教育コンテンツプロデューサー、料理研究家、生活空間プランナーなど多彩な活躍で注目を集めている行正り香さん。
高校時代成績は400人中364番目。なのに、カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業で電通入社、料理本の大ヒットなど、まざまな成功を収めてこられました。
そのユニークな半生が、先日開催された高校の保護者会主催のオンライン講演会で語られました。
「半径5キロ以内で一番のものを見つける」
「自分にフィットする場所は必ずある」
今まさに将来を決断する時期である高校生、その保護者の方々に、行正さんのメッセージはどう伝わったのか。講演会の模様をレポートします。

官公庁・学校・PTAチーム

講演テーマ: ビリから始める人生術
講師   : 行正り香 氏
開催時期 : 2024年9月下旬
主催者  : F高校 PTA
講演時間 : 90分
聴講者人数: 約200人
講演タイプ: ライプ配信+オンデマンド配信

ライブ+アーカイブのハイブリッド開催

今回の講演は、高校生と保護者を対象にした講演会で、料理研究家で教育コンテンツプロデューサーとして活躍する行正り香さんをお迎えして開催されました。講演会実行委員のお一人が行正さんの高校時代の同級生であったことから、テレビなどで広く活躍されている行正さんに直接依頼をしたのがきっかけです。コロナ禍以降、本会は、オンライン配信を取り入れた講演会を行っており、今回もライブ配信とアーカイブ形式で実施しました。

今回はそのオンライン講演の運営サポート役として弊社にお声がかかりました。行正さんとは、初めてご一緒させていただきましたが、すでに数多くのメディアで活躍されていた方なので、経歴は存じておりました。行正さんは、カリフォルニア大学バークレー校政治学部を卒業後、株式会社電通に入社し、広告制作で活躍。その後、料理本の出版や教育コンテンツ制作など多岐にわたる分野で成功を収めた方です。そんな方からどのようなお話が出てくるのか、大変楽しみに当日を待っておりました。

「今のままでは大学は厳しいです」先生の言葉に父がいった言葉

行正さんの講演は、行正さんの高校時代の話から始まりました。

高校2年生、成績は学年で下から4番目。行正さんの母親も同席した進学相談で、担任の先生から「このままでは短大や専門学校にも行けず、高卒で終わる」と告げられます。その言葉に母は「自分も高卒だが、何がいけないのか」と怒りを見せました。
一方で、父親は冷静に「高卒で働け。半径5キロ以内で一番のものを見つけろ」とアドバイスをしました。父は「お前が1番得意とすることはないのか?」と問いかけます。しかし、行正さんは「一番のものなんてない」と返答。その時、父親が「それなら“ましなもの”はないか?」と問い直し、行正さんはふと英語の先生に褒められた「発音の良さ」を思い出しました。それを聞いた父親は、「それなら英語で行け。海外で学べる1年分の学費を出してやる」と後押しします。
この言葉に背中を押された行正さんは、だれでも参加できる留学生制度を調べ上げ、高校3年の時に単身アメリカへ渡る決断をしました。この経験が行正さんのその後の人生を大きく変える転機となり、未来の可能性を切り拓くきっかけとなったのです。

学びへの渇望が喜びに変わった瞬間

暗記の多い日本の学習システム。とにかく高校時代は勉強が楽しくなく、学びの意欲が全くなかったといいます。
しかし、アメリカの学校に行くと、環境は一変します。まずは英語の語学力はゼロの状態であったので、Can Doの場面方式で覚えていき、留学が終わる10カ月後には日常会話は問題なくできるようになっていたそうです。一方で、英語はしゃべれても、読解力はまだまだで、生まれて初めて「もっと学びたい」と感じたそうです。

とはいえ、父親との約束は1年間だけ。留学期間も終わりが近づき、帰ったら就職先を見つけなきゃならないと考えていたある日、行正さんは、ホストファミリーに感謝の意をこめて、ポテトスープを作ってあげました。ポテトスープを食べながら、話題は行正さんの将来の話に。このとき、ホストファザーがスープを食べ終わり、行正さんの目を見てある提案をしました。

「りかは料理が上手だ。ママは仕事が忙しいから君が週5で料理を作ってくれるなら、ここからコミュニティーカレッジに通うといい」

思いがけない提案に、行正さんは大変喜び、すぐに家族に相談。その後、近くのコミュニティーカレッジに通うことになりました。コミュニティーカレッジとは日本でいう短大にあたり、高校卒から退職者まで幅広い年齢の人が通っています。そこで、行正さんは、言葉の壁にぶち当たります。会話はできても、短大では、読解力やアカデミックない言い回し、用語も必要となります。そこで、行正さんは、耳から覚えるのを得意としていたので、カセットテープに英語とその日本語訳両方をふきこんで、何度も繰り返し聞いていたそうです。この方法で英語力を大きく伸ばした行正さんは、次第に学ぶことが楽しくなり、アメリカの探求型教育に魅了されるようになります。

探求型教育とは、一つの課題に関して、自分で解決法を見つけるやり方です。例えば、数学のテストでは、「ある家族が●%で家のローンを組んで、▲%のローンに切り替えたらいくら得になるのか、述べよ」というような問題がでます。日本の暗記方式とは異なり、自身で仮説を立て、情報を収集し、結論を導くため、「学習が本当に楽しくなって仕方なくなった」そうです。

学習への渇望が、学習することへの喜びに変わり、そこで行正さんは初めて「学習することは面白い」と感じたそうです。
そこからメキメキと成績を上げた行正さんは、最後の学年で教授から上位大学への編入を勧められます。しかし、編入の申し込みには1校あたり25ドルの申込金が必要で、当時の一カ月のお小遣い100ドルでは足りないと告げると、教授は「私は君の夢を買いたい」と100ドルを手渡してくれました。複数の大学を受験し、全て合格した行正さんは、教授の勧めでカリフォルニア大学バークレー校に編入し、政治学を学ぶ道を選びました。
困難を乗り越える中で支えてくれる人々の存在が、行正さんの人生を大きく変えたのです。

自分がフィットする場所

▲イメージ画像

どんなにビリでも、自分にフィットする場所は必ずある」。

行正さんが語ったこの言葉には、自身の経験から得た確信が込められています。高校時代、勉強も部活もうまくいかず、進路に迷っていた行正さん。しかし、アメリカで出会った探求型の学びが、行正さんの学び方や人生の考え方を変えました。「勉強が楽しい」と感じたことで、学びへの意欲が高まり、次第に道が開けていったのです。自分に合った学び方を見つけることが大切だと実感した瞬間でした。
両親から「がんばればできる」「いい大学に行け」という期待を押し付けられることはなく、現実的なアドバイスを受けたこともよかったと語ります。手に職を持つことの大切さや、自分の得意分野を見つけることを教えられた行正さんは、アメリカ留学時代に両親から最低限のお金しか与えられなかったからこそ、真剣に「自分で切り開く力」を身につけることができたそうです。

いつか自分に合った学び方や場所に出会える時が必ず来る

▲イメージ画像講演の後半では、大学卒業後、電通に入り、そこで直面した困難や解決策、その体験から新しいコンテンツの発想につながり、それがさまざまな本や教材制作につながっていったことが語られました。

行正さんが困難に直面したときに、常に思い出される父親のことば。「半径5キロ以内で一番のものを見つけろ」。そして、自身が身をもって体験した「フィットする学び方の重要性」。

それを踏まえて、最後に話した行正さんの言葉がとても印象的でした。

子どもたちには、いつか自分に合った学び方や場所に出会える時が来る」。

行正さんのこの言葉は、進路や将来に悩む学生や保護者にとって、現実的で希望を感じられるメッセージとなったのではないでしょうか。行正さんの体験談は、どのような状況でも自分に合った選択肢が見つかる可能性を示してくれるものでした。
包容力のあるとてもゆったりとした話し方もポジティブな雰囲気に包まれ、オンラインを通しても雰囲気の良さが伝わってきました。
受講後、心がほんわかとした気分になれる、そんな温かい講演でした。事実、受講後アンケートも高い満足度を得られたようです。

PTA対象や学生対象の講演会に特におすすめの講師です。PTA講演会や学校セミナー等がありましたら、ぜひご検討ください。

行正り香 ゆきまさりか

株式会社REKIDS 代表取締役 教育コンテンツプロデューサー 料理研究家、生活空間プランナー

広告代理店のCMプロデューサーを経て、子ども向け教育サイト「なるほど!エージェント」を立ち上げる。英語学習教材の開発を手がけ、音読教材「カラオケ!English」は日本eラーニングアワードを受賞。 また、料理研究家、生活空間プランナーとしても活躍、そのライフスタイルは多くの支持を集めている。

講師ジャンル
ビジネス教養 ワークライフバランス
社会啓発 教育・青少年育成
文化・教養 文化・教養

プランタイトル

ビリからはじめる人生術

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