日本全体の労働人口減少が懸念されるなか、建設業界の人手不足は特に深刻です。この記事では、建設業界の人材不足の原因をデータから解説し、対応策を解説。合わせて、人材不足軽減へのヒントとなる講演プランもご紹介します。
データで見る建設業界の現状
各省庁から発表される統計数値から、明らかな動向がうかがえます。
厚生労働省の発表する有効求人倍率は、建設関連業種が、他の業種と比較して明らかに倍率が高く、人手不足であることがわかります。
令和4年10月時点で、統計全体の有効求人倍率が1.23に対し、専門的・技術的職業の『建築・土木・測量技術者』有効求人倍率は5.83、建設・採掘の職業の『建設躯体工事の職業』では10.07の数値です。
2022年10月(パート含)
業種・職種 大分類 | 業種・職種 小分類 | 有効求人倍率 |
---|---|---|
統計全体(全職業) | 1.23 | |
専門的・技術的職業 | 全体 | 1.90 |
建築・土木・測量技術者 | 5.83 | |
建設・採掘の職業 | 全体 | 5.41 |
建設躯体工事の職業 | 10.07 | |
建設の職業 | 4.70 |
引用:厚生労働省「一般職業紹介状況」参照
さらに、国土交通省の不動産・建設経済局は、令和3年10月に公表した『最近の建設業を巡る状況について』の中で、『建設業就業者の高齢化の進行』を指摘しています。
資料によると、令和2年時点で、就業者のうち、55歳以上は全産業では31.1%に対し建設業では36.0%、29歳以下は全産業で16.6%に対し建設業は11.8%です。
業種 | 55歳以上 | 29歳以下 |
---|---|---|
全産業 | 31.1% | 16.6% |
建設業 | 36.0% | 11.8% |
つまり、建設業は全産業の中でも、55歳以上の割合が多く、29歳以下の割合が少ないことがわかります。
さらに、建設業就業者数の実数では、令和元年からの1年で、29歳以下は増減がないのに対し、55歳以上は約1万人増加しており、高齢化のスピードも顕著です。
これらの資料から、建設業界では、若い就労者が不足していることがわかります。
建設業の2025年問題とは
2025年問題とは、団塊の世代が2025年に75歳の年齢になり、後期高齢者人口が急激に増加するため、社会保障費などの負担急増が懸念されている問題です。
2025年問題は、建設業界の労働人口にも影響が心配されています。
2025年前後で、ベテランの就労者が大量に退職されてしまう可能性が高く、さらなる人材不足は避けられないと考えられています。
建設業の人手不足の原因
建設業界で、人手不足が解消されない原因は、ひとつではありません。
解消すべき4つの原因を解説します。
職人の高齢化
ひとつは、2025年問題にもあるように、高齢層が増えていることです。
他方、若年層の労働者は増加していないため、ベテランの定年退職によって人手が減っていく一方です。
前章のデータから考えても、現在4割近くを占める55歳以上の就労者が10年後には65歳以上になり、ほとんどが退職してしまう計算となります。
労働環境へのマイナスイメージの影響
若年世代で、建設業への就職者が少ない理由は、根強いマイナスイメージにあります。
「きつい」「汚い」「危険」の3Kのイメージが払拭されないなか、「帰れない」「給料が安い」というイメージもあります。
マイナスイメージが払拭されなければ、建設業を目指す若者が増える兆しはありません。
離職率が高い
建設業は、他の業種と比較しても、離職率が高い傾向があります。
厚生労働省によるデータ(「新規学卒者の離職状況」)によると、高卒の新規就労者のうち3年以内に退職してしまう割合は、全業種で39.5%であるのに対し、建設業では45.8%と高い数値です。
若い労働者が入社しても、3年以内に半数近くが離職してしまう計算です。
アナログ環境や人材育成の遅れ
建設業は、他の業種と比較してもICT導入が遅れており、人材育成にも時間がかかる傾向があります。
その理由は、建設業では小規模経営や個人事業主の職人の割合が多いことにあります。さらに、前述の通り年齢層も高いため、新しい技術導入に積極的な経営者や事業者は、残念ながら多いとは言えません。
小規模経営者や個人事業主にとって、大きな予算と時間の負担が必要なICT導入、人材教育は、後回しにされ続けているのが現状です。
建設業の人手不足を解消するには
悪循環が続く建設業の就労問題は、どのような方法で解消できるのでしょうか。
考えられる3つの解決策をご紹介します。
労働環境を改善する
最も重要なことは、労働環境の改善です。
若年層でも長く働きやすい、他業種と同様の労働環境を整える対策が急務といえます。
既に、大手の建設現場ではICT技術の導入によって、作業効率を向上させる施策を導入しています。
例えば、
- ドローンなどの機器を活用し、危険な作業を減らす
- DX化、資料のクラウド化などにより、リモートワークを促進する
など、新しい技術や発想で、労働環境を改善する動きが活発です。
今後も、技術を適切に活用し、労働負担を減らしていく必要があるでしょう。
イメージアップを行う
「きつい」「汚い」「危険」のマイナスイメージを払拭させることも、若い就労者を増やすために大切な施策です。
国土交通省では、「日本の国土・まちをつくる・まもる」をスローガンに、インターネットやSNSで建設業のクリーンな側面を積極的に発信し、リブランディング計画が進められています。
各省庁主導以外にも、SNSで若者層が活き活きと働いている様子を発信する企業や、建設現場の仮囲いに窓を設け、誰でも囲いの中を見られる風通しの良い現場づくりを実行している企業もあります。
今後のさらなるイメージアップの発信が期待されます。
工期設定を見直す
労働時間が長くなってしまうことの原因の一つが、タイトな工期設定です。
これから家族を持とうとする若年層にとって、労働時間の長い職場は敬遠されて当然です。
このことを解消すべく、2018年、国土交通省による「建設業働き方改革加速化プログラム」が策定され、週休2日の作業で完了できる適切な工期設定が求められるようになっています。
受注者と発注者が、ともに意識をもって適正な工期を設定していく必要があります。
建設業界の人手不足を解消する講演プランのご紹介
すでに厳しい労働環境で若年層の雇用に頭を抱える建設従事者のため、専門家による建設業界の労働環境に関する講演がいくつも行われています。
建設業界の人手不足を解消する安全大会チームイチオシの講演プランをご紹介します。
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