社員のスキルアップやモチベーション維持などをはかる研修はさまざまですが、その一つに階層別研修があります。階層別研修は、社員のステップ(階層)ごとに行われる研修で、適切な時期に適切な内容で行うことで、各自の能力を最大限に引き出すことができるため、重要な研修の一つです。
本記事では、階層別研修を初めて行う人事担当者に方に向けて、階層別研修とは何か、目的とメリット・デメリット、また階層別のおすすめ研修テーマ、開催のポイントについて詳説します。
■目次
階層別研修とは?
階層別研修とは、役職や年齢、勤続年数によって社員をステップ(階層)に分け、それぞれの階層で必要な知識やスキルなどを身につけてもらう研修のことを指します。
分けるステップは「新入社員」「中堅社員」「管理職」などがあり、例えば新入社員なら基本的なビジネスマナー、中堅社員なら次世代リーダーに向けたマネジメントスキル、管理職なら企業理念やビジョンに沿った意思決定の能力など、その役職に応じて必要な研修テーマで研修計画を立てます。
階層別研修と選抜研修の違い
階層別研修と選抜研修はいずれも社内研修ですが、それぞれ目的と開催時期、対象者が異なります。
目的 | 対象者 | 開催時期 | |
---|---|---|---|
階層別研修 | 階層ごとに必要なスキルを身につける「底上げ」 | その階層全員 | その階層に上がった後 |
選抜研修 | ある階層から次の階層に向けて、ステップアップするための「引き上げ」 | 選抜者のみ | 階層に上がる前 |
階層別研修では、ある階層で必須のスキルを身につけるための研修で、その階層に上がってから全員一斉に研修を受けてもらいます。全員が同じ研修で一定のスキルを身につけることで、チームや組織全体の底上げをはかるのが目的です。
一方、選抜研修はある階層から次の階層に上がるにあたり、必要とされるスキルや知識を身につけるための研修です。幹部候補など、優秀な社員を「選抜」して行います。
階層別研修の目的
階層別研修の大きな目的の一つとして、前述の通り必要なスキルの「底上げ」があります。
社員がある階層に上がったとき、あるいは会社に初めて入社したとき、一定のスキルは身につけていることでしょう。しかし、1人ひとりのスキルレベルに差があったり、企業側が最終的に求めるレベルに達していなかったりすることがあります。そこで、階層別研修を行い、全員のスキルレベルを均質化するとともに、底上げをはかるのです。
また、単にスキルを研修でインプットするだけでなく、インプットしたスキルを業務の中でアウトプットしていく姿勢も同時に学びます。例えば、新入社員研修なら先輩社員から見たり聞いたりして学ぶこと、中堅社員ならマネジメントに必要なコミュニケーションスキルをどう身につけていくか、などが挙げられます。このように、なぜこの業務を行うのか、目的達成のためにはどんなことが必要なのか考える姿勢を身に付けることも、 階層別研修の目的と言えます。
階層別研修のメリット・デメリット
階層別研修には、メリットもデメリットもあります。ここでは、それぞれについて箇条書きを使いながら詳しくご紹介します。
階層別研修のメリット
階層別研修のメリットには、以下のことが挙げられます。
- 自分のステップ(階層)に必要な知識やスキルを習得できる
- 階層ごとの意識や自覚が高まる
- 客観的な自己分析ができるようになる
- 同じステップの社員と刺激し合い、モチベーションを上げられる
階層別研修の最も大きなメリットは、知識やスキルを習得し直し、階層ごとに意識や自覚を高められる点です。例えば、中堅社員研修でマネジメントスキルを学べば、自分は部下を教え導いていく立場である、という認識を再度持つことができるでしょう。また、新入社員研修なら、同期の社員と一緒に学ぶことが良い刺激になり、モチベーションアップにつながります。
階層別研修のデメリット
一方、階層別研修にはデメリットもあります。
- 研修内容のレベルを絞りにくい
- 研修の目的が曖昧になりやすく、形骸化しやすい
- 役職が上になるほど出席率が低下する
階層別研修の目的には階層ごとに必要な知識・スキルの統一化がありますが、研修前のスキルや知識は社員によってまちまちであり、すでに研修目標のスキル・知識を身に付けている社員もいれば、身に付けいない社員もいます。そのため、研修内容をどのレベルに設定するのかが難しくなります。
研修を行う側にとっても、階層別に求めるスキルや意識をあれもこれもと詰め込みすぎて、目的が曖昧になりやすいというデメリットが考えられます。これらのデメリットを解消するためには、単なるスキルや知識を詰め込むだけの研修にせず、意識を高める内容、自学自習の姿勢を盛り込むと良いでしょう。
また、階層別研修では、役職が上になるほど多忙になるため出席率が低下するという話もよく聞きます。受講者に研修を受講することによって得られるメリットを示し、研修日を業務の一貫としてスケジュールを組みこむ必要があります。
階層別の研修テーマ
5つの階層別ごとに定番のテーマについて、それぞれ解説します。
①新入社員研修
新入社員研修は、学生から社会人へと意識を切り替えてもらうためにも、以下のような内容を盛り込んだ集合研修を行うのが一般的です。
- ビジネスマナーの基本姿勢
- 身だしなみ、敬語、挨拶など第一印象を上げるノウハウ
- 「報・連・相」、名刺交換、電話対応などの基本スキル
身だしなみや敬語、挨拶などは就職活動である程度身につける人も多いのですが、やはり企業として求めるレベルに達しているかどうか、今後取引先やクライアントに企業の顔として出てもらっても大丈夫かどうか、という点から見るとスキルアップが必要なことも多いです。この他、コンプライアンス研修や、ビジネス文書作成研修などをあわせて行う企業もあります。
②若手社員研修
若手社員とは、概ね入社2年目から5年目くらいの社員のことを指します。この頃にはビジネスマナーは身についてきているため、次に図るべきは業務効率の改善です。そこで、以下のような内容を盛り込んだ研修が行われます。
- Officeソフトのツールスキルアップ
- その他、普段使っている業務ツールのスキルアップ
- OJTに関する研修
業務に使っているツールの便利な機能を使いこなしたり、より効率的な使い方を知ったりすることで、業務のスピードや質のアップにつながります。また、後輩を教える立場になる人も増えてくるため、OJTに関する研修を行うのも良いでしょう。
③中堅社員研修
中堅社員は、だいたい入社3年目以降で、係長・課長などの役職についていない社員のことを指します。この頃になると、チームリーダーやサブリーダーなどとしてチームを牽引していく立場になる人も多くなるため、以下のような内容を盛り込んだ研修が良いでしょう。
- リーダーとしての役割を学ぶ
- 上司を補佐し、チームの成果を高めるための課題解決スキル
- マネジメントスキル、セルフマネジメントスキル
中堅社員は、やがて管理職や幹部へと育っていく可能性もある立場の社員です。そのため、部下や後輩を引っ張っていくマネジメントスキルだけでなく、自分の目標や成果を管理するセルフマネジメントスキルも求められるでしょう。
④管理職研修
管理職は名前の通り、係長や課長など、何らかの役職を持ち、部署などをまとめ率いていく役割を持つ社員です。そのため、以下のような内容を盛り込んだ研修が行われます。
- 人材育成について
- 意思決定に関するスキル
- 部下を管理するスキル
- 組織マネジメント、計画立案などの心構え
特に、部下を管理したり組織として部署をマネジメントしたりしていくスキルや心構えは、管理職に欠かせません。また、部長など幹部に近い上級管理職を対象とした場合、幹部研修に近い内容になることもあります。
⑤取締役研修、経営幹部研修
取締役や経営幹部が研修を受けるケースは少ないですが、以下のような内容の研修を受けることが多いです。
- 必要な法律知識を学ぶ
- 経営分析の仕方について
- 経営戦略や財務戦略の立て方
- 企業倫理に関する知識、スキル
当然ながら、取締役や経営幹部は企業におけるトップであり、ビジョンを実現するために組織を率いていくリーダーです。つまり、彼らが研修を受ける場合は社内研修ではなく、社外研修を受けるのがほとんどです。社外の講師に委託したり、外部の研修を受講しに行ったりするのが良いでしょう。
階層別研修を成功へと導く3つのポイント
「デメリット」の段落でお話ししました通り、階層別研修は対象者のレベルが決めづらく、ともすると内容が曖昧になってしまう可能性があります。効果的に開催するために、以下の3つのポイントに注意しましょう。
階層別に期待するスキル、人材体系図を作る
階層別研修のカリキュラムを作成する際は、まず階層別に期待するスキルや役割を明確化しておく必要があります。例えば、ここまでご紹介してきた中では、以下のような例が挙げられます。
<新入社員の場合>
一般的なビジネスマナーを身につけ、取引先や顧客の前に企業の顔として出られるようにする。
<中堅社員の場合>
リーダーやサブリーダーとしての役割を理解し、マネジメントスキル・セルフマネジメントスキルを身につける。
<管理職社員の場合>
部下を管理し、人材育成をしたり、部署としての意思決定をしたりするスキルを身につけたり、組織をマネジメントしていく心構えを持ったりする。
このように人材別の役割や目的を明確化するにあたり、ピラミッド型、ツリー型などの人材体系図を作るのもおすすめです。どの階層でどんな役割が必要なのか、ひと目で見やすくなります。
トップ層から順に研修を行う
研修はトップ層、中堅層、若手層の順に行うのがおすすめです。これは、決定権を持つ順に行うことで、より下位の階層における研修の目的が明確化するからです。逆に、若手や新入社員が研修を受けてからトップ層が研修を受けた場合、受けた内容が全然違ってしまい、若手社員や新入社員が学んだことが反映されないというリスクがあります。こうした齟齬を防ぐため、トップダウン式で研修を行うのが良いでしょう。
アウトプットで定着をはかる
どの階層の研修であっても同じですが、研修で学んだことは、定着させなければ意味がありません。研修で学んだことを日々の業務でアウトプットできているか、正しく活かせているか、適宜チェックを行いましょう。チェックした後は再び日々の業務に活かしていくことで、PDCAサイクルを回すことにもつながります。研修の学びにもPDCAサイクルを意識すれば、より効果的・効率的に業務を行えるようになるでしょう。
弊社では階層別研修のメニューを取り揃え
階層別研修は、社員をステップ(階層)別に分け、それぞれの階層で身につけるべきスキルや知識、心構えを学ぶための研修です。階層全体、組織全体のスキルアップや同じ階層の社員との刺激によるモチベーションアップなどが期待できますので、今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ集合研修を取り入れてみてはいかがでしょうか。
弊社では、階層別に専門の講師による研修やセミナー、講演プランをご用意しています。テーマのアレンジもできますので、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい
社外研修とは、社内研修とは異なり社外に赴いたり講師を招いたりし…
研修を行った後は、研修実施報告書という報告書を作る必要がありま…
「最近ダイバーシティ研修を取り入れる企業が増えているが、どのよ…
他の記事をみる
業務外の講師への取次は対応しておりません。