近年では医療の現場においても、看護師のコミュニケーションスキルが求められるようになりました。患者の利用満足度を高めるには、看護師向けの接遇研修の導入が効果的です。
本記事では接遇研修のメリットや学べる内容、さらに弊社おすすめの接遇研修プランを紹介しています。院内研修をお考えの方は、ぜひ参考にしてください!
医療接遇とは?一般接遇との違い
医療接遇は、サービス業などにおける接遇とは異なるものです。一般的な接遇とは、型どおりの接客ではなく、個々の心情や状況に配慮した「おもてなし」をし、最高の時間を演出する手段です。
医療接遇も患者一人ひとりの気持ちに寄り添うという点は同じですが、病院にくる患者は、「最高の時間」を求めてくるのではなく、安心感を求めています。看護師には患者の不安な気持ちに寄り添い、それを和らげるために情報を分かりやすく伝えることが求められます。それが一般的な接遇との大きな違いといえます。
またサービス業などにおける接遇のように、患者を「お客様」のように上の立場として扱うのではなく、医療接遇において対等な関係で患者に接します。
医療接遇の最終的な目的は患者やその家族、さらに看護師同士などチーム内のコミュニケーションの質を高め、安心・安全な医療を実行することにあります。
看護士に接遇スキルが求められる理由
ここでは看護師に接遇スキルが求められる、より詳しい理由について解説していきます。
医療ケアとともにメンタルケアも重要視されるように
病気と闘う患者には強い精神的負担がかかっています。しかし医療技術の進歩に伴って治療はデータに頼るようになり、医師や看護師はモニター画面やカルテを見ている時間が長く、患者とのコミュニケーションは希薄になりつつあります。
こうした問題を解消するために、患者の気持ちに寄り添いコミュニケーションを図る接遇スキルが求められているのです。
看護の質を上げるには接遇スキルが重要
適切な看護を行うためには、情報共有を始めとしたチーム間のコミュニケーションが欠かせません。看護師一人ひとりが接遇スキルを身に付ければ、チームの間で円滑なコミュニケーションがとれるようになり、看護の質が向上します。
患者満足度(PS)や患者経験価値(PX)を重要視する病院が増加
高齢化社会で医療機関への受診者が増える一方で、コロナ禍以降経営難に苦しむ病院も増え、クリニック経営の差別化が加速しています。差別化する上で、患者満足度(PS)を重視し、独自に患者満足度調査を実施する院も増えてきています。
このPSと似たような意味で患者経験価値(PX)という言葉があります。PSは、患者が退院後に結果を評価するものですが、PXでは、受診から退院するまでの過程を評価します。
PS、PXともに、医療サービスの向上を目的としており、PS・PXの改善には看護士の接遇スキルが欠かせないものとなっています。
看護士が接遇スキルを習得するメリット
次に、看護師が接遇スキルを習得することで、医療機関としてどのようなメリットがあるのかを詳しく解説していきます。
①看護の質が上がる
看護師が日々接遇を意識して患者と接することで、心理的安全性も築かれるため、患者は自身の状況を包み隠さず話すようになり、些細な患者の変化を見落とさずに発見でき、的確な看護を行えるようになります。
また、接遇スキルは患者からのクレームを減らす武器にもなります。クレームが起きるたびに余計な時間と労力を使わなくてはならず、労働時間が長くなったり仕事への意欲が低下したりと、看護の質低下につながります。
接遇はこうした事態を避け、看護の質を向上させるためにも必要なスキルです。
②患者との信頼関係を構築できる
治療には患者と看護士との信頼関係が最も大切です。
看護師が患者の不安や心細さに寄り添うことで、両者の間に信頼関係が構築できます。
すべての患者が最初から看護師に心を開いて、自分の体のことを話してくれるわけではありません。
接遇スキルは、患者の心の窓を開くきっかけとなりえます。接遇スキルでは傾聴スキルも学びます。傾聴とは、相手の言葉を否定することなく肯定的に聴くスキルです。看護師が自分の言葉に親身になって耳を傾けてくれることで、患者は「この看護師は自分の気持ちをわかってくれている」という安心感を抱き、初めて症状などについて話してくれるケースもあります。
③患者満足度が上がり、病院の評価も高くなる
看護師の接遇スキルは、患者の利用満足度(PS)に直結します。
病院は怪我や病気を治療するところですが、患者はただ治してもらうだけでなく「怪我や病気で苦しんでいる気持ちを分かってほしい」「心細くて不安な気持ちに寄り添ってほしい」と願っています。的確な医療を提供しても、患者の感情をケアできなくてはPSにはつながりません。
看護師が接遇を心がけることでこのPS度が向上し、病院への評価も高まります。
④チーム内でのコミュニケーションが円滑になる
接遇のスキルは患者に対してだけでなく、チームのメンバー間でも発揮することができます。
相手の置かれている立場に立って考えたり、互いの仕事に感謝を伝え合ったりすることで、チームの間でも信頼関係が生まれ、コミュニケーションが円滑になります。
職場の人間関係が良好になれば、看護師という多忙で強いプレッシャーのかかる業務においても、ストレスを和らげることができるでしょう。
⑤医療事故の抑止力になる
接遇スキル向上によってコミュニケーションが円滑になれば、医療事故の防止にもつながります。
患者に対しては病気や治療に関する情報をしっかりと伝えられるようになりますし、看護師同士では業務上の報告・連絡・相談のミスが無くなります。さらに医師や他の専門職と連携する際にも、情報を漏れなく正確に共有することが可能です。
医療事故は医療従事者のスキルや経験不足だけでなく、職場のコミュニケーション不全も大きな要因となり得ます。接遇スキルの向上は、安全な医療の実現にも役立ちます。
看護士スタッフの接遇スキル習得には研修開催が早道
看護スタッフの接遇スキル向上には、院内研修の実施が効果的です。
接遇スキル向上のためには、自身の対応が「相手の気持ちに寄り添えているか」「相手がしてほしいと思うような接し方になっているか」を客観的にチェックしてもらい、改善ポイントを指摘してもらう必要があります。
そのために看護チーム単位で研修に参加し、ロールプレイングやディスカッションといったワークに取り組むことでチームの一体感が高まり、現場ですぐに発揮できるコミュニケーション力とチームワークを習得できます。
医療接遇研修の内容
次に、医療接遇研修で学べる内容について解説していきます。
医療接遇・PSの考え方
まずは医療接遇の概念や、患者満足度(PS)の考え方について学びます。
医療接遇では患者と対等な立場でありながら、その気持ちに寄り添った対応をすることの重要性を学ばなくてはなりません。またPSの基本として身だしなみや言葉遣い、笑顔といった要素が、看護師にも求められるということを理解します。
ビジネスマナー(話し方、言葉遣い、電話応対等)
話すときの態度や言葉遣い、電話応対などは、接遇の基本といえる部分です。研修では、これらビジネスマナーの習得を目指します。
まず第一印象を決めるものとして、身だしなみは非常に重要です。髪型や爪、制服、化粧にいたるまで、医療従事者にふさわしい清潔感があるか、厳しくチェックします。
話すときには相手の目を見て、相手に体ごと向けて「ちゃんと話を聞いています」と伝わる姿勢をとることが大切です。
言葉遣いは正しい敬語を使うことはもちろん、職員間では当たり前に使用している専門用語も、患者にわかりやすい言葉に言い換えて伝えなくてなりません。また対面でも電話応対時でも、言葉を丁寧かつ正確に伝えるよう心がけます。
研修では、これらのことを実践的に学んでいきます。
クレーム対策
研修では、接遇スキルを活用したクレーム対策についても学ぶことができます。
まずはクレームにならないよう、患者に対して一方的にルールを押し付けず、相手の理解を得ながら丁寧に業務を進めていく姿勢を習得します。そのうえでクレームが発生したときには相手の置かれている状況を理解し、その不満や不安な気持ちを受け止める重要性について理解を深めていきます。
職場でのコミュニケーション
接遇スキルは、職員間のコミュニケーションでも活用できます。
研修では互いに心地よく働くためのコミュニケーションのポイントについて学んでいきます。感謝の言葉や相手を気遣う声かけについて、ディスカッションなどで互いに良いと思った事例を出し合うのも効果的です。
SBおすすめの研修プラン
ここでは、看護士など医療従事者におすすめの接遇研修プランをご紹介します。自院のサービス向上を一押しするプランばかりです。
ディズニー流スマイルトレーニング
笑顔の接客、接遇コミュニケーション
長年ディズニーランドでインストラクターとして実践指導を行っていた石坂秀己さんが実践的にディズニー流のスマイルを伝授。自分だけが笑顔になるだけではなく、周りの人も笑顔にするテクニックなども伝授します。
相手の懐に入るコミュニケーションノウハウ
約30年にわたるアナウンスメント技術を活かした「魚住式スピーチメソッド」を確立、そのノウハウを伝えている魚住りえさん。本講演では、このスピーチメソッドを基本に、独自の「相手の本音を引き出すコミュニケーションノウハウ」を伝授します。
ハードクレーム解決術
クレームに対応する側にも高度な知恵が必要となった今日、突然発生する悪質クレームという「事件」に冷静に対応できるノウハウを伝授します。すべての社会人が遭遇する可能性のあるリスクに、どのように対応するかを理解できます。
日米のディズニーで教わった販売と感動のサービス
95%以上という驚異のリピート率を誇るディズニーリゾート。東京、アメリカのディズニーランドやディズニーストアーで学んだディズニー流「販売と感動のサービス」を、自身の経験をもとにお話しします。
クレーマーなんか怖くない!
~今日から使えるクレーム対応術をお教えします
クレーマー対策の第一歩は、クレームを発生させないことです。本研修では、まず、「クレームを発生させない」ためのコツを学んでいただき、多くの方が陥りがちな対応ミスへの気づきを促します。
「これでよかった」と納得できる看取りの際のコミュニケーション術
埼玉県の療養病棟で勤務する現役の看護師でありながら、「看取りコミュニケーション」をテーマに講演活動も行っている後閑愛実さん。本講演では、現役の看護師だからこそ伝えられる「現場の生の体験」や、そこから得られた「現場初のノウハウ」をお話します。
伝える・伝わる「話し方」のコツ
難病クローン病を患い、想像を絶する闘病生活の中で、「生きる力」を見出したパワーオカリナ奏者のさくらいりょうこさんが、まずは自分を認めて、自分の良さを引き出すコミュニケーション術をお教えします。
看護現場を笑顔に!
新しい対人スキル!『ツッコミュニケーション®』
元漫才師という経験を活かし、笑いの理論をプログラム化した『ツッコミュニケーション』。多くの医療現場で採用されており、チーム力強化やPS向上の成果を上げています。本講演では受講者を巻き込みながら、楽しくコミュニケーション術を学んでいきます。
ホスピタリティの心 ~人間力の原点~
日本のみならず、世界でもホテルランキングで絶えずトップグループを保ち続けるリッツ・カールトン。そのホスピタリティ精神やサービス精神について、元 リッツ・カールトン支社長である高野 登さんが詳しく解説します。
お客様の怒りを笑顔に変える!クレーム対応
リクルートで2000社以上のクレーム対応に接してきた経験をもとに、儲かっている企業のクレームの取扱い方から、怒りを笑顔に変えるクレーム対応法を、事例を交えながら楽しく、分かりやすく解説します。クレーム客をファンに変える秘策をお伝えします。
お客様に愛されるコミュニケーションマナーアップ講座
接客、接遇において第一印象は非常に需要です。本講演では、自分の感情をコントロールする(アンガーマネジメント)方法と、お互いの立場や主張を大切にした自己表現(アサーティブコミュニケーション)術を学びます。
仕事に活かすポジティブ心理学&コミュニケーション
人間のポジティブな面に光をあてる新しい心理学「ポジティブ心理学」。世界で日々研究が進むポジティブ心理学と、日本人のパーソナリティを踏まえたコミュニケーション学を融合させ、具体的な手法に落とし込み解説します。
患者様の心を掴む『クレーム対応』
航空業界で培った「接客マナー」や「クレーム対応」のマインドとスキル、金融業界で培った「ビジネスマナー」をベースにし、医療機関で想定されるクレームへの対処術をお教えします。本研修ではまず現場でどのようなクレームが起きているのか、なぜ起きたのかを考えた後、クレーム対応の基本フローを実習で学びます。
相手の心をグッと掴むサービスマインド
~「あなたが言うなら」と動き出す3ステップ~
利用者さんや患者さんから「また利用したい」と思ってもらうのに大切なものは、ホスピタリティ(接遇)マインドです。組織活性化コンサルタント講師が、相手の心をグッとつかみ、相手の自発的行動を促すコミュニケーション手法をお教えします。
医療従事者のための接遇コミュニケーション研修
この研修では、業界に特化した医療ならではの接遇応対を学びます。医療接遇のためのマインドとすぐに現場で実践できる応対術で、即戦力の人財となります。優しさ、思いやりを形として表現することであなたの働きやすさも格段とアップします。
医療従事者の為のアンガーマネジメント~怒りの感情と上手に付き合おう~
現代ストレス社会、医療現場での仕事は人の生命に直結する大変重圧のかかる中で、的確な判断と対応が求められます。どのような場面に遭遇するか、予測のつかないことが多々発生しうる環境の中で、自分の感情をコントロールし、リスクを未然に防ぐことのできるアンガーマネジメント術を学びます。
一歩先ゆく上級者の接遇マナー
~すぐにできる!思いやりの心のあらわし方~
多忙を極める医療福祉現場で、ともすれば忘れてしまいがちな「思いやりの心」。医療介護者の誰もが持っている「思いやりの心」を、もう一度原点に返って思い出し、その心のあらわし方に磨きをかけるためのコミュニケーション力UPのポイントも分かりやすくお話します。
患者さんの明日を拓く言葉づかいとマナー
患者さんの満足度を高めるためには、言葉とマナーを磨いていくことが必要不可欠です。敬語コミュニケーション講師が、患者さんから求められる言葉づかいについて解説します。研修では、実際に声に出し、体を動かして練習をしていきます。明日からすぐに役立つ内容です。
言いたいことをきちんと伝える “言葉の整理術”
~言葉や声は最も貴重なコミュニケーションツール~
「伝えたつもり」「分かったつもり」が招く様々なトラブルが、人間関係にも影響を及ぼしています。「伝わる表現アドバイザー」である講師が、想いや考えというカタチのないものを相手にしっかり伝える『言葉の整理術』をお教えします。
医療接遇研修の効果を高めるポイント
接遇研修は以下のようなポイントを抑えることで、導入効果がより高まります。
自院が抱える課題を把握し、研修内容に盛り込む
接遇によって改善すべき課題は、看護の現場ごとに異なります。
「患者やその家族からのクレームを減らしたい」あるいは「チーム間のコミュニケーションを円滑にしたい」など、まずは自院の抱える課題を洗い出し、それを解決できる研修プログラムを設計しましょう。
モチベーションを高められる実績ある講師を選ぶ
研修によって参加者のモチベーションを高められるかは、講師の質によっても左右されます。講師に依頼する場合には、実際に講演を聞いた人からの評価などを参考にし、研修で成果を挙げてきた実績のある講師を選定しましょう。
また一般的な接遇ではなく医療接遇に特化した講師であるか、自院と同規模の病院で講演の成果を挙げてきたかどうかもポイントです。講師の過去の講演内容を確認し、自院の課題解決に直結する実績があるかをチェックしましょう。
ロールプレイング等実感できる体験を盛り込む
接遇のスキルは、ただ講義を聞いているだけではなかなか身に付きにくいものです。研修ではできる限り体感型ワークを取り入れて、参加者に接遇の効果を実感してもらいながら進めると効果的でしょう。
特におすすめなのが看護師役と患者役に分かれて実践するロールプレイングです。実際に患者の立場になってみることで、どのような声かけや対応をしてもらえると安心できるかが理解できます。
研修後もフォローを続ける
一度研修を受けただけでは、なかなか現場で接遇を実践できないという看護師も多いでしょう。研修の効果がどれだけ表れているか確認し、研修後のアフターフォローも必要です。
研修の補足が必要なようであれば、フォローアップ研修や動画教材による学習などを取り入れてもよいでしょう。看護スタッフにスキルアップの機会を提供し続け、現場に接遇が根付くまで継続的に取り組むことが大切です。
医療接遇研修で利用満足度を向上!
看護の現場に医療接遇を根付かせることができれば、患者やその家族から信頼を得て、チーム内の人間関係も良好になることが期待できます。
「接遇」という概念に慣れていない看護スタッフには、まず研修でそのメリットを知ってもらうのが効果的です。病院の利用満足度向上のためにも、医療接遇研修の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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