ビジネスの現場では、定期面談のほかプレゼンなどの重大な場面の後でもよく用いられるフィードバック。人材育成と会社の発展において重要な要素です。
適切なフィードバックは社員のスキル向上に役立ちますが、やり方を間違えると逆効果となってしまうこともあります。
フィードバックの重要性や手法について、本記事で徹底的に解説します。
フィードバックとは ビジネスシーンでの意味と重要性
まずはフィードバックについて解説しましょう。意味だけでなく、アドバイスとの違いも明らかにしていきます。
フィードバックとは
フィードバックとは、「相手の行動の評価や問題点などを伝え、改善を後押しすること」を指します。
上司から部下へ提供するのはもちろん、取引先企業や消費者などから企業が受け取るケースもあり、人材育成や業務改善に効果的です。
フィードバックとアドバイスの違い
フィードバックとアドバイスは、似ているようで異なります。
- フィードバック:相手に評価と改善点を伝えること。
- アドバイス:自身の知識・経験をもとに、相手に助言を与えること。
つまり、自身の経験などを交えるか否かに違いがあるといえます。
フィードバックの失敗が招く状況
組織の中で、もしリーダーからメンバーへのフィードバックが失敗すると、以下のような状況に陥ってしまいます。
- 部下が働きにくくなる
- チーム全体の生産性が低下する
- リーダーが信頼を失う
例えば「とにかく頑張れ」などの精神論や「自分で考えろ」といった具体性に欠ける発言は、部下が働きにくくなる要因となります。
働きにくいチームでは生産性が低下し、取引先などから信頼を損ねることもあります。まさに悪循環です。具体性のない精神論やフィードバックは避けましょう。
フィードバックの目的
それではフィードバックの目的にはどのようなものがあるのでしょうか。ここではフィードバックの3つの目的を紹介します。
人材育成
フィードバックにおいて人材育成は最も重要な目的です。上司が部下の現状を把握したうえで、今後の課題を指摘することは、部下にとって内省のきっかけとなります。
フィードバックはマンツーマンの形式であるため、密度の高い人材育成が可能です。
目標達成
フィードバックは個人やチームの業務目標達成にもつながります。
第三者の視点を含めた振り返りによって、目標に対してとるべき行動に軌道修正が加わります。フィードバックを受け取った人自身で、それまでよりも適切なアプローチを検討できるようになるため、目標を達成しやすくなります。
研修効果の最大化
ビジネススキル研修の後にもフィードバックは欠かせません。
受講後にフィードバックを受ける機会がないと、研修で学んだスキルを実務で応用しても「スキルが役立っている」という実感が得られないでしょう。
定期的なフィードバックがあれば、今後に向けて改善すべき点がより明確になり、受講者にスキルがしっかり定着していきます。
ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック
フィードバックには、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの2種類があります。これらにはどのような差があるのでしょうか。
ポジティブフィードバック
「ポジティブフィードバック」は、相手のよかった部分にフォーカスし、前向きな言葉で評価する方法です。
肯定・承認することにより相手に満足感・達成感が生まれ、やる気をより引き出します。価値観が多様化する現代に合った方法として注目されています。
ネガティブフィードバック
反対に「ネガティブフィードバック」は、相手の問題点を明確にしながら改善を促すものです。
厳しい内容こそ伝え方を工夫しなければなりません。信頼関係を築いたうえで、人格否定にならないよう、客観的かつ具体的に伝えましょう。相手に寄り添う姿勢が大事です。
フィードバックが組織にもたらす効果
フィードバックを活用すると、組織全体にも良い効果が現れます。フィードバックによる3つの効果を、組織の観点からも見ていきましょう。
効果1.対象者のモチベーション向上
フィードバックは、対象者の仕事や成長への意欲を引き出します。
「日頃の努力をきちんと見てくれている」「認めてもらえた」と感じるのは誰しも嬉しいものです。モチベーション向上には、そうした小さな成功体験の積み重ねが有効です。
さらに何が好ましいのかを具体的に示すことで、相手の目指すべき方向性が明らかになります。「もっと期待に応えたい」という気持ちが、上司や会社への信頼感の基礎となるでしょう。
効果2.社員定着率の向上
フィードバックは、社員の成長による社員定着率の向上にも有効です。
例えば離職率の低さで知られるスターバックスコーヒーでは、人材育成に「是正」と「強化」という2種類のフィードバックを取り入れています。
是正のフィードバックは、行動を正しい方向に導くことを目的としています。問題があったとしても解決策を先に与えず、原因究明や状況整理のための問いを投げ、あえて従業員に考えさせます。
一方、強化のフィードバックは、相手がうまくいった時にその理由を考え、分析させるものです。
これらにより、同社は従業員が自分の頭で考えて行動変容する風土を根づかせ、定着率向上や離職率の低下を実現しています。
効果3.信頼関係の構築・強化
部下の成長やモチベーション向上は、社員同士の信頼関係の構築・強化につながります。
こまめにフィードバックの場を設けること自体が、上司と部下とのコミュニケーションを増やします。
また部下の立場からは、自分に足りない点や期待される役割を明確にしてくれる上司に対し、信頼が大きくなるでしょう。上司にとっても、部下ごとに異なる課題を見つけ、支援を提供するきっかけとなります。
コミュニケーションの質が向上し、社員間での誤解や不満が減るでしょう。
フィードバックによく用いられる3つの手法
フィードバックには以下の3つの手法が用いられています。それぞれ紹介しましょう。
サンドイッチ型
サンドイッチ型は、ポジティブフィードバックをベースに、ネガティブフィードバックを挟み込むような手法です。
先にポジティブフィードバックを与えるので、ネガティブフィードバックによる受け手の士気の低下を抑えられます。
SBI型
SBI型は、以下の3つの頭文字から取られたフィードバック手法です。
- Situation(相手の置かれている状況)
- Behavior(相手の取った行動)
- Impact(行動によって生じた影響)
順序立てて事実や行動への評価を伝えるため、相手に物事を理解・納得させるのに有効です。
ペンドルトン型
ペンドルトン型では、評価者と対象者が、以下の5点をこの順で話し合います。
- これから実施するフィードバック内容の確認
- 良かった点
- 反省点
- 今後の行動プラン
- まとめ
じっくりコミュニケーションをとって部下に自ら積極的に課題や改善点を考えさせ、今後のステップアップにつなげます。
効果の高いフィードバックのコツ
フィードバックの重要性や効果、手法などを解説しました。ここからはより効果が高まるフィードバックのコツをお伝えしましょう。
①適切なタイミングと頻度、環境で行う
フィードバックは、定期的に行うことで効果が増します。
しかしプレゼンや商談などの具体的な行動の評価は、その行動後、できるだけ早いタイミングで与えるのが適切です。時間が経過した後に行うと効果が薄れてしまいます。
したがって、評価者は定期フィードバックと事後フィードバックの両方の特性を理解し、使い分ける必要があります。
また、フィードバックはなるべくリラックスした環境で行いましょう。なぜなら対象者によって、受け止め方が異なるからです。事前に緊張を和らげてから本題に入る、といった工夫が必要です。
②他のメンバーと比較しない
フィードバック時に他のメンバーと比較すると、伝えたい内容がぼやけるほか、部下のモチベーション低下につながり、逆効果となってしまいます。
対象者を何かと比べるのであれば、それは他者ではなく過去の対象者本人とし、「その時点からどれだけ成長しているか」を伝えましょう。
③具体的かつ簡潔に伝える
フィードバックは、具体的かつ簡潔に行わないと意味がありません。
例えば「プレゼンがわかりにくかったから次は気をつけて」では本人は戸惑います。
「顧客ニーズを網羅したうえで、現実的な数値に落とし込んで予算感を提案できたのは良かった。でも早口で声が小さく、頼りなく見えたので、次はそこに気をつけて」と具体的かつわかりやすい言葉で伝えるのが理想です。
④相手の行動に結びつける
対象者の行動に結びつけさせるのもコツの1つです。
相手の姿勢や心構え、人格に言及するのは不適当です。あくまでも表面化した行動そのものに対して評価しましょう。
受け取った人は自分の性格やマインドではなく、行動に対する現状や課題であると理解し、目標達成に必要な行動に結びつけます。
フィードバックと併せて覚えておきたい用語
最後は、フィードバックと併せて覚えておきたい4つの用語を紹介します。
コーチング
「コーチング」は、コーチが相手自身の中にある選択肢や解決策を導く手法です。コーチは問いかけと傾聴を重ねて対象者の目標達成を支援します。
フィードバックは「客観的事実をベースに相手を評価すること」がメインなので、答えや改善策などを引き出すコーチングとは目的が異なります。
360度フィードバック
通常のフィードバックより広い視点からの評価を与えるのが、「360度フィードバック」です。
上司だけでなく、同僚や先輩・後輩といった複数の人物からの評価が反映されるため、通常のフィードバックよりも客観性が強化されるなどのメリットがあります。
また業務やスキル以外で、対象者の行動がチームや職場全体に与えている影響を測定できる評価方法です。
1on1面談
1on1は文字通り1対1の面談のことです。
定期的にフィードバック面談の場を設け、その中でSBI型を取り入れると、特に効果が大きくなります。部下の悩みごとや相談に対しても1on1でのフィードバックが役立つでしょう。
継続的な1on1で信頼関係を築き、フィードバックと改善の好循環を作っていくのが大切です。
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フィードフォワード
フィードフォワードは、対象の「これから」に着目し、改善点やアイディアを話し合うことです。
「上司から部下」といった関係性を問わず、対象も個人に限りません。チーム全体で取り組むこともあります。対面ではなくチャットを用いても良いでしょう。
フィードフォワードが上手くいけば、組織に前向きな意志や意欲を育めます。
フィードバックのスキルは研修で習得できます!
フィードバックは社員と組織の未来を切り開くのに、効果的な人材育成方法の1つです。本記事で紹介した3つの手法や4つのコツをぜひ参考に、取り入れてみてください。
また、フィードバックスキルは、研修で身に着けることができます。弊社では、専門講師によるフィードバック研修を推進しています。対象者、目的、予算等に応じて、適切な講師をご紹介できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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