「便利さを手放すことで、生活が豊かになる」――そんな逆説的なテーマを、やわらかく、ユーモラスに語りかけた稲垣えみこさんの講演が、愛知県T市で開催されました。

エッセイを読むような感覚で進んでいくトークには、家事や老後、そして自立した生き方への深いヒントが詰まっており、会場を訪れた中高年層を中心とする聴講者の共感を大いに集めました。

官公庁・学校・PTAチーム

講演テーマ: 自分で決める幸せのカタチ
講師   : 稲垣えみこ 氏
開催時期 : 2025年1月下旬
主催者  : T市 男女共同参画担当
講演時間 : 90分
聴講者人数: 約320人
講演タイプ: リアル開催

講演依頼の経緯

本講演は、T市の男女共同参画ボランティアチームが中心となって企画した恒例イベントの一環として、2025年1月に開催されました。
例年、柔らかいテーマを希望する傾向があり、今年は「自分らしく生きる」ことに焦点を当てたいという意見が出たことから、50代で早期退職をし、月に300円程度の電気代だけで暮らす稲垣えみこさんに白羽の矢が立ちました。愛知県にゆかりがある点や、テレビなどでの知名度の高さも選定理由の一つとなりました。

暮らしに根ざした“自分で決める幸せのカタチ”を語る

当日、稲垣さんは講演開始1時間半前に会場入りされました。リハーサルや機材確認が行われている中、稲垣さんが会場に到着すると、主催者の皆さまが入口で拍手で出迎えるなど、非常にあたたかな雰囲気で迎えられました。会場は400人キャパシティのうち約320名が来場し、男女を問わず中高年層を中心とした幅広い世代の参加がありました。

“不便”を楽しむ暮らしの工夫

講演は「自分で決める幸せのカタチ」というテーマで行われ、まずは稲垣さんが実践している「不便を楽しむ暮らし」について語られました。会場には開始前からあたたかい雰囲気が漂い、稲垣さんが登壇し冒頭で「今日の服はすべてゼロ円。母のおさがりのセーターと、友人からもらったパンツです」と笑顔で語ると、会場は一気に和やかな空気に包まれました。

続けて、自宅でのライフスタイルをスライドで紹介。冬でも火鉢を使い、米はガスコンロで炊く。洗濯は手洗いをし、家電に頼らない生活。便利さを手放し、自分の手で暮らしを整えることで見えてくる「豊かさ」をユーモアを交えて伝えました。
便利な道具は手間を省いてくれますが、それと引き換えに“やる力”が奪われている」と語る姿には、聴講者からの共感の声もうなずきも多く見られました。とくに「不便を面倒ととらえるか、面白がるかは自分次第」という言葉に、参加者は深く頷いていたのが印象的でした。

家事を「生きる力」に変える視点

次に語られたのは、稲垣さん独自の「家事=生きる力」という視点です。
現代では、家事は「誰かがやるもの」「負担」として捉えられがちですが、稲垣さんは「家事こそ、自分の暮らしを自分で支える力」として位置づけます。掃除・洗濯・料理といった日常の行為を他人任せにせず、楽しみながら自分で行うことで、自分の健康や生活リズム、さらには人生そのものが整う――という考えに、特に中高年層の女性たちが強く反応していました。

また、「家事分担」についても、敢えて疑問を提示。「分担があると、どうしてもどちらかに偏る。“自分のことは自分でやる”というルールの方が、ストレスが少なくなる」と語り、家族関係やパートナーシップに悩む聴講者にとっても大きなヒントとなっていたようです。
家事を通して日々のリズムを整えることは、老後の暮らしにも深く関係すると語り、「連れ合いと死別したあとでも、自分の暮らしを立て直す力になる」といった発言には、頷いている聴講者の方も見受けられました。

モノを減らして心を軽くする

講演の後半では、「断捨離」に関する具体的なエピソードも紹介されました。稲垣さんは、早期退職後に大規模な整理を行い、持ち物を必要最低限に減らすことで、生活が劇的に変化したと語ります。

たとえば、服を数着に限定することで「選ぶ時間」や「管理の手間」が減り、朝の支度が驚くほどシンプルに。さらに、掃除の回数も減り、心も整う。「モノを持たないことは、不便ではなく“自由”なんです」と語る姿に、参加者からは驚きと共感が交錯する反応がありました。

また、節電にも積極的で、東日本大震災以降は電気代が月300円という生活を送っていた時期もあり、「あまりに安いので電力会社が家を見に来た」というエピソードには、会場に笑いが起きる一幕も。
「暮らしは毎日の積み重ね。その中で小さな達成感を得ることが、幸せを実感することにつながる」と語る稲垣さんのメッセージは、日々の生活をより自分らしくしたいと考えているすべての人にとって、大きな気づきをもたらした講演でした。

反響が高かった質疑応答

90分の講演終了後は、30分以上にわたる質疑応答が行われ、聴講者からの関心の高さがうかがえました。続くサイン会では、自分の暮らし方や早期退職について相談を持ちかける参加者が多く、稲垣さんは一人ひとりに丁寧に応じていました。講演内容への共感とともに、講師の温かく誠実な人柄も、多くの人の印象に残ったようです。

講師としての信頼感

講師としての稲垣さんは、話の構成力・語り口ともに非常に優れており、「エッセイを聞いているような心地よさ」を感じる講演でした。ユーモアを交えつつ、決して押しつけがましくなく、それでいて自立や生活力といった深いメッセージを届けられる点が、講師としての大きな魅力です。

また、舞台裏での対応や主催者への配慮も丁寧で、終始安心して運営ができました。著書販売の対応やサイン会も快く引き受けられ、参加者との対話も真摯に対応されていた姿が印象的でした。現在、講演依頼が増えていることから、スケジュール調整や事前確認(機材・書籍販売の可否など)は早めの相談が望まれます。

“自分らしく生きる”を考えるきっかけに

稲垣さんの講演は、日々の暮らしを見直すきっかけを与えてくれる温かい時間でした。「家事」や「不便な生活」に対する視点を変えることで、参加者一人ひとりの心に深く届く講演となりました。
講師の語り口や人柄、共感を呼ぶテーマは、男女共同参画、生涯学習、エコライフなど幅広い分野の講演に最適です。柔らかくも芯のある講演をご希望の主催者様は、ぜひご検討ください。

稲垣えみ子 いながきえみこ

元 朝日新聞記者

一橋大学卒業後、朝日新聞社に入社。大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て、論説委員、編集委員を務める。東日本大震災を機に始めた超節電生活を綴ったコラムが話題となり、「報道ステーション」「情熱大陸」等にも出演。50歳で朝日新聞社を退社し、“ハッピーに閉じていく人生”を模索中。

講師ジャンル
文化・教養 文化・教養

プランタイトル

ある幸せ、ない幸せ~ 自分で決める暮らし方 ~

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