少子高齢化や情報技術の発達、家族の多様化などにより、教育現場はさまざまな対応に追われています。
しかし、実際、教員は労働時間が過密になり、自己成長の機会を持つことも難しいのが現状です。
とはいえ、教育の過労問題や不祥事が取り上げられる中、やはり新しい知識やスキルをアップデートしていくことは学校運営において必須の課題といえます。
今回は、教員研修の必要性や内容、種類など、教員研修の企画時に必要なポイントを解説します。
教員研修の必要性
教員研修のニーズが高まっている要因としては、どんな背景があるのでしょうか。
次の章で教員研修の必要性について詳しく解説します。
1.教育現場の変化への適応
近年は、人の価値観も多種多様になりつつあるうえ、生活や仕事のやり方をがらりと変える新たな技術がどんどん登場しています。教育現場も例外ではありません。
例えば2024年度からは、学校にデジタル教育書が本格導入されます。小学校5年生から中学校3年生の英語を皮切りに、教員はそれに合わせた授業や学習フォローを行わなければなりません。
また教員全体の年代構成には偏りがあります。大量採用期に当たる現在の40〜50代前半に対し、実は中堅層や若手教員が多くありません。そして最多世代の退職もすぐ近くに迫っています。量的にも質的にも、そうした状況や変化にも対応できる教員育成が急がれています。
2.業務効率化による働き方改善
教員の多忙さは深刻な問題です。
文部科学省が小中高校の常勤教員に対して実施した「2022年度教員勤務実態調査」によると、平日1日当たりの平均勤務時間は、小学校が10時間45分、中学校は11時間1分、高校が10時間6分という結果になりました。法定で定められた勤務時間7時間40分を大きく上回る結果であり、いまだに過労状況が改善されていないことがうかがえます。
また、過労やストレスによる精神疾患も深刻です。文部科学省の「令和3年度 公立学校教職員の人事行政状況調査について」では、「精神疾患による病気休職者数」が前年度比694人増の5,897人と、過去最多を記録したことが報告されています。
研修を通じて業務効率化やストレス管理術を身につけることは、これらの問題の解決に役立ちます。ひいては働き方やワークライフバランスの改善につながるでしょう。
3.教員免許更新制廃止による現場未経験人材の育成
2022年7月、教員不足の解消などを目的に「教員免許更新制」が廃止されました。教員免許状の有効期間が撤廃されたのです。
その結果、教育現場の経験年数に関わらず、未経験者やブランク明けの復職者を採用する可能性が高まりました。さらに文部科学省は、教員の研修受講履歴を可視化するシステムを導入しました。これにより教員の質の向上を目指す考えです。
現場未経験の教員を育成するためにも、教員研修への需要が急増しています。
4.研修は教員にとって権利であり義務
教育基本法第9条は「学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に勤めなければならない」としています。加えて教育公務員特例法第21条には、「教育公務員は、その職務を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」とも規定されています。
すなわち教員には、「研修を受ける義務と権利」を明示した法律が存在するのです。
教員研修で取り入れたい5つのテーマ
教員向け研修には、実際にはどのような研修プログラムがあるのでしょうか。ここでは代表的な5つを紹介しましょう。
①ICT活用、デジタル時代の教育技術
まずは教育現場でのICT(情報通信技術)活用です。人に教える立場である教員自身が、新しい技術やツールについて深く理解し、活用できるようにならなければいけません。例えば、授業へのタブレット活用、生徒への情報モラル教育、プログラミング教育、学力テスト結果のデータ分析など、さまざまな研修プログラムがあります。
タブレット活用は、生徒にとっては直観的で、習熟度・理解度に応じ個別にカスタマイズされた学習を可能にします。また教員には、授業の準備や管理・評価作業の効率化などのメリットをもたらします。
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ICTを授業で、学校経営で活かす
公立小中学校教諭・校長、県教育委員会主査、教育事務所長などを経て、文部科学省のICT活用教育アドバイザーも歴任した講師が、ICTを活用した学校経営のヒントを伝授します。豊富な事例をもとに最先端のICT活用術をわかりやすく解説します。
「教えない勇気を持つ教師になる!」
~ICT時代に必要なのはティーチャーではなくコーチ~
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②授業管理や学級経営などの業務スキル向上
2つ目は授業管理や学級経営など、業務スキルを向上させる手法です。
教員は仕事量が多いため、過重労働に陥りがちです。心身の不調にまで追いつめられる人も少なくありません。しかし日々の業務を効率的に行う手法を学ぶことで、それを緩和させられます。
一例として、各学校の課題をデータなど科学的根拠から発見し、整理・改善を図る分析ワークショップや、業務ごとのコスト意識の徹底、タイムマネジメントに焦点を当てた研修などがあります。
これらの知識やスキルは、教員の業務生産性を向上させ、過重労働を軽減するのにも役立ちます。
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「忙しいのは当たり前、児童生徒のためなら仕方がない」を見つめなおす
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~先延ばしにしない仕事の進め方を身につける~
日常業務に忙殺されやすい教職員の方々に、仕事の効率を高めるコツを紹介しながら、タイムマネジメントの手法をやさしく紹介します。時間の可視化やタスク管理のコツなど効果的なタイムマネジメント法を学んだ後に、実際にワークで応用的な時間管理を実践。
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③多様化する生徒・保護者とそのニーズへの対応
3つ目は多様化する生徒・保護者とそのニーズへの対応です。
現代は教育の場においても、多様な生徒への理解やノーマライゼーションが重視されています。教員は生徒それぞれが持つ個々のバックグラウンドや能力もフラットに認識・評価し、それに応じた教育を提供しなくてはなりません。
そこで多文化共生をテーマにした研修や、発達障害や学習障害などの特別支援教育についての研修へも関心が高まっています。
全ての生徒が等しく質の高い教育を受けられるようにするため、多様なニーズに適切に対応できる能力が教員に求められているのです。
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子どもたちのSOSを見逃さない
~学習障害から考える未来~
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10年後の子どもに必要な
「見えない学力」の育て方
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保護者への対応
地域一のモンスタークレーマーの親を味方にしたクレーム対応術!
~相手との心の距離をグッと縮めるとっておきの方法~
18年の教員生活で適切な保護者対応のすべを身に着けた講師が、クレーマーを自身の応援者に変える対応策を、自身の経験を通してお話します。さまざまなクレームに心が折れそうになった時のセルフケアも合わせて紹介します。
これだけは押さえておきたい教職員のための応対マナー
教職員にとっての「応対力」とは
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④専門性の向上とキャリア開発
4つ目は、専門性の向上とキャリア開発です。
教員にとっての専門性には、例えば担当教科の詳しい教え方や、教科に関する最新知識などがあります。
特に高校レベルになると、教科についてかなり高度な知識が必要で、それらを生徒一人ひとりに分かりやすく教えるには複雑なスキルが求められます。教育方法や教科知識のアップデートも欠かせません。
また一般的なビジネスパーソンと同様、教員のキャリア開発にも注目が集まっているため、キャリアデザイン研修も人気があります。専門性の向上は、教員にとってのキャリア戦略の一環でもあります。
キャリア開発が進み専門性やコミュニケーション能力が磨かれると、教育の質が高まって生徒の学習成果にポジティブな影響がもたらされる可能性も高まります。
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⑤メンタルヘルスとストレス管理
最後は、メンタルヘルスとストレス管理です。
教員のメンタルヘルスをテーマにした研修は、健康で持続可能なキャリアを築き、生徒により良い教育を提供するためにも重要です。
研修では例えば、メンタル面の不調を予防するストレスマネジメントの方法も学べます。自分がストレスを受けやすい状況を知り、その対処方法について理解を深めるのです。また人間関係を円滑に保つための職場のコミュニケーション術や、生徒・保護者とのトラブル事例、「なぜ本音を押さえこんでしまうのか」を考えるプログラムなどもあります。
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教員研修の種類
最後に、教員研修の分類について解説します。場所や目的、内容などにおいて主に3つに分けられます。
教員研修プログラムの種類
教員が行う研修の種類は、「校内研修」、「校外研修」、「自主研修」の3つに分けられます。
実施場所による分類方法ですが、それぞれの研修の中で多種多様な研修や勉強会が開催されています。
校内研修:基本から応用まで
校内研修は、文字通り学校の中で行われる研修です。目的は、現場で教員同士が連携して知識や技術を共有し、学校全体の教育品質・効果を向上させることです。
教育理論の学習や公開研究授業、教員同士での悩み相談など、基本から応用まで、教員の発案によりさまざまな取り組みが行われています。
校外研修:新しい視点と学びの場
校外研修は、教員にとって学校外の環境で学ぶ場です。主に国や自治体、教育委員会、民間企業などが実施しています。
教員はいつもの学校を離れ、新しい視点で実践的な経験を積むことができます。さらに参加することで、教育と社会との連携促進にもつながります。
一例として、校長・教頭を対象にしたリーダー研修や、優先度の高い教育トピックスについて学ぶ喫緊課題研修などがあります。
自主研修:個人の成長と専門性の向上
自主研修は、個々の教員が自らの興味や専門分野に焦点を当てて受講し、自己成長やスキル向上を図る研修です。
民間企業やNPO等によって全国各地でさまざまなテーマの研究会や勉強会、セミナーが開催されており、オンラインセミナーなど、自宅から気軽に参加できるものもあります。
教員研修もシステムブレーンにおまかせ
教員は、変化する教育現場の要求に応えながら、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出すために、ICT活用や多様な生徒への対応、業務効率化・ストレス管理などのスキルを習得する必要があります。
システムブレーンでは、教員向けの研修講師派遣を行っています。
講師は15,500人以上が在籍しており、学校市場担当スタッフがテーマや予算に合わせて最適な講師・研修プランをご提案します。
また、人気の高い研修形態であるオンライン研修についても、最新かつ効果的な手法を用いて運営サポートをしています。お気軽にお問い合わせください。
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