新入社員にはさまざまなスキルが必要です。できる限り早期に学生モードから切り替えてスキルを身につけさせ、企業の戦力としなければなりません。
本記事では社会人に必要な9つのスキルと、スキル習得に効果的な方法について解説します。
企業が新卒社員に身につけさせたい社会人スキル一覧
さまざまなビジネススキルのうち、企業が新卒社員に身に付けさせたいスキル9つについて解説します。
①ビジネスマナー
ビジネスマナーとは、企業で働く社会人として要求される振る舞いのことです。新入社員が最低限身に付けておくべきビジネスマナーには、以下のようなものがあります。
- 時間厳守
- 身だしなみ
- 挨拶
- 言葉づかい
- 報連相
- 電話対応
- 名刺交換
- 席次などの上下関係
単にルールを教えて終わりではなく、マナーの本質として「相手を思いやる気持ち」を理解してもらうことが重要です。一度の研修で完璧に身につくものばかりではありません。一部は現場で場数を踏む必要もあるでしょう。
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②コミュニケーションスキル
ビジネスの場で必要とされるコミュニケーションスキルは、学生が考える「誰とでも会話できる」「場を盛り上げるのが得意」のようなコミュニケーションスキルとは異なります。
ビジネスでのコミュニケーションで大切なのは、「相手の意図を正しく読み取る」「自分の意見をわかりやすく伝える」ことです。口数の多さなどではなく、ビジネスパーソン同士での会話のキャッチボールを成立させる必要があります。
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③ロジカルシンキングスキル
ロジカルシンキングとは、物事を筋道立てて論理的に考えることで、「論理的思考法」とも呼ばれます。直面した問題を解決するために必要不可欠な思考法です。
ロジカルシンキングスキルが高いと他者の考えを的確に整理できるため、会議や報連相を行う場で特に有効です。提案力が高まり、業務全体の生産性も上がるでしょう。
また相手にも自分の考えを伝えやすくなります。コミュニケーション能力の向上が期待できる点もメリットです。
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④リーダーシップ
組織の活性化の鍵を握るのは、社員のリーダーシップ強化です。リーダーシップと聞くと、上司や経営層が持つべきものというイメージを抱く人が多いかもしれませんが、実はそうではありません。
若手でも他者を巻き込んで解決や改善を進められるようになれば、組織に対する自己効力感が増し、モチベーションの向上や離職防止につながります。
さらに一人ひとりがリーダーシップを発揮できると、互いによい刺激を与え合い、チームを活性化させることができます。
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⑤セルフモチベーション管理スキル
自身のモチベーションを自ら奮い立たせ、継続的に統制する力が、セルフモチベーション管理スキルです。このスキルを身につけると、仕事の成果が安定し、人間関係がスムーズになるというメリットがあります。
自己管理のためにはまず、モチベーションのメカニズムを理解すると良いでしょう。報酬や懲罰などの「外発的動機づけ」と、仕事に対する興味や関心による「内発的動機付づけ」があります。これらを認識したうえで、目的意識を持って活用するのがポイントです。
また個人任せにせず、企業側が環境整備や改善などの施策に取り組むのも重要です。
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⑥メンタルヘルス・ストレス管理スキル
メンタルヘルスの維持には、セルフケアを取り入れることが重要です。セルフケアには、休息やバランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠などが含まれます。
また心身の不調を予防するために、マイナスの感情との付き合い方や発散方法、レジリエンス(逆境や困難から回復する力)の高め方を理解しておくと良いでしょう。
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⑦リモートワーク・テレワーク対応能力
リモートワークを行う場合、自己管理能力やコミュニケーション能力、セキュリティ意識、関連ソフトの使用など、さまざまなスキルが求められます。
特にオンライン・コミュニケーションスキルは重要です。対面でない分、すれ違いや認識の相違が発生しないよう、相手の意図を正確にくみ取ったうえで、適切なタイミングやテキストで用件をわかりやすく伝える必要があります。
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⑧PC操作スキル
新卒世代はスマートフォンのチャットが主流で、意外とPCやメールに触れていません。業界により求めるレベルは異なりますが、配属前に一定水準に合わせておきたいところです。
例えば事務ソフトの使い方以前に、タイピングやフォルダ管理、ファイル送受信など基礎知識の習得が必要なケースもあります。
⑨文書作成スキル
ビジネス文書の作成スキルも、社会人に必要とされるスキルです。ビジネス文書には報告書や議事録、企画書などがあります。
何も教わらない段階では、何が言いたいのかわからない文章になりがちです。できる限りシンプルにわかりやすく、意図が正確に伝わる文書の作成を目指します。
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社会人スキルを習得させる6つの手段
新卒社員に社会人スキルを習得させるには、以下6つの手段が有効です。それぞれ解説していきます。
手段1.社内研修
企業文化の共有や自社の実情に基づくスキルが必要であれば、社内研修が最適です。社内研修では、管理職や、人事部の社員が講師を務めます。
より専門的なビジネススキルを習得させたい場合は、社外講師に依頼するケースもあります。
手段2.社外研修
指導力の高い講師に依頼したい場合は、社外研修を活用するのもおすすめです。社内リソースを抑えたうえで、新卒社員への効率的な指導が期待できます。
ビジネスマナーやロジカルシンキングの習得を目的に、新入社員研修の中に社外研修を組み込んでいる企業や部署も少なくありません。
手段3.OJT(On The Job Trining)
OJTとは、先輩社員が新入社員に実際に業務を体験させながら、スキルを習得させる手法です。座学だけよりも知識や技術が身につきやすくなります。
特定の社員とやり取りする機会が増えることから、社員同士の信頼度構築にもつながります。
手段4.eラーニング・オンライン講座
eラーニングやオンライン講座なら、受講者が自分の好きなタイミングで研修を受けられます。
学習管理機能は、企業側が新入社員ごとや全体の理解度を把握する際に、特に重宝するでしょう。研修コストが削減できる点もメリットです。
手段5.メンター制度
メンター制度とは、別の部署の先輩社員(メンター)と新入社員とをマッチングし、業務内外の相談に乗ることを制度化したものです。
マンツーマンの関係性に基づいて精神面もサポートできるため、新入社員のストレス軽減にもつながります。
手段6.自己啓発支援・自主学習のサポート
社員一人ひとりの生産性を上げるには、企業からの働きかけだけでなく、自ら進んで学習してもらうことも大切です。自己啓発や自主学習支援として企業が行える施策には、資格取得支援や外部セミナーへの参加費用負担、学習コミュニティの創設やサポートなどがあります。
新卒社員の社会人スキル習得が課題となる理由
新卒社員がいち早く社会人スキルを習得すべき理由について、以下で解説します。
学生と社会のギャップの拡大
学生と社会の間にはさまざまなギャップが存在します。
たとえば「主体性」について、企業が求めるのは「スキルや知識を習得するために自ら学ぼうとする姿勢」であるのに対し、学生は「他人の足を引っ張らないこと」と考えているという、認識の差が存在します(参照:マイナビ・サポネット)
また業務内容でいうと、企業が考える以上に、電話を取ることに関しての抵抗・苦手意識が強い可能性もあります。
そうしたギャップを早期に解消するため、研修などでスキルを補う必要があります。
人材不足
企業は深刻化する人材不足を背景に、少ない人数で業務を回していかなければなりません。新入社員を少しでも早く戦力にしたいと考えているのが実情です。
新人世代は失敗を恐れる傾向が強く、管理職など企業側にも余裕や理解が不足気味という課題があります。
よって新人育成を現場任せにせず、全社で仕組みを作るのが重要です。具体的には、業務マニュアルを用意するほか、研修やOJT、上司からのフィードバックなどで成長機会を整備します。
新人の早期離職
企業がもっとも防ぎたいのは、新入社員の早期退職です。離職理由には、一般的に以下のようなものが挙げられます。
- 業務内容が合わない
- 労働条件が悪い
- 人間関係が悪い
- 入社前に思い描いていた仕事や環境とのギャップ
業務や成長に関しては改善できる見込みが十分にあります。研修体系の強化を含む、長期的な人材育成プランの策定がポイントです。
経済産業省が提唱する「社会人基礎力」
なお、社会人に必要なスキルを考えるうえでの重要な指針として、2006年、経済産業省が「社会人基礎力」を提唱しました。
その中で、職場や地域社会でさまざまな人々と仕事をしていくためには以下の3つの能力が必要であると位置づけています。
前に踏み出す力
まず「前に踏み出す力」では、指示待ちでなく、失敗を恐れずに粘りづよく取り組むことを強調。以下の3つのスキルを構成要素としています。
- 主体性(自ら進んで物事に取り組む力)
- 働きかけ力(他人へ働きかけて巻き込んでいく力)
- 実行力(目的に向けて確実に実行する力)
考え抜く力
「考え抜く力」は、何事にも疑問を持って考え抜く力と定義されており、以下の要素で構成されます。
- 課題発見力(現状を分析・把握し課題を明確にする力)
- 計画力(課題解決に効果的なプロセスを策定する力)
- 創造力(新たなアイデアや解決策を生み出す力)
チームで働く力
「チームで働く力」は、他人とコミュニケーションを取りながら業務を推進する力のことです。
具体的には「発信力」「傾聴力」「柔軟性」などが挙げられます。人間関係を円滑に保ち業務目標を達成するには、これらのスキルが不可欠です。
追加された3つの視点
加えて2018年には、ライフステージの各段階で活躍し続けるために必要な力として、新たに以下3つの視点が追加されました。
- 学ぶ(何を学ぶか)
- 統合(どのように学ぶか)
- 目的(どう活躍するか)
ビジネスマナーやコミュニケーションスキル、ストレス管理スキルなど、社会人が身につけておきたい9種類のスキルと、その習得方法などを解説しました。
育成施策を体系化すれば、社員の早期離職防止にもつながります。研修やOJT、メンター制度などを組み合わせて、企業の戦力となる社員を効果的に育成しましょう。
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