現代のビジネス環境は、技術革新やグローバル化により、複雑化しています。企業が変化の激しい時代を生き抜くためにも、問題解決のスキルが不可欠です。この記事では「問題解決研修」の必要性や内容などを説明するとともに、人気の研修プランについて紹介します。
今、企業に問題解決研修が求められている理由
この章では、今、企業に問題解決研修が求められている理由について、主な4つの背景を解説します。
理由(1) 現代ビジネス環境の変化と複雑化
現代のビジネス環境は、日々急速に変化しています。直面している問題は、技術革新による市場トレンドの変化や、顧客ニーズの多様化などさまざまです。
例えば30年ほど前と比較すると、通信や情報技術の進展により、業務サイクルが飛躍的に高速化しました。同時に市場もグローバル化し、海外企業と比較されるなど、競争は激化しています。さらに国内労働人口の減少も看過できません。人材確保が困難になっており、企業には時代に即した人材戦略の策定が迫られています。
こうした変化に対応するため、組織の問題解決能力向上が急務となっています。
理由(2) 飽和状態の市場におけるサービス・製品の独自化
次は「飽和状態の市場におけるサービス・製品の独自化」です。
現代では次々と新しい商品が生まれています。同じ市場で同じ商品を提供しつづけているだけでは、すぐに他社との差別化ができなくなってしまうのです。
そこで「顧客自身も気づいていないような課題を解決できる」製品やサービスの提供が求められます。よって企業の成長には、課題解決力が不可欠です。コモディティ化(市場に投入したときには高付加価値があったのに、他社が多数参入した結果、その価値が下がって一般化してしまうこと)した市場で、競争優位性を確保するために有効なスキルといえます。
市場の飽和が進む中、企業は独自性を示すことが重要です。独自化は顧客からの支持を得て、市場シェアを拡大する切り札になるでしょう。
理由(3) 問題解決能力を備える人材ニーズの増加
続いて「問題解決能力を備える人材ニーズの増加」です。
Business Insiderは「企業が求めるスキルNo.1は『問題解決力』」と題した記事中で、フィデリティやアメリカンエキスプレスなどの多くの世界的企業が「問題解決スキルを備えた人材を求めている」と語っています。
日本では特に、中堅以降の社員に問題解決力が強く求められています。この層は若手時代とは異なり、ゴールや進め方が不明確な仕事にも、自ら解決策を考えて取り組まなければなりません。そのために他部署や外注先などに協力を得る力も、このスキルの構成要素の1つです。
理由(4) 業務プロセス改善への関心の高まり
こうした状況の中、世界中の企業で生産性向上や業務プロセス改善への注目が高まっています。
トヨタ自動車の工場で長年取り入れられていた「カイゼン」もその1つです。これは「すべての従業員が日常的な業務プロセスやシステムの中に改善点を見つけ、解決することを奨励する」仕組みのこと。日本が強みを発揮した「ものづくり」の精神を表す考え方として海外でも広まり、今もさまざまなビジネスの現場で応用されています。
カイゼンを進めるポイントは、「問題への気づき」の視点を習得することにあります。問題解決能力を高めるために、このトヨタ式カイゼンの手法を学ぶ研修もあります。
問題解決と課題解決との違い
一般的に「問題解決」と「課題解決」は混同されがちですが、この2つは異なるものです。
問題解決は、「すでに発生したトラブルを解決する」プロセスです。例えば「生産ラインの故障による納期遅れ」や「不具合に関する顧客からの苦情」などが該当します。
一方、課題解決は、「組織全体の目標や理想に対する実態を明らかにし、それを埋めるための取組み」を指します。具体的には「納期遅れをなくす」のではなく「納期の2日前には納品できる体制やフローを構築する」ことです。
このように厳密には異なりますが、問題解決に、課題解決の要素を含めるケースも多いです。
問題解決研修の実施で達成できる5つの目的
ここからは、問題解決研修を行うことで達成できる5つの目的を、項目ごとに詳しく解説していきましょう。
1.自社に内在する問題・課題の発見
まずは「自社の潜在的な問題や課題を明らかにすること」です。
参加者が問題解決スキルを身につけた結果として、組織全体の問題解決能力が向上すれば可能です。
ただしこれはあくまでも個人がスキルを習得した先の結果であり、これのみを優先する企業が研修を手段として選ぶのは、あまり現実的ではありません。
2.個人の問題解決スキル向上
次は「社員個人の問題解決スキル向上」です。
ビジネスの現場では、社員は日々多くの問題に直面します。その問題を放置することでさらに問題が大きくなったり繰り返されたりして、状況がより複雑になり、さらに悪化することすらもよくあります。
問題解決研修を受けて個人で問題解決できる人材が増えれば、組織にとっても有益です。早い段階で解決されると、サポートする他のチームメンバーの工数が少なくて済むだけでなく、互いに学び合うムードも高まるからです。
3.社員の主体性・意欲強化
また「社員の主体性・意欲の強化」にも効果が期待できるでしょう。
問題解決スキルを習得すると、自発的に課題に気づき、その解決に取り組む姿勢が養われます。
「自分で解決できない問題が山積みだ」と感じている社員は、それだけで日々働く意欲が減退します。しかし「自分で問題解決できる」と認識できると、自分自身の業務のみならず、部署や組織の課題やミッションにも思いを巡らせられるようにもなるでしょう。
4.意思疎通の品質向上・会社組織の活性化
4つ目は「意思疎通の品質向上、組織の活性化」につながることです。
問題解決には、事実をベースにした他者とのコミュニケーションが不可欠です。個人単位では、相手に真意が確実に伝わる話し方や、文章作成が可能になるでしょう。
組織単位では、現場からのアイディアや提案など、建設的なコミュニケーションが増し、チームの連携も強化されます。
このことからも、問題解決スキルが組織を総合的に活性化する結果をもたらすことがわかります。
5.業務改善・業績アップ
最後は「業務改善・業績アップ」です。
社員が業務における問題を迅速に見つけ適切に解決できるようになると、業務プロセスがスムーズ化し、個人の生産性が向上します。
さらに問題解決できる人材が増えると、組織全体の業績の改善も期待されます。
問題解決研修に盛り込むべき主な内容
それでは問題解決研修では、どのようなポイントを盛り込むべきなのでしょうか。6つのポイントを紹介します。
①問題の分類・問題解決の基礎的な考え方
問題解決研修の前半では、問題の分類や解決のための基礎的な考え方を学ぶのが一般的です。
まずはこの記事の冒頭でも述べたように「問題とは何か」を理解します。そして「問題解決が失敗するシーンを知ること」などを通じて、問題解決の本質に迫ります。
②問題解決の具体的なステップ
次が問題解決のプロセスです。
詳細は研修プランや講師によって異なりますが、具体的には、以下のような流れである場合が多いでしょう。
- 問題の特定と定義
- 原因分析と要因特定
- 解決策の構築
- 解決策の実行
- 結果の評価と検証
これらのステップについて体系的に学びます。
③各ステップの詳細な進め方や要点
その次は②の問題解決の流れに沿って、各ステップの進め方や要点を学習します。
- まず現場の問題を明確に把握し、影響の範囲を検討します。
- データ分析を行い、問題の原因を特定。解決策を模索してその実現可能性を評価します。
- 実行する際には、責任者を決め、誰がどの役割を担うかなど明確にします。
以上がおおまかな進め方で、必要に応じて修正を加えます。
④ロジカルシンキングの技法
問題解決にはロジカルシンキングが不可欠です。
論理的思考でデータや事実に基づいて情報を整理し、課題の分析や解決策の構築にも適用します。
また、ロジカルシンキングに使えるいくつかのフレームワークを習得するのも有益でしょう。それらに当てはめて因果関係やプロセスを分類していく経験は、現場での問題解決シーンにも役立てられます。
⑤事例ごとのケーススタディやゲームなどの実践型ワーク
さらに事例ごとのケーススタディやゲームなどの実践型ワークで、それまでに研修で学んだ知識を使うのも有益です。
一例として、数名でプレイすることを通じて、集団で課題解決のプロセスを学ぶカードゲームや、「事業の黒字化」や「残業時間削減」といった具体的課題に取り組むワークなどがあります。
⑥アクションプラン設定
最後はアクションプランの設定です。問題を解決するためには、具体的な行動計画に落とし込まなければ意味がありません。
シミュレーションではなく実務における最終目標を明確化したうえで、どの範囲を誰が担い、各自がいつまでに何をするのかタイムラインを設定するなど、要素を具体化します。さらに進捗管理の方法や評価基準の指標も事前に設定し、実行中の修正や改善を行いやすくします。
これにより研修をその場限りにせず、現場での成果も最大化するのです。
SB人気の問題解決研修プラン
ここでは、システムブレーンで人気の12種類の問題解決研修プランについて紹介していきます。
花王における問題解決技法の導入と成果とは
26年間、花王で組織の課題解決に取り組んだ経験を生かし、課題解決コンサルタントとして活動する阿比留眞二氏による研修プランです。花王が独自に導入している問題解決技法によって上げた成果を例に、現場への導入から、全国大会開催に至る経緯までを伝えます。
「デザイン思考」で問題解決
~真の課題を発見し、アイデア創出することでイノベーションを生み出す~
企業役員秘書やアナウンサーの経験もある、荒尾千春氏の研修プランです。フレームワークの体験などを通じ、米シリコンバレーで生まれたイノベーションメソッド「デザイン思考」について学べます。管理職や労働組合役員におすすめです。
【問題解決型社員 養成講座】
~お客様に喜ばれ、社員が成長し、そして業績が向上する~
米GEで品質管理の推進リーダーを務めた、岩本好之氏による研修プランです。講師は問題解決のエキスパートとして、多数のプロジェクト指導と人材育成に携わりました。問題解決に不可欠な5つの視点をはじめ、解決までのステップと方法論についてなどを、わかりやすく解説します。
問題解決の基本構造と実践ノウハウ
~戦略構築・業務改善に活かす9ステップ~
キリンビール入社後、「淡麗グリーンラベル」開発リーダーや子会社社長などを歴任してきた上野哲生氏による研修プランです。「ロジカルシンキングを学んだけど十分に実践できていない」と悩む若手社員などへ向け、事例も交えながら実務に活かせるノウハウを開示します。
思考力、問題解決能力向上の3つのポイント
外資系企業で20年間、営業や人材育成のキャリアを重ねた小森康充氏による研修プランです。思考力・問題解決能力のスキルのポイントや、問題解決の3つのステップなど、ビジネス上の目標を効率的に達成する方法を伝えます。
できるビジネスパーソン必携の仕事術
~トヨタ流 問題解決力を高める方法~
トヨタ自動車において、女性のための意欲向上・仕事力習得を支援する問題解決研修を企画・運営してきた菅生寿子氏による研修プランです。若手・中堅を中心としたさまざまな層の社員へ、仕事の進め方の基本的なアプローチや、トヨタで培った、問題解決力を高める方法を指南します。
若手リーダーの「問題解決力向上」研修
パナソニックに28年勤務し、本社部門の管理職として問題解決とマネジメントを経験した高島徹氏による研修プランです。「問題を発見するスキル」や「論理的思考の落とし穴」などを学ぶほか、問題を整理するツールとしてのフレームワークを、ワークを通じて体得しできます。
問題解決力がアップする、PDCA活用力強化研修
二代目・三代目などの非・創業社長を対象にした「草食系経営」アドバイザーとして活躍する中武篤史氏の研修プランです。このプランでは業務において「PCDAサイクル」を使えるようになることを目指します。PDCAサイクル運用の特徴などの基礎を学ぶほか、ゲームを取り入れた演習を通じ、習得までを総合的にサポートします。
実戦!問題解決ミーティング!
~付加価値を高める、問題解決リーダー育成の対話式研修~
ビジネス&マネジメントコンサルタントの中林秀之氏の研修プランです。講師はビジネスリーダーの「考える力」と問題解決能力の開発・強化に取り組んでいます。この研修プランでは、まず問題解決に有効な思考技術やそのフレーム・ツールについて学び、次に問題解決会議の演習を実践。解決法を討議するスキルを身につけます。
「オンライン会議7つの黄金テクニック」
~ちょっとした技で大きな差がつく会議術~
オンライン会議には、対面の会議と異なるポイントがいくつもあります。オンラインツール活用の支援を行う講師が、心理学や組織行動学の視点から導き出された最新のテクニックをお伝えします。問題解決スキルに基づいたファシリテーション術が学べます。
職場で活かす創造性開発
新製品開発、企画、問題解決、業務改善のための創造性開発スキルを高める
予期せぬトラブルや問題が発生した際に、柔軟なアイディアで問題を解決するには、創造力豊かな人材が求められます。発明学会の顧問・平井工氏による研修プランで、誰にでもできる発想法の要点やテクニックを、実習形式で学びましょう。
問題発見・解決
スキルアップ研修
人材開発コンサルタントの藤野祐美氏による研修プランです。問題発見・解決のための考え方(ロジカルシンキング)を身につける方法や、答えを導き出す仕組みなど、日常業務に活かせるスキルが習得できます。
問題解決研修の対象者
問題解決研修を受けるべき対象者について、その理由やポイントを説明しましょう。
若手・中堅社員
まずは若手・中堅社員です。この層が業務での課題を主体的に解決するようになれば、組織全体の成果にも貢献できるでしょう。
それだけでなく、問題解決のアクションがリーダーシップを取るきっかけになるなど、ビジネスパーソンとしての成長にも期待できます。
リーダー層・管理職
リーダー層や管理職には、組織やチームの方向性を示し、リードするための能力が必要です。問題解決の手法を学ぶと、問題が発生した際にも、冷静な判断ができるでしょう。
「課題解決のプロセスを部下とのコミュニケーションに適用した結果、部下自身が課題解決の考えを獲得できる」といったメリットもあります。
メーカーやPMなど業務改善・効率化を推進する職種の人
メーカーの製造部門・品質管理担当や、あらゆる業界のプロジェクトマネージャーなど、業務改善・効率化がミッションの1つである職種にとって、問題解決力は不可欠といえます。
まずは研修を入り口に、絶えず商品・サービスの質や、業務スピードの向上に努めなければなりません。問題課題解決は、業務改善や効率化の基礎と位置付けてもよいでしょう。
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問題解決研修の効果を高める3つのポイント
最後に、問題解決研修の効果を高めるために大切な、3つのポイントについて解説します。
(1)自社のレベルや状況に合ったプラン選択
自社の問題解決をゴールにするのか、解決方法全体の知識を学ぶのか、それぞれの段階を掘り下げてスキルを身につけるのかによって、選択する研修プランは異なります。
目的を明確にし、自社の抱える問題やレベルに合ったカリキュラムに取り組むことが大切です。
(2)解決以前の「問題解決行動の増加」を評価
管理職や人事など、社員の問題解決スキルの評価にあたる側にも、気をつけておきたいポイントがあります。
社員が現場で問題解決を実践しようとしても、周囲から拒否・批判されたり、結果的に自分の業務量が増えたりすると「やるだけ損」と考え、挫折してしまう例が少なくありません。
解決したか否かではなく、問題解決を意図した行動がどれだけ増えたかを評価する姿勢も大事です。
(3)実施後のフォローアップ
問題解決スキルは、繰り返し学び続けることで思考やテクニックが身につきます。1度受講したら終わりではなく、フォローアップ研修を実施したり、現場で積極的に問題解決に取り組めるような体制作りも欠かさないでください。
このように問題解決研修は、社員一人ひとりのスキルアップだけではなく、組織の活性化や業績の向上にもつながります。
自社の直面している悩みや達成したい目的に合う研修プランを、企業の競争力強化を図る策のの1つとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
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