よしもと芸人歴8年、タレント・リポーター歴27年の実績を活かし、企業や教育現場で「伝える技術」やセルフモチベーション術を伝授している、つだつよし、さん。年間100回以上の講演活動を行っていますが、コロナ禍以降、その大半はオンラインになったそうです。
先日、弊社のオンライン講演を終えたばかりのつださんに、オンライン講演のやりがいや難しさ、魅力についてお聞きしました。
オンラインに対応させて講演方法を工夫
――本日はお疲れ様でした。まずは、オンラインとリアルの違いについてお聞かせください。
つだ 僕は普段、対話しながら講演を行っているのですが、オンラインではそれが難しいですね。リアルと比べて、オンラインでは、参加者の反応も分かりづらいので、僕の投げかけで参加者自身が気づき、答えを見つけられるようなスタイルを心掛けています。間の作り方や質問のやりとりも、両者はかなり変わっています。
――そうすると、オンラインの方が難しいのでしょうか?
つだ 僕は長くテレビの仕事をしてきたので、カメラ目線でしゃべるとか、画角や音声についても問題なく、オンラインの難しさはあまり感じませんでした。
ただ、リアルだと会場の反応が手に取るようにわかるので、それを見ながら話を進めるところがあったのですが、オンラインを始めたころは、参加者の反応を想像しながら手探りでやっていました。
――初めてオンライン講演を行ったのはいつ頃でしょうか?
つだ 最初の緊急事態宣言があった頃ですので、昨年(2020年)の3月頃でした。そちらはセミナーだったんですが、せっかくZoomを使っていたので、PowerPointの資料を作って、画面共有を多用しました。そうすると、話す間が崩れたり、参加者の集中力が持たないなど、参加者の理解が深められなかったので、今ではパワポ資料は使わないようにしています。
――だから、今回の講演のようにホワイトボードやフリップなどを使っていらっしゃったのですね。
つだ テレビと同じで、フリップの方が伝わりやすいですよね。それから、今では、モニターをカメラの後ろにおいて、参加者の表情を見ながら、話を進めています。
――オンライン講演の需要が増えているかと思いますが、今はだいたいどれくらいがオンラインなのでしょうか?
つだ やはり8割以上はオンラインです。100%オンラインでなくても、参加者の半分が会場、半分がオンラインというようなハイブリット型もありますし。ただ、緊急事態宣言も明けたので、来月からぼちぼちオンラインだったのがリアルに変わったものもあります。
――コロナ禍が収まっても、今後オンラインの流れというのは続いていくような気がしますが…。
つだ そうですね。オンラインであれば、遠方からでも講演を行えるので。先週も午前は大阪、午後は福岡、翌日は東京に向けて配信をしましたが、大分から出ることなく講演を実施できたので、オンライン講演は改めて素晴らしいシステムだなぁと思いました。
――遠くの場所からでも配信できるというのがオンライン講演の最大の魅力だと思います。他に、オンライン講演の魅力はどんな点にあると感じられていますか?
つだ オンデマンド配信の場合は、1ヶ月間とか好きな時に聴講者が視聴できるというのも魅力です。時間がないときは10分ずつ分けて聞いたり、車で移動中に聞いたり、そして繰り返し聞くこともできるので、聞き方のバリエーションが広がったのは、聞き手にとって良いことだと思います。
ただ、その場合に話し手側からしたら、そのような聞き手のバリエーションを考えながら、講演の構成を練る必要があります。僕は、話をするときに時間を気にせず、一気にしゃべったりすることがあるんですが、そうすると小刻みに聞きたい聞き手がどこで切っていいか、わからなくなってしまう。だから、オンライン講演では特に区切りを意識して、話の構成を立てるようにしています。大体、10分間に1ネタを目安に、区切るようにしています。講演後も録画したものをチェックして、時間配分やしゃべる速度を確認して、次はこうしよう、ああしようと改善ポイントを検討します。
――これまでと違うオンラインで試行錯誤されているようですが、他にも注意されている点はありますか?
つだ 一度インターネットをWi-Fiでつなげてオンライン講演をした時、画像がカクカクしたことがあったので、安定したネット接続を維持するためには、やはり有線でつなぐようにしています。
それから、講師の目線ですね。PCを机に置いてしゃべると、どうしても目線が下になってしまうので、カメラの向こうにモニターを置いて、目線がカメラに向くように、モニターの高さを調整しています。
あと、僕は講演に集中したいので、カメラの操作のためサポートスタッフを1人置くようにしています。トラブルがあったときにもサインを決めて、すぐに対応できるようにしています。
――トラブルというと、何か過去にオンライン講演でどのようなトラブルがあったのでしょうか?
つだ 最初のころにあった出来事ですが、僕は前日に機材をセッティングし、リハーサルをするようにしています。前日のリハーサルでは上手くいき、いざ本番という時にライブ配信できなかったことがあります。同じ機材、同じ接続で行ったのに…。だから、それ以降は、前日に加えて当日と、必ず2回は接続テストを行っています。
それから、ネットが落ちた時の代替プランも用意しています。ライブなので、何があるかわからない。A案がだめだった時にB案というように代替プランがあれば安心ですよね。
講師は答えではなく考えるきっかけを与えるもの
――講師生活も長いようですが、講演で気を付けていらっしゃる点はありますか?
つだ 今、ダイバーシティと言われるように、参加者の価値観や考え方は全く異なるので、講師は一つの決まった答えを教えるものではなく、考えるきっかけを与えるものであると思っています。「これが正しいんだ」というのではなく、僕の考え方を伝えて、それを参加者それぞれが咀嚼して、自分だけの答えを見つける。答えを導く先生としてではなく、あくまで参加者自身が答えを見つけられるように道案内役に徹するようにしています。。
――講演では参加者が色んな受け取り方ができるようなアプローチをされているということでしょうか?
つだ そうですね。小中学校の講演では、一つの質問に対して子どもたちが色んな意見を出してきてくれます。その意見に正誤をつけるのではなく、全ての意見を肯定しながら、アクティブ・ラーニングではないですけど、皆が積極的に意見を出しあって、自分なりの答えに到達できるように心掛けています。
また、僕の会社には「出会う人全てに夢、勇気、自信、笑顔を与える」という経営理念があるのですが、僕の講演を聞いた方々が「何かやってみようかな」という気持ちになるよう働きかけることが自分のミッションだと思っています。何か教えるというよりは、応援するって感じですかね。
フリースクールもだれかを応援したいという気持ちから始めた活動ですが、もともと僕はだれかを応援することが好きなんです。だから、応援できる講師という職業は大変魅力を感じています。
――つださんが小学生時代に人の欠点を先生に告げ口する癖があって、ある日その先生が「他人の欠点を言う前にその人の良いところを言ってから欠点を言うようにしなさい」と言われて、それから人の嫌なところでなく、良いところも探すようになったという話をされていました。言葉が変われば、行動が変わり、それが心を変えるということでしたが、確かにポジティブな声掛けは大切ですよね。
つだ 参加者に「ポジティブな声掛けしろ」というのは簡単ですが、それを実生活で実践しようとするとなかなか難しいと思うのです。大人になればなるほど。だから、まずは「めんどくさい」とか「嫌だ」とかマイナスな言葉を1日10個言っているのであれば、2個減らそうとか、簡単なことから始めるようにお伝えしています。マイナスな言葉を減らした分、必ずプラスの言葉が増えてきます。そうすれば行動も変わり、心もポジティブな方向に向き、いい循環が生まれるようになります。
――講演の中で、プラスな言葉をかけることで夢は「叶」う、それに対してマイナスの言葉をいうとただ苦言を「吐」くだけになってしまうとも仰っていました。確かにプラスの声掛けをすることで、自分に自信が持てるようになって、考え方も変わるような気がします。
つだ 心理学に「グロウズパッション」という言葉があります。これは、かけた時間と行動により、情熱が芽生えていくという意味で、広義には、心は行動の後からついてくるとも解釈できます。ポジティブ思考でなくても、ポジティブな言葉かけをするという行動をすることで、心もポジティブ思考に変化していくわけです。
よく「今自分の夢がわからない」という若者がいます。そんな子には無理に夢を探せと言うのではなく、わからないなら、まず今興味があることを言葉に出してみる、そしてそれを実際にやってみる。そうしていくうちに、そこに情熱が生まれ、夢になることもあるとお伝えしています。
また、夢を見つけるには、出会いも大切。人だけではなくて、本や映画、出来事、色んな出会いがあると思うのです。その出会いを諦めてはいけない、ということも伝えています。新しい人や本、映画、ゲーム、とにかく今興味があることに出会い、実際に触れることで、夢のヒントが見つかるかもしれない。常に、新しいものに出会う、新しい何かに挑戦すれば、新しい自分に出会うことにもなります。
「伝える技術」を広め、同志を増やしていきたい
――最後に、つださんの今後の夢を教えてください。
つだ 今後もずっと話し手でいたいという気持ちがありますが、それと並行して、去年から「伝える技術」を活かすために『津田塾』という講師育成セミナーを実施しています。言葉にはパワーがあって、どんな時代にも講師は必要であると考えています。それに、だれでも講師になれる素地はあると思っています。ようは、その技術を知らないだけで、技術さえ知ればだれでも講師になれる。だから、このセミナーでは、起承転結のある構成の作り方やネタの見つけ方、どんなことを話すべきかなど、「伝える技術」を教えています。しっかりとこの「伝える技術」を身に付けた講師が増えて、世間の皆さんに元気を与えるようになれば、ちょっと大げさかもしれませんが、世の中に元気や楽しさが溢れていくのではないかと思っています。
最近、自分の仕事への志をテーマに「3分間スピーチ」を作るという企業研修が人気です。
「なぜこの仕事に就いたのか?」「仕事を通して社会にどのように貢献したいのか?「誰を喜ばせたいのか?」「将来の目標は何か?」など、とことん自分の仕事と向き合い、スピーチ台本を作り、自分の口でアウトプットするという研修です。
もちろん、スピーチ作りを通して、相手に伝わるプレゼン・セールストークに活用できる伝える技術を育成することも目的の一つですが、自身と向き合うこと、お互いのスピーチを聞き合うことで、自分の根底にある志に気づけたり、人の良い点をまねようと思ったり、逆に注意した方がよい点を見つけたりと、参加者自身が自発的に学ぶ場となり、大変好評を得ています。それだけ、言葉には力があるということですよね。そういうことも広げて行きたいですね。
――言葉で力を与えるのが講師の仕事なのかもしれませんね。
つだ 講演って漫才と一緒なんですよ。経験談をいい意味でネタを作って、漫才はどれだけ目の前の人を笑わせるかですが、講演は目の前の人たちにどれだけ勇気や元気、モチベーションなどを与えられるかが重要です。もともとよしもと時代にやっていたことと、講演の仕事は何ら変わりない。講演は僕にとって一生涯の仕事です。
――本日はありがとうございました。
つだつよし、
元 よしもと芸人 伝える技術育成プロデューサー
経営者・元経営者コンサルタント教育・子育て関係者
よしもと芸人として8年、タレント・リポーターとして27年で培った「伝える技術」をベースに、海外を含め年間100回以上の企業・教育現場での講演・研修を実施。心理学の専門家としての知見と元 芸人ならではの軽快な話術で、モチベーション、リーダーシップ、コミュニケーションなど、各地で高い評価を得ている。
プランタイトル
中学生・高校生の君たちへ
10年後の夢を叶える応援力の作り方
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