看護師研修はすでに多くの医療現場で実施されています。しかし受講者が、実際の業務で研修で学んだ内容を活かしている実感を、得られないケースも多いのではないでしょうか。
今回は、現場で役立つ看護師研修の3つのポイントや、研修の目的とメリット、受講者ごとのおすすめ研修テーマを紹介します。
現場で役立つ看護師研修がなかなか実施できない理由
看護師研修が「実務には役に立たない」と思われてしまう理由は、主に以下の3つが挙げられます。
内容が現場のニーズにそぐわない
まずは研修の内容が現場のニーズに合っていないことです。
看護師に求められる知識や技術は、経験年数や診療科目、日頃接する患者の特性などによっても異なります。例えば新人看護師には基礎的な知識や技術が、中堅看護師には担当領域の専門性を高めることや、指導力などが求められます。また小児科と循環器内科とでは、患者へのケアの仕方が変わります。
本来はこうした個々のニーズに合わせる必要があります。しかし現実には大まかなテーマで実施されがちです。このため、研修の満足度が大きく低下してしまうのです。
受講者が不規則な勤務体系なので時間が取りにくい
受講者である看護師は夜勤など不規則な勤務体系で、なかなか研修のための時間が確保できません。
研修担当者にとっては「研修にどれだけ参加してくれるか分からない」「日程の調整が大変」、受講者にとっては「仕事の調整が大変」「効果の薄い研修に参加する時間があったら、休んで体力を回復したい」というのが本音でしょう。
受講者が研修で得た知識や技術が現場で活かしきれない
受講者がせっかく研修で新しい知識や技術を学んでも、現場で活かすシーンで尻込みしてしまうケースもあります。
例えば、研修で学んだやり方が職場での従来の方法と違うことは、起こりがちな課題です。受講者が新たに学んでくる内容が事前にチームに共有されていないと、せっかく新しい知識やスキルを持ち帰ろうとしていても、「従来のやり方がよい」と現場で反発される可能性もあります。
効果の高い看護師研修を実施する3つのポイント
現場で役立つ看護師研修を実施するためには、以下の3つのポイントを意識することが大切です。
1.受講者のクリニカルラダーを意識する
まずは研修の受講者のクリニカルラダーを意識して内容を設定しましょう。
クリニカルラダーとは、看護師のキャリア指標のことです。経験年数や職務内容、専門性や役職に応じて、いくつかの段階に分類されます。例えば新人看護師はクリニカルラダーの1段階目にあたります。
一人ひとりのキャリアやポジションに応じたプログラムを組めば、学んだ内容を実務で活かしやすい研修が実現できます。
2.オンライン研修を取り入れる
受講者が忙しく、対面型研修に参加するのが難しいようであれば、オンライン研修という選択肢もあります。
オンライン研修であれば、受講者はインターネットを通じて職場のみならず自宅からも参加することができ、服装も比較的自由です。
オンライン研修には、研修内容を選べる「自己学習型」や、講師や他の受講者とコミュニケーションが取れる「インタラクティブ型」などがあります。受講者のニーズに合わせて、柔軟に研修スタイルを組み合わせましょう。
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3.研修の前と後にも受講者を組織でサポートする
研修の前後にも受講者をチームでサポートする必要があります。学んだことを活かせる環境を作るため、チーム全体で支援体制を整えましょう。
まずは研修実施前にチームに研修の目的を伝え、その目的達成のために協力が必要であることを理解してもらうようにしましょう。研修の内容を知ってもらったうえで、実施後もチーム内の他のスタッフに協力してもらわなくてはなりません。受講者が研修で身に付けた知識やスキルを現場で発揮できるように、「学んできた方法でやってみて」と現場で機会を提供することなどするとよいでしょう。
看護師研修の目的とメリット
次に、何のために看護師研修が必要なのか、受講者の立場からその目的とメリットを解説します。
現場で活かせるスキルと知識の向上
看護師研修の目的は第一に、現場で必要なスキルや知識の向上にあります。
看護師研修では、医学の進歩や医療技術の進化に伴う、最新の看護についても学びます。かつては正しいと考えられていても、現在では望ましくない方法もあるため、常にアップデートすることが大切です。また安全管理や医療倫理なども、看護の現場における重要な知識です。
勤務先の枠を超えた学びによる刺激
外部研修の場合、職場の外の世界を見て、刺激を得られることも大きなメリットです。
看護師は仕事柄、勤務時間の多くを同じメンバーと過ごし、比較的閉鎖的な環境で働く傾向にあります。しかし外部研修では、自分の職場以外のやり方を学んだり、他の職場で働く看護師と情報交換する機会が得られます。
小さな組織の中で悩みを抱えている場合、新たな視点やアイデアを得ることで、問題の解決策が見えてくる可能性も高いでしょう。
チームワーク強化とコミュニケーションの円滑化
看護師研修には、チームワークの強化やコミュニケーションを円滑にする狙いもあります。
例えば職場内研修の場合、チームメンバーとの関係性や役割を見直す機会となり、チームの一体感や協調性が高まる効果も期待できます。
またコミュニケーション術として看護師にとって大切な「患者の感情に共感するためのスキル」についても学ぶこともあります。患者の反応やその背後にある感情を受け入れ、相手をサポートしたいという意思表示をすることが大切です。
したがって、研修参加は本人だけでなくチームや患者にも好影響を及ぼすのです。
キャリアアップの機会提供
研修は看護師個人のキャリアアップのチャンスです。
例えば、妊娠・出産などを理由に一度現場を離れた看護師も、看護師研修で学び直しをすれば復職しやすくなります。
あるいは「特定看護師」としてキャリアアップを目指すことも可能です。特定看護師とは、「特定行為研修」を修了した看護師のことで、高度な知識・技術を有している証明になります。これまでよりも業務の幅が広がり、より条件の良い職場への転職や、給与アップが期待できます。
受講者ごとのおすすめ研修のテーマ
最後に、新人、中堅、主任・管理職看護師のそれぞれに向けた、おすすめの研修テーマを3パターン紹介します。
新人看護師向け
新人看護師向けの研修では、基礎的な知識や看護技術を身に付けられるプログラムを選びましょう。
体温や血圧などのバイタルサインの測定と記録、注射などの医療行為、薬剤の種類や作用・副作用、投与方法、感染予防や廃棄物処理といった衛生管理の知識などです。他にも看護の基本的な思考法や、倫理・法律などについて学ぶこともできます。
新人看護師が研修で到達すべきは、現場で即戦力となれる知識や技術の習得です。さらに看護のプロセスをよく理解し、求められる医療倫理やコンプライアンスを内面化するまでを目指します。
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中堅看護師向け
中堅看護師向けの研修では、専門分野の最新知識や、医療行為の技術に関するプログラムがおすすめです。
中堅看護師は主任や師長といった役職の1つ前の段階で、チームにとっては中核的な存在となります。まずは管理職や新人からも頼りにされる水準にまで、診療科目についての専門的な知見を深めなければなりません。
また新人看護師や中途採用者の指導役などを任される機会が増えます。そのため、チーム全体の目標達成を目指すためのリーダーシップ、相手の立場を尊重して意思を引き出すコミュニケーション術などを学ぶのもおすすめです。
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主任・管理職看護師向け
主任・管理職看護師向けには、チームの管理・運営、リーダーシップや部下の指導方法といったテーマの研修がおすすめです。
この階層の看護師には、看護部門のマネジメント、日々の業務の品質や目標管理に関する知識やスキルが求められます。そのため、チームの方針の策定、メンバーのモチベーション維持や向上、予算管理の方法などを学びます。
最終的には、看護部門の管理や運営を信頼して任せられる人材に育成するのが目標です。
看護師向け研修もSBにおまかせ!
看護師研修は、現場で役立てられなければ意味がありません。そのためには、受講者のクリニカルラダーを意識すること、忙しい受講者のためにオンライン研修も取り入れること、そして研修成果を発揮できるよう、組織全体で受講者を支援することの3つが大切です。
弊社では、モチベーションやリーダーシップ、コミュニケーションスキル・顧客満足度アップ、医療従事者のための危機管理など、看護師向けの研修も豊富に取り扱っています(※専門技術・医療スキル習得研修を除く)。新人から主任クラスまで、受講者のレベルに合わせてプランをご提案します。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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