昨年(2020年)より急増したオンライン講演。
私は普段営業事務を担当しておりますが、その傍らオンライン講演の運営サポートも行っています。
すでに20件近くのオンライン講演を担当しましたが、オンラインでは距離が離れているだけになかなか互いの感情や考えが汲み取りづらいといった経験を何度かしました。
そんな中、講師と聴講者又は聴講者間が距離を感じずに双方間のコミュニケーションを活性化させるため、さまざまな取り組みを行ったケースもありました。
今回は、実際に私が立ち会った事例をもとに、離れた講師に臨場感を伝えるコツや双方向コミュニケーションを活性化する方法を解説します。
労働組合担当 営業事務 塩澤えりか
~人の心を開かせる鉄板条件とは?~
講師 : 的場 つよし 氏
主催者 : A銀行職員組合 様
開催日時 : 2020年11月上旬
講演時間 : 1時間半
聴講者人数: 約100人
使用ツール: Zoomミーティング
講演タイプ: :B. 講師から会場聴講者へ生配信タイプ
講師と聴講者のコミュニケーションの壁
オンライン講演は、講師と聴講者場所に制限されずに参加できるというメリットがある一方で、離れているがためにコミュニケーションがとりづらいといったデメリットもあります。
そのデメリット部分が感じられた経験を一つお話ししたいと思います。
私が一番最初に担当した、とある労働組合のコミュニケーションセミナーでのこと。講師と聴講者は各自PCやスマートフォンから参加しており、聴講者には事前に顔出しをお願いしていました。
時にはビデオをオフにする聴講者の方もいらっしゃいますが、講師は小さな画面からでしか聴講者の表情を汲み取ることができません。講師は、聴講者の表情を見ながら講演を進めていきます。しっかりとわかっていないことが見て取れた場合はさらに詳しく解説をし、時には質問をしながらより聴講者の理解を深めようとします。オンラインだとそれが制限されてしまうため、なるべくビデオをオンにしていただくようにお願いしているのです。
当案件は、全員がビデオをオンにしていたところまではよかったのですか、途中、講師が話を始めると、あくびをしたり、他のことをやっている人が見受けられました。もちろん、ちゃんと真剣に聴いている人たちもいます。よくよく考えてみると、前者のような人々はスマートフォンで視聴していることに気が付きました。スマートフォンで参加していると、画面が小さいがために、資料と講師のみが表示され、自分の顔が表示されません。恐らく、自分の顔が映っていることに気が付かなかったのでしょう。
講師からすると、そのような聴講者の姿はやる気を喪失させてしまう原因になりかねません。しかし、当案件の講師は笑顔で講演を続けていました。PCで聴講していた人たちの中には、そのような聴講者の姿が気になった人もいたことでしょう。
聴講者に顔出しをお願いする時には、常に映った状態であることを知らせる必要があります。このような労働組合のセミナーは、休日に開催されることが多いため、自宅から受講する人も多いです。自宅だと、会社よりリラックスした状態となり、ついつい気を抜きがちになります。スマートフォンでは自分の顔が表示されない場合もあるため、表示されていなくても映っているという意識を聴講者に持たせることも必要です。
遠隔地にいる講師に聴講者の表情を伝える工夫
前回のようなこともあり、講師と聴講者の間の距離感をどのように埋めればよいのか考えるようになりました。
そんな中、昨年(2020年)11月中旬頃に、A銀行様の職員向けオンラインセミナーの運営サポートに入りました。今回のオンライン講演では、聴講者が四国にある自社ビルの会議室に集まり、講師は弊社の大阪本社から講演を中継するという形となりました。私は大阪本社の会議室に簡易のスタジオを設営し、講師のカメラ撮影と資料投影を行うホストを担当しました。
四国の会場では、1テーブルに6人程度が座り、複数のテーブルが並べてありました。通常ですと、PCのカメラ1台から会場全体を映して、講師に会場の雰囲気を配信することが多いのですが、今回は会場の4箇所にwebカメラが置かれ、各テーブルの人々が映るようになっていました。また、講演中は主催スタッフがスマートフォンを持ってあちこち巡りながら、聴講者一人ひとりをズームインして撮影していました。
大阪本社の会議室には、大きなテレビモニターを用意し、講師はそこから聴講者の様子を見ることができます。このスマートフォンの移動式カメラがあったおかげで、まるで対面しているかのように聴講者の表情がわかりました。
講師の的場さんは、対話を大切にする講師で、よく聴講者に質問を投げかけます。そのたびに移動式スマホカメラが、当てられた聴講者の顔を撮影し、的場さんはその表情を見ながら、聴講者の感情や考えを汲み取り、臨機応変に質問を変えて、会場を盛り上げていました。
一見すると単調になりがちなZoomでの画面も、このようにカメラがいくつかあることで、多角的な映像にすることができます。また、移動式カメラがあることで、より臨場感を演出できます。
対面による講演ならば、講師は色んな角度から聴講者を見ることができます。聴講者の表情だけでなく、体の仕草や手足の動きからも、聴講者の気持ちの動きを察することができます。
しかし、オンライン講演の場合、講師は小さな画面に映った聴講者の顔だけで聴講者の心の動きを判断せねばなりません。限られた情報の中で、時には講師と聴講者の間に認識のズレが生まれることもあります。
このアイデアは、そういった双方間の認識のズレを解消してくれるとともに、より会場の雰囲気も伝わりやすくなります。講師の的場さんも「聴講者の表情や会場の雰囲気が伝わり、講演がしやすかった」とおっしゃっていました。
ただし、この方法は、聴講者が一つの会場に集まるときに有効な方法であり、前段落の案件のように聴講者が個別に視聴する場合にはまた別の方法を考える必要があります。
双方間のコミュニケーションを活性する方法
聴講者が個別に視聴する際に活用できそうなのが、配信ツールのコミュニケーション機能です。
よく弊社がオンライン講演で使用している配信ツール「Zoomミーティング」には、チャット、挙手、アンケート機能など、講師と聴講者、又は聴講者同士の双方間のやりとりをより活性化できる機能があります。
それ以外にも、「ブレイクアウト」と呼ばれる機能があります。これは、参加者をいくつかのグループに分けてグループ活動ができるもので、ワークなどで使用されます。
昨年11月末に行われたC銀行の新人組合員セミナーでも、このブレイクアウト機能を使ったワークが行われました。
講師は、人材育成トレーナーの高村幸治さん。講演は「周囲を魅了する人気者のコミュニケーション~あなたと一緒に働きたい人が増える秘訣~」というテーマで、新入組合員に対して、社会人としての心構えやコミュニケーションのはかり方などをレクチャーする内容でした。
講師の高村さんは、ご自身の事務所に背景を合成させられるグリーンバックを使った簡易のスタジオを設置するほど、映像にこだわっていらっしゃいます。ご自身をアップしたり、資料だけを表示させたり、聴講者を飽きさせないカメラワークを駆使されていました。
前述のブレイクアウト機能を使ったグループワークも講演中に数回実施されました。200名ほどの聴講者を、4~6名ほどのグループに分けて、高村さんが与えた題材についてのグループ内でディスカッションして、導き出された結論をグループの代表者が発表するといったものです。
ご主催の方で事前にいくつかのグループに分けてあり、グループワークの時は、自動的に各グループのルームに振り分けられるようになってありました。
小人数ということもあり、各グループでは積極的にディスカッションが行われていました。
200人の前で発表するのは難しいですが、このようにグループで分けることによって、個々が意見しやすい環境が作れます。また、新人研修の目的の一つとして組合員同士の親睦もあるかと思いますが、このようなグループ学習は連帯感を深めるきっかけにもなります。
もちろん、親睦を図るためには実際に会って話すことが一番です。しかし、コロナ禍で一か所に集まること難しい今においては、こういったオンラインツールの機能を使いながらコミュニケーションを深めることもできるのです。
オンラインでの心の距離を埋めるために
遠隔地にいるとどうしても互いの距離を感じやすくなります。オンラインでは、対面のように相手の表情や考えが手に取るようにわかったり、その場の空気感や臨場感を感じたりすることは難しいでしょう。
しかし、カメラワークやブレイクアウトなどの配信ツール機能を使うことで、より互いの距離を縮めることができます。
私がオンライン講演をサポートする際には、講師と聴講者、又は聴講者間のコミュニケーションを活性化できるよう配信ツールの機能や方法を提案するようにしています。コロナ禍で実際に対面する催事の開催が難しい中、感染リスクも避けて開催できるオンライン講演の需要は今後も伸びていくでしょう。
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