研修を行った後は、研修実施報告書という報告書を作る必要があります。
これは実施者側が作成するもので、主に今後の研修実施に役立てるために作られます。
今回は、研修実施報告書について、その必要性や受講報告書との違い、フォーマットや作成時の注意点をご紹介します。研修実施報告書の書き方で迷ったら、ぜひご一読ください。
■目次
「研修実施報告書」と「研修受講報告書」の違い
研修報告書には、受講者が書く「研修受講報告書」と、人事担当者などの実施者が書く「研修実施報告書」の2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
- 研修受講報告書…受講者が人事や企業に報告するもので、受講した研修の理解度を確かめるためのものです。報告書を書くことにより、受講者自身が研修の内容を整理してより深く理解することにもつながります。
- 研修実施報告書…講師や人事担当者が企業に報告するもので、研修そのものの効果測定をするものです。予算や工数に対して十分な効果が得られたかどうかを確認し、期待した効果が得られなかった場合には次の研修の予算や内容を再検討する。
本記事では、主に講師や人事担当者が書く「研修実施報告書」について解説します。
研修実施報告書(レポート)の必要性
研修実施報告書では、受講者の理解度を測定し、この研修を引き続き行うか、改善するか、廃止するかを見極めます。そのためには研修の効果を測定する必要があり、例えば以下のような方法が挙げられます。
- 受講者に対し、研修後アンケートを行う
- 受講者に対し、研修内容の理解度テストを行う
- 受講者に研修内容のレポートを提出してもらう
研修実施報告書は、これらの内容と事前に設定した研修の目的を照らし合わせ、効果が出たかどうかをまとめて報告します。
➡研修後アンケートについては「テンプレートを使った効果的な研修後アンケートの作り方」を参照
研修実施報告書のフォーマット
研修実施報告書のフォーマットに必要なことは、大まかに分けて3つあります。それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
①目的と目標を明記する
最初に、研修を始めるにあたって掲げていた目的や目標を明記します。
- なぜこの研修を行うことにしたか
- 研修によって受講者に身につけさせたかったこと、解決したかった課題
- 研修後、いつ頃までにどのような効果を期待していたか
目的が明確であればあるほど、受講者も研修に臨む心構えができますので、より効果を発揮しやすいと考えられます。研修後に達成したい効果は、定量的・定性的に設定してあると、研修後に達成できたか、何がどう足りなかったか振り返りやすいでしょう。
②結果や効果を記載する
次に、上記の目的や目標をもとに、研修後に測定した結果や効果を記載します。何を結果としてデータを収集・計測し、何に対しての効果を測ったのかがわかるように記載しましょう。例えば、以下のような形式がおすすめです。
- 理解度テストにより、80%の受講者で知識の習得を確認した
- 研修後アンケートで、70%の受講者に意識の変化が見られた
- レポートの提出で、75%の受講者が研修内容に十分な理解を示した
など、印象ではなく事実から効果を記載しましょう。
③問題点や改善案を分析・提案する
目標と結果のギャップを見れば、問題点や改善点が自然とわかってきます。目的・目標とその結果をもとに、次回により良い研修カリキュラムを作成するため、最後に、実施した研修の問題点や改善案を分析・提案します。
例えば、研修でやろうと思っていたのにできなかったことや、狙い通りに進まなかった原因を問題点・課題点と捉え、次回以降の研修ではどうすればにいのか考えましょう。この分析を通じて、次回の研修内容にも活かすことができます。
【テンプレート】研修実施報告書の例文(新人研修)
ここでは、新人研修の実施報告書の例文をご紹介します。
202〇年〇月〇日 各位
研修実施報告書
202〇年〇月〇日、「新入社員向け、Officeソフトの使い方研修」を実施しましたので、以下の通り報告いたします。
記
研修名:新入社員向け、Officeソフトの使い方研修
実施日程:202〇年〇月〇日
実施場所:本社3F 第1会議室
講師:株式会社○○ 田中太郎氏
参加者:2021年4月1日入社 新卒社員、人事部主任 山口花子【研修の内容】
・Officeソフトの種類
・Wordで基本的な文書を作成する方法
・Excelで基本的な表組みを作成する方法
・PowerPointでテンプレートからプレゼンテーションを作成する方法
・まとめ【研修の目的と目標】
・目的…Officeソフトの基本的な使い方がわかるようになる
・目標…研修後、レポートをWordファイルで、スケジュールをExcelファイルで作成し、ともにメールで提出する【研修の結果と効果】
研修中にパソコンでWord・ExcelなどのOfficeソフトの扱い方を一通り習った結果、受講者15名中14名がWordファイルでのレポート作成、Excelでのスケジュール作成ができたことを確認。
残り1人はこれまでパソコンに触れてこなかったとのことで、研修後にデスクのパソコンでしばらく練習させたところ、期限とした4月22日にはレポート・スケジュール作成を完了した。
研修後アンケートでも、満足度は83%と高く、9割の受講生が「今後の業務に役立てる」と回答している。【研修の問題と改善点】
受講者の多くは、普段スマートフォンやタブレットを多用している一方で、学生時代にパソコンを使っていた受講生、使っていなかった受講生の間でITリテラシーに大きな差が見られた。今回は、初級者向けに一律で研修を行ったが、Officeのスキルによって初級者と中級者を分けた講義を用意した方が良かったと思われる。また、Officeソフトの機能についてはまだまだ習得していかなければならないスキルがあるので、今後、研修の継続を検討する余地がある。以上
上記、ご査収のほど宜しくお願い申し上げます。
人事部主任 山口花子
研修実施報告書を作成する際の注意点
研修実施報告書を作成するときは、以下の2つのポイントに注意しましょう。
結果は定量的かつ客観的に記載する
研修の結果は数値などを使い、定量的、客観的に記載しましょう。また、そのための測定方法としてアンケート、理解度テスト、レポート提出などが挙げられます。具体的な数値を挙げながら、受講者の感想も入れて、客観的な立場で記述するとよいでしょう。
多面的な視点の意見を盛り込む
結果や改善案には、さまざまな視点の意見を盛り込む必要があります。例えば、受講者の満足度が高くても、研修担当者のねらいと結果に大きなギャップが生じたり、登壇した講師にとって喋りにくい環境だったりする可能性もあります。
このように、視点を変えてさまざまな立場から研修を見て、次回以降の改善点・改良点を見つけることが重要です。完全無欠な研修というのはまずあり得ない、ということを念頭に置き、報告書を作成しましょう。
客観的な視点で「伝わりやすい」研修実施報告書を作ろう
研修実施報告書は研修の目的・目標、結果と効果、問題点・改善点の3つのブロックに分けて記載しますが、中でも問題点・改善点は多面的な視点を盛り込むことでよりよい研修実施報告書になるでしょう。
また、研修実施報告書はあくまで「報告書」ですので、客観的な立場で、明瞭かつ簡潔を心がけて書くのがおすすめです。例文やテンプレートを活用しながら、「伝わりやすい」研修実施報告書を作成してください。
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