企業にとって、新人教育は新しい人材を育成するために欠かせないものです。
せっかく行う研修がお互いにとって有益な機会にできるよう、ここでは新人研修を行う際に知っておきたい実施期間の違いや研修の内容について紹介をします。
■目次
新人研修は1~2週間が最も多い
新人研修は必ず行わなければならないという決まりはないですが、現在多くの企業が実施しています。実施期間については業種によって様々です。人事関係の調査機関が2020年に行った「新入社員研修」に関するアンケート調査によると、新人研修で最も多い期間は1~2週間となっています。
細かな内訳としては、最も多いのが1週間で19%、次いで2週間程度が18%、1ヶ月程度と2カ月以上が同じく16%という結果で、1カ月以内が全体の69%を占めます。
特殊な業務を行う企業や技術が必要となる業種の場合、1年以上の新人研修期間を設けているところもあります。
大企業は1ヶ月程度が主流
新人研修期間は企業規模によっても違いがあります。同調査によると、従業員数が1001名以上の大企業は、1ヶ月程度が20%と最も多く、次いで2週間程度18%、2ヶ月程度16%となっています。1ケ月以上新人研修を開催している大企業は、47%に上り、実に半数近くが中長期の研修を実施していることがわかります。
また、301~1000名程度の中堅企業は特にこの傾向が顕著にみられ、一番多い期間が2ケ月以上で26%、1ケ月以上開催しているところは全体の52%となっています。
一方で、従業員数が300名以下の企業の場合には、1週間から3週間としている企業が41%となっており、短めに設定されている企業が多いようです。
企業規模によって研修期間に違いがあるのは、人員確保の問題もあります。余力がない企業では新人であっても即戦力としてすぐに現場に入ってもらわないといけない現状があり、研修期間を長く設けることができません。また、研修費用や研修中の人件費の負担も大きいことも理由となっています。しかし、職場の規模が小さい企業の中には、職場内で仕事をしながら新人教育ができるため、あえて研修の機会を設ける必要が無い、という企業もあります。
業種によって研修期間が異なることも
業種によって研修で学ぶ内容は様々です。
例えば、事務系の仕事の場合にはビジネスマナーや基本的な電話応対、メールのマナーといったものを2週間ほどで学び、オフィスでの仕事を始めるということもありますし、製造業やエンジニアといた技術系の場合には覚えることも多いので研修期間が3カ月という企業も少なくありません。
新人研修期間の決め方
研修期間を算出するためには、どのスキルにどれくらいの時間を割くのか明確にする必要があります。
例えば、新人研修では多くの企業がまずビジネスマナーについての研修を行います。それに加え、企業理念の理解やITスキルの習得など、他にどのような知識やスキルを習得させたいのか決めることで、必要な研修期間が明確になってきます。具体的に研修期間を決めるにはどのような流れをとればよいのか説明していきます。
1.目的、ゴール(習得させたいスキル・知識)を決める
まず新人研修の最終的な目的・ゴールを設定します。設定する際には新入社員に対して「どうなってほしいか」ということを考えると、研修で行うべきことが明確になります。
新人研修では、多くの場合「新入社員が自分で業務を行えるようになること」を最終ゴールとしています。しかし、ただ業務に必要な知識を身につけるだけでは、中堅社員になった際に業績を出したり、会社の将来を担ったりすることが期待できません。
そこで、基礎的な知識やスキルを習得するだけでなく、将来的にどのようなスタンスで仕事に臨んでほしいか、どのような人材に成長してほしいかということを、企業理念に基づいて考えて設定するようにします。理念やビジョンは入社時が最も新入社員に定着しやすいので、明確にしてしっかり伝える機会を設けるようにしましょう。そうすることで、自社が目指すビジョンを実現するために必要となる人材を育成する研修を創出していくことができます。
2.内容を決め、大まかなカリキュラムを作成する
研修のゴールが明確になったら、次に実現するためにどのような研修が必要なのかを考えて大まかなカリキュラムを組み立てていきます。研修の内容だけでなく設定日数に合わせ、参加者が内容を理解し習得できるカリキュラムになるように組み立てていきましょう。
どのような内容を伝えるかによって、座学だけでなくグループワークや体験ワークなど適切な研修プランが見えてきますし、内容を伝えるのにかかる期間も明確になってきます。最初から時間割の形を作ろうとすると大変なので、まずは箇条書きで必要な指導内容を書き出していき、少しずつ組み立てていくとわかりやすいです。
3.必要な内容・カリキュラムを精査する
新人研修の内容や大まかなカリキュラムを決めたら、すべての研修内容をまとめ、余計な内容が含まれていないか、重複する内容がないかを確認します。すべての内容を実際にシミュレーションしながら、優先順位をつけていきます。場合によってはいくつかの内容を統合したり、理解度を深めるために順番を入れ替えたりし、カリキュラムの草案を作成します。優先順位の低い内容は、本当に必要であるのか、再度精査します。
精査は一人で行わず、チームで考えることで客観的に見ることができます。他にも、過去の参加者のアンケートを参考にしたり、過去の研修担当者や現場に意見を聞いてみてもよいでしょう。
4.時間数を合算し、必要な期間を割り出す
カリキュラムができあがったら、時間数を合算し、必要な期間を割り出します。その際、想定した期間よりも長い場合もあります。その場合、スケジュールを延ばすのか、どこかの内容を削除して想定内に調整するのか、検討する必要が出てきます。その場合は、最終目標と重要度のバランスを考えて、スケジュールを調整します。
また、スケジュールは、内容を習得する時間に加え、グループワークでの話し合いの時間や理解度を確認するテストに要する時間、研修会場への移動時間といったものも加味しなければなりません。また、実際の研修になるとトラブルも予想されるので、スケジュールは余裕をもって組んでおく方がよいでしょう。
内容の詰め込みには注意
新人研修では、いろんなスキルや知識を習得してほしいという気持ちがありますが、内容の詰め込みすぎには注意しましょう。内容の詰め込みによって研修の期間や時間が長くなると、覚えることが多くて身につかなかったり、現場に出られないことでモチベーションが下がってしまったりする原因となり得ます。
そのため、内容は絶対に学んでおきたい基礎的な部分に絞り、その他の実践的なスキルについては現場で学ぶ「OJT形式」に切り替えることもおすすめです。
また、「OJT形式」とは逆に、現場から離れた場所で行う「OFF-JT形式」という研修手法があります。「OJT形式」や「OFF-JT形式」など、さまざまな手法を組み合わせながら、参加者が飽きの来ないカリキュラムを作成すると、スキルや知識の定着率もよりアップすることでしょう。
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