国籍、性別、宗教、性的指向などさまざまな違い「多様性」を受け入れる「ダイバーシティ・インクルージョン」。
その重要性が叫ばれる中、先日、官公庁主催の人権フェスタで弊社講師のブルボンヌさんが登壇されました。
笑いを交えながら、「多様性」、そして「自分らしさ」とは何かについて説いた講演会の内容をレポートします。
官公庁・医療団体・学校チーム
講師 : ブルボンヌ 氏
開催時期 : 2022年10月中旬
主催者 : T市 様
講演時間 : 90分
聴講者人数: 約500人
講演タイプ: リアル開催
人権フェスタに人気の高い講演テーマ
1948年12月10日に国連で「世界人権宣言」が採択されたのを機に、日本政府は12月4~10日を「人権週間」と定め、日本各地で人権啓発活動が行われています。
この時期には、官公庁主催の人権フェスタや講演会などが実施されますが、その中でも人気の高い講演テーマの一つとして「LGBTQ+」があります。
「LGBTQ+」とは、ご存知の通り、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの3つの性的指向と、トランスジェンダーという性自認、クイアやクエスチョニングなど性に捉われない人々を示す各単語の頭文字を組み合わせた表現で、性的マイノリティの総称です。
日本における性的マイノリティの割合は8.9%(1120万人)と言われ、これは左利きの人、AB型の人と同じ割合だそうです。
今回、主催地でもパートナーシップ制度導入が検討されていることもあり、当初より「LGBTQ+」を講演テーマとすることは早い段階で決まったようでした。
講師は、事前にご案内をしていた『講師ガイドブック』の中から検討され、ブルボンヌさんに決定されました。
ブルボンヌさんは、NHK『阿佐ヶ谷アパートメント』『ハートネットTV フクチッチ』『ラジオ保健室』など多くのメディアにもレギュラー出演され、ジェンダーや多様性に関する講演活動も積極的に行っていらっしゃいます。
今回の講演会は事前申込みでなかったものの、講演前には電話で多くの問合せがあったとのことでした。ブルボンヌさんの注目度の高さがうかがえます。
講演前のご様子
当日、ブルボンヌさんはメイク等の準備もあるため、開始時刻の3時間前に最寄りの駅に到着されました。タクシーでお迎えすると、頭を低くしてご挨拶をされました。「大変礼儀正しい方」というのが第一印象です。
会場に着いてからは、主催者様と顔合わせをした後、投影資料用にご持参されたIPadをつなげてリハーサルを実施しました。プロジェクターに資料が投影されているかをチェック。問題なく接続ができたため、5分程度でリハーサルを切り上げ、控室に戻られました。
「ジェンダー」「多様性」とは何か?
司会者の方がブルボンヌさんを紹介すると、ブルボンヌさんは、薄紅色の美しい衣装で、アバの『ダンシング・クイーン』の曲とともに登場されました。その後、会場内を練り歩き、会場からは多くの拍手がわきました。
講演では、バーのママのようなキャラクターで時折笑いを誘いながら、ご自身のヒストリーから、LGBTQ+の基本的な解説、LGBTQ+に関する最近の日本や世界の状況など分かりやすくお話しされました。
ブルボンヌさんは岐阜のお生まれですが、当時は保守的な雰囲気もあり、周囲の子どもたちからいじめとまではいかないにしろ、仲間に入れなかったときもあったそうです。
高校生時代に好きになったのは同性の同級生。大学時代にはゲイの仲間と同棲し始め、ゲイ向けの雑誌の編集をされるようになります。10年ぐらい前から「オネエタレントブーム」に乗じて、徐々にメディアへの露出が増えていかれたとか。そのお話しをされながら、ブルボンヌさんは客席に降り、参加者にマイクを向け質問をされました。
「オネエっていうけど、何のことだと思いますか?どういうイメージを持たれますか?」
客席からは、「男のお姉さん」「女性の格好をした男性」「女性の心を持った男性」などさまざまな意見が飛び出しました。
ここで、ブルボンヌさんは、「実はオネエと言っても割と多様で、装い、体、戸籍、性の対象など、それぞれどの要素が組み合わさるかでオネエのタイプも違ってくるんです」と、人によって社会的・文化的な性差「ジェンダー」の違いがあることを指摘しました。
そして、ご自分の性差(ジェンダー)については、「生物・肉体的には男性的。装いは仕事では女性的。振る舞いは中間。戸籍は男性。性的指向は男性」と言及されました。
その上で、性差は人それぞれで微妙なグラデーションがあり、分類するのは難しく、いつしか「決めつけなくてもいい」と思うようになったとおっしゃっていました。
それから、世界や日本をとりまくLGBTQ+の現況や課題にも触れ、当事者の立場から客観的にお話しをされました。
「多様性」という言葉には、一概に区別できないものがあり、区別するよりも受け入れることが大切であることを、学術的な言葉ではなく、身近な話題を例に取り上げてわかりやすく解説していただけたのが印象的でした。
時折会場から笑いも起こるなど、聴講された皆さんの心もうまく掴んでいらっしゃいました。
自己肯定感を高めてほしい
講演の終盤では、自己肯定感について調べた世界調査を引用しながら、自己肯定感についてお話しされました。
「自分を大切な存在と思うかどうか」を問う2019年の世界調査では、アメリカは86%、スウェーデンでは74%、韓国では73%の人が自分を大切な存在だと感じているのに対し、日本ではたった45%。日本人がいかに自己肯定感が低いのかを露呈する結果となりました。
その結果を踏まえ、今の日本人には「自分を愛する姿勢が大切」とおっしゃっていました。
男らしさ、女らしさではなく「自分らしさ」を理解した上で、その自分を受け入れられれば、他の人も受け入れられる。それが、多様性を受容することなのだと力強くお話しされました。
真剣に聞き入っている聴講者もたくさんいらっしゃり、多様性を理解する心の大切さや、自尊感情を大切にしようというメッセージがしっかりと伝わってくる素晴らしい講演でした。
スキンシップを大切にされている講師
ブルボンヌさんは、ただステージで講演されるだけではなく、会場に降りて聴講者の皆さんとお話しをしたり、コロナ禍以前であれば会場のお一人お一人と握手をしたりするなど、聴講者とのスキンシップを大切にされている方です。
この聴講者と距離が近い講演スタイルは、ただ単に聴講者に親近感を沸かせるだけでなく、聴講者の心にしっかりとメッセージを届けることにも役立っていると思います。
これまでの人生で生きづらさを感じたことはあったけれども、それをネガティブに捉えることなく、前向きな受け取り方をしているブルボンヌさんに、大変元気をいただいた時間となりました。
ブルボンヌさんの講演は、LGBTQ+や多様性、ダイバーシティの啓発だけでなく、モチベーションアップや生きる力にもつながる内容となっています。ぜひ一度、ブルボンヌさんの魅力を間近で体感してください。
ブルボンヌ ぶるぼんぬ
女装パフォーマー ライター
タレント・芸能関係者
早大在学中、ゲイのためのパソコン通信ネットワークを開設。ゲイ雑誌『Badi』主幹編集、女装パフォーマー集団主宰等。テレビ・ラジオ出演の他、ジェンダーや多様性に関する講演活動(企業内・自治体・大学等)など多方面で活躍中。
プランタイトル
男らしさ、女らしさより「自分らしさ」が社会を変える
~LGBT・男性・女性とは~
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