ロールプレイングは、さまざまな研修で取り入れられる技法です。ビジネスマナーや、営業スキルを向上させるのに役立つほか、個人の自信にもつながります。

この記事では、企業がロールプレイング研修を取り入れるメリットや研修のテーマなどを紹介します。

ロールプレイング研修は対人スキル向上の鍵

まずは、ロールプレイングとは何か、またロールプレイングを人材教育に取り入れるメリットについて解説します。

ロールプレイとは 意味と人材教育上の意義

「ロールプレイング(roleplaying)」は、「架空の役割(role)を演じる(play)ことで現実の状況を模擬する」トレーニング手法です。

この方法を用いることで実践型のさまざまなスキルを習得できます。例えば、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決などの能力は、理論や知識を得ただけで、すぐに現場で再現できるものではありません。学んだことを実践するトレーニングの場が不可欠です。

ロールプレイングは、「ロールプレイ」や、略して「ロープレ」と呼ばれることもあります。

研修におけるロールプレイングとは

ロールプレイングは、それ自体を学ぶ研修のほか、クレーム対応や営業、コーチングなどさまざまなテーマの研修の中で採用されています。

特に新入社員の育成やマネジメントスキル向上を目的にした研修では、実践的な経験を積むことができる、ロールプレイが効果的です。シチュエーションごとの対応方法など、シナリオや役割を与えると、受講者はよりリアルな状況をイメージでき、現実の業務に即した対応力を身につけることができます。

またチームビルディングやストレス管理などの研修でも、目的達成のためには、一人ひとりの部下など、相手によって異なるやり方のコミュニケーションが要求されるため、ロールプレイによる体験学習が積極的に取り入れられています。

ロールプレイング研修の導入事例

続いては、ロールプレイング研修の導入事例を紹介します。弊社でも需要の高い以下の5つの研修テーマにおいて、どのようにロールプレイングが導入されているのか、見ていきます。

ビジネスマナー研修


ビジネスマナー研修は、ロールプレイングの必須といっても過言ありません。来客対応や電話対応などのシーンで、知識はあっていてもいざその現場に直面すると、自信がなく戸惑いを感じる人が多いかも知れません。

例えば受講者は、接客対応や名刺交換などを実演します。途中で役割を交代し、逆の立場からの視点に立ってみるのもポイントです。これにより、効果的にマナーが身につけられます。

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営業研修

営業研修では、商談や提案、トラブル対応などのシーンのロールプレイングを取り入れると良いでしょう。自身の課題を見つけられるほか、他者のノウハウを学ぶ場にもなります。

また本人の練習の場となるだけでなく、上司が部下の現状や課題を発見できたり、当事者以外にオブザーバー役を設けることで、他者への評価・フィードバックするスキルも磨かれたりするのも利点の1つです。

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コミュニケーション研修

コミュニケーションは、マニュアルや座学では身につきません。

実際に相手と会話することで、どんな対話をすればよいかや、傾聴の姿勢などを学ぶことができます。コミュニケーションはすべてのビジネスの基本であり、研修でのロールプレイ実習のパートは必須です。

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メンター研修

「メンター」とは経験や知識が豊富な人が、より若い、または経験の浅い人に対して指導や助言を行う立場や役割を担うことです。先輩社員が新入社員の相談役となる「メンター制度」を採用する企業も増えています。

実際に相談を受ける際や面談における傾聴スキルやフィードバックスキルを身につけるのにも、ロールプレイングが有効です。

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コールセンター研修

コールセンターも、マニュアルだけで適切な対応をするのが難しい仕事です。そこでさまざまなシチュエーションを想定して研修内でロールプレイングを実施します。

例えば「顧客からのイレギュラーなクレームに対してどう返答する」かや「担当以外の問い合わせを受けたらどう応対するか」などを組み込むのがポイントです。

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ロールプレイング研修を取り入れる効果

この章では、ロールプレイング研修を取り入れる効果について、4つのポイントをそれぞれ具体的に解説します。

①実践力がすぐに身につく

まず1つ目は、実践力がすぐに身につくことです。

一例として、営業活動は「顧客の課題を聞き出して、その解決につながる商品やサービスを提案するプロセス」です。そのためには、悩みを引き出す力や正しい商品知識を伝える力、相手に不信感を抱かせないビジネスマナーなどが重要でしょう。
これらの力を講座などで1つ1つ獲得しようとするとそれなりの時間がかかりますが、ロールプレイの演習課題を組み込むと、経験を通じて一気に習得できるのです。

②克服すべき課題に対象者自身で気づける

次は、受講者が自身の課題に気づくきっかけになる点です。

ロールプレイングの場で他者からのフィードバックを受けると、自分自身が克服すべき課題があぶり出されます。

それだけでなく、いきなり現場を経験して学ぶよりも客観的な視点で状況把握ができ、主体的に改善する姿勢につながります

③成功体験が獲得できる

3つ目は成功体験が獲得できる点です。

例えばクレーム対応において、シナリオを元に上手くロールプレイを行えると、受講者は「対応に成功した」と認識します。また繰り返し実施することで、自分自身のスキルに自信が持てるようになり、現場業務にでのモチベーション向上にもつながるでしょう。

④知識をより深く定着させる

最後は、研修などで得た新しい知識の定着をうながす点です。

アメリカの国立訓練研究所が導き出した「ラーニング・ピラミッド」という学習モデルがあります。これは講義などで学んだ人の知識の定着率が5%であるのに対し、「グループ討議」や「自ら体験する」過程を経ると、75%まで高まるというものです。

ロールプレイが学習効果を深める事実は、科学的にも実証されています。

ロールプレイングの4つの手法

ロールプレイングには、4つの手法があります。その手法はどのようなもので、どのように進めるのかを解説しましょう。

手法1.グループロールプレイング

まずは「グループロールプレイング」です。これは、受講者でグループを作り、同じテーマで人の役割を変えながら同じシナリオを演じる方法です。チーム全体のスキル向上に効果的です。

例えば、受講者とその先輩社員、上司の3人のメンバーで特定の商談のロールプレイを行う場合を想定してみましょう。役割を入れ替えながら実施します。

  • 1回目/受講者:顧客役、上司:営業担当者役、先輩社員:現場をサポートする上司役
  • 2回目/受講者:上司役、上司:顧客役、先輩社員:営業役
  • 3回目/受講者:営業役、上司:上司役、先輩社員:顧客役

いろいろなパターンにより、実務の中では体験できない役割を担うことで視野が広がります。参加者全員が幅広い対応能力を養えるようになるでしょう。

手法2.問題解決型ロールプレイング

次は「問題解決型ロールプレイング」です。実際起きていることや、過去に発生した事案を元に実施します。この手法は、現実の課題に対処する能力を鍛えるのに役立ちます。

一例として「商談が上手くいかなかった案件」をシナリオに落とし込む場合を考えてみましょう。営業担当者が顧客に対してどのように行動すれば良かったのか、ロールプレイの経験を通じてメンバー全員で討議します。

難しい課題に直面してつまずいてしまいがちな新人や、自分のやり方に固執して伸び悩んでいる中堅社員に、効果が期待できる手法です。

手法3.モデリング型ロールプレイイング

「モデリング型ロールプレイイング」は、1つの成功事例をモデルとし、それを模倣して学ぶ手法です。具体的なイメージが湧きやすく、成功体験も得られます。

1つの正解がある場合の研修には特に有効です。新入社員がビジネスマナーを身につける時などは、講師や上手い先輩の所作を真似するのが最も早道でしょう。

手法4.ケース型ロールプレイング

次は、「ケース型ロールプレイイング」です。一般的に最もよく採用されている手法です。特定の問題や条件をテーマにしたシナリオで、参加者が役割を演じながらスキルを磨くトレーニング手法です。

想定するシーンは多岐に渡ります。「コンペ案件でのプレゼンテーション」、「部下やメンティー(メンター制度における新入社員など、指導される側)との面談」など、あらゆる職種や状況をカバーできるでしょう。

ロールプレイングを確実にスキル向上へつなげるポイント

最後に、ロールプレイング研修を受けることで、受講者が確実にスキルをアップさせるために重要な、6つのポイントをまとめました。

①目的を明確にし、参加者に共有する

まずは目的を明確にし、参加者にきちんと共有することが大切です。

ロールプレイを行うときに陥りがちな失敗の1つに、「ロールプレイを行うことが目的となる」ことがあります。受講する研修内容は実際の業務と別物だと考えてしまったり、その場では達成できても現場で思い出せなかったりするのは、このためです。

受講者に研修目的をしっかりと共有し、研修のロールプレイ自体を上手くやるのではなく、研修をきっかけに成長し、実務に生かすことを理解してもらわなければなりませ

②慣れ合いにならないよう、緊張感を維持させる

よく見知った社内メンバーとのロールプレイでは、緊張感が不足するケースが散見されます。しかしこれでは十分な効果は得られません。

研修の設計においては、受講者の緊張感を維持する工夫が必要です。例えば業務でよく使うのとは別の部屋を用意して部屋の中にロールプレイ専用のスペースを設けたり、成果を競うコンテスト形式で行うなども有効でしょう。

参加者がより真剣に取り組み、自身のスキルや行動パターンを客観的に見つめ直すことができます。

③詳細な役割を設定する

具体的な役割を与えることも重要です。

例えば接客ロールプレイの「顧客役」は、職業や年齢、家族構成などにより、提供できるアプローチが異なりまです。できる限り細かい設定を行い、どんな人で、どのような対応に満足するのかを思いを巡らすプロセスが大事です。

④現実的なシナリオを設定する

またロールプレイでは、現実的なシナリオを設定しましょう。

リアルな状況を再現することで、参加者は実際の業務や対人関係に即したスキルを身につけることができます。一方で、シナリオの内容が極端に高難易度だったり現実離れしていたりすると、逆効果になるため気をつけたいポイントです。

⑤オブザーバー役をつける

役割を持たず、当事者を客観的に見るオブザーバー役を設定するのも効果的です。

オブザーバーは、役割を持つ人に対し、その行動や反応を客観的に観察し、フィードバックを提供します。他者評価がメインのオブザーバー役こそ、適当なことは言えません。

第三者の視点から改善点を見つける経験は、確実に業務への視野を広げ、気づきを増やします。

⑥的確な評価項目を設定し、フィードバックを行う

最後は、的確な評価項目を設定し、フィードバックすることです。

事前に評価のポイントを決めることで、ロールプレイング中に参加者がどこを意識するべきか明確になります。また、フィードバックの時間を設け、相手の良い点、悪い点の両方を伝えると、弱点とともに強みを知ることもでき、モチベーション向上にもつながります。

ロールプレイングの様子を撮影し、映像を見ながら進めるのも良いでしょう。

ロールプレイングを取り入れた研修は、社員の対人スキル向上の鍵です。実践的な状況を疑似体験することで、リアルな場面で自信を持って対応できるようになるだけではなく、コミュニケーション能力、問題解決能力を総合的に高めます。さまざまな効果を得られるロールプレイング研修の導入をぜひ検討してみてください。

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