平成28年(2016年)から健康経営優良法人制度がスタートし、現在は中小企業でも健康経営の取り組みを進め、一定の成果を得る企業が増えてきました。一方で、「健康経営に興味はあるが、何をすればよいか分からない」「取り組みを始めてみたけれど、従業員の意識改革が進まない」といった悩みを持つ企業は少なくありません。
健康経営の実践においては、成果が出るまで継続的な取り組みが必要となるため、まずは経営者をはじめとしたトップ層がその重要性を理解しておく必要があります。そのうえで、組織としてどのような施策を打ち出し、それをどうやって現場に根付かせるかを考えていかなくてはなりません。
今回は、健康経営が今求められている理由と具体的な施策について、健康経営エキスパートアドバイザーの田中咲百合氏にお聞きしました。
【監修・取材先】
田中咲百合氏
健康経営エキスパートアドバイザー
健康運動指導士 野菜ソムリエプロ
メンタルヘルスケアマネジメントラインケア2種3種
なぜ健康経営のための施策が必要なのか?
なぜ今、大企業をはじめとした多くの企業が、こぞって健康経営への取り組みを進めているのでしょうか?その理由は、健康経営は本来「従業員が能力を十分に発揮できるようにすること」が目的であり、企業として利益を生み出すための手段だからです。
例えば、従業員の食生活や運動習慣が改善されて身体が健康になれば、メンタルにも良い影響を与えます。メンタルが整うと集中力や判断力がアップし、チーム内のコミュニケーションも円滑になるでしょう。結果として、生産性が向上して企業の利益につながるのです。
健康経営に取り組もうとするとき、ただ従業員の健康診断の数値を改善することを目的に据えてはいけません。
企業の理念実現を目指して、組織の現状をどのように改善すべきか考える。そして、そのための手段として従業員の健康管理を具体的な施策に落とし込む。
これが健康経営の基本となる考え方です。
健康経営の取り組みで一定以上の成果を上げるためには、まず経営者にこうした俯瞰的な考え方が求められます。
健康経営の施策を紹介!成果につながるアイデア4選
健康改善の取り組みを根付かせるためには、自社の業種や企業文化に合った施策を選ぶことが大切です。数ある施策の中の一例として、以下の4つをご紹介します。
①勤怠システムとの連動による意識改革
従業員の意識改革を行うには、単発の取り組みではなく、日々の習慣として健康を意識する機会を設ける必要があります。
あるツールでは、毎朝出勤時に勤怠システムに入力すると、フィジカルヘルスやメンタルヘルスに関連した質問が1つ表示されます。例えば「今週は何回揚げ物を食べましたか?」「今日は何時間残業をする予定ですか?」などです。
このように問いかけられることで、従業員は食生活や睡眠リズムの改善や、無駄な残業を減らすことを意識するようになります。結果として心にゆとりが生まれ、仕事の生産性の大幅な向上が見込めます。
勤怠システムと連動させたツールのポイントは、従業員側が無理なく受け入れやすい形で、社内教育のシステムを確立させられるということです。すべての従業員が毎日必ず勤怠システムを操作するので、その際に企業として意識してほしいことを問いかけるようにすれば、日々の積み重ねによって従業員の意識改革を実現できるでしょう。
②ストレス状態の見える化
個々のメンタルの状態は外から見ただけではなかなか判断できません。また、本人が周囲にSOSを出しづらいと感じて悪化してしまうケースが多いため、管理職が部下のメンタル不調を早期発見できるツールの活用が効果的です。
あるツールでは、従業員がシステム上で毎日その日の気分に合った色のボールを選択し、さらにそのボールがどれくらい大きく弾んでいるかも指定します。管理職がそれぞれの選んだボールを日々確認するようにすれば、個々のメンタル状態を視覚的に理解し、把握することが可能です。
こうしたツールは問題の早期発見に加えて、管理職と部下とのコミュニケーションのきっかけとしても活用できます。ツールを挟むことで管理職から部下への言葉かけもしやすくなり、風通しが良くなって、より良い職場環境づくりにつながります。
③質の良い睡眠をゲーム形式で競う
身体の不調を改善するには、睡眠の質を向上させることも重要です。しかし睡眠は職場から離れた場での習慣であるため、企業が一律で管理するのは難しいと思われます。そのようなときには睡眠アプリを使用して、睡眠習慣の改善を社内で競うようなゲーム形式の施策がおすすめです。
今は睡眠時間だけでなく、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムから、質の良い睡眠がとれているかもチェックできるアプリが登場しています。1か月間アプリを使用した結果を見比べてみて、より質の良い睡眠を取っている従業員を表彰すると、誰もがゲーム感覚で楽しむことができるでしょう。
また他の人の睡眠時間について尋ねてみたり、就寝前の効果的な習慣を教え合ったりすることで、自然と職場のコミュニケーションが活発になり、メンタルヘルスにも良い影響があります。全社で楽しみながら取り組めるので睡眠改善の意識が根付きやすく、集中力アップや疲労改善によって生産性向上が期待できます。
④業務で使い過ぎている筋肉を専門家が特定
業種や職種によっては、身体の特定の部分に過度の負担がかかり過ぎているケースがあります。例えば介護士や保育士、高所作業員、あるいは長時間のデスクワークも、身体に大きな負担がかかります。
このような職種については、まず健康運動指導士などの専門家に実際の業務の様子を確認してもらい、どのようなストレッチやエクササイズが必要か指導してもらわなくてはなりません。
使い過ぎている筋肉をピンポイントでケアするには様々な方法があります。専門家の指導を受けて対策すべき箇所が分かれば、業務時間内にストレッチに取り組む習慣などを根付かせるとよいでしょう。従業員の身体を適切にケアできれば、怪我や不調による現場の生産性低下を避けることができます。
健康経営の施策に取り組んで、企業の永続を実現!
今回は、健康経営の実践イメージを持っていただくために、従業員の健康管理のための具体的なアイデアをいくつかご紹介しました。
しかし、これらの施策はあくまでも健康経営の実践の一端でしかありません。重要なことは、健康経営の取り組みは企業の将来の収益性を確保するための投資であると理解し、俯瞰的に戦略を練ることです。
そのためには運動や栄養についての研修を導入するだけでなく、経営の視点からそれらの実践についてアドバイスできる専門家のサポートが必要になります。
今回お話を聞かせていただいた田中氏は、実際に健康経営のコンサルタントとして数多くの企業を支援してきました。田中氏の講演は、健康経営の実践によって企業が永続していくためのビジョンを得られると、様々な業種の経営者から支持されています。
健康経営優良法人の認定を受けて企業のイメージアップを図りたいという企業様はもちろん、定着率や生産性の向上に興味をお持ちの企業様も、ぜひ田中氏の講演を経営者研修としてご検討ください!
田中咲百合 たなかさゆり
健康経営エキスパートアドバイザー 健康運動指導士 野菜ソムリエプロ メンタルヘルスケアマネジメントラインケア2種3種
食事、メンタル、運動指導など、トータルで指導を行う健康教育のスペシャリスト。ワタナベエンターテイメントカレッジにて、ボディメイク、セルフプロデュース講師として7000人の指導に携わった経歴を持つ。 健康指導専門家として、各地での講演・セミナー、テレビ出演など、多方面で活躍している。
講師ジャンル
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ビジネス教養 | ワークライフバランス |
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実務知識 | 安全管理・労働災害 | |
社会啓発 | 教育・青少年育成 | |
文化・教養 | 健康 |
プランタイトル
これからの時代に備える健康経営
~労災を防ぐ職場づくり~
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