最近、組織力向上のキーワードとして注目を浴びている「心理的安全性」。2016年にGoogle社が発表した「効果的なチームの条件」の一つとして、一気に注目が集まりました。
チーム力をアップさせるために重要なこの「心理的安全性」の高め方について、元タカラジェンヌであり、コミュニケーション講師として人気の高い南城ひかり氏が、コミュニケーションの観点から伝授します。
【監修・取材先】
南城ひかり氏
元タカラジェンヌ
コミュニケーションコンサルタント
夢実現コンサルタント
心理的安全性のメリット
心理的安全性とは、「企業など組織の中で、自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態」のことを言います。これは裏を返せば、「自分の考えや気持ちを誰かに話しても、それを拒絶されたり罰されたりすることがない」と発言する本人が確信できる状態だと言えます。組織行動学を研究するハーバード大学のエイミー・エドモンソン教授が提唱した考え方で、Googleが「効果的なチームの条件」の一つにも挙げています。
心理的安全性は、企業にとって大きなメリットをもたらしますが、個人にとっても以下のようなメリットがあります。
【個人のメリット】
- 業務への責任感や関心が生まれやすくなる
- ストレスが減り、パフォーマンスの向上が期待できる
- チーム内・組織内でスムーズな情報交換ができるようになる
また、企業にとっても以下のようなメリットがあります。
【企業のメリット】
- イノベーションが生まれやすくなる
- 多様な考えや価値観を持った人材が集まりやすくなる
- 人材の定着率が高まりやすくなる
心理的安全性が担保されていない状態は、「こんなことを発言したらどうしよう」「疑問に思ったけれど、とりあえず従っておいた方がいいか」といった考えを起こしやすくします。個人にとっては、無用なストレスを感じたり、業務への責任感が薄れやすい環境と言えるのです。しかし、心理的安全性が担保されていればこのような無用なストレスを感じることなく、疑問があれば自発的に質問でき、積極的に業務に携われるようにもなります。
上記のような環境になれば、個人は活発に意見交換するようになり、イノベーションが生まれやすくなります。また、拒絶や否定されないという安心感は、多様な考えや価値観を持った人材の獲得にも有利です。獲得した人材の定着にも良い効果をもたらすでしょう。このような理由から、心理的安全性は組織づくりに欠かせないものと言えます。
「会話」がうまくなる究極のマインド
心理的安全性を高める上で重要なことの一つに、会話スキルの向上があります。
会話の上達には、どのようなマインドセットが必要なのでしょうか。
会話はよく「キャッチボール」だと言われます。
キャッチボールでは、自分のコントロール力や飛距離をわかっていなければ、相手の立っているちょうどいい場所にボールを届けることができません。同様に、会話の場合も、単に相手に届けばよいだけでなく、「相手に伝わる(届く)こと」、それも「相手の心に心地よく届くこと」が重要です。「指示」として伝わるだけでなく、心理的安全性の確保には、心に届ける観点も大切です。
つまり、相手に「どう伝えるか」を考える必要があります。そのためには、まず自分の「心=内側」に向き合う視点を持ち、内なる声を聞いてあげること。自分の心と会話することが大切です。自分自身が本当は何を思っているのか、何を感じているのか?それをまず聞いてあげましょう。自分の心の声を無視している人がとても多いからこそ、相手の「心」も同じように無視してしまい、傷つけがちなのです。
「自分は、本当はどうしたい?」「どんな風に感じてるのか?」という、
自分の本当の「心=内側」と向き合うことこそ、自然にうまく会話ができる究極のコツだと言えます。
心理的安全性という観点から考えるには、大切なのは「心」です。
相手を思いやるためにも、まずは「自分の心、内なる声」としっかり向き合い、それを尊重してみましょう。
心理的安全性につながる会話術とは?
実践的な「会話術」では、話し方よりも「聞き方」が重要です。聞き方のマインドは「さ・し・す・せ・そ」で表せます。
聞き方のマインド
さ:さすが、と相手の存在を尊重する。
し:信頼する。相手の言動を信頼する。
す:素直さ。相手を色眼鏡で見ず素直な心で向き合う。
せ:急かさない。相手を急かさず、相手のペースを大事にする。
そ:そうだね。と相手を受け入れ共感する。
これらの「聞き方のマインド」は、「相手」に対するものを「自分」に対しても同様に考えることが大事です。
例えば、相手を「尊重」するには、まず、自分を「尊重」することです。
自分のことを尊重せずおざなりにすると、無意識に相手を見下し、適当に扱ってしまうために心理的安全性も得られないものです。
実は、「会話」のスキルというのは、自分のマインドを整え育むことが大事なのです。
また、相手を「信頼する」には、自分に起こる物事、事象も信頼することです。
日本の文化には「心配」が先立ってしまいますが、心配からのコミュニケーションは、相手の「心配」を増幅させるに過ぎないのです。
「心配」しやすいマインドを「信頼」に変えることで、相手も自分も信頼できるようになります。
さらに、相手の心や感情を知るには、自分の気持ちに「素直」に向き合うことで、相手の本質も見ることができるのです。
時間に追われがちな現代人には、「急かさない」ということも重要です。「~しなければ」と自分を急かす人は、相手にもそれを強要してしまいがち。相手の言葉を遮って自分の意見を述べたり、結論を急かさないようにしましょう。「急かさない」さずに相手のペースも受け入れていくには、自分のペースを知り自分を見つめることが必要なのです。
「そうだね」と相手を共感するには、自分の気持ちに共感してあげることも大切なポイント。
自分に対して否定的な考えを持ちがちな日本人は、その「自己否定」から自信喪失につながり、幸福度が低いのも現状です。「そうだね」と、自分の気持ちを受け入れることは自信に繋がり、自己肯定感から相手を受け入れることができ、多様化の時代にも対応できるようになるでしょう。会話中には、「そうだね」のマインドで相手を受け入れ、相手の心(気持ち)を満たしていくことで、相手は心からの心理的安全性を感じられるようになるのです。
会話力を伸ばして心理的安全性の高いチームへ
心理的安全性は、Googleが「効果的なチーム」の条件に挙げているほど、企業にとっても個人にとってもメリットの多い考え方です。自分の発言が誰かに拒絶されたり罰されたりしないと安心できれば、活発な意見交換や社員のモチベーションの向上につながります。心理的安全性は組織にとって欠かせない条件の一つだと言えるでしょう。
心理的安全性を高めるためには、一人ひとりが自分の心と向き合い、自分の本当の気持ちや内なる声を尊重するマインドが重要です。聞き方の「さ・し・す・せ・そ」を意識することで、相手に心からの心理的安全性を届けられるようになるでしょう。
南城氏の講演では「会話力」のほか以下の内容にも触れ、心理的安全性の高い職場作りに必要なことを多角的に解説します。
- 職場の人やお客様に一目置かれる“魅せる話し方”
- 人の心をつかむ魔法の言葉
- オンラインで心をつかむ「3つのアクション」
- 人に好かれる人がしている「5つの聞き方」
心理的安全性の高い職場は、社員一人ひとりのモチベーションアップにつながり、生産性も向上させることができます。講演では、心理的安全性の意義を知り、実践的なスキルを習得することを目指します。続きはぜひ聴講していただけますと幸いです。
南城ひかり みなしろひかり
元タカラジェンヌ コミュニケーションコンサルタント
コンサルタント
100年の伝統ある宝塚歌劇団の舞台で培った人を魅了する技術や、コミュニケーション法などオリジナルメソッドとして分かりやすく楽しく伝える。アンケートでは90%以上の満足度を得ている。
プランタイトル
元タカラジェンヌによる“心理的安全性の職場作りは”
人の心を掴み幸せにする”コミュニケーション術
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