災害に備えて組織を強く!~雇用を守る経営者の視点からの防災・安全まちづくり~

宮定 章
みやさだあきら

地域活性

宮定 章
みやさだあきら

神戸学院大学非常勤講師 災害復興研究担当 認定NPO法人まち・コミュニケーション 代表理事
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想定する対象者

会社を守る経営者
防災意識の向上により、企業を強くしたい経営者

提供する価値・伝えたい事

日常生活(家族として)でも、活かせそうな内容も含みます。
・防災対策(中小企業個人事業主の)
・地域づくり(中小企業個人事業主の役割や地域への貢献)
社員が一致団結して、取り組んだ災害時の事例を聴いていただくことで、団結力が強まり、よって、安全で快適な仕事環境・作業現場を確保できると気持ちを高める効果を出します。

合わせられる範囲で合わせます。

【参考文献】
中小企業・自営業と地域の復興 宮定章(災害対応ハンドブック 法律文化社2016年)

1.一般的な家庭人(経営者や従業員の前の段階)の安全
2.経営者としての安全(下記が内容)

中小企業・自営業と地域の復興
 筆者が被災地のまちづくり支援に関わってきて思うのは、「復興は事前の備えが大切」ということです。阪神・淡路大震災の被災地、兵庫県神戸市長田区の事例をお伝えします。

■災害が起こると~災害で失う住まいと暮らし~
災害では、家も仕事も失うことがあります。地区の8割が延焼しました神戸市長田区御蔵地区。大規模災害になると、復興過程において、人も中小企業もまちを離れてしまい、「まちが無くなる。」ということも現実味を帯びてきます。そうならないようにするためには、地域にとって一人一人の住まいと暮らしの再建が大事です。(※地域の安定的な生活のためには、一人一人が、事業を再開することが、大切ですが、事業は、借金を背負う可能性が高いので、再開するかどうかも考えなくてはなりません。)災害の大きさには関係なく、生き残ったその日から日常生活へ戻すために、被災者は、できるところから商売を始めなくてはなりません。もちろん、災害後、多くの支援がやってきます。しかし、自分の住まいと暮らしやまちをつくるのは、被災者自身なのです。物を生産したり、一次産業に関わる仕事は、ほぼ毎日安定供給するからこそ、経営できています。ほとんどの経済活動は、一度止め、安定供給できないとなると、客が離れてしまいます。再開するなら、早めの決断が、事業環境を変化が少ないまま、仕事を進めることができ有利です。

■再開すると決めたら・・・
□関係各所への意思表示
 未曾有の災害に見舞われ、普段から考えると、物理的には不利な条件で再開するのですから、まずは、再開するかどうかを判断するリーダーの意志の強さを見ています。そこで、意思表示が大事です。
1.人材の確保
 従業員も、被災している企業で働けるかどうかを不安に思っています。再開の意思表示をすると、従業員も、仕事を探すのも大変ですから、多くの従業員もまずは安心されます。熟練の従業員を一時解雇して、再開後、再雇用しようとしてもお互い生活があるため再度雇用できるかどうかわかりません。災害前の日常時では出なかった力が出てくる可能性があります。

2.再建場所の決断
事業再開のために、土地の確保から始めなくてはなりません。従前地は、大きな被害を受けていますから、この地を整地して従前地にて再建するか、時間が許さないなら、この地を離れ、条件の良い場所を探すという選択肢があります。
a.従前地にて再建
自分土地を整備して再建しようとしても、災害後は、インフラの再開等にも時間がかかります。業種にもよりますが、事業を継続するためには、仮の再建も仕方がありません。取引先や従業員の事を考えると、一刻も早く事業を再開しなければならない。また、一度転出して再建すると、再度戻ってこられることはほとんどありません。なぜなら、転出してしまうと、転出先で、新しい顧客や取引先とのネットワークが出来ます。きれいなまちになって戻ろうと思っても、引っ越しや設備費用に、資金が要るからです。そして、元のまちに戻ったところで、以前の顧客は戻ってこないからです。

b.従前地以外(転出地)にて再建
大きな被害を目のあたりにし、従業員取引先のためには、一時も待てず、空き物件を探し、転出して再建しなければならないことがあります。そのためには、皆が探す中、すぐに空き物件が見つかることは少ない(貸してもらえるかどうかもわからない。)でしょうから、日頃からの人間関係を大切にし、独自のネットワークで探すことが重要です。

3.取引先(顧客)への連絡
 災害後、一般のボランティアだけでなく、企業も、取引先を応援するため、取引先へ訪問されます。取引先も、事業継続のため、必死に材料等調達先を探します。だから、再開すると決めたら、取引先を離さないためにも、再開日時等を連絡するのがよいでしょう。

4.設備資材の確保
 仕事をする上で、設備の確保ですが、他の被災されていない企業の設備更新より、優先的に回してもらうくらいの覚悟が必要です。また、周辺では、残念ながら辞めるとか、設備更新で、使用していない設備をお持ちの企業もあります。日頃から、観察しておくことが大事になります。

5.支援策を探る
 災害後、関係省庁から、支援策(雇用助成、グループ補助金)が出されます。様々な種類がありますから、商工会や専門家(中小企業診断士)等に相談すると良いでしょう。商売は、フローの成立が大切ですから、イニシャルだけの支援に頼るのことは、必要以上の大きな資産(不良資産)を持つと維持費に、無駄な経費がかかったりし、逆効果の場合があります。日常時に戻す(客と関係を継続的にする)ことが大事です。

5.災害後の多くの仲間
 災害により多くのものを失いますが、震災から、事業を成立させるために、大きな力になる新たな仲間を得たり、不良資産を失ったことで、資産の活かし方を学んだり、良いこともあります。また、新しい仲間は、震災前の人間関係が繋いでくれます。日常の人間関係を大切にしておくことが重要です。

■次の災害に向けて
 地域は、住宅だけでもお店だけでも成立しません。都市部では、市場経済により、新規参入がありますが、地方部では、一度失うとなかなか元には戻りません。災害後の地域の再生と共に、生業を再生・継続しなくては、せっかく事業継続しても、客が一定層確保できず、苦労することになります。復興予算では、“住宅”“商業”“工業”と、バラバラに応援するのではなく、地域に則した復興そのための制度が必要です。地域の一員として一人一人が、どんなまちをつくるのか、どのようにして地域は成立しているのかを災害が起こる前から感じて、想像していることが重要です。

内 容

パソコンのスライドを映写して、写真や図を用いてわかりやすく説明します。
初めての方にも、わかりやすい動画も準備することも可能です。

根拠・関連する活動歴

1999 年 3 月 大阪大学工学部建築工学科 卒業
2000 年 3 月 阪神・淡路大震災まち支援グループ まち・コミュニケーション 参加
2002 年 3 月 大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻 建築デザイン学講座 建築都市計
画領域 修了
2002 年 4 月 阪神・淡路大震災まち支援グループ まち・コミュニケーション 代表
2003 年 4 月~2004 年 6 月 都市基盤整備公団(現都市再生機構)
~現在 認定NPO法人 まち・コミュニケーション 代表理事
2012 年 3 月 博士(工学)学位取得 神戸大学大学院 自然科学研究科

兵庫県西宮市在住。阪神・淡路大震災で自宅は、水が出ないなどの被害を受けた。建築学科に入学し、地震に強い建築をつくろうと勉学に励んだ。
大学在学中に、講師(都市計画学会石川賞受賞)の紹介で、住宅の8割が全焼した御蔵地区(神戸市長田区)を知る。住民組織が「一人でも多くの人を元のまちに戻そう!」と取り組んでおり、その取り組みをNPOまち・コミュニケーションが応援した。その活動に共感し、その一員として活動を始め、代表を務める。
NPOは、共同再建住宅を設計、権利関係、管理や、公園づくりワークショップ等コーディネートを行った。そして、住民・建築を志す学生ら、のべ5000人が関わる古民家移築集会所をコーディネートし、専門家と住民と学生を巻き込むこの活動が評価され、『防災功労者内閣総理大臣賞受賞(2003年)』『地域住宅計画賞(2004年)』を受賞。反響を呼び、2棟目を、日本から台湾への移築。日本と台湾の大工、学生等5000人をコーディネート。移築した古民家には年間20万人が訪れている。
 これまでの住宅再建・地域づくり支援の経験を活かし、東日本大震災や熊本地震の被災地で支援活動に取り組む。建築士、技術士、弁護士、不動産鑑定士に呼びかけ罹災証明発行と同時にワンストップ相談を受ける体制づくりを支援した。現在は、東南海トラフ地震へ備える「防災まちづくり、耐震補強、事前復興」に取り組む。人を活かし、地域を活かすための講演をしている。

【著書】『 共同再建住宅 みくら5の記録 』、『古民家移築集会所が培った日台の絆 ~阪神・淡路大震災/台湾集集大地震/東日本大震災の経験から~ (建築の研究 2015年8月 一般社団法人 建築研究振興協会)』、『 復興まちづくりの時代 震災から誕生した次世代戦略 』(共著、建築資料研究社・2006)、『 復興コミュニティ論入門』(共著、弘文堂・2007)、『東日本大震災住まいと生活の復興』(共著、東京 ドメス出版・2013)、『災害対応ハンドブック』(共著、法律文化社・2016)ほか。

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