教員の不祥事が度々ニュースで話題になり、世間の学校に対する信頼は大きく揺らいでいます。そのため、学校側でコンプライアンスの重要性を再確認するための研修が積極的に実施されています。
今回は教員向けコンプライアンス研修の内容や、当社おすすめの研修プランをご紹介しています。学校関係者の方はぜひ参考にしてください。

ニュースで取りざたされる教職員の不祥事

教員による不祥事の代表的なものが、児童生徒に対する体罰です。授業や部活動の時間に、教員が指導と称して生徒を叩くという事件は後を絶ちません。身体的暴力以外にも暴言やSNSでの中傷によって児童やその家族に精神的苦痛を与えるケースもあります。

さらには18歳未満へのわいせつ行為や飲酒運転など、社会人としての倫理観が疑われるような事件も度々起きています。また故意でない場合でも、教員が生徒の個人情報が記載された書類やデータを紛失するといったケースは、責任感の欠如によるものといえるでしょう。

実際に文部科学省が令和3年度に実施した「公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、懲戒処分または訓告等を受けた教職員の数は4,674人という結果でした。前年度から573人の増加となっており、世間が教職員に向ける目はますます厳しくなっています。

教員のコンプライアンス研修の必要性

次に、なぜ今学校がコンプライアンス研修を実施しなくてはならないのか、その理由について解説していきます。

不祥事防止への意識づけ

教員は自身の行動に問題があると思わずに不祥事を起こしているケースがあります。それらの教員は、まずどのようなことが問題になるのかを研修で学ばなくてはなりません。

特に経験年数が長い教員の場合、体罰や暴言、個人情報の不適切な取り扱いに関して「昔はこれで何も問題なかった」という感覚が抜けきっていないケースも多いでしょう。そうした行為が生徒を深く傷つけること、また自身も懲戒処分などによって大きなダメージを受けることを理解させ、仕事に対する教員の意識改革を行う必要があります。

コンプライアンス研修では、体罰などの近年の具体的事例について説明されるため、不祥事に関する教員側の意識のアップデートが可能です。

公務員としての法令等遵守義務を再確認

教員には地方公務員として法令を遵守する義務があります。研修で公務員の義務について定められた法律について学ぶことができれば、教員はコンプライアンスを守る重要性について再確認することできます。

教職員の行動については、地方公務員法や教育公務員特例法、学校教育法などによって、守るべき原則が定められています。

例えば地方公務員法の第33条では、「信用失墜行為の禁止」として「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」と明記されています。例え法律に違反していないとしても、倫理的に問題のある行為は市民からの信用を失うものとして、禁止されているのです。

また学校教育法第11条では、教員による体罰もはっきりと禁止されています。これ以外にも各都道府県に学校職員服務規程などが定められており、すべての教員は教育公務員として自身が守るべき法令や服務規程などを知っておかなくてはなりません。

これらは採用試験時に出題される内容ではありますが、服務規程は定期的に更新されるため、教員は常に最新の服務規程を認識しておく必要があります

保護者からの信頼を獲得

教員へのコンプライアンス研修は、保護者との信頼関係構築のためにも必要です。研修によって一人ひとりの教員の意識がアップデートされれば、保護者も学校を信頼できるようになり、学校教育への理解や協力が得やすくなるでしょう

教員のほとんどは一般企業などの就業経験もなく、大学を卒業してからすぐに学校という閉鎖的な社会に入ることになります。そのため社会人としてのモラルや常識に関して、保護者との間に乖離があり、その点で保護者から不信を抱かれるケースもしばしばです。保護者が学校側に求めるものとして「先生の再教育」という声が上がるのは、こうした現状によるものでしょう。

研修によって一般的な社会人としてのモラルや常識を身に付けることが、保護者からの信頼獲得につながります。

そもそもコンプライアンスとは?

コンプライアンスとは、狭義の意味では法令を守ることです。一般企業においてはそこに社内の服務規程に従うことという意味が含まれます。

しかし法律や社内規定に従うことは、社会人として当たり前のことです。そのためコンプライアンス遵守というと、多くの場合は法令や服務規程に限らず、社会の一員として求められている規範やルール、良識に従って行動することが求められます

教員であれば、生徒や保護者、市民からの信頼を裏切らないよう努め、さらには教育の質を高めるような行動をとらなくてはなりません。しかし法令のように厳格な定義のないものについては、個々の認識によって違いが生じてくるため、研修で意識レベルの統一を図ることが重要といえるでしょう。

コンプライアンス研修の内容

次に、コンプライアンス研修ではどのようなことが学べるのか、具体的な内容について解説していきます。

コンプライアンスの基本の考え方

コンプライアンスというと、犯罪行為などを思い浮かべて「自分とは関係ないテーマだ」と思い込んでしまう教員もいます。そのため、研修はまず「コンプライアンスとは何か」を解説し、すべての受講者に自分事として捉えてもらうことからスタートします。

研修ではコンプライアンス違反というのが、生徒への不適切な指導、飲酒による問題行動、生徒の個人情報の間違った管理などを含むことを学びます。それによって受講者は「自分の言動にも思い当たる節がある」という気づきが得られるでしょう。

そして教員のコンプライアンス遵守とは、何よりも生徒や保護者、市民からの信頼を裏切らないことが重要であるという意識を醸成します。

服務規程・関連法規

研修では教員、そして公務員として従わなくてはならない服務規程や関連法規についても学びます。これらに違反すると懲戒免職や訓告といった処分を受けることになるため、教員としての必須の知識です。

教員が知っておかなくてはならない法律は、主に憲法、地方公務員法、教育公務員特例法、学校教育法、いじめ防止対策推進法などです。これにより体罰、わいせつ行為、交通違反、各種ハラスメント、個人情報の流出、不適切な会計処理、贈答品の受け取りなどはすべて処分の対象となり得ます。また児童の人権を無視した行為も同様です。

研修でこれらの法令や服務規程の知識を身に付けておけば、教員は業務や日常生活において正しい行動が取れるようになるでしょう。

不祥事の事例集

コンプライアンス研修で実際の不祥事の事例に触れれば、受講者も身近な問題として感じられます。

教員の不祥事の事例は主に「体罰」「わいせつ行為」「個人情報流出」「交通違反」「不正な会計処理」などの5つに分類できます。それぞれの代表的な事例と、関連する法令などは以下のとおりです。

不祥事の種類 具体例 関連法
体罰
  • 部活動の指導としてボールをぶつける
  • 言うことを聞かない生徒の頭を叩く
  • 生徒の暴言にカッとなって殴る
  • 刑法
  • 学校教育法 等
わいせつ行為
  • 生徒と密室で2人きりになる身体を触るなどする
  • 18歳未満の少女と性的関係を持つ
  • 学校の更衣室で盗撮を行う
  • 刑法
  • 児童福祉法
  • 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 等
個人情報流出
  • 生徒の個人情報が入ったUSBメモリを電車内などで紛失する
  • 校内で生徒の家庭環境などが記された書類を紛失し、それが後日SNSなどで公開される
  • テストの答案用紙を無許可で自宅に持ち帰ろうとし、その帰り道に紛失する。
  • 個人情報保護法
  • 地方公務員法 等
交通違反
  • 携帯電話を操作しながら車を運転した。
  • 前日に遅くまで飲酒した朝、アルコールが抜けていない状態で車を運転した。
  • 運転中に一旦停止の看板を無視した。
  • 道路交通法
  • 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 等
不正な会計処理
  • 生徒から徴収したお金を、私的な目的で流用した。
  • 虚偽の申請で通勤手当を不正に受給した。
  • 刑法
  • 地方公務員法 等

研修ではより多くの事例に触れることができ、さらにその後コンプライアンス違反をした教員がどのようなペナルティを負ったかまで確認することができます。

チェックシートで自己の振り返り

研修は講義形式で話を聞くだけではなく、チェックシートなどを活用したワークの時間もあります。自分にも身に覚えがあるチェック項目を見ると、受講者の注意力と研修テーマへの感心はさらに高まるでしょう。

チェック項目の例には以下のようなものがあります。

  • 指導中に児童の身体に不必要に触れていないか
  • 児童の人格を否定する発言をしていないか
  • 児童とSNSやメール、LINEなどで個人的なやり取りをしていないか
  • 児童の家庭の事情などの情報を勤務時間外に他言したことはないか
  • 携帯電話を操作しながら車を運転したことはないか

研修時にあてはまる項目があったという教員もチェックシートが自己の行動を振り返る機会となり、不祥事の防止につながります。

具体的な防止策

研修では教員のそれぞれの問題行動に対する具体的な防止策についても学ぶことができます。教員一人ひとりに防止策の正しい知識が身に付いていれば、教育現場での不祥事を未然に防ぐことができるでしょう。

以下は、研修で学ぶことができる不祥事防止策の代表的なものです。

不祥事の種類 防止策の例
個人情報流出
  • 個人情報を収集する際は、個人情報取扱事務登録簿を確認する
  • 個人情報の持ち出しや複製には管理責任者の許可を取る
  • 職場ごとの個人情報取扱規程を周知させる
  • 個人情報の取り扱いをテーマにした研修を実施する
パワハラ・セクハラ
  • 研修を実施してハラスメントに関する意識を向上する
  • 職場にハラスメントの相談窓口を設置する
体罰・虐待
  • 懲戒と体罰との違いについて職場で話し合う
  • 体罰によらない指導方法について学ぶ
  • 職場全体で人権意識を高める
交通違反
  • 運転者の業務上の義務について学ぶ
  • 飲酒するときは徒歩又は公共交通機関の利用を徹底させる
  • 飲酒と体内アルコール量の変化について学ぶ
  • 飲酒運転の危険性と社会的影響の大きさを理解させる
不正経理・事務
  • 教員の児童生徒からの集金は期日を守り、速やかに支払いをする
  • 教員が集金した公金に関しては、職場ごとに厳格な保管のルールを設ける
  • 集金から保管、支払いまでの流れを可視化する

SBおすすめ教職員対象コンプライアンス研修プラン

最後に、当社おすすめの教職員向けコンプライアンス研修5選をご紹介します。


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加藤美香保

弁護士
千葉商科大学大学院 客員准教授

教育現場におけるコンプライアンスの確立

教育現場の法的課題に対応するための、弁護士による研修プラン。実践的な知識で、学校全体のコンプライアンス遵守を促します。学校管理職や教職員向けに、生徒同士や保護者と教職員など様々な法的トラブルへの対処法を学びます。


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高田しのぶ

オフィス悠々 代表
イライラの消しゴムトレーナー

体罰防止のためのアンガーマネジメント

教職員のアンガーマネジメントを養う研修。教育現場の体罰だけでなくパワハラやDV防止など様々なアンガーマネジメント研修で実績のある講師が、怒りのコントロール方法を伝授。子供への適切な接し方を学ぶことができます。


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赤堀三代治

リスクアドバイザー
コンプライアンスアドバイザー

クレーム・苦情トラブルへの対応力の強化
~保護者への適切な対応力をいかに高めるか~

教職員にもクレーム対応やトラブル処理の力が求められる時代です。リスクアドバイザーによる研修でクレーム対応力を強化。実践的な演習を通じて、保護者との効果的なコミュニケーションを学びます。モンスターペアレントへの対処のポイントも解説。


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和田慎市

静岡県西遠女子学園中学校・高等学校 講師

体罰等指導上のトラブルに陥らないために

教員歴40年以上の講師が、体罰防止の効果的な対策を解説。「懲戒」と「体罰」の区別の仕方など、現代の教育現場で必須の知識が身に付きます。講師自身の実体験に基づく事例と、現場の教職員目線での分かりやすい説明が人気のプランです。


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今井和興

マイブランド プランナー

コンプライアンスと倫理

教職員の不祥事が続出する中で、学校全体の綱紀粛正が求められています。各自治体でコンプライアンス研修を実施してきた講師が、公務員倫理の醸成やコンプライアンス推進のために必要なリスクの管理方法や解決法をワークを通してお教えします。

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教職員のコンプライアンス研修で学校の信頼を高める

教員のコンプライアンス意識を高めるためには研修の実施が効果的です。当社では教員の不祥事防止に役立つ研修プランを複数ご用意しておりますので、興味をお持ちの学校関係者の方はぜひお気軽にご相談ください!


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