障害のあるお子様をもつ家庭の共通の悩みでもある「親なきあと」のこと。
自分たちがいなくなったあと、お金の管理はちゃんとできるのか、だれが生活をサポートしてくれるのか…と心配はつきません。
そんなときに利用できるのが、公的機関の制度やサポート、民間の取り組みなどです。

我が国には、障害のある方が一人でも生活できるようにさまざまな制度や公共サービス、金融商品が提供されています。
親なきあとにも利用できる国の制度や地域サポート、そして、親が今から準備できることについて、ご自身も知的障害の子どもを持ち、「親なきあと」相談室を主宰する行政書士かつ社会保険労務士である渡部 伸氏に解説していただきます。

Your Image【監修・取材先】
渡部 伸氏

行政書士、社会保険労務士
「親なきあと」相談室 主宰

障害のある子どもをもつ親の共通の悩み「親なきあと」

障害のある子どもを持つ親は、「自分がいなくなったあと、わが子がちゃんと生活していけるのか」「サポートしてくれる人やサービスはあるのか」「自分(親)の財産をわが子に正しく相続させられるのか」「家計や財産管理は誰がしてくれるのか」、「金銭トラブルに巻き込まれないためには、どのようにすると良いか」など、心配も悩みも尽きません。

これらをまとめると、大きく3つの課題に分けることができます。

  1. お金で困らないための準備はどうするか
  2. 生活の場はどのように確保するか
  3. 日常生活で困ったときのフォローをどうするか

この記事では①のお金にまつわる課題について詳しく解説していきます。

 お金で困らないための準備

親である自分たちがいなくなったあと、子どもがお金で困らないために、私たち親は具体的にどのような準備を進めればよいのでしょうか?

いくら残しておくとよいのか?

わが子がお金に困らないよう、できる限りのことはしておいてあげたい。そう思われる方は非常に多くおられます。
しかし、渡部氏は、「お金は必要以上に残さなくても大丈夫」と答えています。
お金を残すことは大切ですが、それ以上に大切なことは、「残されたお金が本人のために使われる仕組み」をつくることです。

過去の事例ですが、知的障害のある40代男性が、複数人の男女に数カ月間ほぼ毎日飲食店を連れ回されて代金を支払わされ、貯めていた約1,500万円を失ってしまったという事件がありました。

そのようなケースに陥らないためにも、お金が正しく使われる仕組みづくりが急務だと言えます。

残されたお金が本人に正しく使われるために

たとえ、いくらお金があったとしても本人のために使われなければ何の意味もありません。本人のために使えるための仕組みづくりが重要です。

残されたお金が子どもの生活に使われるための仕組み、として、以下のような制度が利用できます。

  1. お金の残し方…遺言や福祉型信託などの活用
  2. お金の管理の仕方…成年後見制度、日常生活支援事業など

 支援制度を利用するために相談できる場所

渡部氏にも知的障害のある子どもがおり、将来のことを考えると、どのようなことをすべきなのかがよく分からずモヤモヤする日が続いていました。
そんな中、法律の勉強や講演会への参加を通じて、思っている以上にあらゆる制度が確立されていることを知りったそうです。
支援制度の利用において親御さんが相談できる先はいくつかあります。

ただし、課題によって相談先がバラバラです。

たとえば、子どもが将来住むところについては地域の福祉課へ、成年後見制度については社会福祉協議会や専門職後見人に、福祉サービスについては地域の福祉課へ、相続・遺言については行政書士や司法書士などとなってしまい、親が相談内容によって相手を探さなくてはなりません。

そもそも「親なきあと」の悩みは漠然としている場合が多いので、そうなるとどこにも相談できず、モヤモヤとした気持ちだけが膨らんでしまいます。

そこで、渡部氏は、悩みがはっきりしていなくても、まず最初に相談できる場所があればいいと考えて、「親なきあと」相談室を立ち上げました。

渡部氏が主宰している「親なきあと」相談室では、ご家族の方からの不安や悩みをメールや面談でお伺いし、ご質問に対して自身の持っている知識やノウハウを活かしてお答えし、対策を一緒に考えてアドバイスをしています。

渡部氏と同様の活動を行っている相談室は全国に100か所以上あります
困っていたり、悩んでおられるのなら、こういった相談先に早い段階でお話しなさってください。

生活の支援には地域のつながりが重要

子ども本人の生活を支援するには、きょうだいや親戚、地域の福祉サービスの支援者やご近所など、チームで支え合う仕組みづくりが重要です。

「親なきあと」相談室は、何かを決定するだけの場所ではありません。あくまで予防的な存在ですが、早い段階から不安を話すことで、本当に切迫した状態になってしまう前の準備として取り入れていただければと思います。

渡部氏の講演では、お子さんのために利用できる制度や、地域のつながりの大切さなどを、具体的な事例を取り上げながら、同じ目線でゆっくりと分かりやすく解説しています。
質疑応答の時間も設けおり、障がい児を持つ親御さんに大変好評をいただいています。福祉団体主催のセミナーや市民や民生員向けセミナー等にぜひご検討下さい。

渡部 伸 わたなべしん

行政書士、社会保険労務士 「親なきあと」相談室 主宰


弁護士・法律関係者

慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。

プランタイトル

障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備

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