物事を論理的に考える「ロジカルシンキング」は、ビジネスパーソンにとって重要なスキルの1つです。
この記事では、ロジカルシンキングとは何かや、8つのおすすめのトレーニング方法、ロジカルシンキングスキルを鍛えるメリットなどについて紹介します。
ロジカルシンキングとは
論理的に考えて思考をまとめるロジカルシンキングは、ビジネスの場で特に必要とされる力です。
この項では、ロジカルシンキングがどのようなスキルで、社員のロジカル思考を鍛えることで企業がどのようなメリットを得られるのかについて解説していきます。
ロジカルシンキングとはどのようなスキルか
ロジカルシンキングとは、日本語で言うと「論理的思考力」。物事を体系的に捉え、根拠から結論まで、矛盾なく筋の通った考えをまとめる思考法のことです。
考えを論理的にまとめて順序立てて話すことで、相手にもわかりやすく伝えられます。ビジネスシーンにおいて、聞き手に自分の言いたいことを的確に伝える力を身につけることはとても重要です。
職場で問題が発生した時など、解決策を考える場面で特に役立つため、若手や新人だけでなく管理職も鍛えるべきスキルといえます。
社員のロジカル思考を鍛えることで企業が得られるメリット
ロジカル思考を鍛えることにより得られるメリットは多岐にわたります。
社員は商談や交渉、プレゼンテーション、文書作成、ミーティング、市場分析、課題解決など、さまざまなビジネスシーンでロジカルシンキングを活用できます。
さらに分析やアウトプットの質が高まり、主体的に考える風土が定着すれば、組織全体のコミュニケーションも改善・活発化します。
社内の無駄を削減し、生産性を上げて、企業の利益を高めることにもつながるでしょう。
組織で取り入れたい ロジカルシンキングのトレーニング方法8選
社員がロジカルシンキングを身につければ、企業にも大きなメリットがあります。
では、どのようにしてロジカルシンキングを鍛えるのでしょうか。
ここからはトレーニング方法を8つご紹介します。
①フレームワークの習得
ロジカルシンキングには、いくつか有名なフレームワークが存在します。フレームワークとは、ある物事を考える時に大枠を組み立てる型のことです。
その代表的なものが「MECE(ミーシー)」、「ロジックツリー」、「ピラミッドストラクチャー」などです。それぞれ異なる形で要素の関係性を構造化したもので、情報を当てはめていくことで効率的に整理できます。課題を洗い出し・分析・アイデアの共有の際に、これらのフレームワークを活用することで、物事を論理的に考えることができます。
②仮説思考の習慣化
ロジカルシンキングではまず「仮説」を立てて、それが成立するかどうかを念頭に物事を考えていきます。仮説とは、結論や根拠を仮組みしたものです。フレームワークなどを活用し、仮説の根拠を裏付ける事実を集めたり、逆に事実を積み重ねて仮説を導き出したりします。仮説を立てる際は信頼度の高い情報を元に考えます。間違いがあると論理が成立しません。また直面している課題に対してどのような結論を導き出したいのか、目的を常に意識することが大切です。
日常的にあらゆる物事に仮説を立てる癖をつけることで、ロジカルシンキングが鍛えられていきます。
③フェルミ推定
次はフェルミ推定です。「フェルミ推定」とは、調査や実測が難しい数値や規模を、自分の知識や出されたヒントにもとづき、数値と算式を使って短時間で推定することです。例えば「日本に電柱は何本あるか」「日本で1年間に消費された割り箸の本数は」という問いに対して、人口の概数や地理・生活などの知識・情報をもとにざっくりと計算するものです。フェルミ推定を入社試験に採用している企業もあります。
④短くてわかりやすいアウトプットの練習
ロジカルシンキングを鍛えるには、インプット(新しい情報や知識の吸収) ・アウトプット(情報を言葉や行動に反映していくこと)を意識するのも欠かせません。日常生活でインプットしたさまざまな情報を整理し、短くてわかりやすい言葉でアウトプットみるようにします。結論を先に述べ、相手の目線に立った具体的な表現を心がけるのがポイントです。
⑤書籍やwebで基礎や例題を学ぶ
基礎や例題を学ぶなら、書籍やwebを利用するのもおすすめです。書店に行けば、ロジカルシンキングに関する本はたくさんあります。また、web上でも多くの情報を見つけられます。社員向けにロジカルシンキングの書籍を選ぶ際には、学習者のレベルに合うものを選びます。入門編から専門書、問題集などがあります。また最初は漫画で学ぶのも問題ありません。電車や外出中に読むなら電子書籍も良いでしょう。
⑥ディベートやセルフディベート
業務内にディベートやセルフディベートを取り入れるのも効果的です。1つのテーマに対して賛成・反対の2つの立場に立って議論し、テーマを深く掘り下げていくことで、短時間で異なる立場に立って考えられる客観性や、相手に納得してもらう説得力が養われます。会議にディベートの時間を組み込むのも良いでしょう。
また1人で賛成派・反対派の意見の両方を考えて討論するセルフディベートは、立場や見方の異なる人に、自分の意見を伝える訓練としても活用できます。
⑦毎日の業務での実践
これまで紹介したトレーニング方法は、日常的に実践していくことが重要です。例えば会議やプレゼンの場では、まず結論を先に伝え、次にその根拠を具体例と一緒に説明することでわかりやすい内容になります。
また、議事録作成時に分散した議論をフレームワークで整理するなど、さまざまなシーンでロジカルシンキングのトレーニングを業務に取り入れてみましょう。
⑧研修やワークショップの機会活用
研修やワークショップの機会も活用できます。
ロジカルシンキング研修のプログラムでは、まずはロジカルシンキングの重要性を理解し、フレームワークなどを学習します。さらにプログラムに組み込まれたワークショップで実践すれば、学習したスキルの定着・強化が可能です。特に専門家の外部講師による研修がおすすめです。システムブレーンでは、外部講師紹介において豊富な実績があり、さらに講演や研修プランの開発・提案も行っています。ロジカルシンキング研修の開催を検討している企業様は、ぜひ一度弊社へお気軽にご相談ください。
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ロジカルシンキングスキルを鍛えるメリット
ロジカルシンキングは、さまざまなトレーニング方法により身につけられることがわかりました。しかしそもそもロジカルシンキングの習得にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
それぞれのメリットについて詳しくみていきましょう。
メリット1.問題解決力の強化
物事を体系的に整理し、論理的に考えて正しく把握するロジカルシンキングを鍛えることにより、問題解決力を強化できます。問題解決力の低い人は、発生した問題に対して見て見ぬふりをしたり、他人のせいにしたりしがちです。また情報収集が不十分なまま主観のみで結論づけて、結果的に状況を悪化させてしまうことすらあるでしょう。ロジカルシンキングを習慣化すれば、客観的な現状把握や網羅的な情報収集が可能になります。
メリット2.分析力の習得
ロジカルシンキングでは、まずは事象と課題を分類し、因果関係を明確にします。そして、それを裏付けるデータを客観的に評価し、問題の本質や原因を見極めることを目指します。これらのプロセスをへて、問題解決の糸口や、状況打破のためには「次にどう行動すべきか」を見つけられるようになるのです。複雑な要素が絡み合う問題に直面しても、その核心がどこにあるのかを判断したり、解決策の優先度を付けたりできるようになります。
メリット3.コミュニケーションの改善
ロジカルシンキングで相手にわかりやすく物事を伝えられる社員が増えれば、伝達の過程で事実誤認が起こったり、意見の食い違いが起こったりしにくくなります。その結果、会議での議論や意思決定の質も上がるでしょう。取引先や協業先などとの連携も円滑化します。
メリット4.生産性アップ
仕事での問題点や課題の本質をとらえることができるようになれば、無駄な業務を削減でき、生産性もアップするでしょう。個人だけでなくチーム単位でも、どのタスクを優先し、限りある時間や予算・人材をどのように使うかの論理的な判断が可能です。また思考法のスキルなので、判断する人による個人差が起こりにくくなります。一度身につけると別の業務やチームで再現できるのも、価値あるポイントです。
メリット5.提案力・説得力の向上
論理的に思考できるようになると、提案力・説得力も向上します。事実や情報から、相手の求めていることが瞬時に判断できるようになります。そして自分も、相手を納得させられる言い方で、誤解されることなく意見が伝えられます。
ロジカルシンキングの定番フレームワーク
先ほど説明したように、ロジカルシンキングには定番の3つのフレームワークが存在します。ここでは3つの定番フレームワークについて詳しくみていきましょう。
MECE(ミーシー)
「MECE」とは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhausive」の頭文字をとった言葉です。意味は「漏れもダブりもなく」です。MECEはロジカルシンキングの基本です。なぜなら、要素をこれに当てはめることで「考慮するべき要素が抜けている」「何度も同じことを繰り返している」といった状況を回避できるからです。MECEを用いれば、要素や重複、対象外の要素、論理のズレをなくすことができます。
ロジックツリー
「ロジックツリー」とは、さまざまな問題をツリー状に分解していき、原因と解決法を探っていくフレームワークのことです。ロジックツリーを作成すると、問題の原因が可視化され、特定しやすくなります。例えば「コンバージョン率が悪い」という原因に対して、考えられる理由をすべて洗い出し、さらにそれらの理由を構成する要素まで、どんどん深掘りしていきます。ロジックツリーを社内で共有すれば、どのような過程で導き出された答えなのかまで認識を統一できます。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、ピラミッドの上に結論を提示し、その結論の根拠となるものを下部に積み重ねていくフレームワークです。ピラミッドストラクチャーでは、「仮説→根拠→事実」の順番で論理展開をする「トップダウンアプローチ」と、「事実→根拠→仮説」と積み上げて仮説を構築していく「ボトムアップアプローチ」の2種類があります。原因の追求・分析に向くロジックツリーに対し、ピラミッドストラクチャーは特に解決策を導くのに役立ちます。
過剰なロジカルシンキングによる弊害に注意
ロジカルシンキングは、ビジネスにおいて非常に重要なスキルです。しかし、ロジカルシンキングに過剰に頼りすぎないようにしましょう。ここでは3つの弊害について補足していきます。
コミュニケーションの硬直化
ロジカルシンキングに頼りすぎると、コミュニケーションに問題が生じる場合もあります。ただ相手を負かすためにロジックを振り回していると、モラルハラスメントとしてとらえられる可能性もあります。相手を心理的に追い詰めてしまったり、相手の感情に配慮がなかったりなど、ともにビジネスを遂行する仲間を傷つけてしまっては意味がありません。さらに論理性よりも情熱が人をひきつけ、プロジェクトを動かしていく例も、容易に想像できるでしょう。
新しいアイディアや自由な発想の抑制
ロジカルシンキングは、問題解決や業務効率化に優れたスキルですが、新しいアイディアや自由な発想には向いていない場合があります。これはロジカルシンキングが、論理的な分析・推論に基づいて物事を考える方法だからです。ほとんどの場合、導かれる答えは1つに限られます。
一方、革新的なアイディアなどを生み出す場合には「ラテラルシンキング」と呼ばれる思考法が向いています。こちらは1つのテーマを論理的に掘り下げるのではなく、固定概念から離れて物事を多面的かつ柔軟にとらえ、多様な案や解決策を出すことを重視します。ロジカルシンキングにだけに固執せずに別の思考法も組み合わせ、適切な場面でスキルを使い分けましょう。
現実にはロジカルシンキングが通用しない局面もある
またビジネスにおいて、時にはロジカルシンキングが通用しない場合もあります。現実には、偶発的な物事や状況の変化が生じることもあります。たとえ論理立てて結論や仮説を導き出しても、偶然発生した事態によってロジックが破綻(はたん)してしまうこともあるのです。ロジカルシンキングにばかり頼っていると、現実に起きる予測不可能な事態に対応しきれなくなる可能性もあるので注意しましょう。
生産性アップや会社と社員の成長のためにも、積極的にロジカルシンキングのトレーニングを取り入れていきましょう。また、新たなスキルの習得には、知識と実績が豊富なプロの外部講師による研修が有効です。研修の受講をきっかけに、その後の普段の業務で実践することで、社員は論理的思考を身につけられるようになるでしょう。当社ではロジカルシンキングの研修プランを多数用意していますので、お気軽にご相談ください。
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