「やらなきゃいけないと頭では分かっているけれど、めんどくさい…」。日々働くなかで、このような思いに悩まされていませんか?
「めんどくさい」という気持ちは仕事のパフォーマンスを低下させます。そして業績が悪化することで、さらに仕事が嫌になるという負の連鎖を生んでしまうのです。意欲が低下しているときは、職場の人間関係でも「めんどくさい」という気持ちが先立つようになります。この段階までくると、離職を考える人も少なくないでしょう。
今回は仕事の意欲が低下しているビジネスパーソンのために、著書『「めんどくさい」がなくなる本』がシリーズ累計発行部数30万部を超える行動心理コンサルタント・鶴田豊和さんに、「めんどくさい」を解消してやる気を引き出す方法を解説していただきます。
【監修・取材先】
鶴田豊和氏
株式会社インスパイア代表取締役
一般社団法人本質力開発協会代表理事
行動心理コンサルタント
「めんどくさい」とは何か?気持ちのメカニズムを知る
「めんどくさい」という気持ちを解消するためには、まず「なぜ人は「めんどくさい」と感じるのか?」という心のメカニズムを知らなくてはなりません。基本的な仕組みが分かれば、どのようなケースにも対処できるようになります。
人間が「めんどくさい」と感じるプロセスは以下のとおりです。
- 「やらないといけない」と思う
- 頭の中で色々考えてしまう
- 「めんどくさい」と感じる
それぞれの段階について詳しく解説します。
1.「やらないといけない」と思う
1つの仕事を意識するとき、多くの人はまず「その仕事をやらなくてはいけない」と思います。
このときの「やらなくてはいけない」という気持ちは、使命感ではなく義務感です。自分が主体となって「やりたい・やるべき」と思うのではなく、「やらされている」という受け身な捉え方が、「めんどくさい」を生み出す出発点となっています。
その仕事を自分事とは捉えておらず、けれど「やらなくてはいけない」と義務として感じてしまうことが、ネガティブな感情の根本の原因なのです。
2. 頭の中で色々考えてしまう
次に、人は仕事に取り組む前に頭の中で色々な思考をめぐらします。しかし、そのほとんどは課題を解決するための建設的な思考ではなく、とりとめのないネガティブなイメージです。「やらなくてはいけない」という義務感から出発しているため、前向きなイメージが湧きにくいのです。
「この仕事を進めるためには〇〇の部署にも連絡しないと…」「あそこの部長は厳しそうな人だな…」「迷惑をかけると怒られるだろうな…」「先に根回ししておかないと…」「そのためにはアレをしてコレをして…」と、気が重くなるようなイメージばかりが膨らんでいきます。
こうして、実際にはまだ一歩も踏み出していない段階で、ずっしりと肩に荷物を背負って身動きが取れないような状態に陥ってしまうのです。
3.「めんどくさい」と感じる
このずっしりと荷物を背負った状態で動き出そうとするとき、人は「めんどくさい」と感じてしまいます。
しかし、これは当然の結果といえるでしょう。一旦1.と2.のプロセスまで進んでしまえば、そこからポジティブな思考に切り替えることは困難です。無理に思考をコントロールしようとすると、うまくいかないことがかえってストレスとなってはね返ってきてしまいます。
仕事での「めんどくさい」をなくすには?
それでは仕事で「めんどくさい」の気持ちを解消するには、どうすればよいのでしょうか?
その答えは、”「めんどくさい」と感じるプロセスを壊してしまう“です。
具体的には、先ほど解説した『1.「やらないといけない」と思う』『2.頭の中で色々考えてしまう』という2つのプロセスが起こる前に、それらを別のものに差し替えてしまいます。ここではビジネスシーンでよく「めんどくさい」と感じられがちな、2つのケースを例にあげて見ていきましょう。
① 大きなプロジェクトを任されたとき
大きなプロジェクトのリーダーに任命されたとき、多くの人がその難しさや責任の重さにプレッシャーを感じ、仕事に着手するときに心のどこかで「めんどくさいな」と思ってしまいます。
このようなケースで有効なのは、「マイルール」の設定です。自分の中で「売上500万円突破!」「1ヵ月前倒しでの完成を目指す!」という独自の目標を設定し、それを達成するためには何をすればよいかを考えます。それにより、先ほど解説した『「めんどくさい」と感じるプロセス』が、「目標達成のために何ができるか」を考えるという前向きなアクションに差し替えられているのです。
ここで大切なのは、「マイルール」はあくまでも自分自身が設定したものであるという点です。任されたプロジェクトに取り組むだけなら「やらされている」と感じるかもしれませんが、自分が決めた目標に向かうことで「やりたい」という気持ちに変わり、主体性をもって考えられるようになります。
② 雑務が積み重なっているとき
「めんどくさい」と感じるのは、困難な仕事を任されたときだけではありません。人はつまらない仕事に対しても「めんどくさい」と感じる傾向があります。
ほとんどの人は、仕事に優先順位をつけて取り組みます。そのなかで簡単で重要でない仕事は優先順位が低いために後回しにされがちです。そうすると業務時間が終了する頃にはそうした仕事がまだたくさん残っていて、次の日に持ち越されてしまいます。そして「前日に終わらせることができなかった」というネガティブな気持ちから「やらなくてはいけない」という義務感が生まれ、また「めんどくさい」のプロセスが始まるのです。
これを解消するには、優先順位を無視して「できる仕事からどんどん片付ける」という新たなルーティーンを作るのが有効です。序盤で多くの仕事が片付いてしまうのは気分が良く、自己肯定感が高まります。ポジティブな状態のときは「めんどくさい」という気持ちを寄せつけないので、パフォーマンスも向上します。優先順位が高い仕事を後回しにしたとしても、かえって効率的にこなすことができるでしょう。
人間関係の「めんどくさい」をなくすには?
職場には、仕事に取り組むこととは別に、人間関係の「めんどくさい」も存在します。
他人は自分の思い通りにはなりません。そのため、人間関係の「めんどくささ」は避けようがないものに思われますが、実はこの解消にも有効なテクニックがあるのです。それは、自分自身の中にある「~するべき」という固定観念を取り外してしまうことです。
ここでも職場での「めんどくさい」が生まれる2つのケースを例にあげて、具体的に解説していきます。
① 上司に人前で注意されたとき
上司に注意されるのは、誰にとっても愉快な経験ではありません。特に同僚の目があるところで注意されると上司に対して腹立たしく感じ、その後の上司とのやり取りすべてが「めんどくさい」とネガティブな気持ちになるでしょう。
他人と接するとき、多くの人は「〇〇はすべきではない」という独自のルールを念頭に置いています。そして他人がそのルールから外れる行為をしたとき、相手に対してネガティブな感情が湧くのです。この場合でいうと「叱責や注意は、周囲の目がない場所でするべき」というルールが自分の側にあって、上司がそれを破ったことへの憤りがあります。そこから生じたネガティブな感情が、上司との関係におけるすべてが「めんどくさい」という状態を生み出しました。
これを解消するためには「叱責や注意は、周囲の目がない場所でするべき」という、自分の認識を変える必要があります。「上司は周囲の目がある場所で、叱責や注意をしてもよいのだ」と考えてみるのです。
確かに自分は不愉快な気持ちになるかもしれませんが、職場にいる全員が上司の言葉を共有することで、他の人が自分と同じミスをすることを防げるかもしれません。「人前で注意する上司がいてもいいし、そうしない上司がいてもいいのだ」と考えることで、上司の存在そのものを受け入れられない、という状態を防げます。
② 部下や同僚から飲み会の誘いを断られたとき
誰かを誘って断られるときも、人は相手に対して不快な気持ちになるものです。部下や同僚に「仕事が終わったら飲みに行こう」と声をかけて断られると、どう感じるでしょうか?相手のことを「感じが悪い」「嫌なやつ」だと思って、その後の付き合いで「めんどくささ」を感じるでしょう。
このケースにおいても、自分独自の「〇〇すべき」というルールが働いています。「一緒に働くもの同士で交流を図るべき」「上司に誘われたら喜んで応じるべき」というルールに相手が従わないから腹が立つのです。
ここでも「〇〇すべき」を「〇〇してもいい」に置き換えてみましょう。「仕事とプライベートの付き合いは分けてもいい」「上司から誘われても、行きたくなければ断っていい」と考えてみます。そうすれば相手は何も悪いことをしているわけではないので、腹を立てる理由もなくなるはずです。断られることは残念ですが、相手に問題があるわけではないので、また翌日からストレスなく付き合っていくことができるでしょう。
「めんどくさい」を予防する、おすすめ習慣を一部紹介!
ここまで「めんどくさい」を解消するポイントを解説してきました。最後に、そもそも「めんどくさい」という気持ちを感じにくくし、日々のパフォーマンスを向上するためのおすすめ習慣をご紹介します。
リラックスして「考えない」時間をつくる
「めんどくさい」と感じにくい心をつくるには、1日のどこかで必ず何も考えないリラックスタイムを設定するのがおすすめです。
「めんどくさい」と感じやすい人の特徴として、常に頭のなかで色々考えてしまうということが挙げられます。通勤の電車のなかでも、休憩時間の散歩中でも、家事をやっているときでも、そういう人たちの頭の中は「会社に着いたら〇〇をやらないと」「この後は〇〇をして、次に〇〇をして…」といった事柄でいっぱいです。しかしこれでは24時間気が休まらず、「めんどくさい」というネガティブな感情を寄せつけやすくなります。
1日のうち1度は、頭を空っぽにしてしっかりリラックスしましょう。
ジムで体を動かしたり、音楽を聴いたり…頭を空っぽにする手段は人それぞれ。頭を使う疲労感が取れれば、翌日には前向きな「頑張ろう」という気持ちからスタートできます。
「ネーミングウォーク」を取り入れる
しかし、頭を空っぽにするのは意外と難しいもの。「何も考えないようにしないと」と意識すると、かえって様々な雑念が湧いてきます。
そんなときには、ぜひ鶴田豊和さん考案の「ネーミングウォーク」を試してみてください。
「ネーミングウォーク」とはその名のとおり、物に名前をつけながら歩くことです。たとえば道を歩いていて犬を目にしたら、頭の中で「犬」と唱える。他にも「ポチ」や「ワンコ」でも、名前は何でもいいのです。
ポイントは必ず1語で名前をつけること。形容詞などがついてくると、それを考えるために頭を使ってしまいます。反射的に浮かんできた言葉で名前をつけながら歩くことで無心になり、頭を休ませることができるでしょう。
「めんどくさい」をなくす方法を知って、仕事にワクワク取り組もう!
「めんどくさい」という気持ちがなくなれば、仕事のパフォーマンスは一気に向上します。さらに職場の人間関係も良好になり、仕事がもっと楽しくなるはずです。生産性の低下や社員の離職に悩まされている企業でも、「めんどくさい」解消の秘訣を知ることが全体の課題解決につながるでしょう。
『「めんどくさい」の解消』をテーマに講演を行う行動心理コンサルタント・鶴田豊和さんも、自身が会社員として働くなかで意欲が低下し、うつ状態にまで陥った末に自分の心を分析して情熱とやりがいを取り戻した人の一人です。
鶴田さんはその後マイクロソフト社に転職して、社内でトップ3%以内の業績を挙げています。
鶴田豊和さんの講演では、他にもビジネスパーソンが直面するさまざまなケースを例として、「めんどくさい」を解消して仕事にワクワク取り組むメソッドを紹介しています。「社員の意欲を引き出し生産性を向上したい」「職場の雰囲気を良くして離職率を下げたい」とお考えの研修担当の方は、ぜひ次回の社内研修としてご検討ください!
鶴田豊和 つるたとよかず
株式会社インスパイア代表取締役 一般社団法人本質力開発協会代表理事 行動心理コンサルタント
自己分析により仕事不適合起因のうつ状態から見事快復。マイクロソフト勤務時にAsia Gold Club Award受賞。独立後【誰もが無理なく、自然体で結果を出せる】行動心理メソッドを普及。のべ1万人以上、目標や夢の実現に導く。『「めんどくさい」がなくなる本』他、国内著書シリーズ33万部超え。メディア出演多数。
コンサルタント
プランタイトル
「めんどくさい」を解消し、理想の状態を手に入れる方法
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