年後、5年後、自分がどのような姿になっているのか、どのように成長できるのか」というイメージを持つことができるようにするということが一つです。

Z世代は、自分の温度感や空気感に合っているかどうかを重視する世代でもあるので、周囲の空気に敏感になる傾向があります。そういう意味では、会社の雰囲気が自分に合っているかを重視している人が多い印象です。

会社の世界観に心響くものがあるか、ワクワクするか、心を揺さぶられるかということを意識している人たちが多いので、Z世代に特化した採用ブランディングの必要性はますます高まっています。

ブランディングの一つのポイントは、会社の等身大の姿を見せることです。ウェブサイトやSNSなどブランディング全体を通して、会社の世界観や空気感が滲み出てくるような発信をし、この会社で働くことがイメージできるくらいにまで、リアリティー高く情報を出していくことが重要です。

デジタルネイティブがゆえに、Z世代はリアリティーを非常に意識し、嘘に対して人一倍敏感なんです。例えば、商品が少しでも粗悪品だったら、その会社への信頼感を無くしますし、SNSで悪評が広がっていきます。逆に、とてもステキな会社や商品であれば、大きなPR活動を行っていなくても、口コミでどんどん広がっていくのです。

採用における具体的な見せ方を一つご紹介します。一見、ネガティブキャンペーンに思うようなことでも、プラスの側面を打ち出すことで会社の魅力を伝えるという手法です。

例えば、「うちの会社はキツイです。なぜキツイかというと、ものすごく高いプロフェッショナル性を求められるからです。しかし、そんな環境にいることで、自分自身がものすごく成長し、誰かのためになるというやりがいを見い出せ、心からの幸せを感じられる会社です」などと打ち出します。

また、フィードバックの文化が強いということを打ち出すのも、Z世代に響くポイントの一例です。

その会社ならではの部分を打ち出している企業がZ世代から共感を得ています。ものすごく多様な世代で価値観も異なる世代だからこそ、会社の価値観がはまれば、強い共感を得ることができるのです。

ーーZ世代の育成におけるポイントはありますか?

▲イメージ画像

竹下 一つは、その人に合わせたマネジメントを行うということです。成長欲が高い人や、自分のペースを崩さず仕事に集中したい人など、様々な価値観を持った人たちがいます。その人が求める働き方に、上司や企業が合わせていくという姿勢が求められます。

もう一つは、「本音で話す」ということです。Z世代全体がSNSやデジタルを通して、自分の居心地のいい人たちとコミュニティーを築き、居心地のいい場所で暮らすことを続けているので、衝突回避の傾向があります。衝突しそうだと思ったら、何も言わずに離れることを選び、いきなり退職、音信不通になるということも起こります。

また昨今は様々なハラスメントがクローズアップされ、人と人が本音で話す機会が失われているように思います。それぞれが本音ではなく建前でコミュニケーションをとっていることが増えてきているのではないでしょうか。

だからこそ、原点回帰で、面と面を付き合わせて、日頃から本音を互いに話していくことが大切で、今こそ人との強い結びつきが求められていると考えています。

そのためには、Z世代も上の世代も互いにリスペクトの心を持って対等な関係を作っていく、コミュニケーションしていくことが重要です。

Z世代当事者だからこそ伝えたい若者の可能性

▲講演会の様子(竹下さん提供)

ーー講演活動を通して、どんなことを発信していきたいですか?

竹下 まずはZ世代ならではの等身大の姿や肌感覚、価値観を伝えていきたいと思っています。そして、これまで数多く上場企業や自治体、中小企業を支援させていただいている中で培ってきたマーケティングやブランディング、クリエイティブのナレッジもご提供できます。

各企業が持つバックグラウンドや魅力に、Z世代が持つ新しい価値観を掛け合わせたら、新しい未来を描くことができると考えています。
講演活動を通して、若者の可能性や、Z世代と企業を掛け合わせたらステキな未来が描けるという「共創」のメッセージを伝えていきたいです。

ーーZ世代である竹下さんが伝えるというところにも強みがありますよね?

竹下 そうですね。私は現在20歳ですが、Z世代(15歳から27歳)の中でも中間に位置していて、上も下も両サイドの価値観を肌感覚で分かる年齢でもあると思っています。Z世代の等身大の姿は伝えられる自信がありますし、Z世代のど真ん中にしか分からない、見えていない視点を伝えていきたいですね。
「餅は餅屋」ということわざがあるように、Z世代のことはZ世代当事者が最も改造度が高く理解しています。Z世代のことは、Z 世代当事者に聞いてインプットするということが効果的だと考えています。

ーー最後に、竹下さんの夢と題して、今後の展望をお聞かせください。

竹下 私の夢は「若者の創造性、Z世代の創造性を通して新しい世の中を作っていく」ということです。私たちにしか作れない世界があると信じています。

新しい文化は、新時代を築く新世代にしか作れないと思っているので、Z世代ならではの新しい創造性を通して、新しい文化を築いていくことを目指していきたいです。

Z世代を起点に、強い共感を得られ、大きなムーブメントになる、影響力の高い若者文化を作っていきたいです

ーー貴重なお話をありがとうございました。

竹下洋平 たけしたようへい

Fiom合同会社CEO ”Z世代領域のスペシャリスト”

“Z世代領域のスペシャリスト”Z世代向けの企画制作を数多く手掛けてきた現役Z世代です。 餅は餅屋にという言葉がある様に、Z世代のことはZ世代から学びませんか?Z世代のリアルな感性、感覚をリアルZ世代(20才)から学べます。ぜひお気軽にお問い合わせ頂けると幸いです!

講師ジャンル
実務知識 営業・販売・マーケティング 人材・組織マネジメント

プランタイトル

Z世代に響く新卒採用コミュニケーション戦略とは?

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