「仕事でなかなか成果が出せない」「本番になると上がってしまって思うように結果が出せない」と悩むビジネスパーソンは少なくありません。下準備をしっかりしている、事前に訓練を受けているにも関わらず、いざというときに力が発揮できないのは、主としてメンタルに原因があることが考えられます。
メンタルもしっかりとトレーニングをすれば、本番で持っている力を十二分に発揮することできます。スポーツ界でも、昨今、メンタルトレーニングの必要性が叫ばれ、一流選手の多くが専門トレーナーのもとで、メンタル強化に励んでいます。
そこで、本記事では、トップアスリートのメンタルトレーニング指導者として活躍する講師の高畑好秀氏が、基本的なメンタルトレーニングの考え方や本番で緊張をほぐす方法など、一流選手も学んだメンタルマネジメントのポイントを解説します。
【監修・取材先】
高畑好秀氏
メンタルトレーナー
なぜ結果や成果が出さないのか
本番で失敗してしまうアスリートには、以下の3つの原因が考えられます。
- 失敗する不安…「成功したい」という気持ちが強いほど、不安も大きくなる。
- 過度な緊張感…不安が大きいほど、緊張して、体も心もがちがちになって、思うような力が出せない。
- 周りからのプレッシャー…周囲からの期待感が大きくなればなるほど、自分の心の中で期待を背負いすぎてしまう。
人間は未来を想像できる生き物ですが、未来を想像したとき、成功したいという気持ちが強ければ強いほど不安も大きくなり、緊張感も増大します。人の脳は不安を感じると「失敗した自分」のマイナスイメージを瞬時に作り出し、それを再現してしまう性質があります。それが本番で失敗してしまう最大の原因となります。
本番で緊張するというのはだれにでもあることです。適度な緊張感は良い効果をもたらしますが、緊張が過度になると心身がガチガチになってしまい、思うような力が出せなくなってしまいます。
メンタルトレーニングの必要性
スポーツ選手は技術的に拮抗しているものですが、ここ一番という場面でどれだけ実力を発揮できるのかは最終的に「心=メンタル」にかかっています。
例えば、プロ野球選手たちはドラフト会議を通じて選手となっているため、実力にそれほど大きな差があるわけではありません。特に若い頃は毎回チャンスが回ってくるわけではなく、数少ないチャンス、すなわち本番をいかにモノにできるかが重要です。そのため、メンタルトレーニングによってマイナスイメージをプラスイメージで塗り替え、ここ一番というときに実力を発揮できるようにすることが必要だと言えます。
メンタルトレーニングを導入することで、実際のアスリートに以下のような結果が得られています。
- プロ野球選手…スタメンに選ばれたり、メジャーで活躍したりできるようになった。
- オリンピック選手…金メダルをとれるようになった。
- サッカー選手…日本代表のスタメンに選出された。
高畑氏が担当した選手の中には、世界を舞台に活躍する選手が多くいます。どんな一流選手であっても、全く不安や緊張を感じないという選手はありません。一流選手の多くが、メンタルトレーニングを通して、本番で力を発揮できるメンタル力を身につけ、その結果、成功を手にしているのです。
ビジネスシーンとスポーツシーンの共通項
ビジネスシーンでも、プレゼンの場や営業先でのクロージング、昇進試験、資格試験、上司に何かを進言するときなど、スポーツシーンと同じように、ここ一番というときに結果を出さなくてはならないシーンがたくさんあります。
例えば、営業先でのクロージングでは「売上目標を達成したい」という気持ちが強く出て、失敗する不安を抱えることもあります。その不安から過度な緊張が生まれてしまう可能性もあります。また、売上を望む上司や会社の期待を背負うことで、プレッシャーを感じてしまうこともあるでしょう。
このように、ビジネスシーンでも緊張や不安が邪魔をしてうまくいかないことは少なくありません。過度な緊張や失敗する不安を解消し、本番で持てる力を遺憾無く発揮するためには、ビジネスでもスポーツと同様、メンタルトレーニングが重要だといえます。
メンタルトレーニングの定義
国際メンタルトレーニング学会の定義によれば、メンタルトレーニングは以下のように定義されています。
身体的な部分にかかわらないすべてのトレーニングであり、ピークパフォーマンスとウェルネスを導くための準備である。スポーツのパフォーマンスや人生の向上をさせるための、ポジティブ(プラス方向の)な態度、考え(プラス思考)、集中力、メンタル、感情などを育成/教育することが中心である。
(1997年、国際メンタルトレーニング学会)
つまり、メンタルトレーニングの目的とは「本番で最大限に力を引き出すこと」。そのため、メンタルトレーニングでは、集中力の増加、プラスなコミュニケーション能力の習得、イメージトレーニング、目標達成、緊張や不安の解消などにより、ネガティブなイメージを払拭し、ポジティブな考え方に転換するような働きかけを行っていきます。
メンタルトレーニングの考え方
メンタルトレーニングの考え方は、風邪の治療法に近いものがあります。人は風邪をひいたとき薬を飲んで対処します。風邪が治ったら、次に風邪を引かないよう免疫力を上げるため、日ごろの食生活や睡眠、運動を見直すことを考えます。
メンタルトレーニングもそれと同じで、①一時的な対処法と同時に、➁長期的なメンタル面の強化の二軸で考える必要があります。
例えば、「緊張や不安の解消」を行うメンタルトレーニングでは、まず緊張を和らげる「①一時的な対処法」を学びます。体の姿勢を整える、唾液分泌をコントロールするなど、具体的な応急措置を習得し、緊張や不安の緩和を目指します。
同時に、「緊張しない心を育てていく」という考え方のもと、緊張に強い心をつくり、「➁メンタル面の強化」を行います。これは、十人いれば十通りのやり方があるため、メンタルトレーナーはそれを見出し、オーダーメイドでメニューを考えていく必要があります。①はマニュアル化しやすいですが、➁は個人で異なるためマニュアル化しづらいという特徴があります。
また、メンタルトレーニングにおいて、①はその場しのぎの対処法であるために、➁の部分を重要視しています。メンタルトレーニングの最終目標は、「緊張する心の根本を変えていく」ことなのです。
緊張したときの対処法
ここでは、スキルとして身につけやすい「①緊張の対処法」についていくつかお教えします。
人は不安を感じると交感神経が優位になり、緊張して震えたり、汗をかいたり、心臓がドキドキしたりします。そのため、緊張や不安を解消するには、副交感神経を優位にする方法が効果的です。その方法として、以下の4つが挙げられます。
- 顎を動かす…緊張すると唾液分泌が少なくなる。副交感神経を優位にさせるため、顎を動かし、唾液の分泌を促す。
- 大きく呼吸する…緊張すると、浅くて速い呼吸になる。大きくゆっくりした呼吸を意識する。
- 体の姿勢を整える…緊張すると体が丸まるので、胸を軽くはり、大きくゆっくり呼吸できる姿勢を心がける。
- 手をこする…緊張すると末梢の血流が悪くなるので、手をこすって血流を促進する。
もし緊張や不安を感じてつらい時には、これらの対処法を覚えておくと便利です。
心の免疫力を鍛えていくことが必要
緊張や不安を感じたとき、前述のような対処法もありますが、しかし、あくまでもこれは応急処置であり、根本的に緊張や不安を感じにくくなるわけではありません。対処法だけに頼ることなく、心根から緊張や不安に対して耐性をつけられるよう、日々のメンタルトレーニングで「心の免疫力」つける必要があります。
高畑氏の講演では、さらに自身が担当したスポーツ選手の成功事例や実体験を交え、メンタルトレーニングの方法と効果を心と体で体感していただきます。皆さんが耳にしたことのある有名選手の秘話も披露しておりますので、ぜひ講演の方もお気軽に聴講いただければと存じます。
高畑好秀 たかはたよしひで
メンタルトレーナー
スポーツ関係者・指導者
数多くのプロスポーツ選手やオリンピック選手などのメンタルトレーニングの指導を行なう。またアスリート以外にも、ビジネス分野、教育分野、健康分野、女性分野など幅広いメンタル面のニーズに応えている。講演では、「トップアスリートから学ぶ本番力」や「自分の実力を120%発揮するメンタル力」等を語る。
プランタイトル
トップアスリートから学ぶ本番力
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