20~40代のママであれば、一度は高野優さんの育児漫画を読んだ方は多いのではないでしょうか?『高野優の空飛ぶベビーカー』『思春期コロシアム 決戦のゴング 開幕編』など、3人娘のてんやわんやの子育てをユーモラスに描いているエッセイ漫画は、多くのママたちの共感を集めています。
そんな高野さんの子育て講演会がH市で行われました。漫画を描きながらトークするという独自のスタイルで大変好評を得ています。大変盛り上がった漫画トーク講演会をレポートします。
学校・PTAチーム
講師 : 高野 優 氏
開催時期 : 2024年2月中旬
主催者 : H市
講演時間 : 90分
聴講者人数: 200名
講演タイプ: リアル開催
漫画扉絵のような高野さん直筆の楽しいホワイトボードがお出迎え
今回は、H市主催の子育て講演会に高野優さんが登壇されました。私はこれまで何度か高野さんに講演をご依頼したことはあっても、聴講するのは今回が初めてとなります。
会場に到着すると、受付には高野さん直筆の楽しいウェルカムボードが置かれていました。今回、トークに出てくる家族の紹介もしてあり、まるで漫画の扉絵のよう。
これからどんなことが起こるんだろうと、最初からワクワクした気持ちにさせてくれます。
5回目のリピーターも! 高野さんの根強い人気を改めて実感
会場はすでに多くの人で埋まっており、中には高野さんの本を持ったファンの方もいらっしゃいました。
会場のステージには、高野さんが使う机が置いてあり、机の上にスケッチブックとペン、そのスケッチブックをスクリーンに映し出す書画カメラ、マイクが用意されていました。書画カメラとは、手元の資料を巨大なスクリーンに投影させる装置で、高野さんの漫画を”描きながら”のスタイルには欠かせない機材です。
高野さんが登壇すると、大きな拍手が起こりました。高野さんの自己紹介が始まり、ここで「皆さん何度目の参加ですか?」と会場に質問されました。「初めての方」「2回目の方」と聞きながら、該当する人は手をあげていくのですが、中には5回目の方もいらっしゃり、改めて高野さんの人気の高さを感じました。
前に高野さんからお聞きした話なのですが、全国各地に固定ファンがいるそうで、挨拶する間柄になったファンもいらっしゃるのだとか。それほどの根強いファンを獲得する高野さんの講演とは一体どんなものであろうと、ますます楽しみになってきました。
最後はそう来たか! 驚きと面白さ満載のトーク
今回の内容は、幼児期から思春期までの子育てのヒントです。高野さんは、3人の娘さんを育てた経験を交えながら、その時期の子どもにどう向き合えばよいのかを、楽しいトークと漫画で表現していきます。
印象に残ったのは、思春期に入った子どもの話です。
高野さんが最初に描いたのはギザギザの線。「この時期の特徴はこのツンツンとしたハリです」と言いながら、そこに目と鼻、口を描き、ひっくり返すと、何とハリネズミの恰好をした子どもの姿となりました。
まるで怪獣のような子どもの顔はいかにも憎たらしそうですが、どこか愛嬌があり、憎たらしさと愛嬌半々といったこの時期の子どもをうまく表現しているなと思いました。
何をいってもマイナスな返事しかできないこの時期。例えば、子どもに「テストが近いんだから、勉強しなさい」と言っても返事は「無視」か「無理」。もちろん、親がいうことは正論です。子どももわかっています。しかし、子どもは何か他の悩みを抱えていて頭がいっぱいかもしれない、うまくできなくてやる気を喪失させているかもしれない。だから、この時期の子どもには、正論をいうより、「勉強ってめんどくさいよね」「お母さんも勉強好きになれなかったなぁ」など「共感」することが大事なんだと、お話されました。
思春期の子どもがはく言葉はマイナスな言葉が多いですが、そのマイナスの言葉に隠れている気持ちをうまく引き出して共感してあげることで、子どもは落ち着いて自分の状況を考えられるようになる、とのこと。
確かに、思春期の子どもたちは、常に針を立たせていますが、それに対抗したところで火に油を注ぐだけ。まずは、親が子どもの気持ちを代弁してあげることで、子どもが自分の心と向き合える時間ができるようになります。高野さん自らの失敗から気づいた教訓であるため、大変重みを感じました。
また、3人のお子さんを育てる中で、長女にうまくいったやり方が次女にうまくいくとは限らなかったと話されていました。
「子育てに平均値はないんですよね。だから 『あの子はできるのになんでうちの子はできないんだろう』と悩んだり…他の子と比べても仕方ないんです」。
高野さんのそんな優しいメッセージが、子育てで悩む親御さんたちの心に染み入っていくように感じました。
HSP(感覚処理過敏症)の話
講演最後には、ご自身とHSPについてお話されました。HSPは、「Highly Sensitive Person」の頭文字で、「感受性が強く、非常に敏感な人」という意味を持ちます。小さいころから、この性質を持ち合わせた高野さんは、冷蔵庫のモーターが気になって眠れなかったり、タイツの肌ざわりに慣れなかったりして、泣いていたそうです。親からは「わがままいうな」「みんなができるのにどうしてできないの?」と怒られてばかり…。
自己肯定感の弱い子どもに育ち、大きくなってからも、相変わらず苦手なことが多かったそうです。そんなとき、「HSP」のことを知り、これまでの苦手なことが、実はこの生まれつきの気質によるものだということに気づき、心からほっとしたということです。
それからというもの、高野さんはHSPを広く知ってもらうための活動も行っています。高野さんのお子さんにも、この傾向があって、「●●が嫌だ」「●●したくない」というたびに周囲から「そんなのわがままだ」と言い続けられてきたのだとか。
最後に高野さんはこう言っていました。
「その子が他の子と違った言動をしていても、その子なりの理由があるかもしれない。子どもたちは杓子定規で測ることはできないのです。子どもは違っていて、いいんです。」
ファンが多いことに納得の高野さんの講演
高野さんは、90分の講演で合計20枚ほどの絵を描きながら、たくさんの子育てエピソードを披露しました。絵の中の登場人物たちがイキイキとしていて、まるで、高野さんの物語に入り込んでいくような没入感がありました。
笑いあり、涙あり、気づきありで、大変エンターテインメント性の高い講演だったと思います。
後日、高野さんとお話していたときに、その日のネタは、お客さんの雰囲気を見て決めるというお話をされていました。高野さんの講演はまさに即興性のライブ。今日の演目をまた次回見ることはできないのです。
これまで高野さんに講演依頼をしてきて、聴講者、主催者ともに満足度が高い理由を、今回の講演で改めて実感しました。
講演後のサイン会には多くの人が行列を作り、「高野さんの育児漫画に元気づけられました」と話しているファンの方もいらっしゃいました。
私自身も、高野さんにすっかりと魅了され、一ファンとなった一日となりました。
高野 優 たかのゆう
育児漫画家 イラストレーター
作家教育・子育て関係者
育児漫画家、イラストレーターとして活躍。NHKEテレ「土よう親じかん」(2008~09年)、「となりの子育て」(2009~11年)等の司会、情報番組のコメンテーターなどを務める。2015年 第8回ベストマザー賞(文芸部門) を受賞。漫画を描きながらの子育てトークは、様々な気づきを得ることができると好評。
プランタイトル
マンガを描きながら子育てトーク
子は育ち、親も育つ 楽しまなくっちゃもったいない
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