少子高齢化などにより働き手が不足している昨今、多くの企業において十分な社員数を確保するのが難しくなってきています。そうした中で既存社員の能力を活かすことの重要性が高まっており、各従業員の能力を把握し、適材適所で活用できる管理職への期待も増しています。
本記事では管理職研修の概要を押さえた上で、管理職研修で身に付けたいスキルなどを紹介していきます。
なぜ管理職研修は意味がないと言われるのか
人事が管理職研修を実施しようとすると、「研修には意味がない」「通常の業務で忙しいのに研修なんてとんでもない」といった反発を社員から招いたことのある企業も少なくありません。
管理職研修は意味がないと言われる最大の原因は、管理職側に意識改革ができていないためです。管理職は高いパフォーマンスを発揮した人材や経験豊富な人材が一般的に任命されますので、現場と研修の内容がかけ離れたり、一方的な押し付けのような内容になったりすると「その研修は本当に意味があるのか」という疑念につながります。逆をいえば、管理者が目指す方向性と研修内容が一致さえすれば、主体的に参加してもらうことも可能なのです。
そもそも管理職研修とは
管理職への昇進と同時に管理職の役割や業務内容を理解できるようになることはありません。管理職という自覚をもち、他者をマネジメントするスキルを身に付けるためにも管理職研修は重要です。
管理職研修では管理職として必要なスキルや能力を取得し、従来の業務に加えて部下をマネジメントする力を高めます。同時に、管理職の心構えや部下の教育方法などを取得することで、管理職として高いパフォーマンスを発揮できるようになるだけでなく、本人のプレッシャーが和らぐことも多いです。
管理職研修を実施することで企業のビジョンや理念に従い、組織が高いパフォーマンスを成し遂げられるように、組織、業務、カネ、人材を効率的にマネジメントできるようになります。
管理職研修の真の目的
管理職研修を成功させるには目的を持って行うことが前提となります。以下、管理職研修の真の目的を見ていきましょう。
①管理職としての心構えを育む
管理職は個人として企業に貢献しようという意識だけではなく、部署全体で会社に貢献しようという意識を持つことが大切です。一般社員は自分の業務にだけ集中すればよいですが、管理職は部内で成果を上げることも考慮しなければなりません。
管理職には組織のビジョンや経営方針を理解し、それらを実現するために周囲をリードしていこうという心構えが求められます。
➁組織の生産性の向上
同業他社間の競争が激化し、物価高が続く昨今では組織の生産性の向上は大きな課題となっています。
管理職は各社員を能力に合った業務に割り当てることはもちろん、モチベーションを維持できるように職場環境にも気配りを行う必要があります。社員が高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えるのも管理職の役割です。
③企業としての変化に対応できるようにする
時代とともに企業に求められる役割も変化しています。管理職はこのような変化に対応するためにも常にアンテナをはり消費者やクライアントが何を求めているか把握し、事業内容に組み込んでいくことが求められます。
また、社員の働き方も変化しています。コロナ禍以降、リモートワークやフレックスタイム制を導入している企業も一気に増加しました。社員の定着率の向上や優秀な人材の獲得のためには、管理職がこうした変化に対して柔軟、かつ寛容であることが前提となります。
創業当初からの伝統を守り続けることも大切ですが、企業として存続していくためには管理職が多様な働き方が認められる組織になるよう心掛ける必要があります。
管理職研修を意義あるものにするためのポイント
企業が安定的に利益を生み出すには管理職の存在が鍵となりますが、優秀な管理職を育成する方法として管理職研修が挙げられます。ここでは管理職の意識と内容の乖離を解消するためのポイントを確認していきましょう。
①参加者に研修の目的を伝える
管理職研修では参加者に研修の目的を最初に伝えておくことがポイントです。前述のように管理職は勤続年数の長い人材や社内の業務に精通した人材がなります。
管理職と研修の内容の乖離をなくすことで、管理職は研修の意義をしっかりと意識し、吸収率も上がります。
また、研修の目的を事前に伝えることで参加者は前向きな姿勢で研修に挑めるため、学習内容を吸収しやすくなります。
➁研修後もフォローする
どんなに素晴らしい研修内容であっても一度限りの学びでは忘れてしまうこともあります。知識や習得の定着を図るためにも、研修後にフォローアップ研修をしたり、実際にそのスキルを活用できているか定期的に評価したり、フィードバックを行い、活用できていな場合は行動変容のためのフォローが必要です。
また、個別の業務において高いパフォーマンスを発揮している人材であっても、管理職としての業務には苦手意識を抱いていることも少なくありません。管理職に対しても面談を実施するなどして管理職側の悩みや不安を聞き出し、ケアを行うような取り組みも求められます。
③外部の専門業者を活用する
管理職研修は人事が主体となって自社で行うこともできます。しかし、自社で行うためには研修や管理職に関するさまざまな知識や情報が必要です。その点、専門業者に依頼すればより高度な内容や深い内容、最近の動向を押さえた研修を実施できます。
企業研修サービスを提供している外部業者を活用することで、自社の管理職に対してより有意義な研修を提供できます。研修専門業者であれば管理職育成のポイントや課題、近年の動向なども押さえているため質の高い研修内容となります。
管理職研修の種類
管理職と一口で言っても管理職にはいくつかの種類があり、それぞれによって研修の内容も異なります。以下、管理職研修の種類と内容について見ていきましょう。
新任管理職研修
新任管理者研修では係長・課長補佐など管理職としてのポジションを初めて与えられた人たちが最初に参加する研修です。
これまでは自身の業務だけを考えればよかったですが、今後はチーム全体の業務を管理する必要が出てきます。そのため、研修では、管理職としての意識改革を行い、管理職の基本的な心得や姿勢を学びます。次に、KPIマネジメントなどの管理スキル、リーダーシップスキル、人材育成スキルなどの実践的なスキルを取得していきます。
【研修の内容】
- 管理職の心得・マインドセット
- コンプライアンス・危機管理
- リーダーシップの考え方
- チームビルディング
- モチベーションアップ
- タイムマネジメント
- 部下とのコミュニケーション
- 組織・業務マネジメント
- 部下の人材育成・フォロー など
中間管理職研修
中間管理職は新任管理職と上級管理職の間に位置するポジションで、課長と同等のポジションです。部署全体に責任をもち、新任管理職のサポートや上級管理職の補佐も行います。
中間管理職研修ではさまざまな立場にある人たちと円滑にコミュニケーションをとれるよう交渉力や対話力を高める練習を行います。また、部下をうまくマネジメントするためのメゾットの伝授が行われることも多いです。
【研修の内容】
- マネジメントのブラッシュアップ
- 部下のメンタルヘルス
- ハラスメント防止
- 労務問題
- 情報収集
- コミュニケーション
- 問題解決
- 危機察知・危機管理
- チームビルディング
- コーチング
- ファシリテーション
- プロジェクトマネジメント
- マーケティング など
上級管理職研修
上級管理職は経営を担うポジションで、役員とも近い立場にあります。社内の役職でいうと、部長が上級管理職に相当します。
上級管理職は部署のトップとして部の業務が円滑に進むようにフォローを行ったり、役員とともに自社の事業内容を検討したりします。
上級管理職研修ではマネジメント能力を向上できるプログラムの他、経営者としてのスキルや知識の取得を行うことが多いです。
【研修の内容】
- 戦略思考
- 問題発見・解決
- 危機・リスク管理
- マーケティング・事業開発
- 多様な働き方改革
- ハラスメント防止
- チームビルディング
- 部下のフォローアップ
- 心理的安全性の高い組織作り
- 財務・会計 など
管理職研修で身に付けたいスキル
管理職研修で身に付けたいスキルにはどのようなスキルがあるのでしょうか。ここでは管理職研修で身に付けたいスキルを確認していきましょう。
組織全体の業務管理スキル
管理職は自分に割り当てられた業務だけではなく、部署やチームメンバーの業務に対する責任もあります。業務の進捗が遅れている人やサポートが必要な人には適切に対応しなければなりません。加えて、PDCAサイクルをまわし、よりよくしていくことが求められます。
管理職は個人として利益を出すことだけではなく、組織全体で利益を生み出せるよう業務に取り組むことが求められます。
部下の育成スキル
企業が継続的に利益を上げるには人を育てていくことが不可欠です。管理職は、新入社員も含め部下の育成にも注力しなければなりません。
日常的には部下からの質問に応じたり、部下が行った業務にフィードバックを行ったりします。また、それぞれに合った目標を設置し、その目標を達成できるように促すことも管理職の役割です。
その他にも悩みを抱える部下の相談にのり、適切なアドバイスを与えられることのできる管理職は周囲からも信頼されるでしょう。
リスクマネジメントスキル
リスクマネジメントとは業務において生じる可能性があるリスクを事前に想定し、それを回避できるような対策を企てることです。ビジネスにおいて不正アクセスなど防げないトラブルもありますが、対策することで情報漏えいの防止など発生を防げるトラブルも多々あります。
管理職は組織の業務を見渡し、損失の発生が考えられるリスクをリストアップし、その対応方法について検討します。
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