人材不足やチームナーシングの普及などにより、看護師にもリーダーシップが求められています。
この記事では看護の仕事の現状や、看護師にリーダーシップが求められる理由、さらにリーダーシップとは具体的にどのようなスキルかを解説します。また当社おすすめの看護師リーダーシップの研修プランを紹介しているので、ぜひ次回の院内研修としてご検討ください!
看護師にリーダーシップが求められる理由
まず看護師にリーダーシップが求められるようになった背景について考えます。
看護師リーダーが離職率低下のカギに
今医療の現場で大きな問題となっているのが、看護師の離職率の高さです。
日本看護協会が2023年に公表した「病院看護実態調査 報告書」によると、2022年度の正規雇用看護職員の離職率は11.8%でした。そのうち新卒採用者の離職率が10.2%、既卒採用者の離職率は16.6%と、採用されたうち10人に1人以上の割合で看護師が離職していることになります。
看護師の離職原因は職場の人間関係や労働条件などさまざまですが、離職防止の対策として看護師のリーダーシップ向上が有効であることが、これまでの研究調査で明らかになっています。
例えば、みらいの看護部研究会が発表したマーケティングレポート「看護師の離職要因と離職がおよぼす影響」では、看護管理者のリーダーシップが高まるほど、チームのメンバーの離職率が低下するという相関関係を指摘しています。
実際に、北海道の宮の森記念病院でリーダーシップやチームビルディングなどに関する研修を実施してリーダー人材の育成を図ったところ、組織内のコミュニケーションが活性化されて、以前は40%近かった離職率が10%をきるという結果になりました(2018年時点でのデータ)。
このように看護管理者がリーダーシップを発揮し、メンバーに組織の方針を共有、適切な指導や成長の機会を提供することで、離職率の低下につながることがわかっています。
チームナーシングの需要拡大
今、医療の現場でチームナーシングが重視されていることも、看護師にリーダーシップが必要な理由の一つです。
チームナーシングとは、経験年数や専門分野の異なる看護師で小人数のチームをつくり、チーム全体で担当する患者のケアにあたる看護方式です。そしてチームナーシング制ではチームをまとめる看護リーダーの存在が重要になります。
看護リーダーは、メンバーの特性を活かした業務の割り振り、新人看護師の育成、忙しいメンバーのフォローを担います。さらには患者やその家族からのクレーム、医師や他部署との連携においても中心的役割を果たさなくてはなりません。看護リーダーがリーダーシップのスキルを身に付けることで、メンバーそれぞれが能力を発揮して、チームとしての成果が挙がる仕組みです。
株式会社pekoが2023年に実施した調査によると、全国762の病院の57.2%がチームナーシング制を採用しています。
このように、チームナーシング制は主要な看護方式として普及拡大しており、看護管理者のリーダーシップが問われるようになっています。
リーダーシップ力不足を痛感…看護リーダーの悩み
各病院でチームナーシング制が普及する一方、現場では自分自身にリーダーという役割にふさわしいスキルが備わっていないと悩む看護師が少なくありません。
看護学生や若手看護師向けのメディア「看護roo!」がリーダー経験のある看護師を対象として実施したアンケートでは「病棟全体を把握するのが難しい」「指示受け・指示出しが難しい」「業務の担当割り振りが難しい」といった回答が見られました。
例えば、リーダーには受け持ちの病棟の状況全体を把握し、メンバーの強みや業務負担量を加味して、仕事を指示する役目があります。しかし医療の現場は常に状況が変化しており、患者の容体が急変した場合などは、瞬時の判断力がなくては適切な指示を出すことができません。
さらにチームナーシング制の看護リーダーは医師との連携の要でもあり、医師から指示を受けて、各メンバーにそれを伝える必要があります。もしも看護リーダーの医師への確認やメンバーへの指示出しに何かミスがあれば、重大な医療事故を引き起こしかねないのです。
このように、看護リーダーには看護の知識やスキルだけでなく、マネジメントやコミュニケーションなどリーダーとしてのスキルが必要不可欠となります。
リーダーシップは才能ではなく、学ぶことができるスキル
リーダーシップは持って生まれた才能や性格の問題と考える人もいますが、実際には後天的に習得できるスキルです。
看護師の場合でも、チームナーシングのリーダーの役割に向き不向きがあるわけではなく、経験や学習によって誰もが身に付けることができます。具体的には研修やセミナーに参加し、そこで学んだことを現場で実践することの繰り返しによって、リーダーとしてスキルアップできます。
看護師のリーダーシップに必要なスキル
それでは看護師のリーダーシップに求められるのは、具体的にどのようなスキルでしょうか。ここでは代表的な6つのスキルについて解説します。
①チームビルディング・組織マネジメント
リーダーは様々な経験年数、スキルを有する看護師をチームとしてまとめあげ、チームワークでより良い看護を提供できるようマネジメントしなくてはなりません。
チームで複数人の患者を担当するとき、個々の看護師が勝手に動いてしまうと効率的な看護が行えません。リーダーはまず全員で協力して看護にあたるという意識をメンバーと共有する必要があります。そのうえで、各メンバーの経験値やスキルに基づき、それぞれに最適な業務を割り振って、チーム全体の動きを管理します。
また緊急の手術や入院があった場合などは、誰がイレギュラーな業務に対応できるか瞬時に判断しなくてはならないため、常に現場の状況を把握しておく管理能力も求められます。
②コミュニケーションスキル(傾聴力、伝達力)
チームナーシング制で業務を円滑に進めるためには、中心となるリーダーのコミュニケーションスキルが重要になります。
医師からの看護の指示などは、リーダーが明確にチーム全体に伝える伝達力が重要です。リーダーが曖昧で誤解を招きやすいような伝え方をしてしまうと、メンバー間の連携がうまくいかなかったり、チーム全体が間違った方向に動いてしまったりする可能性があります。
またリーダーは一方的に指示を出すだけでなく、メンバーからの意見にしっかりと耳を傾ける傾聴力も必要です。リーダーが聴く力を備えていることで、看護に取り組むうえで重要な情報を漏れなくキャッチでき、メンバーの心情をうまくくみ取れるようになります。結果、メンバーとの信頼関係を構築し、チーム内に心理的安全性が生まれます。
心理的安全性とは、メンバーが何を言っても許される雰囲気であり、メンバー内で自由な発言を引き出せるため、チームの生産性や創造性がアップするという研究報告もあります。傾聴力はこの心理的安全性を醸成するために必要不可欠なスキルといえます。
さらに傾聴力は、患者とのコミュニケーションにも役立ち、結果、質の高い看護を提供することができるようになります。
③目標設定・問題解決能力
リーダーにはチーム全体で取り組むべき課題を明確にし、その解決のために的確な目標を設定する力も求められます。
明確な目標があることで、各メンバーの業務へのモチベーションが高まり、チームとしての一体感も向上します。
例えば「連絡や報告の漏れが多く、連携がうまく取れていない」という課題がある場合、チーム間のコミュニケーションの質を高め、まずは連絡・報告のミス50%減を目指すなどのチーム全体の目標を設定します。
また目標達成を目指して業務に取り組むなかで、チームはさまざまな問題に直面します。その際にはリーダーとして、どうすれば問題を解決できるか分析し、メンバーに的確な指示を出す力も必要です。
④コーチング・メンター
看護師のリーダーシップには、メンバーの指導も含まれます。指導で意識しなくてはならないのが、ただ教えられたとおりに動くのではなく、自分の頭で考えて自発的に行動できる人材を育成することです。
そのためリーダーがメンバーの指導において身に付けるべきなのは、コーチングのスキルです。行動を指示するのではなく、対話によって相手の思考を誘導し、やるべきことを自分自身で気づかせます。
例えば経験の浅い看護師が患者からのクレーム対応で悩んでいるとき、「あなたが患者さんだったら、どうしてもらったら嬉しいと感じる?」と問いかけることで相手に考えさせ、正しい答えへと導いていきます。
新人の育成のために先輩看護師がマンツーマンで指導にあたるメンターという制度もありますが、この場合も新人の自律的な成長を促すリーダーシップが求められます。
⑤危機管理スキル
看護の現場を取り仕切るリーダーには、高い危機管理能力も必要です。医療事故などを未然に防ぎ、万が一事故があったときには被害を最小限に抑えることもリーダーの役割です。
まずは日頃からチーム内の危機意識を高め、事故が起きにくい看護の体制づくりに務めます。そのためには、予めどのようなリスクが考えられるか分析し、メンバーと共有しておくことが大切です。
また、たとえ小さなものであっても、チーム内で医療事故につながり得るミスが起きたときには、すぐに業務改善の施策を講じて再発防止に務めなくてはなりません。そして重大な事故が起きたときには、事態に冷静に対処する能力が求められます。
⑥業務知識
リーダーは日常の看護の業務においても、他のメンバーから頼りにされる存在です。そのため、どのような場面でも適切な指示やアドバイスが行えるよう、看護についての実践的で幅広い知識を有していなくてはなりません。
例えば、新人看護師が珍しい症例の患者の看護にあたるとき、より経験豊富なリ看護リーダーのサポートを必要とするでしょう。誰にも助言を得られない環境では、誤った対応をしてしまう可能性もあります。
知識や経験が豊富な看護リーダーがすべての患者の状況と正しい処置を把握しておくことで、メンバーに必要な助言を与えて適切な看護が行えるのです。そのため、リーダーとしての役割を果たすには常に学ぶ姿勢を持ち続け、知識をアップデートすることも大切です。
リーダーシップが身につくSBおすすめの研修プラン
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看護リーダーがリーダーシップを発揮できれば、看護師の定着率向上や、より質の高い看護の実現につながります。
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