建設現場や工場で起きる災害は大きなものだけではありません。実は、その影には無数の災害要因が隠れています。そして、そのような災害を起こす元凶は何かというと、防ぎ切れなかったヒューマンエラーです。この記事では、現場最前線で「安全」に長年携わってきた専門家である林谷英一氏に、現場に潜む魔物とそれを退治するリスクアセスメントについて解説していただきます。
【監修・取材先】
林谷英一氏
安全衛生大会教育講師
元 三菱電機安全衛生協力会事務局長
小さなエラーが重大事故を招く
災害と隣り合わせの現場でリーダーを担当されている方なら、「ハインリッヒの法則(1:29:300)」をご存じだと思います。これは「1つの重大事故の裏には29の小さな事故があり、さらにその裏には300のヒヤリ・ハット(異常)が潜んでいる」という法則です。
実際の現場では、「小さな事故が積み重なって大きな事故が起きる」だけではなく、1つのヒヤリ・ハットが重大事故に繋がることもしばしばあります。災害が起きてしまってからでは、被災者への謝罪だけでは済まず、行為者はもちろん企業全体の責任を問われかねません。
国内の災害状況のデータを見てみましょう。建設業労働災害防止協会の「建設業における労働災害発生状況」の調査によれば、「休業4日以上の死傷者及び死亡者数」は1989年で63,847人、2018年で15,374人と、ここ30年で半分以下まで減っているものの、直近では15,500人台と続き、横ばい状態となっています。
ここからどのように災害を減らしていくかが、現場のリーダーの課題といえるでしょう。
現在は、建設現場・製造現場においてもコロナ対策が求められることもあり、より注意すべきポイントが増えています。では、重大災害をも引き起こすヒヤリ・ハット=ヒューマンエラーを起こす原因とは一体何なのでしょうか。次の項目でご説明します。
エラーを起こす「3つの“魔”」とは?
人間は誰しもエラー(間違い)を起こすものです。むしろ、エラーが起きることを前提に現場作業を進めることが大切です。ここでは、ヒューマンエラーにつながる「ま(魔)あいいか、ま(魔)がさした、ま(魔)さか」の「3つの“魔”」について解説します。
1.ま(魔)あいいか
「急いでいるから」「自分一人でやればいいから」と、ショートカットする感覚で作業することはありませんか? このような「まあいいか」の行動が、フォークリフト災害やピット内作業における酸欠事故などにつながることはよくあります。
2.ま(魔)がさした
集中力が要求される自動車運転やクレーン操作などで、「ついうっかり」「ぼんやりしていた」という状態で起きがちなヒューマンエラーです。手元のちょっとした操作ミスにより大きな災害につながっています。
3.ま(魔)さか
安全装備を外したり、安全帯を使用しないことで起きる「まさか」の転落・墜落災害などがこれに当たります。日常生活でも「まさか」の事故が起きるもの。「備えあれば憂いなし」の実践が肝要です。
これらの魔物は、誰にでも訪れる一瞬の気の緩みによって現れ、重大な災害を引き起こす可能性があります。災害の多くは、作業者のミスといわれています。このミスは、作業者一人ひとりが気を引き締めるだけで防げるものではなく、組織としての取り組みが求められます。
企業として、二度と災害を起こさないために防止策を打ち出し、しっかりと対策を「し続けていく」ことが大切です。では、現場ですぐにでも使えるリスクアセスメントをお伝えします。
「1つの“間”」でリスクアセスメント
重大事故の引き金となる「3つの“魔”」についてご紹介しました。
まずは、これらの魔物を防ぐのが「1つ(3秒)の“間”」です。
現場作業の基本である「進行方向ヨシ」などといった指さし確認を行っている現場では、現実に災害が少ない傾向にあります。
要所要所で声を出し、指をさして全員で状況を確認する。わずか3秒のこの「間」によって、長い目で見れば災害が起きる確率は大きく変わってきます。
もう一つ、重要なことは「潜在的危険も含め見える化」するリスクアセスメントです。現場の危険を最も知る作業者からのヒヤリ・ハット情報や安全改善など、管理者がパトロールにもリスクアセスメントを取り入れることで災害の芽を摘み取ることができます。現場にある危険を見える形で共有し、PDCAをきちんと回すことで、安全な職場づくりを行うことができます。
オンライン講演では、災害に伴う裁判事例や各社で行っている災害防止活動をより活性化する具体的な実践方法、事例も交えてリスクアセスメント拡充策について解説しています。「安全は経営の礎」といわれています。作業者を災害から守るため、安全な現場へと導きたい建設業・製造業のリーダーの方は、ぜひシステムブレーンまでお問合せください。
林谷英一 はやしたにえいいち
安全衛生大会教育講師 元 三菱電機安全衛生協力会事務局長
三菱電機神戸製作所入社後、一貫して現場の前線で活躍。2006年三菱電機安全衛生協力会事務局長(安全衛生課兼務)。同年より災防団体等の教育講師としても活躍。現在、安全衛生教師および安全衛生大会の講師、長年の現場経験に基づき、安全衛生を解りやすく説く。
プランタイトル
ま(魔)さか! ヒューマンエラーを防ぐには
~エラーを起こす「3つの“魔”」エラーを防ぐ「1つの“間”&リスクアセスメント」~
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