近年、教育現場は急速に変化しています。ICTの活用、アクティブラーニングの導入、生徒の多様化に対応するためには、教員が単に指導者としての役割を果たすだけでなく、リーダーとしてのスキルも求められます。
リーダーシップは天性のものではなく、スキルとして習得できるものであり、それには研修が有効です。

そこで、本記事では、教職員のリーダーシップ研修を効果的に開催するため、その目的や方法、内容、成功のポイントを解説。さらに弊社おすすめの研修プランもご紹介します。

なぜ今、教員のリーダーシップ研修が重要なのか?

現代の学校現場は、多様な生徒への対応、複雑化する学校運営、社会に開かれた教育課程の実現など、多くの課題に直面しています。教員には、これらの課題を解決し、子どもたちの成長を支えるために、従来の指導力に加え、具体的に以下のようなリーダーシップが求められています。

1. 学校マネジメントの推進力となるリーダー

2007年に副校長・主幹教諭・指導教諭の新たな職が設置され、学校の自主性・自律性の確立が求められる中で、管理職のリーダーシップと学校組織マネジメントの重要性が指摘されるようになりました。さらに、2015年の中央教育審議会答申では「チームとしての学校」の重要性が示され、教員だけでなく、地域や専門スタッフと協力しながら教育活動を展開することが求められています。このため、管理職を中心としたリーダーシップの発揮が不可欠となり、学校マネジメント機能の強化が課題となっています。

2. 高い危機管理能力と問題解決能力をもつリーダー

近年では新型コロナウイルス感染症の影響を受け、学校の自主的・自立的な取り組みが学びの保障において重要であったことが指摘され、危機的状況におけるリーダーシップの必要性が再確認されました。リーダーシップを発揮することで、教育活動の継続性を確保し、予期せぬ事態にも適切に対応できる体制を整えることのできるリーダーシップが求められています。

3. 人材育成力を向上できるリーダー

新任教諭の早期離職が全国的な課題となっており、東京都では2024年に新任教諭の4.9%が1年以内に退職する事態となっています。この状況から、学校リーダーには教育方針の実行力だけでなく、若手教員の育成力が強く求められるようになっています。人材育成を通じて組織の持続可能性を高めることが、今後の教育現場の安定化につながるため、リーダーとしての役割はますます重要視されています。

教員リーダー研修の目的と必要性

教員リーダーシップ研修の目的は、学校現場の課題を解決し、子どもたちの成長を支えるリーダーを育成することです。特に、児童生徒の学力向上・定着を図るため、授業研究を中心とした校内研修の企画・運営を推進するリーダーを育成し、教員が主体的に学び合う組織づくりや研究推進を行うことで、教員一人ひとりの授業力の向上を図り、授業改善につなげることも目的としています。

教員リーダー研修の対象者とそれぞれの役割・必要なスキル

教員リーダー研修は、学校組織全体でリーダーシップを発揮し、教育の質を高めることを目的としています。そのため、対象者は多岐にわたり、それぞれの役割と必要なスキルも異なります。

役割 求められるスキル
校長
  • 校務をつかさどり、所属職員を監督する。
  • 学校全体の教育方針を決定。
  • 組織全体のマネジメント、地域社会との連携、危機管理など、広範な責任を担う。
  • 高い倫理観と責任感
  • 優れた意思決定力と統率力
  • 組織全体のビジョンを描き、共有する能力
  • 地域社会との連携を円滑に行うコミュニケーション能力
  • 変化への対応力、危機管理能力、コンプライアンス
教頭
  • 校長(副校長を置く小学校では校長及び副校長)を助け、校務を整理し、必要に応じ児童の教育をつかさどる。
  • 校長のビジョンを具体化し、教職員間の調整や業務の円滑化を図る。
  • 高いマネジメント能力と調整力
  • 教職員との信頼関係を築くコミュニケーション能力
  • 教育課程や校務分掌に関する専門知識
  • 校長の補佐として、学校運営を円滑に進めるマネジメント能力。
副校長
  • 校長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
  • 校長以外の所属職員の監督
  • 校務分掌の総合調整
  • 校内人事の調整
  • 校長に事故や欠員が発生した場合の職務代理
  • 担当分野における高度な専門知識と指導力
  • 教職員への指導・助言能力
  • 関係機関との連携能力
主幹教諭
  • 校長(副校長を置く小学校では校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる。
  • 特定の分野(教務、生徒指導、進路指導など)において、リーダーシップを発揮し、校務を推進する。
  • 専門性を活かし、教職員への指導・助言や研修の企画・運営、人事・評価を行う。
  • 担当分野における高度な専門知識と実践力
  • 教職員への指導力と育成力
  • 校務運営に関する企画・運営能力
指導教諭
  • 児童の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善及び充実のために必要な指導及び助言を行う。
  • 授業力向上を目的とした授業研究の中心的な役割を担う。
  • 他の教員に対して指導や助言を行い、授業改善をサポートする。
  • 高度な授業力と指導力
  • 教員研修の企画・運営能力
  • 客観的な視点から授業を分析・評価する能力
ミドルリーダー(中堅教員)
  • 学校の中核を担い、若手教員の育成や学校運営の改善に貢献する。
  • 現場の課題を把握し、解決策を提案・実行する。
  • 豊富な教育経験と実践力
  • 若手教員への指導力と育成力
  • 組織を活性化させるリーダーシップ
  • 学校と若手教員のパイプ役となり、双方の成長を促すコミュニケーション能力。

これらの対象者が研修を通じてリーダーシップスキルを向上させることで、学校全体の組織力が高まり、より質の高い教育を提供できるようになります。

教員リーダー研修の主な内容とカリキュラム設計

教員リーダー研修では、学校現場で求められるリーダーシップスキルを習得し、実践できるようになることを目指します。そのため、研修内容は、理論的な学びだけでなく、グループワークやロールプレイングなど、実践的な要素を多く含むように設計することが重要です。

主な研修内容

  1. リーダーシップ理論:
    様々なリーダーシップ理論(サーバント・リーダーシップ、状況に応じたリーダーシップなど)を学び、それぞれの特性や効果的な活用方法を理解します。
    学校現場におけるリーダーシップの役割と責任について学び、倫理観や責任感の重要性を認識します。
  2. コミュニケーション:
    積極的な傾聴、アサーティブな表現、非言語コミュニケーションなど、効果的なコミュニケーションスキルを習得します。
    意見交換や合意形成、問題解決のためのコミュニケーション方法を学び、円滑な人間関係構築を目指します。
  3. チームビルディング:
    チームワークの重要性を理解し、チームをまとめ、目標達成に向けて協力して取り組むためのスキルを習得します。
    構成員の多様性を理解し、それぞれの強みを活かすチーム作り、役割分担、目標設定などを学びます。
  4. 問題解決:
    学校現場で起こりうる様々な問題に対して、論理的な思考力と創造的な発想力を駆使し、解決策を導き出す力を養います。
    問題の発見・分析、解決策の立案・実行・評価といった問題解決のプロセスを学び、実践的なスキルを習得します。
  5. コーチング:
    教職員の能力開発やモチベーション向上を目的としたコーチングスキルを習得します。
    目標設定、傾聴、質問、フィードバックといったコーチングの基本的なスキルを学び、実践練習を通して効果的な指導方法を習得します。
  6. ファシリテーション:
    会議や研修など、集団における議論を円滑に進め、合意形成を導くためのファシリテーションスキルを習得します。
    議論の活性化、参加者の意見を引き出す、時間管理といったファシリテーションの技法を学びます。
  7. メンタルヘルス:
    教職員自身のメンタルヘルスを維持・増進するための知識を習得し、ストレスマネジメントスキルを学びます。
    職場環境におけるメンタルヘルスの重要性を理解し、教職員のメンタルヘルス問題への対応方法を学びます。

カリキュラム設計

研修カリキュラムは、参加者の職位や経験、研修の目的に合わせて設計する必要があります。例えば、校長向けの研修では、学校経営ビジョン、組織マネジメント、危機管理などを重点的に扱う一方、ミドルリーダー向けの研修では、チームビルディング、コミュニケーション、部下育成などを中心に構成するといった配慮が必要です。

また、研修の効果を高めるためには、講義形式だけでなく、グループワーク、ロールプレイング、ケーススタディ、現場での実践演習など、多様な学習方法を取り入れることが重要です。さらに、研修後も継続的に学習できるよう、フォローアップ研修やオンライン学習コンテンツなどを提供することも効果的です。

SB人気の教員リーダー研修プラン

ここでは、弊社の教育研修担当者がおすすめするリーダーシップをあげるための研修プランを11つご紹介します。


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妹尾昌俊

教育研究家 一般社団法人ライフ&ワーク代表理事

学校マネジメントを学びなおす

野村総研で長年学校・行政マネジメント改革を支援してきた妹尾昌俊氏が、限られた資源で効果的に学校運営していくヒントを提供します。ワークショップ形式や講演を通して、実践的なマネジメントをお教えします。


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玉置 崇

岐阜聖徳学園大学 教授 授業と学び研究所 所長

学校力を高める働き方改革

数々の学校で校長を歴任した玉置崇氏による研修です
。単なる労働時間短縮ではなく、教職員の充実感や達成感向上を重視し、思い込み業務を見直すことで、学校運営を効率化。現場経験を基に、業務改善や校長・管理職の働きかけを具体的に解説します。


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内田 良

名古屋大学大学院教育発達科学研究科 教授 博士(教育学)

学校のリスクを見える化する
~働き方改革の視点から~

名古屋大学大学院教授・内田良氏が、教育社会学の視点から学校のリスクを分析。教育活動の見えないリスクを最新のエビデンスから分析し、持続可能な教職のあり方を提案します。教員の負担軽減と安全・安心な学校環境の実現を目指します。


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澤田真由美

合同会社先生の幸せ研究所 代表 学校専門働き方・組織風土改革 コンサルタント

学校のための WLB(ワーク・ライフ・バランス)

元小学校教員で、学校専門の働き方改革コンサルタント・澤田真由美氏が、教職員の「ゆとり」が子どもの成長に直結することを提案。業務改善や組織風土改革の実践的アプローチを紹介し、持続可能な学校運営を支援します。


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安達仁彦

North-Daddy 代表 (一社)日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントコンサルタント

教育現場でのアンガーマネジメント

日本アンガーマネジメント協会認定コンサルタント・安達仁彦氏が、教育現場における感情理解教育の重要性を解説dします。子どもや教職員が感情をコントロールし、円滑なコミュニケーションを築くための実践的な方法をお教えします。


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高田しのぶ

オフィス悠々 代表 イライラの消しゴムトレーナー

体罰防止のためのアンガーマネジメント

アンガーマネージメントトレーナーの高田しのぶ氏が、教員の怒りのメカニズムを解説し、体罰を防ぐための具体的な対処法を伝授。怒りの原因を探り、適切な対応を学ぶことで、健全な教育環境の実現を目指します。


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山本衣奈子

プレゼンテーション・プランナー 伝わる表現アドバイザー

より良い教育現場を実現させるために
~「伝える」から「伝わる」へ 仕事を楽しくするコツ~

プレゼンテーション・プランナーの山本衣奈子氏が、教育現場における円滑なコミュニケーションの重要性を解説。伝え方を工夫し、職場の協力体制を強化することで、より良い教育環境と子どもたちの成長を支える方法をお伝えします。


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河内理恵

人財支援コンサルタント コミュニケーションアドバイザー コーチング&カウンセラー

ハラスメントをなくそう
~働きやすい職場へ~

人財支援コンサルタント・河内理恵氏が、ハラスメントの現状を分析し、心理的安全性の高い職場づくりの方法を解説します。具体的な事例をもとに、無意識の言動が他者を傷つけるリスクを学び、職場の健全なコミュニケーションを促進します。


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加藤美香保

弁護士 千葉商科大学大学院 客員准教授

教育現場におけるコンプライアンスの確立

弁護士・加藤美香保氏が、学校内で発生しうる法的トラブルを解説。いじめやハラスメント、生徒・保護者対応などの課題に対し、スクールロイヤー制度を活用した未然防止策を提案し、安心・安全な教育環境づくりを支援します。


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中曽根径子

学校専門・人材育成コンサルタント 学校の先生のためのセカンドライフプロデューサー 日本ハラスメントリスク管理協会認定講師

学校・教職員向けコンプライアンス・リスク管理研修
管理職の危機管理の基本・先生方の自覚を促し安心安全な学校を目指す(実践ワーク付き)

元公立高校校長で人材育成コンサルタントの中曽根径子氏が、学校現場で求められるリスク管理とコンプライアンスの基本を解説。問題発生時の対応や、教師の言動が学校全体に与える影響を学び、実践的なワークを通じて、安心・安全な教育環境の確立を目指します。


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黒川伊保子

株式会社感性リサーチ 代表取締役  人工知能研究者、感性アナリスト、随筆家 日本ネーミング協会理事、日本文藝家協会会員

職場のトリセツ
~心理的安全性を確保する対話術~

人工知能研究者で感性アナリストの黒川伊保子氏が、職場の「心理的安全性」を高める対話術を解説。日本語の特性が安全なコミュニケーションを妨げる要因を紐解き、その対処法を具体的に指南します。今日から実践できる方法を学び、より良い職場環境づくりを目指します。

教員リーダー研修を成功させるポイント

教員リーダー研修を成功に導き、学校現場でのリーダーシップ発揮を促進するためには、以下のポイントを意識した研修設計と運営が不可欠です。

1. 研修の目的と対象者を明確にする

研修の目的を「どのようなリーダーを育成したいのか」「どのようなスキルを習得させたいのか」など、具体的に設定します。また、対象者の職位、経験、ニーズを把握し、研修内容やレベルを適切に調整することで、参加者のモチベーションを高め、研修効果を最大化できます。

2. 実践的な内容を取り入れる

リーダーシップは、理論だけでなく、実践を通して習得することが重要です。グループワーク、ロールプレイング、ケーススタディなど、参加者が主体的に考え、行動する機会を設けることで、現場で活かせるスキルを効果的に習得できます。

3. 社外講師を導入する

学校現場とは異なる視点や専門知識を持つ社外講師を招くことで、参加者は新たな気づきや刺激を得ることができ、 モチベーション向上にもつながります。 リーダーシップ理論、コミュニケーションスキル、組織開発など、テーマに合わせた専門家により、より質の高い研修を実現できます。社外講師の活用は、マンネリ化しがちな研修に新鮮な風を吹き込み、参加者の意識改革を促す効果も期待できます。

4. 研修後のフォローアップを行う

研修で学んだことを現場で実践し、定着させるためには、継続的なフォローアップが不可欠です。研修後の実践状況の共有、課題解決のサポート、オンラインコミュニティの活用など、参加者が継続的に学び続けられる環境を提供しましょう。

5. 研修効果を測定し、改善に繋げる

研修前後のアンケートや評価シートを活用し、参加者の満足度やスキル習得度を測定します。その結果を分析し、研修内容やプログラムの改善に繋げることで、より効果的な研修を実現できます。

教員リーダーシップ研修の効果を最大化するために

教職員向けリーダーシップ研修は、教育現場でのリーダーシップ向上に不可欠であり、モチベーションアップや最新の専門知識の習得に有効です。特に社外講師を活用することで、客観的な視点や最新の教育手法を取り入れ、より効果的な研修が可能となります。
弊社では、15,500人以上の登録講師の中から、貴校の目的に最適な講師を紹介し、教育現場の課題解決を支援しています。研修の企画や講師派遣についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。最適なリーダー育成をサポートいたします。


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