夏と冬に開催される安全大会。当大会を開催する目的や意義は共通ですが、そこで開催内容は企業によってさまざまです。
そこで、本記事では、安全大会の目的や意義を確認し、盛り込むべきプログラムや事例をまとめました。安全大会のプログラム作成にご活用ください。

建設業の安全大会のテーマとは

安全大会は、現場全体や作業員一人ひとりが労働災害をおこさないために何をすべきかを考え、全員の安全意識を向上することを目的に開催されます。そのテーマは、業種や分野、業務内容によっても異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。

  • 危機管理
  • ヒューマンエラー
  • ストレスマネジメント
  • 健康維持、管理
  • リスクアセスメント
  • 組織やチームについて
  • コミュニケーション

安全大会のテーマは、昨年自社で起きた労働災害や危険行動の事例、業界全体で発生している事故原因の傾向を見ながら決めます。例えば、昨年、建設現場で安全確認を怠ったために労働災害が起きた場合には「ヒューマンエラー」をテーマとしたり、業界全体で危機管理の見直しが叫ばれていた場合にはテーマを「危機管理」とするなどして、テーマを決めていきます。

安全大会の目的

安全大会の大きな目的は、建築現場での労働災害をなくすことです。
厚生労働省が公表している労働災害発生状況によると、昨年(2020年)に起きた労働災害の原因は、製造業において1位がはさまれ・巻き込まれ、2位が転倒、3位が墜落・転落、建設業においては1位が墜落・転落、2位が転倒、3位がはさまれ・巻き込まれという結果になっています。製造業では工作機械によるもの、建設業では高所からの墜落・転落、建設機械による事故が多く、その多くが安全確認を怠ったことにより人的ミス(ヒューマンエラー)、誤操作が原因とされています。

現場で長く働いていると、業務への慣れや気の緩みから、安全に対する意識が薄れてしまいがちです。「いつもやっていることだから」「このくらい大丈夫だろう」と慢心したり、急ぐあまり安全を犠牲にしても効率よく作業しようとしたりしてしまうと、労働災害につながりかねません。
そこで、日ごろの慣れや気の緩みを正し、安全意識を啓発する上でも安全大会は定期的に開催する必要があります。定期的に安全大会を開催し、安全の重要性や現場に潜む危険について再確認することが重要なのです。安全大会では自社の従業員だけでなく、協力会社や下請け会社も招きます。

安全大会で盛り込むべきプログラム

では、上記のテーマや目的も踏まえ、安全大会で盛り込むべきプログラムを6つの項目に分けて見ていきましょう。

①表彰式

安全意識が高く、対策に積極的に取り組んだ現場や個人に対して表彰を行い、士気を高めるのも安全対策に有効です。表彰された現場や個人を手本や指標とすることもでき、身近な具体例として他の現場や個人も安全対策に取り組みやすくなります。

表彰する基準は各企業や事業所によってさまざまですが、無事故・無災害の日数や年数の長さ、安全運動への取り組みの積極性などを表彰するところが多いようです。

➁安全講話

安全大会で最も重要なプログラムは、安全に関する講話・講演です。外部から講師を招いたり、社内で代表者が安全講話を行う場合もあります。
安全講話では、危険性の高い現場にどのような対策を行うか、ヒヤリハットの実体験、経験を活かして現場で起こりうる労働災害をどのように防ぐかなどを解説します。

事前に現場の安全パトロールを行い、その際に確認された問題点や良かった点を発表するグループワークを行うのも良いでしょう。他の現場の状況を共有することで、見習う点や反省すべき点がわかります。

③健康講話

安全講話に付随したプログラムとして、健康講話を行うのもおすすめです。健康講話は、現場の安全を守るためには、そもそも従業員自身が心身の健康を保つことが大切だ、という考えのもとに行われます。

感染症対策やメンタル、栄養、睡眠、運動など健康維持に必要な最新情報を提供する講話・講演に加え、簡単な体操、ストレッチなど現場でできる運動を採り入れるとよいでしょう。

④避難訓練、消火器訓練

万が一に備えた避難訓練や消火器訓練を行っておけば、自然災害や火災などが発生しても慌てることなく対処できる可能性が高まります。例えば、足場にいるときに地震が発生したらどうするか、安全な避難場所はどこで、どのような経路を使って逃げるか、といった訓練です。

消火器を使う訓練では、実際に粉末消火器を使って火を消すことで「どのくらいの時間で火は消えるのか」を学ぶことが重要です。また、宿舎で寝ているときや、トンネル工事中に火災が発生したときの避難訓練も必要に応じて行うとよいでしょう。

➄救急講習

現場での万が一に備え、救急講習も行っておくと安心です。救急講習では講師を招いて人工呼吸や心臓マッサージの方法、AED(自動体外式除細動器)の使い方などを習います。作業員一人ひとりがこのような応急処置を知っていれば、現場での救命率もぐんと上がります。

総務省消防庁の「令和2年(2020年)版 救急救助の現況」によると、令和元年に救急車で搬送された心肺機能停止傷病者126,271人のうち、50.7%にあたる64,013人が一般市民によって胸骨圧迫・人工呼吸・AEDによる除細動など応急手当が行われたというデータがあります。そのうち、搬送される前に心肺機能停止が一般市民によって確認されたケースの1ヶ月後生存数をみると、一般市民による応急処置が実施された患者の生存数は2,561人、応急処置が実施されなかった患者の生存数は998人と、2.5倍多いことがわかります。
近年では、市民単位で救命講習を受講するケースも増えており、安全大会でもその重要性が叫ばれています。

⑥季節ごとの対策

安全大会は夏と冬の2回行われますが、そこで季節ごとの対策を紹介したり、実際に訓練したりすることもあります。夏場であれば熱中症、冬場であれば除雪や道路凍結時の注意点などです。例えば、熱中症であれば、以下のような対策の解説があります。

  • 現場での水分補給方法
  • 熱中症対策としての食事メニュー
  • 睡眠や入浴の重要性
  • 帰宅後の水分補給
  • 体調チェックの方法

安全大会プログラムの例

では、実際に安全大会のプログラムを組んだ例を、テーマ別に2つご紹介します。

事例1 テーマ:ヒューマンエラーを防ぐ

①開会の辞、挨拶
➁昨年度の労働災害現況の報告と本年度の目標
③安全講話:ヒューマンエラーの実体験と活かせる対策について
④表彰式
➄救命講習:万が一のときのために
⑥安全宣言
➆閉会の辞、挨拶

事例2 テーマ:リスクアセスメント

①開会の辞、挨拶
➁表彰式
③安全講話・グループワーク:各現場の状況報告
④防災訓練
➄安全大会スローガン発表
⑥閉会の辞、挨拶

このほか、安全対策とは直接的に関係がなくても、ビジネスやヘルスケアに関する講演を最後に行うこともあります。安全大会が長時間に及ぶ場合は、途中で休憩を挟むとより参加しやすいでしょう。参加者の集中が途切れないよう、訓練やグループワークで動く時間を挟むのもおすすめです。
また、安全大会の多くは協力会社との親睦を目的としていため、安全大会の後に懇親会も開かれます。

安全大会をオンラインで開催する事例も急増

昨今の新型コロナウイルス拡大により、安全大会もオンライン化が加速しています。オンライン開催のメリットは、3密回避、遠方からの参加が可能ということに加え、緊急事態宣言発令のような緊急時であっても開催できるため計画が立てやすいという点があります

安全大会は、協力会社との親睦も目的の一つであるため、オンラインでは親睦が図れないのではないかという声も聞かれます。その場合、弊社では、協力会社の代表者と関係者などの一部の参加者と講師が会場に集まり、その他の人々はオンラインで参加するハイブリッド型の開催を推奨しています。

今年(2021年)に入り、このハイブリッド型が急増しており、本年度オンライン実績の半数以上は、このハイブリッド型に移行しています。また、基本はリアル開催で考えておいて、何かあったらオンラインに切り替えるという事例も増えつつあります。

弊社では主催者様のご要望に応じてさまざまなプランをご提案できますので、「今年こそは安全大会を実施したい」という主催者様は、ぜひお気軽に弊社までお問合せください。

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