宿泊研修は短期集中で多くの学びが得られる機会ですが、参加に抵抗感を覚える社員は少なくありません。

今回は宿泊研修について参加者が不満を感じるポイントについて解説し、それらを解消するための6つのコツを紹介します。「宿泊研修を実施したいけれど、参加者から反発があるんじゃないか」と不安な研修担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

宿泊研修に対するさまざまな不安や不満

まずは宿泊研修のハードルとなるポイントを、参加者と企業それぞれの視点から確認していきましょう。

参加者:全員一斉に同じことをすることへの苦手意識

参加者の中には「大勢の人と同じ行動を強いられるのが辛い」と感じる人もいます。

宿泊研修は通常の勤務とは違い、朝起きてから夜寝るまで、誰かと共に行動するのが前提です。そもそも人付き合いが得意でない人や、仕事とプライベートの時間を分けたい人にとって、長時間にわたって拘束される宿泊研修は、窮屈かつストレスに感じられるでしょう。

また、合宿などで起こりがちな「場の高揚した勢いに合わせるのが苦痛」という意見もあります。

参加者:直接的なメリット実感の少なさ

拘束時間の多さや内容への不安に比べてメリットが実感しにくいのも、宿泊研修が参加者に敬遠される理由の1つです。

企業側はまずは宿泊研修に参加してもらってから、社員の成長を長い目で見守りたいと考えてはいるでしょう。しかし参加者からすると、給与が増えたり特別手当が出たりといった目に見える形での短期的・直接的リターンが提示されないことを根拠に「自分たちの負担ばかりが大きい」と不公平に感じる可能性があります。

「半日の研修で十分なはずなのに、無駄に宿泊を強いられている」という不満につながるのです。

参加者・企業:通常業務の停滞感

参加者と企業の双方にとってネックになるのが、研修中は通常業務がストップしてしまうことです。

参加者にしてみれば、できるだけ研修期間中の業務に穴を空けないように前後で残業をしたり、不在時の対応をチームメンバーなどに依頼したりしなくてはなりません。そのため体力的にも精神的にも負担が発生します。

また企業側も、複数の社員が数日間現場業務から完全に離れてしまうことによる、組織全体の生産性への影響を想定・考慮する必要があります。

企業:研修コストの増加

企業にとっては、宿泊に伴うコストの増加も懸念材料です。

利便性の高い駅近のホテルであれば宿泊費が高くなり、郊外の宿泊施設ではその分交通費がかかります。さらに食費や懇親会の費用も必要です。そのため、通常の研修とは異なる規模の予算を組まなくてはなりません。

宿泊研修だからこそ得られる4つのメリット

しかし一方で、宿泊研修には通常の研修では得られないメリットもあります。ここでは4つをピックアップして紹介しましょう。

メリット①短期間集中の目的達成

短期間だけ職場や家庭から離れることで、参加者が研修だけに集中して目的達成の経験を獲得できるのは大きなメリットです。

通常の研修では、参加者が研修を受けている間に、仕事の段取りや家庭の問題などに意識が向いてしまうこともあるでしょう。

宿泊研修では研修だけに取り組む環境が用意されているため、参加者は会場に足を運ぶだけで、半ば強制的に学習するマインドに切り替えられます。集中できる環境で、短期間で目的達成できます。

メリット②コミュニケーション活性化や結束強化

宿泊研修では、同じ場所で一緒に食事をとり寝泊まりすることで、参加者同士のコミュニケーション機会が増えます。また同じ目標に取り組むことで、強い結束も生まれやすくなります。「特別な空間・時間を共有した仲間」という連帯感が得られるのもメリットの1つなのです。

メリット③参加者へのリフレッシュ提供

宿泊研修は、会場や場所によっては非日常空間に身を置くので、参加者にリフレッシュを提供するという効果もあります。

例えば郊外の宿泊施設は緑豊かな環境であることが多く、景色を眺めるだけでも気分転換になるでしょう。レクリエーションの時間に他の参加者と一緒に会話やスポーツを楽しんだり、研修後の懇親会で酒席を共にするのも貴重な機会です。

研修会場として高級ホテルや温泉付き宿泊施設をセッティングする企業もあります。

メリット④研修担当者の負担軽減

宿泊施設によっては、企業向けの研修プランがあらかじめ用意されています。

施設側のプランを利用すれば、必要な準備工程を大幅に削減でき、ゼロから企画して準備するより手軽なのがメリットです。

宿泊研修で参加者の満足度を上げる6つのポイント

宿泊研修は工夫次第で、通常の研修では得られない高い効果が期待できます。以下の6つのポイントに留意しましょう。

①宿泊スタイルが適した研修・状況で実施する

1つ目は、宿泊スタイルが適した研修・状況で実施することです。

例えば新入社員研修や内定者研修など本格的な業務に入る前に社員同士の親睦を深める目的がある場合、寝食を共にして濃密な時間を過ごせる宿泊研修のスタイルが最適といえます。

あるいは全国の支社など遠方からの参加者が多くを占める場合も、宿泊形式のほうが効率的でしょう。参加者に「この状況なら確かに宿泊研修が適している」と納得してもらったうえで計画することが重要です。

②宿泊研修だからこそできるカリキュラムを取り入れる

2つ目は、宿泊研修だからこそ可能なカリキュラムを取り入れることです。通常の研修では難しいような密度の高いテーマや、大がかりなプログラムを企画してみましょう。

例えばプレゼン大会などがあります。まずは参加者をグループ分けし、1日目は所定のテーマについてグループワークに取り組み、2日目にはその内容をグループごとに発表します。その中で最も優れていると評価されたチームを表彰するなどです。

会場施設の大規模な空間を活用し、広いスペースが必要なビジネスゲームや実技研修などを組み込んでもよいでしょう。

③事前に参加者へ目的や内容をしっかり伝える

3つ目は、事前に参加者へ目的や研修の内容を共有しておくことです。

すでに述べたように、長時間拘束される宿泊研修に不安や不満を抱く参加者は少なくありません。新入社員研修であれば、警戒している参加者に対して「新入社員同士の親睦を深めること、自社について深く知り、現場ですぐなじめるようになること」などの目的をきちんと伝えましょう。

そして1日のスケジュールやカリキュラムをしっかりと説明し、不安を払拭します。

④研修担当者が下見で場所や施設を確認する

4つ目は、研修担当者が下見で研修を開催する場所や施設を確認しておくことです。

宿泊研修の満足度は、会場となる施設に大きく左右されます。研修設備、交通の便や周辺環境はもちろん、実際にそこで過ごすうえでの快適さも重要です。

「施設内売店や、近くにコンビニなどがあるか」「客室や浴室・トイレが清潔か」「広い範囲でWi-Fiが使えるか」など、細かい点まで見落とさないよう、できれば2人以上が下見に行くとよいでしょう。

また気がかりな点は、必ず事前に施設の担当者に確認・相談しておきましょう。

⑤懇親会などで受講者の横のつながりを作る

5つ目は、研修後に懇親会などを設けて参加者同士の交流を促すことです。

研修の間は場に緊張感があって周りと気軽に話せなかった人も、人と一緒に食事を楽しむうちに、リラックスした雰囲気になじみます。

参加者同士が自然な会話の流れの中で研修の感想や意見を交換できれば、学んだ内容への理解も深まります。さらに気持ちを共有することで不安も解消されやすくなるのがメリットです。

また研修後も、交流した記憶から親しみや連帯感が生まるかもしれません。日常の業務でもチームワーク向上や活発なコミュニケーションが期待できます。

⑥実施後は参加者から意見を募り毎回改善する

研修についての参加者アンケートは、今回の研修結果の評価材料となり、それが次回への改善へとつながります。

研修が終わった後は、参加者にアンケートを実施し感想や意見を募りましょう。「十分に休息がとれて、翌日の研修に集中できたか」などの設問を用意し、寄せられた結果を次回の宿泊研修を設計する際に役立てます。

「施設周辺が騒がしくて、夜十分に休めなかった」であれば会場の立地を、「カリキュラムを詰め込みすぎていて、体力的に負担が大きかった」であれば研修内容とスケジュールを見直します。

宿泊研修の場所や会場を選ぶ際のチェック項目

最後に、実際に宿泊研修の会場を選ぶときに使えるチェック項目を紹介します。研修担当者の方は、ぜひ会場選びの参考にしてください。

□施設の環境やアクセスの利便性

まずは施設周辺の環境や、アクセスを確認しておきましょう。

研修に集中できる環境や、参加者に移動のストレスを感じさせないことが大切です。チェックすべきポイントは主に以下の4つです。

  • 参加者にとって会場が遠すぎないか?
  • 主要駅から徒歩で行ける範囲か?
  • 駅から離れている場合はバスなどの公共交通機関があるか?
  • 研修や休息の妨げになるような騒音はないか?

□会議室や宴会場などの設備

企業研修向けに会議室などの設備を充実させているホテルもあります。設備に関しては、主に以下のようなポイントをチェックしましょう。

  • 参加予定の人数を収容できるか?
  • 会議室にはプロジェクターや音響設備、ホワイトボードなどの機材があるか?
  • インターネット環境は整っているか・通信速度は十分か?
  • 懇親会が開催できる宴会場はあるか?

□参加者の快適性と安全性

参加者の満足度を高めるには、宿泊施設の快適さや安全性にも配慮しなくてはなりません。

広い浴場や満足感のある食事メニューがあれば、長時間の研修の疲れも癒やすことができます。

参加者の目線で、主に以下のポイントをチェックしましょう。

  • 客室は快適か?
  • 男女別フロアや警備など、セキュリティは万全か?
  • ある程度個人のプライバシーが確保できるか?
  • 周辺の治安は悪くないか?
  • 施設の食事メニューは充実しているか?

宿泊研修に対しネガティブなイメージを持つ人もいますが、他の参加者と寝食を共にする時間は特に後から振り返ると特別な体験となることも多く、業務の現場でも社員同士の連帯感やチームワークを生むきっかけの1つになります。

参加者の不安をできるだけ事前に取り払い、当日は満足度を高める工夫をしながら、効果を最大化する宿泊研修を取り入れましょう。


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